【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第35話 憲倫くんは見守りたい

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結局、私は逃げ出した。

嗚呼、なんと最低な奴であろうか。

しかし、待ってほしい。あれは仕方がないだろう。

 

 

「よくもまぁ、あの場から逃げるなんて選択ができたわね」

 

 

真依からの評価も地に堕ちていた。いや、元々か?

 

 

「ま、でもさ、これでメカ丸がフォローできなきゃ、元々それまでってことじゃない?」

 

「……まぁ、桃の言う通りか」

 

 

ありがとう、西宮先輩。お陰で助かった。

つまり、私は親友に試練を与えたということで。

……うむ、そうだ。その程度の苦難で挫けるようでは霞のことは任せられんなぁ!

 

 

「それはそれとして、あんたは反省しなさい」

 

「うむ……」

 

 

正直、霞を放っておいて、あいすくりーむを買いに行った真依たちにも責任の一端はある気がするが、私にも落ち度はあるので黙って頷くしかなかった。

 

 

……………………

 

 

さて、本題だ。

我々は今、霞と幸吉の少し後ろを歩いて回っている。付かず離れずで、様子を伺うことにしたのである。

 

 

「でもさー、あれで落ち込むってことは……」

 

「えぇ、脈ありでしょ」

 

 

分かってたことだけど。真依はそう続ける。

まぁ、幸吉のことだ。私が出会う以前も世話焼きでいい奴であったのは変わらないだろう。きっと霞もそういう幸吉を見ているはずだし、その優しさに触れたこともあったはずだ。

ならば、惹かれるのも頷けるな。

 

 

「あっ、動いた」

 

 

西宮先輩の声で、再び視線を彼らに戻すと、霞が走り出したところだった。それを幸吉が止める。

手を掴んで。

 

 

「~♪ やるぅ」

 

「思ったよりも大胆ね、メカ丸」

 

「ふむ。霞も突然手を握られたことで固まってるな」

 

「霞の顔、赤くない?」

 

 

これはいいではないか?

接触した際に本当に嫌ならば振りほどくだろう。それをしないということは霞も満更ではないはずだ。

 

 

「がんばれ、幸吉っ」

 

「あっ、離した」

 

「チッ」

 

 

面白くない。そう言って、西宮先輩は舌打ちした。怖い。

だが、まぁ仕方がない。流石に展開が早すぎた。大丈夫だ、ゆっくり攻めていこう。

 

 

「…………並んで歩き出したわね」

 

「よし」

 

 

さっきまで霞が二歩分前を歩いていたことを考えたら、まずは一歩前進だ。誤解が解けたかは分からないが、何かを話しているのは見える。話が聞いてもらえるなら、まだ機会はあるはずだ。

がんばれ、幸吉!

 

 

……………………

 

 

「いいふんいひね」

 

「ふぉうね」

 

「ふぉうだな」

 

 

3人で飲食店が並んだふーどこーと?で、甘味を頬張りながら観察を続ける。くれーぷ、うまい。

私たちの視線の先には、二人がけの席で笑い合う幸吉と霞。西宮先輩の言うようにいい雰囲気で。

少々、様子見。ふむ、それにしても、

 

 

「しょふぁいめんとふぁふぉもえんな」

 

「……正直、私もまだ慣れないわ、あのメカ丸」

 

 

隣を見ると、もうクレープは食べ終わったようで、真依がそう言った。ちなみに、西宮先輩はクレープをもうひとつ注文しに向かっていた。

 

 

「真依よ、何度も言うがな……」

 

「幸吉って呼べってでしょ?」

 

 

この尾行中も何度も言ってきたからか、私の言おうとしたことを先回りして言われる。なんだ、分かっているのか。

 

 

「なら、もうメカ丸ではなく幸吉と呼ぶべきだろう」

 

「……京都校の人間からすると、メカ丸はメカ丸。1年半も一緒なのよ、今更変える必要ある?」

 

 

あだ名みたいなものよ。

真依はそんな風に悪ぶってから、続ける。

 

 

「呼び方なんて変えなくても、分かってるわ。メカ丸が京都校の人達を大切にしてたのも、メカ丸自身が苦しんだことも」

 

「それは呼び方ひとつでどうこう変わる訳じゃないし、わざわざ変えるのもわざとらしい。今の貴方を受け入れますよって……そんなのガラじゃない」

 

「メカ丸はメカ丸。私や霞のクラスメートよ。ただそれだけ」

 

「…………真依」

 

 

なんだかんだと真依は仲間思いだな。

そんな彼女の一面を見て、ふと心が安らいだ。

 

 

「だから、私は変えるつもりなし。鶫、あなた桃にも同じこと言ってたけど、きっと桃だって同じよ」

 

 

そう言って、真依はクレープ屋に並んでいる西宮先輩へ目を配る。

チラリと見ると、西宮先輩は写真と現物が違うことにキレていた。店員を睨み付けて、増量を求めている。台無しである。

 

 

「私も桃のところに参戦してくるわ」

 

 

2倍まで増量させてくるわ。真依は得意気な表情で席を立って、西宮先輩の方へ向かっていった。

 

ともかくだ。

幸吉を今までと変わらず受け入れてくれる真依や西宮先輩。家のことがあるとはいえ、きっと憲紀もそうだろう。東堂先輩は……よく分からんが、まぁ、協力してくれたし。

あとは、

 

 

「実るといいな」

 

 

私は楽しそうに微笑む2人を見て、一口、珈琲をすすった。

 

 

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2人の話は一旦ストップ。
ただし、『恋焦』編は継続します。
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