【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完) 作:藍沢カナリヤ
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私がそこに辿り着いた時、状況はよく分からなかった。
けれど、先程まで降りていた『帳』は上がっており、戦闘が終了したであろうことは察しがついた。そして、巨大なメカ丸があげた咆哮で、メカ丸の勝利で戦闘が終わったことも予想できた。
だが、
「『奴』の気配っ!!」
確実にいる。交流会の日、私が戦ったあの継ぎ接ぎの気配はまだ消えていない。奴はまだ生きている。
メカ丸は内通者だ。にも関わらず、戦闘を行ったということは何らかの交渉は決裂したということ。奴らにとっては呪術高専側に計画が流れるのは阻止したいはずだ。ならば、奴がとり得るのは、メカ丸を確実に抹殺すること。
「やらせるかっ!!」
足に全膂力を集中させ、踏み出す。そのままの勢いで、巨大なメカ丸の頭部へ突っ込んだ。
そこにいたのは、少年と継ぎ接ぎの化物。彼がそうであることは一目で分かった。だが、その彼は今にも刺し違えそうな勢いでーー
やめろ。やめろ、やめろ!!
「汚い手で私の親友に触るなッ!!!」
ーーーーバギィィィッーーーー
感情の限り、私は奴を殴り飛ばした。そのまま奴は巨大なメカ丸の中から吹き飛んでいった。本当ならば追撃した方がいいのだろう。
だが、今はそれよりもすべきことがある。
「初めましてだな、幸吉」
メカ丸もとい与幸吉。
私の親友に初めましての挨拶をすること以上に優先すべきことはないだろう。
「……鶫、お前」
「中々の美声じゃないか」
「っ、ははっ、第一声がそれかっ」
少しだけ目の端に涙を浮かべて、幸吉は笑う。何か憑き物が落ちたようなそんな表情だ。
「……すまないな、約束破った」
約束。
それは2日前にした、メカ丸を待つというものだ。それを私は破った。なんとなく嫌な予感がしたのだ。その結果、こうしてここに駆けつけるに至った。
「いや、助かった。俺1人だったら、今頃死んでた」
「ならば、お相子ということでよいか?」
「ふっ、あぁ」
手を差し伸べると、幸吉はその手を取り、立ち上がった。
「もうここも破られた。ここに留まるのは悪手だ」
「ふむ。幸吉、お前呪力はどうなった?」
「『天与呪縛』が俺を縛った年月……残り9年分。少しの間だが、特級レベルの出力は出せると思う」
そう言って、幸吉は自らの手の感覚を確かめるようにする。
そうか。今まではそんな動作も満足にできなかったのだ。それを見て、少し微笑ましい気分にもなるが、
「おいおい、殺したよな、お前」
会話を楽しむ訳にもいかないらしいな。奴は巨大メカ丸の下からこちらを見上げている。
「幸吉、奴の術式は?」
「原型の手で触れたものの魂に触れ、肉体を作り替える術式だ。あとは奴自身の肉体も変えられる。その上、普通では攻撃が通じない」
やはりあの時の読み通りか。とすると、あと懸念すべきは『領域』だが、
「『領域』はさっき使わせた。もうない」
「使わせた? ならば、どうやって……」
「三輪の『簡易領域』をこいつに封じてある。それで防いだ」
「……そうか、よかった」
幸吉がそれを使えなかったらと思うと、寒気がする。これは霞に感謝しなくてはな。
さて、情報の共有は終わった。あとは目の前のこいつを祓うだけだ。
「では、行こうか、幸吉」
「あぁ」
2人でそのまま巨大メカ丸の頭部から降り立つ。
その瞬間を奴は見逃さない。着地の瞬間を狙って、腕を棍棒のような形状に変形させてきた。だが、
「それは効かんッ!!」
ーーバギッーー
一瞬、先に降りた私がそれを踏みつけ、抑え込む。それに合わせて、幸吉が叫んだ。
「チャージ2年!」
ーーガシャッーー
ーーガシャッーー
ーーガシャッーー
ーーガシャッーー
「!?」
物陰に隠れていた複数のメカ丸による同時射撃。それを見て逃げようとするが、
ーーグイッーー
「逃がさんよ」
奴の腕を掴む。私の力だ。簡単には引き剥がすことはできない。
「はっ、お前ごと攻撃? 本当に友達か」
「あぁ、親友だよ」
「撃て、メカ丸っ!」
ーーーーゴォォォォォンッーーーー
轟く音。私はメカ丸による砲撃の着弾直前に離脱できたが、奴は直撃した。けれど、まだ終わっていない。
「幸吉!」
「あぁ、畳み掛ける!」
幸吉と共に駆ける。砲撃による煙が晴れ始め、人影が見えた。その瞬間に、
「はぁっ!!」
ーーバギッーー
一撃。
「刀源解放!」
加えて、2体のメカ丸による斬撃が奴の肉体を刻んだ。継ぎ接ぎの上半身と下半身が別れる。
さらに、
「らぁッ!!」
ーーバキィィッーー
ーーバキィィッーー
私の蹴りが奴の別れた肉体に一撃ずつ入る。そのまま吹き飛ぶ継ぎ接ぎ呪霊。
「……本来ならば祓えてもおかしくないんだがな」
「はぁ、ホントうっとうしい。効かないってそっちのに聞いたでしょ?」
奴は戦闘中にも関わらず、ため息を吐いた。何事もなかったかのように、上半身と下半身は繋がっていた。
これでもまだ祓えんか。本当に厄介な相手だ。
「このまま続けても意味ないんだけどなぁ」
奴の言うことには一理ある。正直、こちらは人間である以上、私たちの疲労は溜まり続け、呪力は減り続ける。一方で奴は呪霊、呪力こそ減れど、疲労もダメージも入らない。
あぁ、分かってるさ。だがな、呪霊よ。
「……その術式だって、呪力を全く使わない訳じゃあないんだろう?」
「俺の呪力が尽きるまで殺し続けるって?」
「やってみろよッ!!」
ーーブンッーー
継ぎ接ぎが叫ぶと同時に、奴の腕が鞭になり、一瞬で私たちの間の距離を0にしてくる。
「幸吉!」
「っ、あぁ!!」
鞭がこちらへ届くよりも先に、幸吉を足に乗せ、上空へ蹴りあげた。逆に、私は鞭の下に潜り込み、そのまま距離を詰める。奴までの距離は100m。私ならば数秒程度でこの距離を詰められるのは、奴も分かっているだろう。
だが、奴は距離を離そうとしない。なぜなら、私の攻撃が通じないことを分かっているから。
「おいおい! 攻撃を避けられない空にお友達を放っていいのかよっ!」
そう言いながら、鞭から次の攻撃へ繋げようとする呪霊。もちろん、攻撃先は身動きのとれない幸吉だ。
「目の前でお友達が死んだら……どんな顔になるーーかなッ!!」
奴の腕は太い針へと形を変えた。それでそのまま幸吉を貫こうとする。
そんな奴に、私は一言だけ言い放った。
「本当にいいのか?」
その言葉で、奴の視線がこちらへ向く。その視線の先には、私の手。私の手の内には『それ』がある。
「っ、それはっ!?」
「『これ』は効くんだろう?」
幸吉から受け取っていた筒状の呪具。
そう。今、私の手には『簡易領域』が握られていた。
「っ、こいつっ!?」
慌てて、奴は距離をとった。だが、私相手に生半可な速度で逃げられると思うなよ。
呪力が尽きるまで殺し続ける?
それを私は一度も肯定してない。
「~~~~っ!!」
私から離れられない。そう判断したのだろう。一転して、奴は私へその掌を伸ばしてくる。
……そうだろうな。触れば勝利の術式だ。逃げられないのならば攻めるしかない。
だが、
「いいのか? 後ろがお留守だぞ?」
「チャージ7年!!」
奴の後ろにはすでに幸吉と5体のメカ丸がいた。それに構わず、継ぎ接ぎは手を伸ばしてくる。狙いは私。
「いくら特級レベルの出力でも俺は殺せないっ! 『それ』を持つお前さえ殺せば俺は死なないっ!」
「その通りだ、呪霊。だがなーー」
ーーパァンッーー
「この殺し合いは私と幸吉の勝ちだよ」
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その術式の対象は、一定以上の呪力をもつ物。
呪術師や呪霊、呪骸は勿論、呪具などの無生物も対象とする。
その術式効果は『位置の入れ替え』。
名は『
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「は?」
柏手と共に、私の手元から『それ』が消え、代わりに一体のメカ丸が現れる。理解も、想像もできないだろう。
まさかお前が警戒していた『簡易領域』を、
ーーグサッーー
「終わりだ、『真人』」
全く警戒していなかった幸吉が持ってるとはな。
ーーググググググッーー
『簡易領域』が『真人』と呼ばれた呪霊の内側から展開していく。『領域』が膨れ上がり、破裂しかけたところで。
「鶫! 頼む!」
「分かっている!!」
ーーガシッーー
奴を抱き締めた。
「喜べ、女子高生の抱擁だぞ?」
「お、まっ、えッ!?!?」
「『
その瞬間、光が私と奴を包み込んだ。
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