【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完) 作:藍沢カナリヤ
第34話 憲倫くんは親友の恋を応援したい
ーーーー京都校・食堂ーーーー
「幸吉。お前、霞のことが好きなのか」
「ぶっ!?」
幸吉が肉体を取り戻してから初めての土曜日。
残念ながら、呪術師は忙しく、全員揃ってはいない。私と幸吉、真依と新田で遅めの昼食をとっていた時に、ちょうどいいからと私はそう訊ねた。
それを受け、幸吉は口に含んでいたお茶を吹き出し、それが新田にかかった。まじうける。
っと、
「…………」
「す、すまん、新田……」
びしょ濡れになった新田をハンカチで拭く幸吉。
「で、どうなんだ?」
「……ノーコメント」
答えない。ということはほぼ答えを言っているようなものではないか。
そうかそうか。私は気づかなかったが、呪術師同士でそのような甘酸っぱい恋もあるのだな。うむ、いいではないか! 明治と比べて呪詛師もそこまで活発でなく、例外はあるが呪霊もまぁ、強くはない。平和な時代だからこそ生まれる感情……呪術とは正反対のいいものだ。
「ふっ」
「またババ臭い雰囲気出してる。鶫、あなた、おっさんみたいよ」
「否定はせんよ」
いつもの真依の発言は適当に流す。それよりも今は幸吉と霞の話をすべきだろう。
「幸吉。それで、どうする?」
「……いや、どうするって何がだよ」
私の問いに、彼はそう答えた。答えたというよりもとぼけた。それを見て、真依はため息を吐く。
……なるほど。真依や西宮先輩は前から彼の恋心に気づいていたらしく、外野からそれを見続けてきた。メカ丸として振る舞っていた頃はその境遇ゆえに踏み出すことはできなかっただろうが、今は違う。生身の肉体があるにもかかわらずこれだ。真依もため息を吐きたくもなるさ。
「これであの娘気づいてないんだから大概よ」
人のことは言えないが、霞も大概だな。
……ん? いや、待てよ。メカ丸時代は表情が隠れているからギリギリバレなかったのか。そう考えると……。
「なぁ、真依よ」
「なに?」
「霞の前に、幸吉を連れていけば一発でバレるのでは?」
「!」
不意に思いついた私の発言で、真依が少しだけ目を見開いた。やってみる価値はあるということだろう。
私と真依は顔を見合せて、頷いた。
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後日、面白そうとの理由で私と真依、西宮先輩が私の部屋に集まり、会議が行われた。幸吉抜きで進める幸吉の恋を応援(約2名は面白半分)する会が発足した瞬間であった。
「もう連れてっちゃえばいいじゃん」
挙手しそう言い放つ西宮先輩。やり口が直球だ。
「賛成」
「私もだ」
決定。会議終了。
というわけで、翌日、幸吉を霞の前まで連れていくことが満場一致で決まった。
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翌日。
日曜日ということで、本職はともかく、学生である我々京都校の面々は全員休みである。
ということで、私は早速、幸吉を連れ出していた。向かっているのは真依たちとの待ち合わせ場所。そこに真依と西宮先輩が霞を連れてくる手筈になっている。
「幸吉、早くしろ!」
「お、おい。どこに行くんだよ」
「いいからついてこい!」
私は彼の手を引いて、走る。まだ自分の足で走ることに慣れていない幸吉に合わせて、少々速度は抑え目に。
10分ほどして、例の待ち合わせ場所についた。まぁ、ただの大型買い物施設なのだが、学生のでーとにはちょうどいいというのは西宮先輩の談。その施設の中、あいすくりーむ屋の近くで止まり、近くを見渡す。
ここで真依たちが連れてきた霞と幸吉を引き合わせ、我々は姿を眩ますという作戦であった。
のだが、
「メカ、丸……と鶫ちゃん?」
「あっ」
霞は既にそこにいた。しかも、ひとりで。
ふむ? 真依と西宮先輩はどこにいった? いや、今、問題はそこではないな。
問題は霞の視線の先。我々の手元に向かっていて。
「今、手を繋いで…………あっ」
「お、おい、三輪。違うぞ! 違うからっ!?」
「そういう関係だったんですね……」
「いや、いやいやいや!!」
「…………おや?」
もしかして、私やらかしたか?
予定外のことに動揺していたのだろう。未だに幸吉と手を繋いだままであることも忘れていた。
呆けている間に目の前の修羅場は進む。
「あ、はは……そうですよね。うん、鶫ちゃんはメカ丸の命を救ったんだから、そういうこともあるよね」
「三輪、いや、聞いてくれっ」
ふと視界の端に、真依たちの姿があった。近くの柱に身を隠し……なんか2人ともあいすくりーむ持ってるんだが。
どうやらこれはこれで面白そうだと思ってるのか、近寄ってくる様子は一切ない。
うーむ。
「どうしよ……」
ーーーーーーーー
続きます。