【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完) 作:藍沢カナリヤ
あんま期待せんといてくださいよ!
ーーーー京都校寮内ーーーー
「さて、新田。ゲームをするぞ」
とある休日の昼間。
私は唯一の同級生・新田新の部屋に押し掛けて、そう言った。
「……また来た」
呆れられている気もするが仕方がない。京都校の寮内でゲーム機があるのはここだけなのだ。自分で買ってもいいんだが、いまいち踏ん切りがつかないのである。だから、レトロゲーを買ったのを機に、こうして新田の部屋に遊びに来ることが多くなっていた。
「いいじゃないか。唯一の同級生だ、仲良くしよう」
「そう言うて、この間の交流会1人だけ参加した癖に」
どうやら拗ねているらしい。
「拗ねるな拗ねるな、仕方ないだろう」
「別に拗ねてはおらんけど……」
呪術師とはいえ、彼もまだまだ若い。まだ16ならば可愛いものだ。
「というわけで、ゲームをしよう」
「この人、ほんとに話聞かへん……」
……………………
なんだかんだと言いつつも、共にゲームをしてくれる新田。まぁ、今やっているのは私が買ってきたレトロゲームではなく、新田の部屋に元々あった簡単なミニゲームを集めたものだ。
かれこそ1時間ほどいわゆる双六をやっているのだが、2人でだらだらとできるからいい。
「あっ、また戻された!」
「ふふん、勝負は時の運。まぁ、運も実力のうちだがな…………あっ」
「運も実力のうちやったっけ?」
「止めろ、駒を戻すな! 止めてくれ!」
「無理な相談ってやつだ」
さらにそこから約1時間ほどそのゲームに興じて、
「んー!!」
ひとつ伸びをした。朝からぶっ通しでやっていたのだ。体も凝る。それは新田も同じようで、軽く肩を回していた。
時計を見れば、ちょうどお昼時。
…………ふむ。
「腹がすいたな」
「同感」
2人の意見はすぐに一致し、私たちは立ち上がる。集合時間を改めて確認し、私はそのまま部屋を出た。
ーーーーーーーー
私たちはふぁみれすに直行した。
ふぁみれすはいい。なんでもある。ほとんどのものは私が知らない料理なのだが、写真があるお陰でどんな味なのか大体想像できるのもいい。
「ポテト摘まむ?」
新田にそう聞かれ、めにゅーを確認する。なるほど、揚げた芋か。それはまずい訳がない。
「頼もう」
「ん……あとは……」
めにゅーとにらめっこする新田。彼はその術式の特質上、あまり前線に出ない。そのため、他の術師と比べて稼ぎは少ないのだ。色々と苦労はしてるのだろう。
「新田」
「なに?」
「ここは私が出そう」
「…………ほんまに?」
「ほんまほんま」
私がそう言うと、新田は目を輝かせ出す。
ふふっ、まるで子供のようだ。父性のようなものを感じながら、私は彼が選ぶのを待ったのだった。
「すんませーん! メニューのここから、ここまで」
おい。
……………………
「いくら、なんでも……頼みすぎ、だ」
「しゃあないでしょ。そんなこと言われたら」
2人で破裂しそうな腹を撫でながら、言い合う。なんと新田は食べきれる算段もなく頼んだのである。計画性がないにも程がある。そのせいで私の胃袋も破裂寸前だ。この男、紳士のような見た目の癖に、たまに変なことをやらかす。
まぁ、そこが面白いのだが。
「もう少し休もうか」
「賛成」
背もたれに寄りかかって、腹を休めている間。
何気ない会話を交わす我々。
「新田」
「なんです?」
「お前は京都校の誰と仲がいいんだ?」
「んー、メカ丸さん? なんだかんだ面倒見いいし、あの人」
「ふむ。確かにメカ丸はいい奴だな」
「なんでそんな得意気なん?」
憲紀以外だと恐らく一番仲のよい友人が褒められているのだ。これが得意気にならないでいられるか。いや、いられまい。
「霞や真依はどうだ?」
「三輪さんはまぁ、普通やけど……真依さんは苦手」
まぁ、物言いも強く煽り癖の強い女性だからな、彼女は。仲良くできるかどうかは人を選ぶというものだ。
「それに俺、強い人ダメ。姉ちゃん思い出して胃が痛なる」
「そういえば、姉がいると言っていたな。姉も呪術師なのか?」
「いや、東京で補助監督やってる。強いのは、態度というかなんというか……ヤンキー気質で」
「ヤンキー……?」
「昔、ちょっと悪さしてたんよ。そのくせ、俺の監視のために補助監督にまでなって……」
そういう彼の口調は迷惑そうではあったが、どこか優しげだ。きっと彼自身も姉からの愛情を感じているからなのだろう。弟の監視なんて理由だけで、呪術の世界に入ってくる人間など普通はいない。その姉はきっと新田のことが心配なのだ。
「ふふっ、いい姉弟愛だ」
「話聞いとった?」
ふと辺りを見渡すと、ちらちらと店員がこちらを見ているのが分かった。時計を見ると、優に店に入ってから4時間は経っていた。
ふむ、ここいらが潮時かな。
「新田、そろそろ出ようか」
「……はぁ、分かった」
ーーーーーーーー
帰り道。
少しずつ日が落ち始めていて、夕焼けが私たちの影を長く伸ばしていた。そろそろ10月。少々、冷えるな。
ーーフラッーー
「あっ……」
一瞬、気が遠くなり、足元がふらつく。そこを、
「ちょ、大丈夫かよ」
隣を歩く新田に支えてもらう。大丈夫だとは言葉を返すが、先日といい、今といい、やはり私の体は不調を来しているのかもしれないな。
「…………」
ーーピッ、ピッーー
ーーパンッーー
ふと彼は私の背中を叩いた。なにかと訊ねると、ただのおまじないだと答える新田。
「昔、姉ちゃんにこうしてもらったことがあって」
「いい姉ではないか」
「……まぁ」
少しだけ楽になった気がする。まぁ、気のせいだとしてもいいさ。
「今日はありがとう、新田」
「……なんやかんや俺も楽しかったから」
とある休日。
私は唯一の同級生と楽しく過ごしたのだった。
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毒のない日常回
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