【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完) 作:藍沢カナリヤ
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「ぷれぜんとを選びに行くのを手伝ってほしい」
「いいですよ」
「断る理由はないナ」
翌々日の7月8日。
呪術高専の2年生教室にて、私は霞とメカ丸、そして、真依にそれを頼み込んでいた。
勿論、私もただ人に頼むだけではなく、自ら選ぼうとはした。いんたーねっとは便利なもので「家族 贈り物」と調べるだけで、情報は沢山出てくる。そうはもう膨大に。
……膨大すぎたのだ。明治時代を生きてきた私には、ぷれぜんと……贈り物を選ぶのに知識不足で、あまりにも情報が溢れ返っているいんたーねっとでは特定しきれない。
そこで、友人を頼るという選択に至ったのであった。霞とメカ丸は二つ返事で了承してくれた。あとは……。
「私はパス」
真依はそう言って、ひらひらと手を振る。
「えー、真依も行きましょうよ!」
流石は霞。真依相手でも物怖じせず、そんな風に誘うのはメカ丸や私にはできない芸当である。
「いや、逆になんであなたは行く気なのよ」
「へ?」
予想外の返しに、霞は間抜けな声をあげた。真依のことだから面倒だからという理由だと思ったんだろう。正直、私もそうだと思った。
真依が断った理由はどうやらそうではないようで。
「明日から楽巌寺学長の付き添いで、東京でしょう?」
「あっ!」
ということらしい。
どうやら東京にあるもうひとつの呪術高専との交流戦とやらの事前打ち合わせのために、楽巌寺学長殿が東京へ向かう。その付き添いで、霞と真依が向かうらしい。あと3年生の東堂っていう先輩も一緒に。
「はぁ、なんで私が……」
「ん? どうしたんだ、真依」
「別に」
少し不貞腐れたように言い放つ真依。霞の方を見ると、真依は行きたくなかったらしいですと小声で教えてくれた。
後から聞いた話だが、真依は例の東堂という先輩に無理矢理ついてくるように言われたらしい。あの真依が素直に従うのは少々不思議に思ったが、まぁそれほどに人望に厚い人物なのだろう。
「というわけで、鶫ちゃん、ごめんなさい!」
「いや、こちらこそ忙しい時期に悪かったな」
これから明日の準備があるからと2人は去っていった。
「…………」
「…………」
「……メカ丸は」
「俺は何もなイ。付き合おウ」
本当にメカ丸は最高である。
ーーーーショッピングモール内ーーーー
とはいっても、メカ丸がそのまま街に出れば、大変なことになる。道行く人からは写真を撮られ、男児からは大人気で行列ができるだろう見た目をしているからだ。
「なるほど、これがいやほんというものか」
『似たようなものダ』
私は耳に装着するような形のメカ丸の声が聞こえる機械を、メカ丸から渡されていた。それを使えば、メカ丸はここにいずとも会話ができるというわけだ。
「だが、周りからは変な目で見られないか? 端から見れば、街中で独り言を言っているようなものだぞ?」
『今の時代、通話をしながら出歩く人間など珍しくもなイ』
そう言われると、東京に行った時もそんな人々がいた気がするし、それを気にする人は特にいなかった。なるほど。これも時代の流れか。
そんな風に納得をして、私は歩き出した。
どうやらメカ丸いやほんには、かめら機能もついているらしく、私が提案するものを見て、色々と助言をくれる。
……………………
しばらく大型の店舗内を散策して、私たちは買うものの目処をつけることができた。
今のところ自動で珈琲豆から挽き、抽出できる機械を買おうと思う。これならば、珈琲好きの憲紀も喜んでくれるだろう。何より自動でやってくれるというのがいい。忙しい憲紀の手を煩わせずに、なおかつ彼を癒せるのだから、こんなにいいものはないだろう。
「やはり、贈り物は自らの目で見ないとな」
『それは同感だナ。俺はあの体の都合上、どうしても買い物はネットで済まル。こうして、買い物ができるのは新鮮だっタ』
いい機会になった。そう言って、メカ丸は笑ったように感じた。メカ丸の声は実際には作られた機械音ではある。だが、それでもその中に彼の優しさや暖かさのようなものを感じ取れるのは、不思議なものである。
さて。
「……メカ丸、少し外すがいいか?」
『? どうしタ? なにかあったカ?』
「……花を摘んでくる」
『……あア』
一応、私も女子である。メカ丸をその場に置き、私はその場を後にした。
……………………
少しして、その場所に戻ってくると、そこにメカ丸はいなかった。あの状態では自分で動けるわけもない。ともすれば、答えはひとつ。
「また盗まれた!?」
ーーーー鶫の知り得ない会話ーーーー
『……なんのつもりダ』
メカ丸は『彼』に訊ねた。
あくまでもメカ丸は内通者。『彼』らの仲間ではない。だから、こんなプライベートな時まで接触してくるとは思っていなかった。
なにより『彼』は、
「そう怒らないでくれ。私も彼に興味があってね」
『彼……? 誰のことを言っていル?』
「あぁ、そうか。今は彼女、だったか」
『彼』の言っていることはよく分からなかったが、文脈から鶫のことを指しているのは、鶫の事情を知らないメカ丸にも理解できた。
『京都校には手を出さないという『縛り』を忘れたカ』
「手は出さないよ。ただ少し興味があるだけさ」
『もし手を出せバーー』
「くどい。分かっているよ」
メカ丸の忠告を一蹴する。『彼』自身、『縛り』の重要性は分かっている。伊達に生き永らえている訳ではないのだ。それを最大限利用した儀式を行おうとしている以上、メカ丸に忠告されずとも分かっている。
だが、
「加茂鶫。彼女のことは報告になかったね」
『…………』
「『縛り』を忘れたか?」
『っ』
メカ丸の言葉を『彼』はそのままメカ丸に返した後、クククと意地悪く笑う。さらに言葉を続ける。
「私は用心深いんだ。1年生とはいえ、彼女も高専側の人間ならば、情報は頭に入れておく必要がある。分かるね」
『……あア』
「じゃあ、教えてもらおうか。彼女の術式はなんだい? やはり『赤血操術』かな」
『彼』はそう当たりをつけていた。
双子岬の呪霊いは、僅かに彼女の中身ーー加茂憲倫の呪力が残っていたからだ。明治時代にその身体を乗っ取り、一時は使っていた自分の呪力を間違えるはずもない。
残っていた呪力の量は限りなく少なかったこともあり、ずいぶん弱体化はしているようだが。
そんな『彼』の予想はメカ丸の発言によって、裏切られる。
『鶫は俺とは真逆の『天与呪縛』……呪力を持たないフィジカルギフテッドの持ち主ダ』
恐らく東京校の真希よりもずっと呪力は0に近いだろう。
メカ丸の言葉で、『彼』の脳裏にはある人物の顔が浮かんでいた。思考は時間にして5秒。
「それは少々……厄介な話だ」
彼の話が本当ならば、計画が狂う可能性がある。手を打たねばならない。
『彼』の顔から笑みが消えた。
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メカ丸は返ってきた。交番に届けられていたのである。
心配をかけてすまなイ。
そんなメカ丸にこちらこそごめんと返し、少しだけ気まずい空気のまま、私たちはその日、帰路に着いた。
翌日、憲紀に例の珈琲の機械を渡したら、すごく喜んでくれた。
うれしい。
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シリアス楽しい症候群が……。
今回はコメディをちゃんと書くんだ!!