【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第30話 友と共に

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メカ丸からの電話を受けて、私は待ち合わせ場所に向かっていた。場所は私たちがいた温泉施設から、電車で少し行ったところにある廃墟。そこに出るという呪霊を祓うのが今回の任務らしい。

30分ほどで、その場所に着く。先客がいた。あの背格好は、メカ丸だ。

 

 

「メカ丸」

 

 

私が声をかけると、メカ丸は手を挙げて応える。どうやら傀儡自体も完全に直り、動けるようになったようだった。

 

 

『早かったナ』

 

「あぁ」

 

『今日は三輪たちと出掛けると聞いていたガ。すまないナ』

 

「…………いや、むしろ助かった。ありがとう、メカ丸」

 

『?』

 

 

我が恩人に礼を言う。もちろん彼には何のことか分からないだろうが、まぁいいだろう。

 

 

「さて、呪霊はこの廃墟の中か?」

 

『あァ。昔、ここで事故があったらしイ。それ自体はそこまでではなかったんだガ……』

 

「尾ひれがついた噂ほど面倒なものはないな」

 

『そういうことダ』

 

 

言葉を交わしながら、私とメカ丸はその場所へと踏み入った。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「こんなものか」

 

 

任務自体は至極簡単だった。私はもちろん、メカ丸も『刀源解放』で近接戦闘を行い、あっさりと制圧したのだった。

 

 

「流石だな、メカ丸」

 

『この程度で褒めるナ』

 

「ふっ、まぁ、そうか」

 

 

メカ丸の等級は準一級だと聞いている。私の等級が未だに四級であることを考えると遥かに上にいるというわけだ。そもそも私が褒めるのがお門違いだろう。

 

 

『そんなことはなイ。鶫の体術や戦い方、そして、知識量は俺以上だろウ』

 

 

そんな風に謙遜して、こちらを持ち上げる言葉をくれるメカ丸。本当にいい奴で、彼の人格ならば京都校の皆から信頼されているのも頷ける。

………………ふむ。

 

 

「なぁ、メカ丸」

 

『? なんダ、鶫』

 

 

本当はなかなかに機会がないからと先延ばしにするつもりだったのだ。だが、こうして誰にも話を聞かれそうにない場所で、2人でいるのは……きっと運命なんだろう。

仕方がない。本当に気は進まない。

けれど、ここいらではっきりさせよう。

 

 

 

 

「お前、なんで今日、私が霞と出掛けていることを知ってるんだ」

 

 

 

 

『………………』

 

 

私はそれを訊ねた。

 

 

『三輪から聞いたんダ』

 

「聞いた? それはいつだ?」

 

 

今日、霞たちと出掛けたのは突発的なもの。しかも、温泉施設に行くということで女子だけでの行動だった。あの提案を受けて、強引に連れて行かれてから今まで、霞とメカ丸が接触していないことは私がよく知っている。その上、霞は今日、携帯を忘れたと言っていたのだ。連絡をとる手段はない。

 

 

「ならば、メカ丸よ。お前はなぜ知っている?」

 

『…………』

 

「真依や西宮先輩から聞いたというつもりか」

 

『…………』

 

「だんまりか?」

 

 

メカ丸は答えない。けれど、私は質問を続ける。

 

 

 

「交流会の前日、お前、誰かと会っていただろう」

 

『そんなわけはないだろウ。このメカ丸の姿で動ける訳がないのは鶫も理解できるはずダ』

 

「いやほん型」

 

『ッ』

 

「私は渋谷で、いやほん型のお前が黒い僧衣の男の耳についているのを目撃している」

 

『…………』

 

 

メカ丸は動かないし、答えてもくれない。

これは、もう……。

 

 

『だから、どうしタ。鶫、お前は何が言いたいのダ』

 

「…………」

 

 

本当は、メカ丸の口から言って欲しかった。彼はこの時代に転生してから私に色々なことを教えてくれた恩人だ。それに普段の彼を見ていれば分かる。新田も言っていたが、メカ丸は世話焼きで親切ないい奴だ。私の大切な友人だ。

だから、正直信じたくはなかったのだ。

 

 

 

 

「メカ丸」

 

「お前が内通者だろう」

 

 

 

 

ーーーー回想ーーーー

 

 

「で? なんで鶫までこの場に呼んだのよ」

 

 

歌姫女史との野球観戦の後。

彼女に連れられて、とある喫茶店を訪れていた。そこには彼女を呼び出したという人物・目隠し男こと、五条悟がいた。今日はあの趣味の悪い目隠しではなく、さんぐらすをしている。胡散臭いのには変わりないけれど。

 

 

「いやぁ、悪いね。鶫だったっけ?」

 

「……あぁ」

 

 

胡散臭い男に名を呼ばれるのは少々嫌だったが、それを言い出しては話が始まらない。ここは黙って、話を聞くとしよう。

 

 

「君、内通者でしょ」

 

「ちょっ、五条ッ!!!」

 

 

いきなりそう言われた。だが、

 

 

「?」

 

 

正直、意味が分からなかった。

内通者? なんの話だ?

そう言うと、五条はひとつ息を吐いて、歌姫女史に言う。

 

 

「残念、外れだ」

 

「あんたねぇぇっ!!」

 

 

怒り心頭の歌姫女史を放っておいて、彼は私に語りかけてくる。

 

 

「交流会に特級呪霊が入り込んだでしょ」

 

「あぁ」

 

「あの時、君は高専忌庫の前で倒れていた。何をしていたか聞いたけど、あの時言ったこと覚えてる?」

 

「妙な気配がしてそこへ向かったら、継ぎ接ぎの呪霊と戦闘になり、術式を喰らった結果あそこで倒れていた、だったか」

 

「そ。本当なら、それあり得ない話なんだよ」

 

 

だから、僕は君を疑っていた。だが、どうやら内通者の件について、嘘は言っていないようだ。

彼はそう言って、さんぐらすを外し、私を見た。

 

 

「……なるほど。『六眼』か」

 

「博識だ」

 

「一般教養だろう」

 

「はっ、言うねぇ」

 

 

それはいいとして。

話をそこで切って、彼は続ける。

 

 

「ともかく、僕と歌姫は学生の中に、奴らーー呪霊と繋がっている内通者がいると考えている」

 

 

正確には呪霊と繋がってる上層部へ情報を流してる奴だろうけど。五条はそう補足する。

手引きか情報を流す人間の存在か。ない話ではない。

……それで私か。今年からの転入生で、術式も呪力も持たずに、あの学長殿のいる京都校に突如として現れた人間。

まぁ、言われてみれば怪しいことこの上ないな。

 

 

「歌姫から可能性として、君の名前が挙がったからこうして会ったけど……まぁ、歌姫だから仕方ないか」

 

「おい! 歌姫だからとかいうな! 先輩を敬えぇ!」

 

 

笑う五条と怒る歌姫女史。混沌である。

……しかし、ふむ、内通者か。

 

 

「歌姫女史」

 

「なに!!」

 

「私以外だと誰が怪しいと思う?」

 

「っ」

 

 

そう訊ねた。五条は歌姫の意見聞いたって無駄だと言うが、京都校の皆をよく知っているのは歌姫女史だ。彼女の意見は一聴の余地があるはずだ。

 

 

「…………」

 

 

しばらく悩んだ後。

彼女は口を開いた。

 

 

「消去法よ。誰も怪しくない。私は皆を信じてる」

 

「もしこちらの情報を集めることができるとしたら、恐らくーー」

 

 

 

ーーーー回想終了ーーーー

 

 

 

『…………』

 

「なんとか言ってくれ、メカ丸」

 

 

否定してくれ、メカ丸。

物的な証拠はない。あくまで状況証拠だけだ。だから、お前が否定してくれたらーー

 

 

『そうダ。俺が内通者ダ』

 

「~~っ」

 

 

メカ丸は静かに下を向いたまま、そう答えた。

 

 

「……そう、か」

 

『何故とは聞かないのだナ』

 

「交流会の日、私は継ぎ接ぎの呪霊と戦闘した。その時に、その呪霊の術式で死んだと思われる遺体を見ていたのでな」

 

『……もう察しはついていル。そういうことカ』

 

「あぁ」

 

 

メカ丸から体のことは聞いていた。

体が正常になるならば、呪力も術式も喜んで捨てようと、そう言っていた。つまり、彼の望みはーー

 

 

『肉体を治す代わりに、奴らに情報を提供すル』

 

『そういう『縛り』を交わしタ』

 

 

「…………そうか」

 

 

納得した。いや、歌姫女史から内通者の話を聞いた時点で、確信はしていたのだ。今さら驚かない。

ゆっくり目を閉じる。

 

 

『鶫』

 

 

そんな私の名を、メカ丸は呼んだ。

 

 

「なんだ?」

 

『俺を告発するのカ』

 

「…………」

 

『それならそれで構わなイ。ただもう少しだけ待ってくれないカ』

 

「…………」

 

『2日後。必ず俺は全てを皆に打ち明けル。だかラーー』

 

「分かった」

 

 

メカ丸は約束は守る男だ。

だから、私はメカ丸を信じる。

 

 

 

「待っているよ、メカ丸」

 

『あァ、約束ダ』

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

10月17日。

これが私とメカ丸の最後の会話だった。

 

 

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次回、宵祭り編突入!

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