【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第10話 伝播呪殺ー参ー

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『天与呪縛』によるフィジカルギフテッド。

かつて禪院甚爾が得ていた『それ』は、呪力の一切を持たない代わりにあらゆる呪術への完全耐性を実現していた。

 

そして、その性質の一部は加茂鶫にも受け継がれている。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「まったく、酷い臭いだ」

 

ーーブジュッーー

 

 

攻撃を受けながらも、私は呪霊へ手を伸ばし、奴の腹に風穴を開けた。呪霊はそのまま霧散する。

 

 

「鶫ちゃん!」

「鶫!」

 

 

私の名前を呼び、駆け寄ってくる2人を手で制する。私の様子を見て、2人は察してくれたようで、私から少し離れたところで止まってくれた。

 

 

「大丈夫、なのカ……?」

 

 

メカ丸の言葉に頷く。多少の不快感はあれど、痛みや不調は感じられない。動きに支障もないようだった。

 

 

「どうやら、私にこの類いの呪いは効かんらしいな」

 

 

本当に我ながら不思議だ。呪力も術式も全くないのにも関わらず、呪霊は見えるし、呪霊を攻撃することもできる。その上、呪いへの耐性もあるときている。

『天与呪縛』による肉体の超強化。話としては知っていたが、これほどまでとはな。

それにしてもこれは嬉しい誤算だ。これならば、呪力が消耗した2人に代わって、前線を張ることができる。

 

 

「本当に……大丈夫……?」

 

「ん?」

 

 

今後の戦い方を考えている私に、霞はそんなことを聞いてくる。

 

 

「問題ない。この通りだ」

 

「……本当に?」

 

「あぁ」

 

「……万一、辛くなったら、いつでも言ってください」

 

 

何ができるわけでもないですけど。

そんな風に霞は自嘲気味に笑う。

そんなことはない。その心遣いが嬉しいのだ。そう言って、彼女の頭を撫でようとして止める。なにやら殺気を感じたのは……気のせいか?

まぁ、いい。

 

 

「霞、メカ丸。少し相談があるのだが」

 

「なに、鶫ちゃん?」

 

「この呪霊の対処法をひとつ思いついた。多少危険だが、私を信じて乗ってもらえるか?」

 

 

2人は顔を見合わせた後、静かに頷いた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ーービシャッーー

 

 

奴らの攻撃は私には通じない。だが、呪いを無効化できる上限量が分からない以上は、極力避けることにした。

戦闘の方針としては、私が呪霊の気を引き、霞が『抜刀』で仕留める形になる。これならば、霞の呪力と体力も最低限で済むからだ。最悪、あの液体が多少かかるのは問題ないだろう。あとは長期戦。祓い続け、その時が来るまで耐えるだけ。

 

 

「霞!」

 

「うん!」

 

ーーブンッーー

 

 

私が伏せたその瞬間に、私の頭上を刀が通り、呪霊を切り裂いた。一見危険な連携だが、ここまで何度もやって、その精度が上がってきている。

 

うむ。

やはり彼女は強い。前に本人から聞いた話だが、シン・陰流の人間がスカウトする程には才能がある。適応能力が高いのだろう。事仲間との連携においては、彼女よりも等級の高いメカ丸や憲紀よりも恐らくその能力については上。

こうして、この戦闘中にも私の動きを先読みし、合わせてくれる。

 

 

「ぜひ一度、彼女の戦闘力を直に知りたいが……」

 

「なにか、言いました!?」

 

「いいや! このまま狩り続けるぞ」

 

「うん!」

 

 

ーーーーメカ丸視点ーーーー

 

 

俺は三輪たちと離れ、ひとりで建物の外へ出ていた。

女子2人を置いていくのは気が引けたが、鶫によればこれは俺にしかできないことだという。

鶫の話を信じるのであれば、恐らくこの辺りーー

 

 

「! あっタ!」

 

 

呪霊がいた建物内よりも圧倒的に呪いの気配が濃い場所。

病院の裏手にあるこじんまりとした建物というほどには大きくはない場所。その中から一際濃い呪力を感じていた。

 

 

「最初の調査段階で見つからなかったのハ、人が建物に入ることで発動する術式だからカ」

 

 

それならば、鶫の話とも辻褄が合う。

鶫の仮説によると。

この呪いの真相は呪霊単体による呪殺ではない。

特定の呪霊がその配下を増やし、呪いの触媒となる人間に伝播させるのではない。本質はもっと別。

 

呪いは、この『建物』自体だという。

 

『建物』自体の呪霊化など、俺には聞いたことのない話だが、鶫はその事例を数件知っており、その対処法も心得ていたようだった。

現状、それ以外に手がなく、ジリ貧になっていくのならばと俺と三輪はその策に乗った。

 

 

「…………本当に彼女ハ……何者なんダ?」

 

 

準備をしながら考える。

憲紀の従姉妹。記憶喪失の少女。呪力のない俺とは真逆の『天与呪縛』。

要素だけは理解できる。けれど、何かその根底に何かがある気がして……いや、今は止めておこう。

ちょうど準備も整った。この雑念ごと吹き飛ばす。

 

 

 

「『三重大祓砲(アルティメットキャノン)』」

 

ーーゴゴゴゴゴゴゴゴッッーー

 

 

 

俺の放った『三重大祓砲』は、目の前の呪力の濃い建物と廃病院の一部を吹き飛ばした。

これでいいんだろう、鶫。

俺は反動で少々がたつく体をどうにか動かして、三輪たちの元へ向かった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

メカ丸の最大火力による砲撃の轟音を聞いた時には、会敵していた呪霊が瞬時に塵と化していた。

どうやら成功したようだ。流石はメカ丸。頼りになる友人だ。

 

 

「終わった……?」

 

「あぁ、メカ丸がキッチリ仕事をしてくれた。これで祓えたさ」

 

「よ、よかったぁぁ……」

 

 

力が抜けたのかその場にへろへろとヘタリ込む霞。先ほどまでの刀を振るう彼女とは大違いの雰囲気である。

 

 

「煤がつくぞ」

 

「あ、うん」

 

 

差し伸べた手をとる霞はそのまま立ち上がり、汚れた服を軽く払う。私もそれに倣い、服を払った。

 

 

「それにしてもよく分かったね。建物自体がひとつの呪霊だったなんて」

 

「偶然知っていただけだ。私なんかの知識でも役に立ってよかったよ」

 

「私なんかって……謙遜なんてしなくていいのに」

 

「いや、逆に霞には助けられた。よく私の動きに合わせてくれた。お陰で随分動きやすかった。才能があるな、霞は」

 

「え、い、いやぁ……それほどでもないですよぉ」

 

 

そんなやりとりをかましつつ、私たちは『生得領域』が解除されたその病院の階層を下がっていく。やがて、病院の入り口の辺りに、人影が見えた。

メカ丸だ。

その姿を見て、私と霞は駆け寄っていくのだった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

憲紀が生還したことを受けて、加茂家は動いた。

本来ならば、次代当主が呪いに侵されたという話は、御三家にとって汚点以外のことではないんだろう。

だが、呪いをもたらしたのが、それなりに有名だという私の縁談相手の術師だというのだから、多少加茂家の名に傷がつくことは回避できたのだという。

その代わりに、例の縁談相手の彼の家系は、それなりに汚名を着せられたようではあるが……。

 

 

「鶫、すまなかった」

 

 

病室で憲紀は私に頭を下げた。

それは私の台詞なのだが、まだ黙って飲み込む。

 

 

「私が勝手にあんな縁談を組んだせいで、君をあんなことに巻き込んでしまうとは……その上、私の命も救ってくれたという」

 

「謝罪と礼を言わせてくれ」

 

 

大袈裟だ。

私は憲紀の言葉を聞いてそう感じた。憲紀に責任があるというのならば、それは私にもあるものだ。

 

 

「あの時、憲紀が障子に手をかける前に、私は何かを感じ取っていた。嫌な気配だった」

 

「私の瞬発力ならばそれは防げただろう。憲紀を抱きかかえ、回避することすらできた」

 

「その点ですまなかった。私は失敗したのだ」

 

 

お互いに謝る。

これが唯一、後腐れのない終わり方だろう。

……さて、そろそろいいか。

 

 

「おい、もういいぞ」

 

 

そう病室の扉の外へ告げると、扉が開き、数人が入ってくる。

メカ丸や霞、真依。

それからこの間の1年生と魔女のような格好をした見知らぬ少女も。

次々と病室に入ってきて、憲紀と話している。

 

 

「ふっ」

 

 

その光景を見ていたら、つい口が緩んでしまう。

私の死後、腐ってしまった加茂家。

それでも私の子孫である憲紀は、こうして友人に恵まれているのだ。こんなに嬉しいこともあるまいて。

 

 

「何、気味の悪い笑顔を浮かべてるのよ、気味が悪い」

 

 

そんな私の感慨に水を差すのは、彼女・真依。

どうやら私は、気味が悪いを重ねて使われるほどに気味の悪い笑みを浮かべていたらしい。

 

 

「孫を見る年寄りの表情だったわ。なに? その年で枯れてるの?」

 

「…………」

 

 

ふむ。

この間のあれは私を叱咤激励したのだと思ったのだが、どうやら彼女は元々こうらしい。

口がクソ悪い。たぶん人を煽るのが基本になっているのだろうな。

 

 

「…………少しは陰気臭さが抜けたわね」

 

「あぁ、お陰様でな」

 

「あとはその芋臭さが抜けるといいわね」

 

「あぁ、間違いない」

 

 

彼女との世間話を筒がなく終え、再び皆の輪に戻ろうとした時のことだった。

 

 

「ねぇ」

 

 

私は真依に呼び止められた。

振り返り、なにかと訊ねると、彼女は一言だけ答える。

 

 

「あんたに会ってほしい人がいるの」

 

 

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