【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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宵祭り
第31話 宵祭りー壱ー


ーーーーーーーー

 

 

「メカ丸~」

 

 

三輪は俺の名を呼んだ。どうやら相当探してくれていたようで、少し息が切れている。座学のノート提出が今日までだと伝えにきてくれたようだった。

 

 

「メカ丸?」

 

『スマン、三輪。少し寝ル』

 

 

ノートは机から勝手に取るように頼むと、三輪はその言葉通りに俺の机の上を探し出す。

 

 

「寝るって……まだ夕方ですよ?」

 

『…………』

 

「もぉ~!」

 

 

抗議の声をあげる三輪の声を聴きながら、俺はメカ丸との接続を遮断した。

 

 

ーーーーとある山間部・ダムーーーー

 

 

「来たか」

 

ーーコツンッ、コツンッーー

 

 

足音が響く。2人分の音だ。予定していた時間よりも少し遅れている。何をしていたのか分からんが……。

 

 

「遅かったな。忘れられたかと思ったぞ」

 

「そんなヘマはしないさ」

 

 

逆光で見えなかった2人の人物の顔が見えた。

夏油傑。4人しかいない特級呪術師の1人。

そして、

 

 

「相変わらずカビ臭くてやんなるね」

 

 

『真人』。

虎杖や七海一級術師、そして、鶫が戦った特級呪霊。

俺はこいつらと取引をしていた。奴らに協力し情報を提供する代わりに、『真人』の『無為転変』で体を治させる。そういう『縛り』だった。

だが、

 

 

「彼には渋谷でも働いてほしかったけど仕方ないね」

 

 

いけしゃあしゃあと……。

 

 

「京都校の人間には手を出さない。先に『縛り』を破ったのは貴様らだろう」

 

「やったのは『花御』だもーん。八つ当たりはやめてほしーなー」

 

「お前も手を出していたのは知っている」

 

「あれは正当防衛でしょ」

 

 

本当にこの呪霊はいちいち癪に障る。これ以上は話しても無駄だろう。そう判断した俺は、さっさと体を治すよう、目の前の下衆に指示をする。

俺の煽りで向こうも癪に障ったようだが、知ったことか。あちらも10月31日のハロウィンに向けて、不確定要素は消したいはずだ。ここで『縛り』を破ることは絶対にない。

俺の読み通り、『真人』を夏油が止めた。そして、奴の掌が俺の頭に触れた。

 

 

「感謝してよね、下衆以下」

 

『無為転変』

 

 

瞬間、体が作り替えられる感覚が全身を走り、

 

 

「……………………」

 

 

あぁ、手だ。掌が動く。

それに肌の痛みももうない。

……足。あぁ……自力で立てる。

 

 

「かわいくないなー。もっとハシャげよ」

 

 

お前に言われなくても本当はそうしたいさ。泣き叫んで生きていることを喜びたいさ。

だが、それはまだ早い。むしろ、ここからが本番だ。

 

 

「……それは事が済んだ後だろう」

 

「それもそうだね。じゃあ……始めようか」

 

 

奴の言葉を合図に、俺は呪力を解放する。確実に出力は落ちている。それに術式範囲もかなり狭い。だが、17年も自らの肉体として使ってきた傀儡だ。少なくなった呪力でも手足のように動かせる。

 

 

ーーガチャガチャガチャガチャーー

 

 

複数のメカ丸を一斉に、奴へ襲いかからせる。それを、

 

 

ーーバキバキバキバキッーー

 

 

一瞬で破壊する『真人』。

分かっている。見てきているんだ、この程度で祓える奴ではないことは理解しているさ。俺の狙いはそこじゃない。

奴が攻撃に集中した瞬間に、俺はさっきまで俺の体が培養されていた場所の裏手から地下へと降りていく。

ここで逃げるのもありだろうが、恐らく『帳』が降ろされている。となれば、逃げることはできないだろう。

だからーー

 

 

ーーボンッーー

 

 

川底から現れた巨大なメカ丸。

究極(アルティメット)メカ丸 絶対形態(モード・アブソリュート)

こいつで『真人』を祓う。

 

2対1。依然劣勢。だが、勝算はある。

全て視てきた。

俺を縛った年月で得た呪力。17年5ヶ月6日。出し惜しみはしない。

 

 

「チャージ1年!」

 

「焼き払え! メカ丸!!」

 

 

 

「『大祓砲(ウルトラキャノン)』」

 

 

奴がいた橋ごと爆撃する。直撃したはず。だが、それでも奴は煙の中から飛び出してきた。

分かってるさ。

メカ丸の攻撃では『真人』の魂まで傷つけられない。奴も今のでそれを確信したハズだ。

 

 

ーードゴォォォンッーー

 

 

すかさず連撃。奴を殴るが、的が小さいこともあり、外してしまう。奴はそのままダムの水中へ。着水の瞬間に、魚へ形を変えたのが見えた。

だが、

 

 

「関係ない!! チャージ2年」

 

「『二重大祓砲(ミラクルキャノン)』!!」

 

 

2年分の呪力で放つ『二重大祓砲』は強力で、ダムの水ごと『真人』を空中へ巻き上げた。空中では避けられないだろうが、それでも奴は攻撃の姿勢を崩さない。魂には至らない俺の攻撃など意に介していないからだ。

 

 

「あぁ、そうしてくれ!」

 

 

ーーゴィンッーー

 

「っ」

 

 

奴の攻撃に、『絶対形態』が揺れる。なんてパワーだ。グダグダやってると装甲を破られるな。

 

 

「チャンスは4回……!」

 

『術式装填』

 

 

コックピットの側面に『それ』を装填すると機内に響く機械音。同時に、前面の液晶に狙撃用のターゲットが浮かび上がった。

狙え、与幸吉(むたこうきち)

初撃を外せば、奴は警戒する。そうならないように確実に当てるんだ。

鳥に形を変えて飛ぶ『真人』の一瞬の隙、羽ばたきの合間にーー

 

 

 

「撃て、メカ丸!!」

 

ーーパァンッーー

 

 

 

俺は『それ』を奴に撃ち込んだ。

命中したのを確認して、そのまま『絶対形態』で叩き落としにかかる。

 

 

「意味ないって。今まで何見てきたの」

 

 

あぁ、そうだよな。

油断するよな。

 

 

ーーボウッーー

 

「……アレ?」

 

 

 

ーーバチィィィンッーー

 

 

 

奴の思考と動きが止まったその瞬間に、『絶対形態』は『真人』を叩き落とし、近くの森まで吹き飛ばした。

奴を見れば、再生しないことに混乱しているようで。

 

 

「そうなるよな!!」

 

ーードドドドーー

 

 

その隙に、さらに攻撃を叩き込む。だが、奴はすり抜けるようにその場から鳥に変身して離れた。

って、

 

 

「!」

 

 

とばした左腕が再生してる!

……いや、あれはブラフ。魂をこねくり回して再生しているように見せかけてるだけだ。

大丈夫。俺のこの手は効いてるはずだ!

 

 

「チャージ5年」

 

「『追尾弾(ビジョン)五重奏(ヴィオラ)~』」

 

 

追尾する5つのビーム。さらに打撃を重ねていく。奴はどの攻撃が魂まで傷つけられるのかまだ分かっていない。

 

 

「いける! 勝てる!」

 

『術式装填』

 

 

「会うんだ! 皆に!!」

 

 

 

 

「『領域展開』ーー『自閉円頓裹』」

 

「はい、お終い」

 

 

 

軽薄な言葉と共に、俺と『真人』の周りに奴の『領域』が拡がった。気味の悪い掌で覆われた空間で、奴はーー

 

 

「『無為転変』」

 

 

それを使った。

 

 

ーーガシャァーー

 

 

「直接触れなくたって領域に入れちゃえば関係ない。それはオマエも分かってただろ?」

 

「ハロウィンまでざっと10日。呪力をケチって領域まで使わないと思ったか? 10日も休めば全快するよ」

 

「作戦に夢と希望を詰め込むなよ。気の毒すぎて表情に困るんだよね」

 

 

 

 

ーードスッーー

 

「は?」

 

 

 

ご高説どうも。

表情に困る? いい表情じゃないか。困惑し、虚を突かれたそんな表情ができてる。

なぁ、下衆野郎。

 

 

ーーーーーーーー

 

それは平安時代。

蘆屋貞綱にやって考案された。

呪術全盛の時代、凶悪巧者な呪詛師や呪霊から門弟を守るために編み出された技。

一門相伝。その技術を故意に門外へ伝えることは『縛り』で禁じられている。

それは『領域』から身を守るための弱者の『領域』。

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「シン・陰流『簡易領域』」

 

 

 

全て視てきたんだ。

撃ち込まれた『簡易領域』は、奴を内部から破壊し祓う。俺の眼前で、

 

 

ーーパァァンッーー

 

 

奴は破裂した。

……よし、よしっ、よしよしよしっ!!!

 

 

 

「オオオオオオッ!!!」

 

 

 

勝てた、勝てたんだ!

予想以上にうまくいった。嬉しい誤算だ。『簡易領域』1本と呪力9年分を残して、夏油と闘れる!

勝てる。

皆に、会える!!

 

 

「撃て! メカ丸!!」

 

 

 

ーーバリィィィンッーー

 

 

 

勝利への確信と次への覚悟。

それを決めたはずの俺の前に、突如として『それ』は現れた。『絶対形態』の頭部、コックピットの装甲を破り、奴はーー『真人』は現れたのだ。

くっ、仕留め損なった!? いや、だが、まだ領域は1本残っている。

直にブチ込む!

 

 

「~~~~っ!?」

 

 

リーチの差だ。理解してしまった。

きっと俺の『簡易領域』は奴には届かない。その前に、奴に『無為転変』で殺される。

 

……あぁ、クソッ!

やっと、やっと皆に会えるのに。

鶫に。真依に。加茂に。西宮に。東堂に。新田に。歌姫先生に。そして、三輪に。

会えると思ったんだ。なのに、結局こうなるのか。

でも、これは仕方がないか。俺はきっとやり方を間違った。これはその罰なんだろう。分かってる。分かってるさ、仕方がないことだってのは!

…………でもさ、やっぱりーー

 

 

「……会いたいんだよ、皆に」

 

 

 

 

「ーーあぁ、分かってるさ」

 

 

 

 

ーーバリィィィンッーー

 

「!?」

 

 

『真人』が入ってきたのとは反対側。そこから彼女は現れた。装甲を素手でぶち破り、入ってきたのだ。

そして、

 

 

 

「汚い手で私の親友に触るなッ!!!」

 

 

 

ーーーーバギィィィッーーーー

 

 

 

彼女は私の眼前にまで迫った『真人』を殴り飛ばした。

静寂。

予想外のことに、言葉が出ない。そんな俺を見て、彼女は穏やかに笑いかけた。

 

 

 

「初めましてだな、幸吉」

 

 

 

加茂鶫。

裏切り者の俺を信じてくれた、俺の親友の姿がそこにはあった。

 

 

ーーーーーーーー




さぁ、絶望を壊そう。
これこそが転生ものの醍醐味だろう?

シリアス回と日常回どちらが好き?

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  • 日常回
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