【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第15話 憲倫くんは祝いたい

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2018年6月。

特級呪物『両面宿儺』が受肉したという情報が呪術界隈に流れた。

その情報は勿論、御三家である加茂家にも流れてきており、憲紀も次代当主として、なにやらバタバタとしていた。

加茂家としては、受肉体の処分に賛同する立場である。憲紀もそれに賛成しているようであった。

 

ちなみに、加茂家の本家には顔も出せない私がこれを聞いたのは7月に入って約1週間が経ってからで、同時に受肉体が死亡したとの報せを聞いた。

 

 

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「大変だったな。お疲れ様」

 

 

我が家へ来ていた憲紀に渋めのお茶を出し、それまでの労をねぎらう。

 

 

「珈琲がいいのだが」

 

「知っているだろう、我が家に珈琲は置いていない」

 

 

珈琲と違い、常備しているちょこれーとを出すと、憲紀は緑茶には合わないだろうと文句を言う。その程度の文句は言ってくれるようにはなったのだ。憲紀との仲も深まり、感慨深いな。

 

そんなことを考えながらも、最近の話をする。憲紀は加茂家のバタバタで、ここのところ高専にも顔を出していなかったので、私が代わりに高専であったことを話すことにしていた。

同級生である新田のこと。

メカ丸や真依、霞のこと。

残念ながら、私は3年生とはあまり交流がないため、肝心の憲紀の同級生のことはあまり話せなかったが、まぁ、それは仕方あるまい。

……あぁ、そうだ。それで思い出した。

 

 

「どうやら明日が三年生の……西宮?の誕生日らしいな」

 

 

どうやら霞が誕生日ぱーてぃを計画しているらしく、真依と話しているのを聞いた。どうやらその3人は仲がいいらしい。

霞や真依とそれなりに仲良くしているからか、私も誘われてはいるが。

 

 

「断ったよ。流石に初対面の人間の誕生会に立ち入るような度胸は私にはない」

 

「そうか。まぁ……西宮は少々気難しいところがある。それがいいだろう」

 

 

折角の祝いの席ならば、私の言動で不快にさせてしまっても申し訳ない。そういうものは仲のよい3人組で水入らずの方がいいに決まっている。

とそこで私はふと疑問に思ったことを口にした。

 

 

「そういえば憲紀」

 

「ん? なんだ?」

 

「お前の誕生日はいつだ?」

 

 

誕生日の話題が出たからというわけではないが、せっかく仲良くしている我が子孫なのだ。それを知っておけば、更に仲良くなれるだろう。

霞が言っていたさぷらいずというのもしてみたい。

…………そう。

何気なくした会話だったのだ。私には決して悪気があったわけではない。

 

 

 

「私の誕生日は先月の5日だ」

 

「ん?」

 

 

 

憲紀の誕生日はもう過ぎていた。

6月5日。つまり、先月に終わっていたのである。

 

 

ーーバァァァンーー

 

「なぜそれを早く言わないっ!!」

 

 

私は思わずちゃぶ台を叩いていた。加減しなかったせいで、ちゃぶ台が割れる。幸いなことに、憲紀に出した湯飲みは、ちょうど憲紀が持っていたようで無事だ。

 

 

「な、なにを!?」

 

「なぜ! いわ! なかった! のだ!」

 

「いや、最近は加茂家の方で忙しかっただろう」

 

「忙しい? そんなものは言い訳にならん!!」

 

 

憲紀に詰め寄る私。激怒である。それはもう怒髪天である。

聞かなかっただろうぅぅ?

そんな言葉は聞きたくない!

 

 

「私はな、憲紀! お前の誕生日を祝いたいのだ!」

 

「私は従姉妹だろう! 家族のようなものだ! いや、家族そのものだ!」

 

 

昔は私も自分の誕生日を祝ってもらったものだ。あの喜びは150年経った今でも覚えている。いつの世も、家族に祝われることはとても嬉しいことなのだ。

 

 

「最近の憲紀が忙しい。それは分かっている。だが、いや……だからこそ、私は祝いたい!」

 

「あ、あぁ……それは、ありがたいことだが」

 

 

私の迫力に若干気圧されたようで、憲紀は引き気味に頷いてくれた。

うむ、分かればよい。

まったく、本当に今の加茂家はどうかしている。憲紀の出自に色々あるのは分かるが、次代当主の生まれた日を祝わないなどあり得ない話だ。私が当主だった頃だったら考えられん。

 

 

「そもそも憲紀も憲紀だ」

 

「な、なんだ?」

 

「なぜその日、言わなかったのだ」

 

 

勿論、当日よりも前であれば色々と準備もできただろうが、自分から言い出すことでもないのは気持ちとしては分かる話だ。だが、それでもその日知らせることくらいなら出来ただろうに。

 

 

「……あの、だな。鶫、言いにくいんだが……」

 

「ん? なんだ?」

 

 

憲紀らしくない、少し言いづらそうな口振りで、憲紀は言った。

 

 

 

「その日、お前は東京へ行っていただろう」

 

「………………」

 

 

 

その瞬間、私の脳は動くことを止めた。更に数秒遅れて、記憶が脳内を駆け巡った。

その日は、そうだった。

 

 

 

「ごめん、憲紀」

 

「いや、私は特に気にしていない」

 

 

 

東京駅で食べ歩きしていたら、憲紀から貰った鞄を盗まれ。

結局、見つからず、あの日知り合った彼からお金を借りて、京都へ帰り。

それを憲紀に言ったら怒られ。

数日間、口をきいてもらえなかったあの『地獄の数日間』の初日ではないか。

 

 

 

「憲紀、私に憲紀を祝わせてください」

 

「お願いします」

 

 

 

それはそれは綺麗な土下座であったと、憲紀はメカ丸に語ったらしい。

 

 

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