【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完) 作:藍沢カナリヤ
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「さ、行きましょう! 鶫ちゃん!」
「なにしてんのよ、早く行くわよ」
「はーやーくー!」
まずい。
まずいまずいまずい。
これはどう考えてもまずいだろう。
「止めろー!!!」
私はこうなってしまった経緯を思い出していた。
ーーーー回想ーーーー
「鶫ちゃん、新田くんから聞きましたよ!」
真依と西宮先輩を連れて、私の部屋にやってきた霞は開口一番そう言った。
新田から? 何をだろうか?
この間遊んだときのことか?
そう思って、声をかけなかったのは悪かったよと謝罪したのだが、それはどうやら違うようで。
「違います」
「じゃあ、なんだ?」
「鶫ちゃん、具合悪いんでしょう!」
なるほど。帰り際にフラついたことを伝え聞いたのか。
新田め。余計なお節介を……。これでは交流会の帰りに狗巻に口止めした意味がなくなったではないか。
仕方がない。適当に誤魔化すとしようか。
「あの日は少々寝不足でな」
「狗巻くんからも聞きました」
狗巻!! おい、狗巻!!
結局、言ってるじゃあないか!
くっ、仕方がないか。
「……多少、眩暈がすることがあるのは認めよう」
「ほら!」
「だが、そこまで騒ぐことでも慌てることでもない。最近、慌ただしかったから少し調子が悪かっただけだ」
すぐ治る。そう言ったんだが、霞はめげないし、真依も加勢してくる。
「そう言ってもう10月も中旬よ。結局、治ってないじゃないの」
「ぐっ」
「反転術式による治療も受けたって聞いてるし、なに? 死ぬの?」
それも調べてるとは……恐るべし真依!?
右には真依、左には霞。
仕方がない。こうなれば、正面で爪の装飾をしている西宮先輩に助けを求めるしかーー
「温泉でも行く?」
そうして、私たち京都校女子4人は温泉に行くことになりました。
大変だ……。
ーーーー回想終了ーーーー
結局、旅館だと少々値が張ることもあって、近場の大型温泉施設に来ているのだが、
「入らない! 入らないっ!」
私は脱衣所へ向かう通路で必死の抵抗をしていた。
ひとつ言わせてほしいが、私は風呂が嫌いな訳ではない。
むしろ好きだ。日本人だぞ? 温泉が嫌いな日本人などいるものか! ただし、そんな風に声を大にして言えたのは、前世の頃のーーなんのしがらみもない中年の親父だった頃だ。
今は違う。
「恥ずかしがってるの? 別に女同士なんだし、よくない?」
それが問題なのだ、西宮先輩!
確かに、加茂鶫は女だ。毎日、入浴したいるから分かってはいる。ただし、自分の体ですらあまり見ないようにしているのだ。それを、
「裸の付き合いですよ、鶫ちゃん!」
だから、それがまずいんだって!
私もいい年だったから女の体も知ってはいる。
だが、それはあくまでも大人の女相手だ。女子高生はまずい。
「なに? もしかして、鶫ってそっちの人?」
違う! あと真依には言われなくない!
って、違う違う。
冷静になるのだ、加茂憲倫。私は知識人だ。こんな局面を超える修羅場も潜ってきている。この程度で取り乱すな。心を冷やせ。頭を回せ。
「2人は足もってー」
「「はーい」」
「いやぁぁぁぁ!!??」
西宮先輩の指示により、私は担ぎ上げられ、運ばれてしまったのだった。
ーーーー脱衣所内ーーーー
「………………」
目を開けない。ただそこに座り込む。それが私の辿り着いた答え。必死の抵抗である。
「ど、どうしよう……真依」
「勝手にすればいいんじゃない。先行ってるわよ」
「おさきー」
脱衣所に入れてしまえば、脱出はされないだろうと踏んだのだろう。もしくはどうでもいいから温泉に入りたいのだろう。
真依と西宮先輩は、どうにかしようという霞と抵抗を見せる私を置いて、先に浴場へ向かっていったようだ。
「えぇぇ……」
困り果てる霞の声が聞こえる。
すまないな、霞。私にも譲れないものがあるのだよ。
「どうしよう……鶫ちゃーん?」
「…………」
「おーい」
「…………」
「…………えっと」
「…………」
「…………仕方ない」
諦めてくれたようで、私は放置され、衣擦れの音が聞こえてきた。どうやら霞は服を脱ぎ出したようだった。
とりあえずはよかったか。そう思った矢先だった。
ーーグイッーー
「なんだと!?!?」
服を脱がされ始めてるじゃあないか!?
「おい、霞! なにをする!!」
「いやぁ、ここに放置するもの施設の人に迷惑だし」
「くっ、常識的なことを!?」
「ちょっと面倒ですけど、脱がせて連れてこうかなって」
そう言うと、ぐいぐいとこちらの服を脱がしてくる。どこにそんな力があったのかというぐらいの力であった。だが、私も『天与呪縛』で強化された肉体の持ち主。負けられない!
「ぐ、ぬぬ……!!」
「暴れないでください! 鶫ちゃんっ!!」
そんなこんなで格闘すること数十秒。何を思ったか霞はーー
ーーぐにゅーー
「っ、お、おい! 押し当てるな!!」
「こうしないと鶫ちゃん動くでしょう!?」
背中にっ!? 妙に柔らかいものが!?
思ったよりもある!
「ではない!!」
ーープルルルルーー
そこで、脱衣所に音が鳴り響いた。
この音、私のケイタイの着信音だ。音を頼りに、脱衣所を這い回り、私の荷物が入った脱衣籠に辿り着く。
他の光景が見えないように、画面だけを見ながら、電話に出た。
『ーーーーーーーー』
「あぁ、わかった。すぐ行く」
ーーピッーー
電話を切って、霞の気配を辿り、向き直る。もちろん目を閉じたままである。
「鶫ちゃん? どうしたんですか?」
「少々、急用ーー任務が入ってな。皆はゆっくり休んでくれ」
「え? あっ、ちょっと!?」
私はそう言って、気配を頼りに脱衣所を出た。
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電話の相手は、メカ丸。
我が友は私の窮地を救ってくれたのだった。
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温泉うふふ回だと思った?
残念、お預けだ
シリアス回と日常回どちらが好き?
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シリアス回
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日常回