"ジャンプ"の開拓者   作:鮭のKan2me

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 前回記録:ジャンプⅣ(49cm)
 最高記録:ジャンプⅢ(12.2m)

 


ジャンプⅤ:それぞれの最善

「ふっ、ハァァッ!・・・こんなところかしら?」

 

 

「あぁ、見事なレイピア捌きだ。合わせるには骨が折れそうだな・・・。」

 

 

 迷宮区攻略開始の3時間前、キリトとアスナ、そして俺は連携の精度を上げるため互いの戦闘スタイルを確認していた。

 

 

「そういうアナタこそ、なによあの跳躍力。他の槍使いも何人か見たことあるけど、そんな戦い方してるのアナタだけよ?」

 

 

「・・・まぁ、そうだろうな。」

 

 

 アスナやキリトの動きを見て確信に至ったのだが、俺がジャンプに費やしている分他のプレイヤーは更にモンスターを狩っている。いや、レベルだけであればキリト達には劣っていないのだが、先程のアスナの様に目に追えない程の突きはソードスキルによるアシストがあるとはいえ、完全にプレイヤー自身の技量である。武器の取り回しですら劣っているのに、純粋な戦闘となったら俺は他のプレイヤー程上手く戦うことはできないだろう。そこで、その差を少しでも埋めるためにジャンプで培った技術を(・・・・・・・・・・・)戦闘スタイルに組み込むことにした(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 とはいえ、今のところ流用できるのはジャンプの高度を稼ぐための跳躍力だけであるがな。その跳躍力を持って敵の攻撃の回避、そして低空で跳ぶことで一気に間合いを詰めて刺突するなど中々らしいことができた。

 

 

「オレは良いと思うぜ?そのジャンプ力があればカバーできる範囲広いだろうし。早速スイッチやってみようぜ。」

 

 

「・・・スイッチ、って?」

 

 

「スイッチ知らないのか?・・・そうだな、言葉で説明するより実物見た方がいい。ハイウインド、付き合ってくれ。オレから仕掛ける。」

 

 

「了解した。」

 

 

 俺がそう答えると、キリトは一番近くにポップしていた蜂型のモンスター『プリックワスプ』に向かって行き、そのまま斬りつけた。その一撃でヘイトを買ったのか、針による攻撃を仕掛けるがキリトはそれを難なく弾き—。

 

 

「スイッチ!」

 

 

「セェヤ!」

 

 

 ドンッ!ザシュ

 

 

 スイッチと言った瞬間バックステップで引いたキリト。その隙を縫う様に俺はプリックワスプに向かって低空跳躍し、刺突を喰らわせる。そのまま俺はプリックワスプの攻撃に対応し、再度針による攻撃が来たところを横薙ぎで払い—。

 

 

「スイッチ!」

 

 

「ハァァァァッ!」

 

 

 ズバッ!

 

 

 合図を出すと同時に俺は後ろに向かって高く跳び、キリトはダッシュの勢いのままプリックワスプの体を切り裂いた。その攻撃を喰らったことでプリックワスプの体はポリゴン片となり、俺とキリト、ついでにパーティにいたアスナに経験値が振り分けられた。

 

 

「・・・と、これがスイッチだ。こうして交代できれば最低限の消耗で長く戦闘できる。特にレイド戦で役立つから覚えといてくれ。」

 

 

「わかったわ。・・・ねぇ、まだ時間はあるし練習してもいいかしら?」

 

 

「わかった。じゃあオレとハイウインドの間に入るとして—。」

 

 

 こうして迷宮区攻略の1時間前ぐらいまでスイッチの練習は続いた。最初はともかく、息が合い始めてからはかなりのペースでモンスターを狩っていった。終わる頃には1レベル上がっていた程には。

 そして遂に迷宮の攻略が始まった。当然ながら迷宮内にもモンスターはおり、無駄な消耗を避けるため最低限の討伐に留めていた。こうして難なくボス部屋の前にたどり着いたところで、ディアベルが門を背にして攻略組全員を見据える。

 

 

「聞いてくれ皆、俺から言うことはたった一つだ!・・・勝とうぜ!」

 

 

 息を飲む音が周りから聞こえた。かくいう俺もかなり緊張している。なんせ初のフロアボス戦だ。最下層とはいえ強大なことに代わりはないだろう。

 

 

「いくぞ!」

 

 

 掛け声と共にディアベルか門を開く。そのボスフロアの中は薄暗く、前側にいた攻略パーティと共に徐々に進んでいくとまるで塗り替えられたようにフロアが明るくなり、奥の玉座に座っていたであろう第一層のボス『イルファング・ザ・コボルトロード』が飛び上がっていた。

 コボルトロードが着地すると同時に、その周囲に『ルインコボルトセンチネル』がポップし、コボルトロードと共にこちらに攻めいる。

 

 

「攻撃、開始ぃ!!」

 

 

『ウォォォォォ!!』

 

 

 ディアベルの号令と共に各プレイヤーがコボルトロード、コボルトセンチネルと交戦を開始する。モンスターとプレイヤーで入り乱れる戦場、そんな中でもディアベルは適切な指示を行っていた。

 

 

「A隊、C隊、スイッチ!来るぞ、B隊ブロック!」

 

 

 コボルトロードのHPを削っていたA、C隊の代わりにB隊が前に出て、コボルトロードの斧による攻撃をソードスキルを同時に打ち込むことで弾く。

 

 

「C隊ガードしつつスイッチの準備・・・今だ!交代しつつ側面を突く用意!D、E、F隊、センチネルを近づけるな!」

 

 

「了解!」

 

 

 ディアベルの指示にキリトが反応する。俺達のパーティはキリトがリーダーで、攻略組パーティのF隊に位置づけられている。俺達の役割はセンチネルの相手、つまり雑魚の足止めである。まぁ、そもそも人数不足なので妥当であろう。

 迫り来るセンチネルの攻撃を弾いたキリト、体制が崩れたところにスイッチで片手細剣のソードスキル『リニアー』を素早く喰らわせるアスナ。その速さはまさに閃光のようであった。

 

 

「スイッチ!」

 

 

「オォォォッ!」

 

 

 ドスッ!

 

 

 アスナとスイッチしてセンチネルにソードスキル『シャフト』を喰らわせる。迷宮区に入る前に練習したおかげで、跳躍後にすぐソードスキルの姿勢に入れるようになったのは大きいだろう。・・・連携は心地よいが、ここにジャンプを組み込むのは至難の技だろう。こういう場合は後退する時のみの使用に留めよう。

 

 

「スイッチ!」

 

 

「セイッ!」

 

 

 後方に飛んでキリトとスイッチする。ふとボスの様子が気になったので跳んだ高度を活かしてボスの方を向けば、なんともう最後のHPバーに入ってるどころか、半分を切っていた。その様子を見た俺はこのまま行けるかもしれないと思う反面、ある違和感(・・・・・)も感じた(・・・・)

 

 

 スタッ

 

 

「・・・・・・。」

 

 

「?どうした、ハイウインド。」

 

 

「いや、すまない。何か違和感があると思ったのだが、気のせいだろう。すぐにアスナのカバーに入る。」

 

 

 棒立ちのまま無言でコボルトロードの方向を向いていたためか、キリトがこちらに来て様子を伺った。特に気にするようなことでもないので、俺はいつでもスイッチできるようにアスナの元へと走った。

 ただ、キリトはそれを聞いて考え込むような姿勢を取っていた。

 

 

(違和感、だって?ベータテスターでもないアイツがボスに挑むのはこれが初めてのハズ。となると視覚的な情報か?いやだから、アイツはボスの姿を知らなくて・・・事前情報か?ならボスの細かい姿じゃなくて・・・武器?)

 

 

「どうしたのキリトくん?」

 

 

 ハイウインドとスイッチしてきたアスナがキリトに話しかける。キリトはハイウインドの感じた違和感、そして自身の考察に基づいてある質問をする。

 

 

「なぁアスナ、曲刀の刀身って真っ直ぐなものもあるのか?」

 

 

「はぁ?真っ直ぐな曲刀なんてそれもう曲刀じゃ・・・待って、なんで今そんなことを?」

 

 

「やっぱり、アイツの武器、曲刀じゃない(・・・・・・)!!」

 

 

 キリトがそれに気づく頃にはHPバーはすでに四分の一を切っており、コボルトロードは咆哮を上げ、その手に持った斧と盾を投げ捨てていた。

 

 

「下がれ、俺が出る!」

 

 

 そんなコボルトロードに向かって突き進むディアベル。それを見たキリトは止まるよう必死に呼びかけた。

 

 

「止まれディアベル!戻るんだ!」

 

 

「そんなに大声を出してどうした?確かに一人は危ないだろうが・・・。」

 

 

 センチネルを倒し終わった俺は叫ぶキリトに近寄る。スイッチに来なかったことに抗議しようと思っていたが、そうもいかないようだ。キリトはこちらに顔を向けると、一瞬だけ躊躇った後に—。

 

 

「ハイウインド、ディアベルを追ってくれ!このままじゃ取り返しのつかないことになる!」

 

 

「だから一体何だと・・・。」

 

 

「いいから行ってくれ!頼む!!」

 

 

「・・・了解した。」

 

 

 キリトの必死な訴えにより、俺はすぐさま駆け出した。低空ジャンプを繰り返すことで一気に距離を稼ぐ。途中ディアベルによって待機しているプレイヤーがいたが、流石に人一人分跳べはしないのでそこは多少強引に掻き分けた。そして、視界に映っているのがディアベルとコボルトロードだけになった時にようやく異変に気づいた。

 

 

 —コボルトロードの武器が情報と違う。

 

 

「ディアベル!避けろ、避けるんだ!」

 

 

「え—。」

 

 

 ようやく事態を呑み込んだのか、歩みを止めたディアベル。しかし、そこはまだコボルトロードが新たに構えた武器、野太刀の射程圏内であり、無慈悲な一撃がディアベルに降りかかる—。

 

 

「・・・ウォォォォッ!」

 

 

 ダァン!

 

 

「うわっ!?」

 

 

「グオォォォォ!!」

 

 

 ブオッ!ザシュ

 

 

 ディアベルの斜め後ろから跳躍し、その勢いでディアベル諸共野太刀の射程から逃れようとしたが、俺の脚に攻撃が当たってしまう。ゲームの性質上痛みは無いが強烈な一撃であることに変わりはなく、HPがごっそり削れると同時に体制を崩してしまった。不時着して地面に転がりつつも、なんとか射程圏内からは逃れられたようだ。

 そんな事態を目にして、固まっていたプレイヤー達が行動を開始した。

 

 

「・・・・・・い、急げ!早くポーションを!」

 

 

「ま、待て!俺は大丈夫だ!彼の方が危ない、早く・・・っ!」

 

 

 ディアベルが言葉を区切って息を飲む。その目は大きく見開かれており、他のプレイヤーも鬼気迫る表情をしていたため何事かと思えば、俺の近くにセ(・・・・・・)ンチネルがポップしていた(・・・・・・・・・・・・)

 

 

「グギャア!」

 

 

「っ!!」

 

 

 俺のHPバーは先程の一撃で赤にまで持っていかれ、比較的無事なディアベルやその周りに集まったプレイヤーとの距離も離れていた。更に言えば、俺とセンチネルとの間合いでは槍も振るえない。まさに絶体絶命の状況である。

 この距離ではポーションすら間に合うか怪しかったが、一つだけ。不確定ではあるものの確実に実行できる方法がある。

 

 

(・・・ジャンプなら、ジャンプであれば攻撃を回避しつつカウンターで隙を作り出せる。だが、今の俺ではできない。だからこうしてジャンプを利用した動きをしているんじゃないか。・・・無念だ。)

 

 

 成功どころか、まだ解決していない課題点もあるのにできるわけがない。そうして俺は迫り来る死に覚悟した。・・・だが、遠くからキリトとアスナが必死に近づいてきてる様を見て—。

 

 

「・・・まだだ。こんなところで、死んでたまるかぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 ヒュン、ガンッ!!

 

 

 センチネルが棍棒を振るう中、俺は勢い良く槍を振り下ろす。だが、その穂先の狙いはセンチネルではなく地面(・・)。そう、これは攻撃ではない、ただの下準備だ。

 前に話したと思うが、俺はリアルでは棒高跳びを(・・・・・)嗜んでいた(・・・・・)。つまり、これからやることはそういうことだ。

 

 

 バァン!

 

 

 槍を突いた勢いのまま飛ぶ。そも、棒高跳びという競技は長い得物を使うことにより通常では届かないような高さまで飛ぶ競技だ。そして、この世界ではステータスによって運動性能すら弄れてしまう。つまり、この二つが合わさることによって前のトールバーナ並みとは行かないまでも十分な高さを稼ぐことができる。

 ・・・これをジャンプというには前隙がありすぎるが、それでも今の俺がジャンプを成立させるにはこれしかなかった。こうして高く跳び上がった俺は、空中で槍の切先をセンチネルの頭へと合わせ、そのまま堕ちた。

 

 

 ズガァン!パリン

 

 

「グギャアゲッ!?」

 

 

 跳ぶ際の突きもあったのか、センチネルに当たった槍は砕けちり、ポリゴン片となった。しかし、方法は違えどジャンプのイメージにまた一つ確かな感触を感じた。・・・が、目の前に現実により、その幻想を捨てざるをえなくなった。

 

 

「グゲゲ・・・。」

 

 

「—あ。」

 

 

 ジャンプとは、攻防一体の神業である。その秘訣は高度。高く跳んで攻撃を躱し、その高さを持って敵を穿つ最高速の一閃。その一撃を喰らったセンチネルの体制は大きく崩れたものの、撃破・・・いや、HPバーの半分も削れちゃいない。そうだ、どんなにモーションを凝らそうが、俺が高く跳ぼうが、その勢いを利用して貫こうが、この世界ではただの(・・・)刺突(・・)だ。そんな単純なことに今更気づき・・・いや、認めたくなかったのだろう。どんなに頑張ってもあのジャンプに届くハズがない、と。

 新しく武器を取り出すヒマもないが、システムによる硬直などはないためすぐに動ける。だが、今の俺にそんな気力はない、なくしてしまった。センチネルの棍棒が高く振り上げられる。

 —その次の瞬間、閃光が走った。

 

 

「ハァァァァァァッ!!」

 

 

 ピシャアァ!

 

 

「ハイウインド!!無事か、今ポーションを!」

 

 

 アスナの突きによりポリゴン片へと返るセンチネル。アスナと一緒に走ってきたであろうキリトはこちらに駆け寄ってポーションを使う。間に合ったのだ、あの距離から。もしかしなくても、あのジャンプで生じた隙のおかげだろう。

 

 

「ハイウインド、大丈夫!?」

 

 

「・・・すまない、世話を焼かせた。」

 

 

「何言ってる!そうさせたのはオレだ・・・!本当に、本当によくやった!・・・本当に、生きててよかった。」

 

 

 感極まった声を出すキリト。だが今はボス戦の真っ最中。当然律儀に待ってくれるハズもなく、コボルトロードがこちらに近づいて来ていた。

 

 

「!・・・ハイウインド、悪いが先行っててくれ。アスナ、頼む!」

 

 

「わかった!」

 

 

「あ、おい!お前ら・・・!」

 

 

 俺が静止の言葉を出す前に二人はコボルトロードに向かって走り出す。俺も急いで予備の槍を取り出し、すぐに加勢しようとした・・・が。

 

 

「っ!!アスナ、引けぇ!」

 

 

 キリトがコボルトロードの剣を弾き、隙ができたところにアスナとスイッチしたが、なんとコボルトロードはすぐに体勢を立て直し、アスナ目掛けて野太刀を振り下ろしていた。

 この距離からでは間に合わない。せめて一撃で死なないよう願うばかりであったが、コボルトロードによる攻撃はアスナの付けていたフードにのみ直撃した。とはいえ、そんな攻撃を喰らったフードは耐久力がなくなり、長い栗色の髪があらわとなった。・・・何気に初めてだな。アイツのちゃんとした姿を見たのは。

 そんなことを思っているのも束の間、再度キリトがコボルトロードと切り合っていると、コボルトロードがまさかのフェイントを仕掛けてきた。

 

 

「ガッ!?」

 

 

「キリトッ!!」

 

 

 ドスッ

 

 

「ぐぉ・・・っ!」

 

 

 助太刀に入ろうとキリト達の近くまで来ていた俺は、コボルトロードの一撃によって吹き飛ぶキリトを受け止めようと試みた。しかし受け止めた瞬間、あまりの勢いに俺も吹き飛ばされてしまう。

 キリトのHPバーを見ると、すでに半分以下となっていたのですぐさまポーションを使おうとしたが、そんな余裕はないようだ。コボルトロードが追撃の構えに入っている。

 

 

「アスナ!キリトを頼む!」

 

 

「えっ、ちょっと!」

 

 

 キリトをアスナに預け、コボルトロードに向き直る。すでに野太刀は高く振り上げられており、今の俺の筋力でも弾けるかどうかはわからなかったが、それでもやるしかない。後ろにキリト達がいる以上、引くわけには・・・。

 

 

「うぅぅぅらあぁぁぁぁ!!」

 

 

 ガァンッ!!

 

 

「!!?」

 

 

 ビックリした。すごくビックリしたが、なんとか難は逃れたようだ。

 コボルトロードのとてつもなく重いであろう一撃を返したのは、同じく重量武器の一つである斧、それを扱うエギルのものであった。

 

 

「よし、A隊、B隊!F隊が体勢を整えるまでなんとしても時間を稼げ!C隊、いつでもカバーできるように!D、E隊!引き続きセンチネルの相手を頼む!もう一踏ん張りだ、油断せずに行けよ!」

 

 

『オォォォォォッ!!』

 

 

「・・・エギル、すまない。助かった。」

 

 

「礼なら後だ。早くアイツらに合流しろ。」

 

 

 エギルに急かされた俺は言葉ではなく軽く一礼することでその場を去り、キリト達の元へと向かった。

 

 

「キリト!回復は済んだか!?」

 

 

「!ハイウインドか。あぁ、おかげさまでな。・・・って、マズイ!」

 

 

 コボルトロードを抑えていたA隊とB隊が野太刀の一閃で陣形を崩される。その光景を見たキリトは、アスナと俺を差し置いて一人で駆け出す。

 

 

「届けぇぇぇぇ!!」

 

 

 ズバンッ!!

 

 

「グギャアオ!?」

 

 

 ドスン!

 

 

 キリトの放ったソードスキル『スラント』が炸裂し、コボルトロードがダウンする。そのままキリトは、追って来ていた俺とアスナに指示を出す。

 

 

「アスナ、ハイウインド!ラストアタック、一緒に頼む!」

 

 

「「了解っ!/了か・・・っ!」」

 

 

 アスナとハモりかけたが、先のコボルトロードが立ち上がってるのを見て躊躇する。アレでは先に動かれる。そう察した俺は—。

 

 

「すまない二人とも!先に行かせてもらう!!」

 

 

 バッ!

 

 

「!・・・わかった、アスナ!」

 

 

 跳ぶ、跳ぶ。いち早く駆けつけるために跳ぶ。すでにコボルトロードは起き上がる寸前。その前に動きを止める!

 さて、どうやってといったところだが、その方法は先程実跡している。ジャンプ(偽)だ。センチネルですら倒せないようなものではあったが、体勢を崩すには十分な衝撃を与えられることはわかった。であれば、ボスにだって通用するハズだ。

 槍を起点にして跳び上がる。加速しすぎたのか跳んだ方向は少し斜めってしまった。コボルトロードの頭はすでに持ち上がっており、この高度ではあまり衝撃を伝えられないだろう。だが、元より狙いは(・・・・・・)そこではない(・・・・・・)。狙いは—。

 

 

「喰らえぇぇぇぇッ!!」

 

 

 ドスッ!

 

 

「グオォオッ!!?」

 

 

 槍の着弾地点、それはコボルトロードの右手。これにより武器を持ち上げることができなくなったコボルトロードの動きはワンテンポ遅れ—。

 

 

「「ハアァァァァァァァァッッ!!」」

 

 

 ザシュウ!

 

 

「グオォォォォォォ—」

 

 

 断末魔と共に、コボルトロードの身体が弾けた。やったのだ。遂に—。

 

 

『ワアァァァァァ!!』

 

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・。」

 

 

「お疲れ様。」

 

 

「随分息が荒いな。大丈夫か?」

 

 

 片膝をついて座り込んでいるキリトに労いの言葉をかける。他にも、アスナやエギルがキリトの周りに集まっていた。

 

 

「見事な剣技だった。この勝利はアンタのものだ。」

 

 

「いや・・・。」

 

 

 キリトが否定する前にに周りのプレイヤーからも賞賛の声が上がった。それはそうだろう。コイツの指示や行動がなければボスを倒すどころか、死人すら出ていたことであろう。誰が何と言おうとMVPはキリトだ。

 と、そんな中—。

 

 

「なんでや!なんでディアベルはんを、ワイらを騙しとったんや!」

 

 

「・・・待て、なぜそうなる。」

 

 

 キバオウの突拍子もないような発言に反論しようとするが、キバオウは続けて捲し立てた。

 

 

「ソイツはボスの使う技知っとったやないか!最初っからその情報を伝えときゃ、ディアベルはんも、ハイウインドはんも死にかけずに済んだハズや!」

 

 

 周りがザワつき始める。確かに最初から知っていたなら伝えないのは不自然に見えるが、あの時のキリトの様子からしてアイツも想定外のことだったのだろう。コボルトロードのソードスキルに対応できていたとはいえ、俺はその顔を見ていたから違うと断言できるが、他のプレイヤーは・・・。

 

 

「・・・きっとアイツ、元ベータテスターだ!だからボスの攻撃パターンも全部知ってたんだ!知ってたのに隠してたんだ!」

 

 

「他にもいるんだろ!ベータテスターども、出てこいよ!」

 

 

 ・・・キリトがベータテスターなのは真実だ。だがキリトに限らず、ベータテスターだからというのを名目に責めさせる他のプレイヤーまで炙り出す必要はないハズだ。そう思った俺は、キリトの弁護も兼ねて前に出ようとするが、ここでまさかの人物が名乗りを上げた。

 

 

「・・・待ってくれ。他のベータテスターには非はない。」

 

 

「ディ、ディアベルはん。」

 

 

「すまない、キバオウさん。・・・聞いてくれ!()は元ベータテスターだ(・・・・・・・・・・)!」

 

 

『!?』

 

 

 ディアベルが、ベータテスターだと?いや、それならあの時単独先行したのもわかる。なるほど、ボスの攻撃を捌くのによっぽど自信があったのだろう。それがベータ通りであったならな・・・。

 

 

「俺はともかく、ハイウインドさんが死にかけたのは俺の一人よがりな行動からだ!もし責めるのなら、まず俺からだ・・・。」

 

 

「そ、そうは言っても、ハイウインドはんが救助に行ったのはアイツが命令したからや!結果的に助かったとはいえ、二人が危険な目にあったことには変わりない!」

 

 

「お、オレ知ってる!アイツ、MPKしてた!それでさっき、ハイウインドさんを自然を装って殺そうとしたんだ!」

 

 

「なっ・・・!?」

 

 

 とんでもない物言いに、俺は酷く動揺した。キリトがMPK(モンスタープレイヤーキル)だと?そんなことをするものか!そもそも、センチネルがポップしたのだって偶然に過ぎない。

 しかし、客観的に見ればそう見えてしまうため、周りのプレイヤーのザワつきがより一層大きくなる。

 

 

「待て!キリトはそんなヤツではない!あくまでそう見えただけだろう!」

 

 

「アンタ、よくそんなこと言えるな!死ぬところだったんだぞ!?」

 

 

「もしかしてアンタも元ベータテスターなのか?だから余裕持ってあんな動きができたんだろ!」

 

 

 まずい、話が拗れてきている。一個一個否定しようにも、対多人数なため口数が違う。それでもなんとか否定しようとしたが、そこにキリトの笑い声が響いた。

 

 

「ククク、ハハハ、フハハハハ!・・・元ベータテスターだって?あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな。お前らは知らないだろうが、ベータテスターに当選した1000人の殆どはレベリングのやり方知らないような初心者だったぜ。今のアンタ達の方がよっぽどマシさ。」

 

 

 ・・・な、なるほど、そこは失念していた。なにもベータテストに当選したからといって生粋のゲーマーばかりでは・・・待て、何故今になってそんなことを?

 

 

「でもオレはあんなヤツらとは違う。オレは他の誰も到達出来なかった層まで登った。ボスのカタナスキルを知ってたのは、ずっと上の層で刀を使うモンスターと散々戦ったからだ。他にも色々知ってるぜ、情報屋なんか問題にならないくらいな。」

 

 

 だから、何故今そんな情報を・・・!その言い方では濡れ衣を剥がすどころか・・・お、おい、そういうことか?

 

 

「な、なんやソレ。そんなん、ベータテスターどころやない。チートや、チーターや!そんなん!」

 

 

「そうだそうだ!」 「ベータのチーター、だからビーターだ!」

 

 

「ビーター、いい呼び名だなソレ。そうだ、オレはビーターだ。これからは元テスター如きと一緒にしないでくれ。」

 

 

 そう言いながらキリトは、恐らくLAボーナスで入手したであろう黒いコートを身につけた。

 そして、そのまま次の階層への階段を登る・・・前に—。

 

 

「あぁ、そうそう。オレとパーティを組んでたヤツらに礼を言わないとな。ありがとよニュービーのお二人さん。でも、あんなんで死にかけるようならもう組むのはヤメだ。精々二人で頑張ってくれよ。」

 

 

 言い終わると同時に視界左端からキリトとアスナの名前が消える。キリトがパーティを解散したのだ。やることを終えて今度こそ去ろうとするキリトにアスナ、そして俺が遅れて追いつく。

 

 

「「待って。/待てキリト!」

 

 

「・・・なんだ。もうパーティは解散したぞ。」

 

 

「アナタ、これからどうするの?」

 

 

「・・・お前らの知ることじゃない。ツライこともあるだろうけど、頑張れよ。」

 

 

「キリト、お前・・・。」

 

 

「お前達には伸びしろがある。もしいつか、信頼できる人からギルドに誘われたら断るなよ。ソロプレイにも、絶対的な限度があるから。・・・じゃあな。」

 

 

「ま、待て!お前は、お前はそれでいいのか・・・っ!!

 

 

 キリトが2階層への門を開き、去っていく。その背を見ながら俺は叫んだが、アイツが歩みを止めることはなかった。

 

 

「・・・・・・バカヤロウ。」

 

 

 顔を伏せて身体を震わせる。涙も流れ落ちた。ただし、一滴だけだ。

 俺はすぐさま顔を上げ、階段を降り始めた。

 

 

「ハイウインド?」

 

 

「・・・俺は攻略組に合流する。アイツは嫌われ役を買い、俺達に攻略組を任せた。期待に応えられるかはわからんが、やれることはやってやる・・・!アスナ、お前はどうする?俺は強制はしないぞ。」

 

 

「私は・・・。・・・私も攻略組に参加するわ。私自身のためにもね。」

 

 

「・・・そうか、なら行くぞ。」

 

 

 こうして、俺達の最初のボス戦は幕を閉じ、新たなスタートを切ることになった。・・・被害は少ないが、代償は高い。




 多忙で更新遅れました()
 一応原作通り、キリトはソロでやってくことになります。一方ハイウインドは攻略組に参加して攻略に貢献することになりますが、そこはいくつか描写を挟むだけでほぼカットします。次話は一気に何十層とか行ってる予定です。

 さて、それはそれとしてアンケートを取ることにしました!今後の展開に悩んだ結果、原作通りのルートで書いていくことにしたのですが、そうなるとフィリアやストレアを始めとした派生作品キャラの登場が無くなってしまうので、原作の話に派生作キャラを参加させるか、というアンケートです。
 先に言っておくと、一番多い選択肢しか採用しない、というのはありません。一定割合の票数を集めていれば複数採用も考えているので、是非投票にご協力お願いします・・・!

ホロウ・フラグメントに登場したキャラを出すか(リーファやシノンなどはそれぞれALO、GGO編にて登場予定)

  • 出す!
  • 出さない
  • シノンやリーファも出して!
  • それ以外の作品からも出せ
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