【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第13話 呪霊祓除RTAを始める憲倫くん

ーーーーーーーー

 

 

ーーギィィィンッーー

 

 

まずは真依へ伸びる腕の破壊を試す。飛び蹴りは命中。だが、破壊できない。

 

 

「っ、まるで鋼鉄だな」

 

 

にも関わらず、一定以上の呪力のある人間の前には姿を現さない。相当に用心深い。故に厄介だ。

術式はなんだ? あの腕か? この呪霊に関する情報が少なすぎる。ならば、これ以上術式を発動される前に叩き潰す。

 

 

「ふんっ!!」

 

ーーバギッーー

 

 

足場の岩を引き剥がし、そのまま投げる。勿論、呪力がこもっていないその攻撃では呪霊に届かない。目的は、それで奴の視界に死角を作ること。

岩の陰に身を隠しながら走る。そして、

 

 

「はぁぁっ!!」

 

ーードゴッーー

 

『グぎゃァぁ!?』

 

 

岩ごと呪霊を蹴り飛ばす。命中。呪霊はそのまま海へ吹き飛んだ。

少しずつではあるが、この体のとこも分かってきた。未だに呪力を通そうとはしてしまうのは早めにどうにかしなくてはいけないが……。

恐らく今の私なら、

 

 

「すぅぅぅ……」

 

ーーボシャッーー

 

 

息を吸い、海へ潜る。肉体の超強化。ならば、肺活量も強化されているはずと思っての行動だったが、この感覚だと正解のようだ。海のなかでも視界は良好。すぐに奴の姿を捉えた。浮かび上がろうとしていた。

 

 

ーーグッーー

 

 

浅瀬の海底を蹴り出し、急浮上。

そのまま、奴よりも早く奴の頭上へ。

 

 

『ギゃあァァ!?』

 

「呪霊でも流石に困惑してるか。奇遇だな、私も私自身に困惑しているよ」

 

 

空中で、体を廻す。

奴が浮上する勢いと私の遠心力。

そこから繰り出されるかかと落としの威力は、

 

 

ーービギビギビギッーー

 

 

呪霊の頭を叩き割るのに十分だった。

 

 

「……ふぅ」

 

 

岩場へ着地し、一息吐く。これで任務完了と言っていいかな。

 

 

「さて、真依の方は……大丈夫そうだな」

 

 

恐る恐る上を向くと、崖にぶら下がっていた真依はもういない。無事、真希が引き上げたのだろう。あとはこの崖をゆっくりと登ってーー

 

 

『サムいヨさムイよ』

 

「!」

 

 

声。背後からさっきの呪霊の声がした。

振り向くと、奴は音もなく海から上がり、私へ向けてその腕を伸ばしていた。

やられる。そう思い、防御体勢に入ったところで、

 

 

 

ーービュンッーー

 

 

 

何かが上から降ってきて、その呪霊を貫いた。瞬間、呪霊は消滅する。再度、私の頭上、崖上を見れば、そこには人影。髪を後ろでひとつに束ね、眼鏡をかけた彼女の姿があった。

 

 

「弛みすぎだ」

 

「助かったよ、真希」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

任務後に補助監督からの調査で分かった話だが。

双子岬に初めて身を投げた者は双子の姉妹だったという。

 

しかも、妹は崖下の地面に激突し即死だったが、姉の方は遺体が見つからなかった。これは私の考察に過ぎないが、姉は海に落ちて少しの間生きていたのではないか。ただ海に長く浸かっていたため、衰弱死か溺死かで亡くなった。

妹を失い、自分だけがゆっくりと死を実感しながら死んでいく。呪霊はそれを再現していたのだろう。

 

その話を聞いてか分からないが、あの後、真希は私に真希と真依の事情を少しだけ話してくれた。

2人が禪院家で受けてきた仕打ちや2人の幼少時代のこと。

 

「真依の居場所を作ってやらなきゃならないんだ」

 

静かな声で真希はそう言っていた。それを真依に伝えてやればいいという私のお節介には、電話越しで苦笑だけを返された。

 

加茂家の真の繁栄を目指す私。

禪院家に自分の妹の居場所を作ってやろうとする真希。

決して仲のよい家同士ではないが、少しだけ共通点を感じた私は勝手に決意する。

 

何かあれば、必ずこの姉妹の力になってやろうと。

 

それまで私が聞いた真希の想いは、真依には黙っていよう。

そんなことを考えたのだった。

 

 

 

ーーーー呪術高専関係者は知り得ない後日談ーーーー

 

 

「噂を聞いて来てみれば」

 

 

黒の僧衣と袈裟姿の『彼』は呪霊の祓われた後の双子岬から崖下を見下ろし、そう呟いた。その側には、一般人には見ることの出来ない一体の呪霊。

 

 

「ーーーーーーーー」

 

「いや、思念自体は残ってはいるが、もうこの呪霊にそこまでの力はないよ」

 

 

音では理解のできない言語を話す呪霊だったが、その意味を『彼』は理解しているようで会話が成り立っていた。

 

 

「『花御』、頼めるかい?」

 

「ーーーー」

 

 

『花御』と呼ばれた呪霊は『彼』の言葉に頷くと、術式を発動する。足元からゆっくりと木の幹が出現し、それが『彼』らを崖下へと運んでいく。少しして、木の幹は成長しきったのか動きを止めた。

 

 

「さて」

 

 

『彼』は岩場の近くの海面に手をつけると、その中から黒色の球体を取り出した。そして、それをそのまま飲み込む。

 

 

「術式は……使えそうにもない」

 

 

すぐに興味をなくしたようで、『彼』は踵を返す。未だにこの味には慣れないな。そう呟いたかと思えば、ふと足を止めた。

 

 

「ーーーーーーーー?」

 

「いや」

 

 

クククと笑い、『彼』は言う。

 

 

 

「まさかまだ生きているとはね」

 

「加茂憲倫」

 

 

 

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