【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第11話 憲倫くん、友達のお姉ちゃんを紹介される

ーーーーーーーー

 

 

新幹線。

それは東京と大阪を2時間半で繋ぐ乗り物らしい。

明治にも馬車はあったが、それとは比べ物にならないほどの速度を有している。私には想像もつかない代物だ。

だから、

 

 

ーーーー新大阪駅ーーーー

 

 

「おい、憲紀! まだか! 新幹線はまだか!!」

 

 

新大阪駅と呼ばれる場所で、私の興奮は最高潮にまで達していた。ちなみに、引率は真依と憲紀。憲紀は私の隣で顔を伏せ、真依は私たちから少し離れたところで売店で買った飲み物に口をつけていた。

 

 

「騒がなくてもすぐ来る……だから、少し黙ってくれ」

 

 

いんたーねっとによると、その乗り物はなんと時速300kmを超えることもあるという。そんなものを前に落ち着いていろと?

 

 

「ふっ、技術の粋を集めた代物を前にして、私の好奇心が収まるわけないだろう?」

 

「……頼む。頼むから静かにしてくれ……」

 

 

ーーーー東京駅ーーーー

 

 

新幹線。

なんとも不思議なもので。窓の外は途轍もない速さで景色が流れていくというのに、車内はとても静かで快適そのものであった。

更に車内で珈琲なども注文でき、満足な旅路を送った。

 

 

「いやはや、なんとも楽しい旅だった」

 

「ちょっと、何を終わった気になってるのよ」

 

 

新幹線での一時の余韻を噛み締めていると、真依が呆れ果てた表情でそう言った。

本題はここからなんだけど。

真依はそう言うと、けいたいでんわを操作している。恐らくLINEでメッセージを送っているのだろうが……。少しして返信があったようで、真依は私と憲紀を引き連れて歩き出す。

それにしても、

 

 

「東京か」

 

「どうした、鶫?」

 

 

昔、東京にも来たことはある。だが、150年で随分と様変わりした。

人も物も溢れ返っている。あの頃よりもずっと賑やかで密度も高いはずなのに、人間同士の繋がりのようなものが薄くも感じる。

そんな感想を覚えた。

 

 

……………………

 

 

「ここよ」

 

 

東京駅からしばらく歩いた後、一軒の店の前で真依は立ち止まった。新しい町らしくない、どこか寂れたような店構えの……ここはなんだ?

 

 

「喫茶店だ」

 

「喫茶店……そうか、茶屋か」

 

「茶屋っていつの時代の人間よ」

 

 

明治時代だな。

そんな言葉は飲み込んで、その喫茶店とやらの扉を開けた。

中は落ち着いた雰囲気で、なにやら小洒落た音楽などもかかっている。この店の店主らしき人物は、低いいい声でいらっしゃいとだけ告げる。それ以上は何も言ってこないところを見るに、好きな席へ座っていいということだろう。

さて、どこに座ろうか。そう思って、店内を見渡していた私を置いて、真依は店の奥へと進んでいく。そのまま、店の端の席にたどり着いた。

そこには先客がおり、

 

 

「よう、遅かったな。真依」

 

「チッ、こっちは京都から来てるんだから、迎えのひとつでも寄越しなさいよ」

 

 

そこに座っていたのは、どこか真依に似た雰囲気をもつ人物。いや、似た雰囲気というには……。

 

 

「双子か?」

 

「ご名答。で、真依、こいつが?」

 

「えぇ、憲紀の従姉妹のーー」

 

 

「加茂鶫だ。真依の姉上でいいのか?」

 

「真希だ」

 

 

姉上っていつの時代の人間だよ。

そんな風に笑いながら、彼女と握手を交わす。性格は随分と違うようだが、いつ時代だという真依と同じ反応を見るに、確かに姉妹のようだ。

そのまま、私と憲紀は彼女の向かい側の椅子。そして、真依は真希の隣に座った。

しかし、なるほどな。握手をして、真依が私に彼女を会わせようとした理由が何となく分かった気がする。

 

 

「『天与呪縛』による肉体の強化か」

 

「! おい、真依」

 

「私じゃないわよ!」

 

「いや、真依には聞いていないよ」

 

 

真依にあらぬ疑いをかけてしまったようで、そう弁明する。

 

 

「簡単に言えば、握手をした時の感覚。少なくとも呪力で戦う術師の手ではない。得物に呪力を流して使う術師ならば、掌全体ではなく掌の腹の部分に力が乗るものだ」

 

 

そうではなく、掌に均等に力がかかる握り方をするのは、得物を腕力で降る人間のそれだ。つまり、彼女は今の私と同類。

きっと真依が私に彼女を会わせたのも、それが理由なのだろう。

 

 

「おい、真依。こいつ、何者だ?」

 

「さぁ?」

 

 

私の知識に面食らったようで、真希は私を指差してそう言った。

 

 

「さぁ、って……お前が会えって言ってきたんだろ」

 

「別に……私はメカ丸と霞に言われただけよ。この娘とあんたを会わせてやれって」

 

「へぇ、お前にしては珍しいじゃねぇか」

 

「はぁ? それ、どういう意味?」

 

 

なにやら2人の仲はよくはないようで、言い合いが熱を帯びてきたその時、

 

 

「それで本題なのだが」

 

 

双子の言い合いを待ってたのでは埒が明かない。

そう思ったようで、憲紀がその言い合いに口を挟んだ。すごい胆力である。

 

 

「折り入って真希に頼みがあってきた」

 

「頼み?」

 

 

「彼女ーー鶫とある任務に行ってもらいたい」

 

 

初耳である。

それはどうやら真依も同じようで、目を丸くしていた。

 

 

「ほう? それはまたおかしな話だな。新入生と私みたいな四級術師に任務とは」

 

 

皮肉混じりの返し。だが、彼女の言う通りだ。その上、真希は東京校所属で、私は京都校所属。呪術高専生になったばかりの私でもその不可解さは理解できる。

私たちの困惑を汲み取って、憲紀は早速話を進めた。

 

 

「理由は2点ある」

 

「1点目は、メカ丸や三輪の言ではないが、鶫に呪力のない術師の戦い方を教えてやってほしい」

 

 

憲紀の言いたいことはなんとなく分かった。この間の廃病院での戦闘もそうだったが、私はまだ強度の高い肉体での戦い方に慣れていない。正直、なんとなくで、力任せに戦っている節がある。

その点で彼女は私よりも経験があり、共に任務を受けるならば、学ぶことは多いだろう。

だが、それだけならば、任務に行く必要もない。私が東京に残り、彼女に指導を仰げばいいだけだ。つまり、そうではない理由ーー任務に行く理由があるということで。

 

 

「2点目は……2人に受けてもらいたい任務は、一定以上の呪力をもつ術師では達成できないのだ」

 

 

詳しくはまだ分からないが、私や真希のような呪力のない系統の『天与呪縛』の術師ではないといけない。この系統の術師はそう多くはないのだろう。だから、私と真希なのだ。

 

 

「なるほどな。一応、納得はした」

 

 

憲紀の言葉に、真希は頷いた。

詳しい話は後で補助監督から聞くといい。混み入った話になるからだろう。憲紀はそれだけを告げる。

まぁ、憲紀の言うことだ。私は無条件で飲むことにしよう。

そうして、任務に参加予定の2人が納得して、その話はーー

 

 

 

「納得できないわね」

 

 

ーー終わるかと思われたのだが、予想外の人物ーー真依の介入によって話は続く。

 

 

「納得もなにも、お前には関係ないだろ、真依」

 

「はぁ? こっちはわざわざ遠いところから長時間かけて来てるのよ? それで話はこれだけって……納得いくと思う?」

 

 

ふむ、確かに真依の言うことも一理ある。

これではなんのために真依が来たのか分からない。真希と口喧嘩させるため、そんなわけはないだろう。

その辺りを考えない憲紀ではないだろうが……。

チラリと彼の方へ目を配ると、ひとつため息を吐いてから口を開いた。

 

 

「……真依」

 

「なによ?」

 

「この任務、君にも参加してもらうことになる」

 

「なに? 私がいちゃもんをつけたから仕方なくってことかしら」

 

「そうではない」

 

 

本当は揉めるだろうから、当日まで言う気はなかったのだが。

そう言って、諦めの感情が見え隠れする憲紀は続けた。

 

 

 

「その任務には恐らくもうひとつ必要なものがある」

 

「それが真依。君だ」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

こうして、私は双子の姉妹と共に初任務に就くこととなった。

 

しかし、この初任務、多少神経をすり減らしそうである。

……何が原因とは言わないが。

 

 

ーーーーーーーー




この世界線の真依真希の仲は多少まし、なのか?
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