AIと小説書いてみた結果   作:リボルケーノ

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第1話

しらなければよかったのに

 

 

 

 

暗い街を息を切らせながら走る女がいた。

 

 

 

 

きがつかなければ、しあわせだったのに

 

 

 

 

女が後ろを振り向くと、人の形になった狼を思わせる怪物が女性に鉤爪を突き立て、その首を噛みちぎる。

 

 

 

 

 

 

きずいちゃダメ。ぜんぶわすれて、みんなみんなミーンナ。

ここにいればしあわせなんだから。

 

 

 

 

 

だからね。

 

 

 

 

ここで楽しく暮らそう。何も思い出さないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「おはよう、センカ」

 

「ん、ああ、おはよう、ユキ」

 

彼、登校の為に家を出た『センカ』は幼馴染の『ユキ』と挨拶を交わすと、

 

「リナもおはよう」

 

「ええ、おはよう、リナ」

 

二人はもう一人の幼馴染へと声を掛ける。彼女からもおはようと返事を返され、三人で登校する。

 

昨日の夜の番組の話をしながら登校する中、ユキが時間を見て急がないと危ない時間になってしまい、三人で走る事になるも、運動が苦手なユキの手を引いてセンカが走る。

 

息を切らせながら走るセンカ達だったが、何とか始業のチャイムがなる前に教室に飛び込むことが出来た。

 

手を繋いでいるセンカとユキを揶揄うクラスメイト達とそんな二人の姿を苦笑いで見るリナ。

それはいつもと変わらない日常の光景だった。

 

「リナ、お前からも……」

 

リナの方に振り向いてみると、一瞬だけ彼女の姿にノイズが走ったように見えた。

 

「? どうしたの、センカ?」

 

そんなセンカの様子を不思議に思ったのかユキがそう問いかけてくる。

 

「えっと……何でも、ない」

 

ユキの問い掛けにそう答えつつも、センカは見間違えと思ってそれ以上は考えないようにしたが、何故か先程の一瞬の光景が彼の心に引っかかる。

 

何だったのだろうかと思いながら席に着くと、担任が教室に入ってきてホームルームが始まる。

 

 

 

ー鍵……を探して……ー

 

 

 

「っ!?」

 

ふとそんな声が聞こえてきた瞬間、顔を上げると黒板の前に立つ教師が授業を進めていた。

夢でも見ていたのかと思いながらも、立ち上がらなくてよかったと思う。

 

(居眠りでもしてたのかな……? 変な声が聞こえてきた……)

 

そこまで考えると、手元にあるノートに視線を移す。取り敢えず、寝てしまったのは一瞬だった様子で、手元のノートには黒板の内容が書かれているが、それ程黒板の内容との差は無い様子だ。

ペンを取った所でセンカの思考が止まる。ふと、違和感を感じてしまったのだ。

 

(さっきまでホームルームが始まった所じゃなかったか?)

 

 

 

ーダメー

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

チャイムの音が聞こえると教師が教室から出ていき、教室に騒がしさが戻ってくる。午前の授業も終わり、待ちに待った昼休みだ。

ふと空腹を覚える。もう昼なのだから仕方がないなと考えながら、センカは伸びをする。すると隣に座っていたユキが自分の方を見つめている事に気づく。

 

「何か用か?」

 

「あ、ごめんなさい。ちょっとぼぉってしていたわ。それより、お弁当一緒に食べましょ」

 

ユキからの誘いに断る理由もなく、センカは二つ返事で了承する。彼女は鞄の中から可愛らしいピンク色の布に包まれた弁当箱を取り出す。

 

「はい、センカのお弁当よ」

 

「ありがとう。リナは今日は先に食べたんだな」

 

「えぇ、センカが来る少し前にね。ところで、センカ。今日のおかずは何だと思う?」

「ん、そうだなぁ……卵焼きとか、唐揚げあたりじゃないか? 結構定番だし、外れはないと思うぞ。あとは、タコさんウインナーとかか?」

 

「あら、残念。正解はその全部よ。今朝作ったの。私が作ったのだから美味しいのは保証するわ。特にこのハートの形に切ったのが自信作なの!」

 

「へぇ、凄いな。よし、早速いただきます」

 

包みを開けると中には色とりどりなおかずが並んでいる。

まず箸を伸ばしたのは鶏のからあげ。

サクッとした衣と噛むと広がる肉汁の旨味を堪能しつつ、次はウインナーへと手を伸ばす。

しっかりと下処理をされているようで、ぷりっぷりの食感が伝わってくる。

そして最後にタコさんの形のウィンナーを食べる。

 

「うん、普通にうまいな。料理得意なんだな、ユキ」

 

「そ、そうかしら? べ、別にこれくらい普通よ……」

褒められたことが嬉しかったのか、頬を少し赤らめるユキ。その仕草はとても愛らしく、センカも思わず笑みを浮かべてしまう。

 

(こうして見ると本当に普通の女の子だよな……)

 

センカはそんな事を考えながら、ユキの方を見る。しかし、彼女の表情が突如として険しくなる。それと同時に彼女の耳には誰かの声が聞こえてくる。それは、センカにしか聞こえていないようだが、明らかにユキではない別の声が彼女の頭の中で響いている。

 

 

 

 

ー鍵……探……ー

 

 

 

 

「っ!?」

 

「どうしたの、センカ?」

 

「いや、何でもない……。急に耳鳴りがしてな……大丈夫だ」

 

「そうなの……? あまり無理しないでね?」

 

心配そうに見つめる彼女に笑顔で答える。

先程の謎の声は一体何だったのだろうか。

まさか、またあの夢のような出来事が起こるというのだろうか。

センカは心の奥底に不安を抱えつつ、午後の授業に臨むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

センカはいつも通り部活には参加せず帰宅しようと昇降口に向かっていると、どこからか歌声が聞こえてきた。

透き通るような美しい声。

どこかで聞いたことがあるような気がするが、思い出せない。

しばらく歌っていると、彼女の声が止まる。

センカは声の主を探し始める。

彼女がいた場所は屋上に続く階段の踊り場。そこにいたのは一人の少女。

銀色の長い髪を揺らしながら、彼女は窓の外を見つめていた。

センカは彼女に近づくと、声を掛ける。

 

「綺麗な歌だな。誰の歌なんだ?」

 

「……あなた、誰ですか? 私の邪魔をしに来たんですか?」

 

「いやいや、俺はただ歌が上手い奴がいたから見てみたくてな。それにしても、いい歌だな。なんていう曲なんだ?」

 

「……曲名はありません。この曲は私が生み出したものなので」

 

「オリジナルってことなのか。でも、どうしてこんな所で歌ってたんだ?」

 

「……ここが一番落ち着く場所だからです。それともう一つ理由があるとすれば……私はここに居なければならない存在なのです。それが、私の役割だから……」

 

「……?  よくわからないが、お前が嫌じゃなければたまにここで聞かせてくれないか?」

 

「えっ……?」

 

「ダメかな?」

 

「いえ、構いませんけど……」

 

「ありがとう。それじゃあ、今日はこの辺で帰るな。明日もまた来るよ」

「はい……」

 

センカはそう言ってその場を去る。

彼女がどういう存在であるのか、何故自分がこの世界に呼ばれたのか。

疑問が尽きることはなかったが、今は深く考えないようにしよう。

きっと、何かわかる日が来るはずだ。

 

「さて、家に帰るとするかね」

 

センカは小さく呟くと、帰路に着くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の昼休み。

 

センカは昼食を食べ終えると、すぐに教室を出ていく。

 

向かう先は屋上に繋がる階段。

昨日の彼女の歌がもう一度聞きたくなって、つい足が向いてしまったのだ。

 

「ふぅ、やっぱりここは静かだな」

 

扉を開けると、そこには誰もいなかった。

どうやら、まだ来ていないようだ。

センカは手すりにもたれかかるようにして座り込む。

すると、徐々に眠気が襲ってくる。

まだ授業が始まるまで時間もあるし、少し寝ようかと思ったその時だった。

 

「あら、センカじゃない。珍しいわね、ここで会うなんて。隣座ってもいいかしら?」

 

突然背後から声をかけられ、振り向くとユキが立っていた。

 

センカは慌てて立ち上がる。

 

「ゆ、ユキ!?  びっくりするじゃないか!  心臓が飛び出るところだったぞ!」

 

「ごめんなさい、そこまで驚くとは思わなかったわ。ところで、なんでそんなに顔が赤くなってるの? もしかして、風邪ひいてるんじゃないわよね?」

 

「そ、それは違う。大丈夫だ。それより、ユキこそ俺に用があったんじゃないか?」

 

「うん、実はね。ちょっと相談したい事があるの。今度一緒に遊びに行かないかしら?」

 

「ふぅ、やっぱりここは静かだな」

 

扉を開けると、そこには誰もいなかった。

どうやら、まだ来ていないようだ。

センカは手すりにもたれかかるようにして座り込む。

すると、徐々に眠気が襲ってくる。

まだ授業が始まるまで時間もあるし、少し寝ようかと思ったその時だった。

 

「あら、センカじゃない。珍しいわね、ここで会うなんて。隣座ってもいいかしら?」

 

突然背後から声をかけられ、振り向くとユキが立っていた。

 

センカは慌てて立ち上がる。

 

「ゆ、ユキ!?  びっくりするじゃないか!  心臓が飛び出るところだったぞ!」

 

「ごめんなさい、そこまで驚くとは思わなかったわ。ところで、なんでそんなに顔が赤くなってるの? もしかして、風邪ひいてるんじゃないわよね?」

 

「そ、それは違う。大丈夫だ。それより、ユキこそ俺に用があったんじゃないか?」

 

「うん、実はね。ちょっと相談したい事があるの。今度一緒に遊びに行かないかしら?」

「へぇ、ユキが誘ってくれるなんて嬉しいな。もちろんOKだよ。どこに行くんだ?」

 

「よかった。なら、水族館に行きましょう。チケットも用意してあるの」

 

「おお、楽しみだな。ちなみに何時から行くんだ?」

 

「明後日の日曜日、朝9時に駅前集合にしましょう。遅刻しないでちょうだいよ。それじゃあ、また日曜日に会いましょ」

 

「ああ、わかった。約束な」

 

二人は笑い合う。

その光景は誰が見ても仲の良い恋人同士にしか見えないだろう。

だが、センカは感じ取っていた。自分の正体を知られてはいけない。

もし、知られた時、彼女はどんな表情をするだろうか。

不安が募っていく中、放課後を迎える。

 

そして、その日の帰り道。

センカは一人で帰っている途中、急に声をかけられた。

 

「お兄さん、ちょーっといいかなぁ?」

 

「ん?」

 

振り返ると、そこにいたのは小柄な女の子。

綺麗な黒髪をツインテールにした少女。

 

「君は確か、リナの妹さんの……」

 

「はい、妹のリカです。よろしくお願いしますね♪」

 

リナは笑顔を浮かべながら、手を後ろに回す。

 

「それで、一体俺に何か用事でもあるのかい?」

 

「はい、あのですね。私、どうしても欲しい物があるんです。だから、それを買えるだけのお金を貸してもらえませんか?」

 

「……悪いが、俺は君に貸せるような金を持っていない。他を当たってくれないか?」

 

そう言って立ち去ろうとすると、彼女の手がセンカの腕を掴む。

掴まれた瞬間、ゾッとする程の悪寒が全身を走る。

 

(なんだこの感覚……。まるで、蛇に睨まれているみたいだ)

 

センカはすぐに腕を振り払うと、距離を取るように一歩下がる。

 

「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ、すごい反応速度。さすがですね。でも、それだけで済んで良かったと思いますよ。だって、今の私は普通の人間ではないのですから」

 

「な、何を言っているんだ。意味がわからないぞ」

 

「まあまあ、別にいいんですよ。ただ、忠告だけしておきます。これ以上私の邪魔はしない方がいいですよ。次は本気で殺しにかかりますから」

そう言い残し、その場から離れる。

センカは呆然としながら、その後ろ姿を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、学校で休み時間にセンカは一人教室で読書をしていた。

 

すると、いきなり肩に手を乗せられる。

ビクっと体が震えると同時に振り向くとそこにはリナがいた。

 

昨日の事もあり、少し警戒してしまうがすぐに冷静になる。

 

「なんだよ、脅かすなよ」

 

「驚かせちゃった? ごめんね~。ところで、今日は一人でいる事が多いけどどうしたの? いつもはユキと一緒にいるじゃない。喧嘩でもしたの?」

 

「そういうわけでもないんだけど、たまには一人で本を読むのもいいと思ってね。それより、ユキの事を気にしているって事はリナの方もまだユキに話しかけていないのか?」

 

「え、なんでそんな事を聞くの?」

 

「いや、最近二人で話しているところを見てないなって思ってさ。ほら、前はよく一緒にいたじゃないか。それに、最近は二人とも様子がおかしいし、どうかしたのか?」

 

「そ、それは……」

 

リナは何やら口籠もり始める。

 

よく見ると顔色が悪くなり始め、額からは汗が流れ始めている。

 

「おい、大丈夫なのか? 体調が悪いなら保健室に連れていくが……」

 

「……。平気、問題無いわ。心配してくれてありがとう。それと、ちょっと今は他の人と話したくない気分なの。今日の放課後、時間あるかしら?」

 

「ああ、特に予定はないけど……」

 

「それじゃ、また後で連絡するわ。待っていて頂戴。ううん、それよりも私が迎えに行くべきかしら……」

 

ボソッと言い残した言葉は聞き取れなかったが、とりあえず、今は放っておく事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その日の夜。

 

家に帰宅したセンカは部屋で着替え終わる。

 

リビングに入ると、既に食事が用意されており、椅子に座って待っている。

 

両親は既に寝てしまっているようで、テーブルの上には三人分の食器が並べられていた。

 

家族の中では母親が一番早く起きるのだが、父親が遅いため、朝食の準備をするのはセンカの仕事となっている。

 

料理を並べ終えると、母親を起こすために二階へと向かうのだった。

 

 

 

 

***

 

<三人称視点>

 

夜になり就寝の時間となると、部屋を抜け出し玄関に向かう。時計を一瞥して時間を確認すると、もうすぐ約束の時間だ。すると、センカの家の扉にノックの音が聞こえる。

 

扉を開けると、そこに立っていたのは制服のまま来たらしいリナの姿があった。

 

「こんばんは、センカ。こんな遅くに来たりして迷惑だったんじゃないかしらん」

 

「……正直驚いたよ。まさか、本当に来るとは思わなかったからな。それで、一体何の用件かな。明日も学校があるし、あんまり長居はできないと思うが」

 

センカはリナを家の中に入れる。

 

(そういえば、誰かを連れてくるのは初めてかもしれないな)

 

そのまま自室に案内し、向かい合って座る。

 

リナはきょろきょろと辺りを見渡していたが直ぐに落ち着いた様子に戻るが落ち着きが無いように見えたのでセンカから切り出す。

 

「俺の家に来るのは珍しいか?」

 

「初めてだと思うわ」

 

それから数分の間沈黙が流れるが、意を決したようにリナが話しだす。

 

「ねえ、センカはユキの事どう思う?」

 

突然予想外の質問が来たせいで思わず変な声が出そうになるのを抑えるが、動揺してしまった。

 

「ど、どうとはどういう意味なんだ。もっと具体的に言ってくれないか? 主語が抜けているぞ!」

 

センカはどうにか誤魔化そうとするが全くうまくいかないようだ。リナはそれを見て呆れてしまう。

 

「はぁ~、やっぱり無理よね。はっきり言うしかないようね。私達の声が聞こえているのはあなただけみたいだし……」

 

リナは立ち上がって窓の近くまで行くとカーテンを開けながら続ける。月明かりによって照らされた彼女はとても幻想的で美しかった。

 

「センカは電脳世界って知ってるかしら?」

 

センカは不思議そうな表情を浮かべていた。目の前の少女、リナの言っていることがよく理解できなかったからだ。そんな彼女の反応を見たのか、リナは自分の言葉足らずに気付いたようで、申し訳なさそうにして口を開く。

 

「ああもうっ! こう言えば良かったのよ!私が言いたいのはこうゆうことなんです!!」

 

急に大きな声を出し始めた彼女に驚きつつも、彼女の話を黙って聞くことにした。

 

そして話が終わるとセンカはやっと合点がいったという感じで話すのである。

 

「なるほど、お前の声が聞こえる理由とか今までの出来事の原因は全てそれが原因だったというわけなのか……」

 

センカは少し考えるような仕草をして、再び話しかけてくる。

 

「で、その電脳世界っていうのはどこにあるんだ。この世界とは違う場所があるなんて俄かに信じられないが……」

 

センカの反応はある意味で予想通りだった。だが、リナはどこか不安げな顔をしているように見えるのは気のせいでは無いだろう。

 

「……分からないの。その場所が何処にあって、どうやって行けばいいのか全く検討がつかないの。でも、探さないで諦めるつもりはない。だって私は見つけなくちゃいけないもの。絶対に、必ず見つけるの」

 

リナは真っ直ぐな目でセンカを見るが、センカの目はどこか遠くの何かを探し求めているかのような虚空のような目をしていた。まるで、彼女ではない別の何かを見ているかのように……。

その時、センカが口を開こうとする前にリナの言葉で遮られるのであった。

 

「だけど、一人ではとても難しいの。だからお願いです……一緒に来てくれませんか?」

 

それは懇願する少女の目だった。だが、すぐにさっきまでの力強い意志を感じる目に切り替わるのをセンカは見た。

 

「……分かったよ」

 

***

 

朝になり、センカはいつもより早く目を覚ました。昨日の事を考えるとあまり眠れなかったのだ。

 

あれからセンカはリナの話を聞きながら考えていたのだが、どうしても考え込んでしまう事がある為だ。

もちろんあの話は半分ぐらいしか信じていなかった。だが、彼女の真剣な顔つきを見ると嘘だとは思えなかった。

それに、何故自分の家に来たのかという疑問も残っていた事もあり、結局センカは彼女と旅する事に決めたのだった。

 

(学校に行く時間はまだあるしな。もう少し寝ていても大丈夫そうだ)

 

センカは二度寝に入ろうとするがまだ眠気が残っていて瞼を閉じるのにも時間がかかってしまい、また、途中で起きてしまった。

そこでふと思うのがユキの存在であった。彼女がもし今ここにいたらどんな事を言っただろうかと考えると自然と笑みがこぼれた。

すると、部屋のドアをノックして誰かが入ってきた気配を感じたのでそちらへ視線を向けるとその人物を見て驚いた声をあげる。

 

「わあっ!? り、リナ!!一体何をしているんだ!」

 

センカは慌ててベッドから降りて距離をとるが、リナは気にせず部屋の中に入ってくる。

 

「別に何も無いけれど? それよりもおはようセンカ♪」

 

笑顔で挨拶をするリナであったが今のセンカにはそんな余裕は無い。

 

「なあ、なんの用事で来たんだよ。俺はもう着替え終わるんだけど……」

 

だが、返事は返ってこない代わりに近づいてくる足音が聞こえてきたので振り向くと目の前にまで迫ってきており、驚いて後ずさるが、すぐ壁に背中をぶつけてしまいこれ以上下がる事ができなかった。

 

そしてリナはセンカの顔のすぐ横に両手を置いて壁ドンするような体勢になるので逃げ場を完全に失い、心臓はバクバクとなり始める。

彼女は無言のままジッと見つめるだけなのでセンカは何も言うことができないでいる。

沈黙が続く中、ようやくリナは口を開いた。

 

「ねえセンカ。私の話を聞いてくれたよね……」

 

先程とは違い声色が低いように感じるが、それが逆に彼女の雰囲気を怖ろしいものにしていた。

 

「ああ。確かに聞いたけど。お前のその話を本当に信用できるかどうかは分からないぞ。まだ、完全に信じる事は出来ない。でもな、一つ聞かせてほしい。どうして俺なんだ? もっと他の奴じゃ駄目なのか?」

 

センカは質問に対しての答えを待つが、いつまで経ってもその言葉が出てきそうもない。痺れを切らすようにして再び問いかける。

 

「おい、聞いてんのか。それともなに

か言えない理由でもあるのか。まあいいや、それでどうなんだよ?」

 

するとリナは観念したかのように話す。しかしその内容は信じられないものばかりであった……。

 

「理由は2つあるの。1つ目はセンカの力が関係しているの。センカだけ私の声が聞こえるのは、私がセンカの事を認めた証なの」

 

いきなりで訳がわからなかったが、とりあえず最後まで聞く事にする。

 

「どういう意味だよ?  1つ目の力とは……まさかこの声のことか……っ!!」

 

……そう思った瞬間、突然頭に激痛が走り、思わず頭を押さえてしまう。

 

「うぐぅ……がぁは!!!  頭が割れるようにいてぇえー! なんじゃこれ!!」

 

あまりの激しい痛みに耐えられずその場で倒れ込んでしまう。

 

「セ、センカ!?  ど、どうかしたの!! しっかりしなさいよぉおおお」

 

リナの叫びもセンカの耳には入って来なかった。やがて頭痛が収まるが、意識が遠退いていた。

 

気が付くとそこは真っ暗な空間だった。

 

ここはどこだと思ったその時、背後で光が差し込むような感覚を覚えるので後ろを振り返る。そこには黒い髪のショートヘアで右側に赤いメッシュがあり、ツリ目が特徴的な少女が立っていた。少女がこちらに向かって微笑む。

その姿を見た時、センカは全てを理解した。自分はまた彼女に会えたのだと。センカにとって彼女は初めてできた大切な友達なのだ。だからこうして夢の中で会う事ができる。これが自分だけに許された特権である。この時だけは彼女はいつも通りの元気な姿に戻っていた。だが、次に放たれたのは残酷な一言であり、それは現実へと引き戻される事になる。

 

『私はね。本当は君の事を憎んでいるんだ』

 

今まで見せた事の無い冷たい視線を向ける彼女を見て背筋は凍りついた。

 

次の瞬間、目が覚める。

 

起き上がって自分の部屋を見渡すが特に変わった様子は無い。

何が起きたのか全く理解できない。

 

センカはあの時に見たものが幻覚であってほしいと思いながら学校へ行く準備をする。今日は土曜日だが部活があるので朝早くから登校しなくてはならない。

 

自転車で通学路を走り抜けている間ずっと同じことを考えていた。

あれはいったいななんだろうか。

 

夢のはずなのに妙なリアルさがあった。

 

でも、何故だか無性にユキに会いたいと思ってしまった。

 

今すぐに会いたいと願ったのは生まれて初めてのことかもしれないが学校に着いたらまず最初にリナに相談してみよう。

 

学校に着き、教室へ入ると既に何人かの生徒が集まっており、その中にはもちろんユキの姿もあった。センカも彼女の元へ行き、挨拶を交わすことにする。

 

「おはよう。昨日は急に帰ったけど何かあったの?」

 

少し心配そうな顔を向けて聞いてくる。

 

やっぱり可愛いな。それにしても俺ってそんな顔しているように見えるのか。

 

センカは何でも無いと言いかけたがその言葉を途中で止める。

今は思い切って相談に乗ってもらうべきだ。

 

俺は先程起こった出来事を話すことにした。

 

「実はな……」

 

(ふふん♪ やっと話してくれたわ。これで私のミッションはコンプリートっと)

 

リナはこの機会を逃さずにすぐさま行動に移す事にしたようだ。

 

(センカに寄生しているバグを見つけ出すにはどうすればいいのかしら。センカの話を聞く限りじゃその声は確かに聞こえてきたみたいだし、私にも聞こえるのかな?)

 

リナは試しにセンカと同じように目を閉じ、精神を集中させる。

 

すると、リナの耳からノイズのような音が聞こえてくる。

 

しかし、これは普通ではない。

よく聞くとこの音は一定のリズムで刻まれており、まるで機械のように一定間隔で音を鳴らし続けているのだ。明らかに人間ではなく、コンピュータの音に違いないと判断したリナはその正体を確かめるべく音が鳴る方へ近付く。

そして気が付いた……。音の出所は自分の真下だという事を……。

真下に目線を合わせるようにしゃがみこみ、そいつを両手で捕まえる。

こいつは……ただのゴミじゃない!! リナは瞬時に悟ってしまった……そう思っていると一人の男子生徒が話しかけて来た。

 

「おい! なにしてんだよ」

 

声を掛けられた事で我に帰るが、手を離すわけにもいかずそのまま立ち上がる事にした。

 

「あっ……ごめんなさい!」

 

つい反射的に謝ってしまうほど驚き、内心焦っていた。

な、何を考えてたの? まさかこっちが現実世界だなんて言い出さないでしょうね!?……でも待ってよ。ここは電脳世界、つまり向こうの世界が本物なのよね。

 

なら、一体どっちが正しいと言うつもりなのかしら。

目の前の男子生徒はこちらが何も言わないから怪しんでいる様子だった。そこでハッとなる、いくらなんでも黙りすぎたと思ったからだ。

 

とにかくここを離れようとセンカの元へ戻る。

 

幸いなことに男子はそれ以上追及してくる事はなく、興味を失ったかのように離れて行ったので胸を撫で下ろす。

 

センカの方を見ると不思議そうな表情を浮かべていた。

私はあなたを助けたかっただけなのに、どうしてこんなことになるのか意味が分からなかった。

 

その時、ユキの声が響く。

 

『センカ』

 

(っ!? ユキの声がする。しかも、凄く近くから)

 

センカは急いで振り返るとそこには誰も居らず、空虚が広がるだけだった。

どういうことだろうと思いつつもユキの声が頭に響き渡る。

 

でも、今度はリナの時とは違ってしっかりと頭の中で言葉として認識できたような気がする。これが自分の力なのだろうかと考えていると再び声が聞こえる。

 

センカは夢中になって呼びかけに応じるよう念じるのであった。

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