【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第27話 憲倫くん、目撃される

ーーーーーーーー

 

 

大通りから一本入ると、雰囲気が変わってく。可愛い女の子たちが書かれた看板が並んでいた場所から専門的な機械が置いてあるような場所が多くなっている。

それに伴って、人通りも少なくなる。

 

 

「……バレないようにもう少し離れて歩いた方がいいわ」

 

「そうだね」

 

 

ある程度離れているから大丈夫だとは分かってるんだけど、つい息を潜めてしまう。

さらに一本路地裏に曲がったのを見て、駆け足でその曲がり角まで移動する。チラリと曲がり角の先を覗くと、

 

 

「「『「!?」』」」

 

 

信じられない光景が目に飛び込んできた。

 

 

「抱き合っーー」

 

「ちょっ!!」

 

 

思わず声を出しかけて、真依に無理矢理口を塞がれる。わたしたちはそのままの体勢で止まっていた。少ししてもう一度曲がり角の先を盗み見ると、もう二人は離れていて。

 

 

「な、なんですか、あれ!」

 

「知らないわよっ」

 

「私も聞いていない」

 

 

小声でやり取りする。わたしはもちろん、真依も加茂先輩も混乱していた。なんだったら、メカ丸は黙ったままだった。

 

 

「…………追います?」

 

「ここまで来て引き返すのも癪でしょ」

 

「加茂家次代当主として、確認しなければ」

 

 

加茂先輩、今それ関係ありますか?

流石にそんなことは口にできないけど。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

『…………』

 

 

4人とも黙って歩く。2、3分くらい歩いたところで、目的地に着いたのか2人はひとつの建物の前で止まった。少し会話をした後に、そのままその建物の中に入っていったみたい。

 

 

「行くわよ」

 

「う、うん!」

 

 

建物の前で、その建物の看板を見上げると、そこにはーー

 

 

「ラブーー!?」

 

「三輪、それ以上言うな」

 

 

つまり、そういう場所だった。

 

 

「た、たいさん!!」

 

 

……………………

 

 

わたしたちはその場から逃げるように大通りに戻った。そして、今起こったことを確認する。

 

 

「え、えぇっと……真依」

 

「私に振らないでよ」

 

 

えぇ…………。

 

 

「加茂先輩……」

 

「…………」

 

「メカ丸ぅぅ!」

 

『…………』

 

 

誰も答えようとしてくれません。

え、卑怯じゃないですか? わたしが会話を進めるんですか?

…………んー!! もうっ!!

 

 

「……あの、あれってそういうことですかね」

 

「まぁ、そういう仲なんでしょ」

 

「男女でそういう場所に入るのだ。そうなんだろう」

 

 

まぁ、だよね。でも、鶫ちゃん、いつの間に、しかも狗巻くんと……。

つい2人のそういう場面を見て、顔が赤くなってしまうのが自分でも分かった。

わーっ!! やめやめっ!!

 

 

『これは藪蛇だったかもしれないナ』

 

「あぁ……」

 

 

4人で顔を伏せ、黙る。

メカ丸の言う通りでした。藪をつついて蛇が出てきた感覚。知らなきゃよかった友達の恋愛事情。

あぁ、一体何をしてたんでしょう、わたしたちは……。

 

 

 

 

「結局、何をしてるのだ?」

 

 

 

「「『「!?!?!?」』」」

 

 

突然かけられた声に、4人とも跳び跳ねた。振り向くと、そこには少し前にラブ…………に入っていった鶫ちゃんと狗巻くんの姿があった。

 

 

「駅からつけているから何かと思えば」

 

 

どうやらわたしたちの尾行は気づかれていたようで、鶫ちゃんはため息を吐いた。

 

 

「悪いっ!? 私たちが何をしようと私たちの自由でしょ!」

 

「こそこそと後をつけられたら文句のひとつでも言いたくなるだろう」

 

「ぐっ!?」

 

 

真依が言い負けてる。珍しい……じゃなくて!

 

 

「鶫ちゃん!」

 

「ん? なんだ、霞」

 

「そ、その……」

 

 

しまった。名前を呼んだのはいいけど、どう話せばいいの!?

狗巻くんとラブごにょごにょに入ったでしょって? いやいやいやいや、流石に趣味が悪すぎるよ……。

 

 

「鶫」

 

「ん? 今度は憲紀か」

 

「男女交際をするなとは言わない。だが、加茂家の人間として節度をもった行動をーー」

 

 

「何を言ってる?」

 

 

加茂先輩の言葉に、鶫ちゃんは首を傾げた。その様子はとぼけてる訳じゃなさそうで。だから、わたしたちも釣られて首を傾げてしまった。

 

 

『……鶫』

 

「やはりメカ丸もいるのか。お前がいながら何をしてるんだ」

 

『手に持っているものはなんダ?』

 

 

メカ丸の指摘で初めて気づいた。たしかに鶫ちゃんはなにかの袋を手に持っていた。それって……?

 

 

「あぁ、これか? これはだな……」

 

「ちょっ、鶫ちゃんっ! こんなところでーー」

 

 

 

「れとろげーというやつだ」

 

 

 

「「「は?」」」

 

 

鶫ちゃんが袋から出したもの。それは確かに昔懐かしいテレビゲームだった。

あ、あれ?

 

 

「今日はこれを買いに来たんだ。狗巻はよくげーむの動画を見ているらしくてな。こういうのが売っている場所を今日は教えてもらったのだ」

 

「……で、でも、さっき、ホテルに……」

 

「ほてる? 何を言っている?」

 

 

鶫ちゃんはスマホを取り出し、わたしたちに写真を見せてくれた。そこには確かにレトロゲームの文字が書かれた看板の店があって……その横にさっき、わたしたちが見つけた例の看板。

つまり、

 

 

「勘違い?」

 

『そのようだナ』

 

「はぁぁぁ、どっと疲れた」

 

 

深い深いため息と脱力感に襲われるわたしたちとは対照的に、鶫ちゃんは戦利品のゲームを見てニコニコしている。

…………まぁ、いっか。

 

 

ーーーー帰り道ーーーー

 

 

秋葉原駅へ向かう帰り道の途中。

前を歩く3人とメカ丸は何かを話していて、後ろを歩く私と狗巻から意識が外れているタイミングで、彼が私に話しかけてきた。

 

 

「……高菜」

 

「ん、あぁ……大丈夫だ」

 

 

分かりにくくはあるが、心配そうな表情でこちらを窺う彼にそう返す。心配しているのは、先ほどの件だ。立ち眩みがして、倒れかけたのを彼に支えてもらったのだ。

 

 

「最近倒れたり入院したりと続いていたからな。きっと体力が戻っていなかったのだろう」

 

 

疲れが出ただけだよ。

そう言って笑ったんだが、彼はまだ納得していないようで。

 

 

「おかか、おかか」

 

「大丈夫だ。彼らには言わなくてもいい」

 

「…………高菜」

 

「分かったよ」

 

 

無理はするな。彼からそう伝わってくる。

それに頷いて、この話は終わりにした。

 

 

「………………」

 

 

心当たりは……まぁ、ないわけではない。

私の体の不調はもしかしたらーー

 

 

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