トレーナーに、なっちゃってるんだなぁ~コレが!   作:ゾルタンカワイイヨ

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まだこの作品が読まれてる事に驚きだぜ。


ザクⅡ MS‐06

「失敗作である俺が原石達を磨くトレーナーとして暮らすようになってせいぜい三年。それでニュータイプ、つまりは一端のトレーナーになれって夢見過ぎだよな? 進化や成長とはそんな簡単なもんじゃないぞ、理事長……」

 

 シンボリと出会った後に俺はとりあえず思考を切り替え、書類仕事を行っていた。まぁ簡単に言えば理事長の言い付けを守り、スカウトする子を書類のデータから探してたって訳だ。俺みたいな悪役顔のトレーナーには選抜レースなどでスカウトするなんて真似、出来ないからな…… 

 幸いな事に今年入って来た新入生以外の脚質などの基本的データやそれぞれの性格の特徴などは頭に入ってる。だけども今の次期、大体の優秀な子達はスカウトされ、専属のトレーナーに指導されてるかチームに活躍してるかのどちらかだ。それ以外の子も専門の教員達が受け持って指導を受けてそれぞれデビューを目指して頑張ってるだろうな。となると俺の頭に入ってるデータは基本使えない。よって俺がスカウトする生徒は新入生に絞って探すしかない……が、どうしたものか。

 

「……大変そうね」

 

 頭を捻り、書類の山で格闘していると突然お隣から声が。そちらへ目を向けると、赤い眼鏡がチャームポイントなレディーススーツに身を包んだ女性がファイルを片手に頭を抱えていた。

 

「お、おハナさんじゃぁーん。一体全体どうしたんだぁ?」

 

 彼女の名前は東条ハナさん。何気に俺と同期にトレーナーとなった正真正銘の最優秀と銘打てるほどの腕前を持った女性だ。彼女との仲は何と言うか……奇妙? 俺がやらかした時に庇ってくれるいい人なんだが……ヤケに目の敵にされるんだよなぁ、まるでライバル視されてるみたいだぜ。

 

「貴方が馴れない仕事に苦戦してると思って────」

 

 あ、ヤバイ。表情筋が珍しく言う事聞いて無くて滅茶苦茶悪役顔浮かべ、ニチャァって俺が笑ってるの手を取るように分かるぞぉ分かるぞぉ……ほら見て見ろ。おハナさんの俺を見る表情、やべ―奴を見る顔に……なってないな。むしろ心配する表情に変わってるんだよなぁーコレが。

 

「ハァ、その様子だと苦戦を通り超して手の付け所が分からないって感じかしらね……」

 

「ははっは。流石はおハナさん、分かっちゃうのか……コレが」

 

 パーンっと手に持ってた書類をデスクへ放り投げた後、降参のアピールをするとおハナさんはそのままゆっくりと俺の隣の席へ腰掛けるとその手にあった物を俺へ手渡、す──―ん? 何の書類だ??? 

 

「新入生で私から見て貴方が担当しても問題が無いと判断した生徒のリストよ。初めて受け持つ生徒なんだから」

 

 ファイルの中身を確認するとおハナさんの言う通り数十人が載っているだろう数枚の紙が存在し、それに載っているどの子も今年入って来た新入生だ。えっと何々……フロントラインちゃんにクロート・ジン、カタアシハイテナイちゃんね。俺の見覚えのない子ばかりで脚質も分からないから賭け事のようでワクワクするぜ────って、訳ねぇーよなぁー!!! 

 

「おハナさん」

 

「何よ、何か問題でもあるって言うの?」

 

「問題も何も、これじゃあ俺は道化だぜぇ?」

 

 確かにおハナさんのリストアップした子達は俺みたいなゾルタン・アッカネン(失敗作)でも問題無い子達ばかりだろう。彼女の目には俺も絶対なる信頼って奴をしている。けど、俺の腕前じゃ一定以上の実力までは育て上げる事は可能でもG1、つまりはトップ達が走る大会に出す事は不可能だ。先を見込めない組み合わせで未来が無数に広がる子の行く末を潰す行為はまさしくトレーナーを演じるだけの道化だ。そんなんじゃ俺が担当する子も可哀そうだし、何より俺が面白くねぇよなぁ? 

 

「だけど貴方、初対面の人間に対してスカウト出来るほど器用な人間でも無いでしょ」

 

「ハッハハハ!」

 

 何も言い返せなくて笑えてくるんだよなぁーコレが! 

 確かに教員の中で俺が()()全生徒から怖がられてるのは知ってるしこの顔や極偶に入る自動ゾルタンロールプレイが原因だとも知ってる。けど、それは在学中の生徒の話で合って初対面の新入生相手なら話は別なはずだ。十分イケるって……多分。

 

「それは過去の俺の話だ。三年も経験を積んだ今の俺なら問題ないなぁ!」

 

 俺の言い分をどう受け取ったかは知らない。けど、俺の言い分に何かを感じたらしく彼女は「貴方はそう言うと思ったわ」っと言い残し、何処かへ行ってしまった。うんー……何か勘違いを生んだ予感がするが、分からないな。ってかそう言うって……俺ってば彼女からどんな評価を受けてるんだ? 訳が分かんないぜ。

 

「ま、俺は運命の女神に見捨てられ続ける男だ。失敗はするだろうがリカバリーさえ間に合えば何とかなるだろ……」

 

 この時の俺はある意味楽観視してたかも知れない。いや、してたな。これから巻き起こる運命の女神達の悪戯を、俺にとって最大の屈辱である才能の塊である奴の存在を知らなかったんだからな。

 アレはその日の放課後の出来事。俺ははちみードリンクに対しリベンジするべくそれが売ってる売店へ急いでいた。そして、その時の俺は大変運が良かったんだよなぁ。廊下を歩けば毎度出会うナチュナルサイコパスウマ娘ことゴールドシップに珍しく出会わなかったし、食堂へ行けば毎度ある意味俺のせいで食欲のタカが外れたカサマツの地方から何とか俺が中央であるこのトレセンへと連れて来た生徒によって毎度売り切れにされてる中央トレセン名物564焼きを初めて食べる事が出来た。その他はシンボルなどのある種面倒な生徒とは一切出会う事も無く、放課後の時間帯まで何もトラブル無く有意義に過ごせたんだ。だからこそ、そのままの流れで俺は甘すぎと判断したはちみードリンクにリベンジする事に決めたんだよなぁーコレが。

 

「フン、フフン、フフフフフン~」

 

 思わずテンション上がって鼻歌を歌っちまう、もちろん選曲はモーツァルトだぜ。そうやって気分ルンルンで売店へ到着すると俺は予め暗記していた注文を口にする。

 

「「固め・濃いめ・多めで! ……ん?」」

 

 そして、奴と出会った。小柄な背丈にウマ娘としての特徴である人間には無い長い耳にフリフリな尻尾、そしてそれと同様のポニーテールを揺らす青い目のその子は俺と同様、同じ注文をした。特徴的な甲高い声はクソガキのソレ。あまり偏見の目で見たくはないが、何だか生意気そうなガキだな……サッパリいこうぜ。

 

「ちょっとおじさん! ボクが先に注文してたんだど!!!」

 

「お、おじ!?」

 

 俺はまだ二十代前半の若者だ! 

 ちょっとイラっとしたが俺は良心ある大人。これぐらいで腹を立てるほど軟じゃねぇ……ハズだ、多分。だから不自然に表情が歪んでたりしてもそれは今回の事に一切関係なからな。

 

「ッゴホン! お嬢ちゃん? 俺が先だ、とっと順番を譲りやがれ……」

 

「えぇー!」

 

 俺がやさーしく、やさーしく頼み込んだが譲る気配なんて一切見せず、俺の下から見つめたままジト目でこっちを見ている。

 

「だーかーらー! 僕が先だって言ってるでしょ()()()()!!!」

 

 これまで出会った子の無いタイプの子だなぁーコイツわ! 一触即発のこの状況。流石に見た目からまだ小学生ぐらいの子とこんな些細な理由で争うのはどうかと思うが、俺は我慢できないんだよぁーコレが!!! 睨み合って数分後、予想外の人物からの鶴の一声によりこの状況が一転する。

 

「あ、あのぉ……」

 

「なに?」「なんだ?」

 

「固め・濃いめ・多め。二つ、ご用意出来ました……」

 

 二人して見つめる先には売店の店員。その手には俺とこのクソ生意気なウマ娘が注文したはちみーが二本あった。こうして俺とこのクソガキとの一触即発の状態は終わりを告げたのだったんだよなぁーコレが。

 

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