【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第23話 白歪

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虎杖と東堂先輩。

2人が私たちの元へ合流した後、私と真希は戻ってきた伏黒君とパンダに運ばれていく。

 

 

「無事でよかったです、真希さん」

 

「無事な訳あるかよ……左肩貫かれてんだぞ」

 

「まぁ、真希なら大丈夫だろ」

 

「あ? 喧嘩売ってるのかよ」

 

「おー? やるかぁ?」

 

 

真希はパンダに抱えられながら、伏黒君やパンダと会話をしていた。先程に比べて随分と余裕が生まれているのは、あの2人の姿を見たからだろうか。

それほどまでに、あの2人からは雰囲気があったのだ。特級を祓えてしまえるのではないかと思えるほどの雰囲気が。

 

 

「東堂先輩のことは話には聞いていたが、彼ーー虎杖も強いのだな」

 

 

そんなことを口にした。真希とパンダは彼のことを詳しく知らないようで、代わりに伏黒君が答える。

 

 

「あいつは6月まではただの高校生だった」

 

 

呪力を感知できないとはいえ、呪いの王が宿っている人間を前にすれば、流石の私でも気づくだろう。6月……つまり、私が彼と出会ったのは、彼に『宿儺』が入り込む前のことなのか。それでは気づかない訳だ。

しかし、いくら『宿儺』をその身に宿していても、たった3ヶ月ほどであれほどの雰囲気を出すとは……。

 

 

「フッ、若さだな」

 

 

若者の成長は私のような中年からしたら、激しく眩しいものだ。

また年寄りみてぇなことをと真希に呆れられ、そんな私たちのやりとりを半分無視して、伏黒君は語る。

 

 

「7月にあいつは一度死んだ。俺の目の前で、暴走する『宿儺』を止めるために自死を選んだ」

 

「それから何があったかは分からない。けど、あいつは生き返って……それから変わり始めてる。呪術師への一歩を踏み出したんだ」

 

 

彼の心中は彼自身にしか分からないが、それでも何か思うことがあるのだろう。伏黒君は少し俯いた。

確かに彼の雰囲気は、東京駅で私を助けてくれたあの時よりも変わっている。今の彼ならばきっとあの特級相手でも簡単にやられることはないだろう。

 

 

「心配か?」

 

「…………」

 

 

伏黒君は優しい人間だ。

本当に……現代の呪術師はいい子しかいない。未来の呪術界は明るいな。

 

 

……………………

 

 

数分後には、もうじき『帳』の外へ出られるところまで私たちは退却していた。このままなら死者を出すまでもなく、この局面を乗り切れるだろう。

そう思っていた。

 

 

「…………」

 

「鶫? どうした?」

 

「…………ん、あぁ」

 

 

真希の質問に遅れて答える。

 

 

「……皆、先に行ってくれ」

 

「『帳』の外まであと少しだぞ。ここまで来て何をしようっていうんだ?」

「ここに来て、向こうの戦局が変わった。俺の式神が見てるが、虎杖たちが特級を押してる」

 

 

伏黒君とパンダに続けて止められた。索敵に向いているという2人が言うのだから、従った方がいいのは分かる。2人の言う通り、このまま『帳』の外へ出て、例の目隠し男と合流するのが吉なのだろうが……。

 

 

「……大丈夫だ。そっちは先にここを出てくれ」

 

「っておい! お前も奴の種子を喰らってるだろうが!」

 

 

真希が声をあげて止めるが、私はそれに手を振る。

 

 

「もう取った」

 

「は?」

 

 

『帳』の外へ向かう途中で、それは既に腹から引き抜いていた。少々痛んだが、私自身に呪力がないからか素手でもすぐ引き抜けた。幸いなことに血もそこまで出ておらず、動けないほどではない。

 

 

「心配するな。行ってくるよ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

東京の呪術高専には『古い知り合い』もいる。私が引き返したのは、その『知り合い』がこの場から動けないこともあり、少し心配になったからだった。

杞憂ならばいい。

そう思いながら、ここまで戻ってきたのだが、残念なことに私の悪い勘は当たってしまった。

 

 

「酷いことを……」

 

 

とある建物の前で、2人の呪術師が殺されていた。しかも、顔や体を変型させられてだ。まだ遺体があたたかかったことから、生きたまま体を変型させられて死んだのだと分かる。

 

 

「肉体を内側から破裂させる術式? いや、それでは説明がつかないか」

 

 

…………いいや、ここで彼らの死因を探るのは不謹慎か。

彼らにも家族はいる。呪術師は死に近い職業だ。家族もそれは承知だろうが、それでも家族を亡くした者の悲しみは他人では計り知れない。

 

 

「………………」

 

 

静かに目を閉じ、手を合わせた。それから少しして目を開ける。

さて、『古い知り合い』のことも気にはなるが、遺族のためにも彼らの遺体を鳥や害獣のいない場所に移動させてーー

 

 

 

「あれ? なんでまだ人がいるんだ?」

 

 

 

「っ!」

 

 

突然かけられた声に振り向く。

そこにいたのは男。一目見ただけでは人間と変わらない背格好。ただし、全身が青白く継ぎ接ぎだらけの皮膚という異様な風貌をしていた。

そして、なによりその気配が告げている。目の前の男は、人間では決してない。

 

 

「……呪霊だな」

 

「驚いた。俺のことを感知できないよう、呪力をほぼ完全に抑えてるのに」

 

「呪力などなくても分かるさ」

 

 

そんなもの感知できなくとも分かる。人には出せない気配を目の前の男は醸し出しているのだから。それに、

 

 

「明らかだろう。手に血がついている」

 

「あっ! 拭いたと思ったんだけどなぁ」

 

 

指を差し、手についている鮮血を指摘すると、男は手にこびりついた血を自らの服で拭った。それから遺体を足蹴にする男。

 

 

「随分と……行儀が悪いな」

 

「ん? あぁ、別にいいでしょ。死んでるし」

 

「お前が殺したんだろう」

 

「悪い?」

 

 

悪びれる様子もなくケラケラと笑う男。人を殺すことを何とも思わない。純粋な悪意そのもの。

 

 

「話していても埒が明かないな」

 

 

このタイミングでここにいるということは、十中八九あの特級呪霊の仲間だろう。目的を探りたいのは山々だが、この相手には話が通じない。言葉は通じても話は通じない。

なによりも、

 

 

 

「少々、腹が立った」

 

「そう? 俺はなんとも思わないけど?」

 

 

 

後に知るその呪霊の名は『真人』。

人が人を恐れ憎む負の感情から生まれた呪霊。

 

 

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