【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完) 作:藍沢カナリヤ
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あの継ぎ接ぎ呪霊に通常の攻撃は通じません。
理屈はハッキリとは分かりませんが、恐らく奴の術式が『魂』に関係するものだからでしょう。呪術師は『魂』を攻撃する術など持ち得ない。だから、いくら呪力を載せたところで届かない。
勿論、攻撃でダメージを与え、再生させることで呪力を削ることはできます。私も奴と一戦交えた時にそれを一考したことはありましたから。
ですが、現実的ではない。では、どうするか。
正直な話、今のところ対処法はありません。
一気にすべてを潰そうと広範囲攻撃も試してはみましたが、結果はご存じの通りです。
ただ虎杖君のような『魂』自体を何らかの方法で認識している呪術師による攻撃ならば、あるいはーー
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継ぎ接ぎの呪霊と対峙する。
改めて奴を見て気づくが、奴の懐に何かおぞましい気配を感じる。奴自身のそれではなく、他の何か……いや、今はそれは考えるな。相手の術式が分からない以上、油断はーー
「ははっ!」
ーービキビキッーー
軽薄な笑い声と共に奴の腕が変化する。まるで棘のついた棍棒のような形になった腕を伸ばし、叩きつけてきた。
「!」
咄嗟に躱す。
同時に思考。先ほどの遺体も体を変型させられて殺されていた。肉体を変形させる術式できない……それが奴の術式か?
「あれ? 不意打ちで今のスピードなら確実に殺したと思ったんだけど」
「私は足が速いのだよ」
「ふーん、そっーーかッ!!」
ーービュンッーー
今度は足を鞭に変えてきた。これを跳んで避ける。
相手の攻撃には予兆がある。攻撃の直前、体の一部の気配が変わり、その部位が変形している。そのおかげで攻撃への対応はできている。
この呪霊、恐らく戦闘経験自体は少ない。戦闘経験を詰んだ呪術師ならば、等級は高くなくともやっている呪力の流れを隠す技術を、この呪霊はしていなかった。つまり、術式の正体が分かるまで、攻撃を避け続けることはできない話ではない。
ーービキビキッーー
ーービュンッーー
ーーバキッーー
奴の攻撃を避ける。避ける。避ける。
戦闘経験は少ないだろうが、それでも奴の攻撃は多彩で対応が少しでも遅れれば死に直結する。
神経を尖らせる。そのせいか分かる。
「掌か?」
「どうだろうね」
体が変形する一瞬、掌の気配が大きくなる。
これはあくまで推測の域を出ないが、術式の要は恐らく奴の掌。原型の掌に触れることで他人の肉体を変型させるのではないだろうか。実際に『領域』や『式神』など、呪術において『手』は大きな意味を有しているのだ。あり得ない話ではないだろう。
ともすれば、接近戦は危険か。かといって、遠距離から攻撃する手段は私にはない。
「仕方がない」
ーーグッーー
覚悟を決めるのは一瞬だ。迷っていればやられる。
ーーダッーー
「掌を警戒した相手に近づいてくるのか! 面白い!」
継ぎ接ぎとの距離はすぐに0になる。掌を注視して、その動きを捉えるのが先決だ。それによって、動きを構築しろ。
まずは、右手。体を捻って避け、奴の前腕を外へ払う。
そのまま奴の左手首を掴み、投げる。
ーーバキッーー
地面に叩きつけられた奴へ追撃。顔面と鳩尾を5回ずつ打ち突く。呪霊とはいえ、人の成りを真似ているのだ。経験上、人型に急所への攻撃は有効だと知っていた。
だから、そこからさらに奴の肉体を破壊していく。両膝へ打撃、関節を逆に折り、両前腕に全体重を込めて踏み抜いた。
五体を破壊してーー
「ははっ」
「は?」
背後から声。それは奴のもので。
気づけば、私の背中にはもう一人の奴の掌が確かに触れられていた。
「『無為転変』」
ーーーー高専側は知り得ない会話ーーーー
「結局、俺なんもしてないよ。怒られちゃうかなぁ」
その呪詛師・重面春太は軽薄に笑う。彼の視線はそのまま隣の呪霊『花御』へ向けられた。
「かわいそっ、楽にしてあげようか」
そう言って、彼は自らの愛剣を手にする。彼にとって『花御』は仲間でもなんでもない。殺すことに躊躇いはなかったのだが、
「お疲れ」
いつの間にか肩を組まれていた『真人』に止められる。軽い煽り合いがあり、重面は両手を挙げてこれ以上行動の意思がないことを示した。
「で、ブツは?」
その代わりと、『真人』に訊ねる。
『真人』はバッチリと成果をひけらかした。彼の手に『両面宿儺』の指が数本。そして、彼の持つ袋の中には、特級呪物『呪胎九相図』が入れられていた。
それこそが彼らの目的。
2018年10月31日。
渋谷にて行われる『五条悟の封印』への駒を確保すること。
それを彼らは完了していた。
「ほら。起きて、『花御』。帰るよ」
『『真人』……殺意にブレーキをかけるのはストレスがたまりますね』
「『花御』も呪いらしくなってきたね」
そう言って、『花御』の変化を彼は喜んだ。
彼らはそのまま高専の遥か地下に作り出した空間を歩いていく。『真人』は『花御』を支えながら、思い出したかのように『花御』に訊ねた。
「そういえば、面白い術師に会ったよ」
『面白い?』
「あぁ」
『殺したのですか?』
「………………たぶん」
『たぶん?』
『真人』は何かを確かめるように、手を開いたり閉じたりする。
術式は確かにある。それを確認して、『真人』はまた笑った。
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