【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第41話 愛し子ー肆ー

ーーーー幸吉視点ーーーー

 

 

三輪の『簡易領域』は完璧で、本来であれば『奴』の右足が円内に入った時点で『抜刀』によるカウンターは成功していたはずだった。

だが、先に倒れたのは三輪の方で、刀が空を切る音が聞こえた。

 

 

「あ、れ?」

 

「三輪っ!!」

 

 

駆け寄って抱きかかえる。そのまま身を丸め、敵の攻撃から三輪を守ろうとするが、いつまで経っても追撃は来なかった。

 

 

「っ」

 

「………………」

 

 

すぐ三輪を背に庇うように、敵と対峙する。奴は既に俺達から距離を取っており、約100mは離れていた。

筋骨粒々で見るからにパワータイプ。さっきも三輪の『簡易領域』に突っ込んできていた。だから、肉弾戦に特化した術式をもっているのかと思ったんだが……。

 

 

「大丈夫か、三輪」

 

「あの、幸吉……」

 

 

背中の三輪にそう声をかけると、返ってきたのは明らかに動揺している三輪の声だった。

そして、彼女は言う。

 

 

「足が……白骨化してるの……」

 

「っ!?」

 

 

衝撃的な言葉に、思わず敵から目を離し、三輪の足に目をやってしまう。白骨化した三輪の左足が目に飛び込んできて。

これ、はーー

 

 

「おいッ!!」

 

「っ」

 

 

 

「いつまで余所見してんだぁッ!!!」

 

ーーバギバギバギバギッーー

 

 

 

咄嗟に反応し、奴の攻撃を両腕で受ける。同時に分かる、骨の折れる感覚。

 

 

「幸吉!」

 

「~~~~~~っ」

 

 

痛い痛い痛い痛い痛い。

両腕に走るあまりの痛みに、その場から引いてしまいそうになる。でも、そんなわけにはいかないんだ。今の三輪は動けない。俺がここから引いたらーー

 

 

「~~っ、メカ丸ッ!」

 

「ああ?」

 

 

「撃て!!」

 

 

攻撃を受け止めながら、俺は叫ぶ。それに応じるように、俺の攻撃用の傀儡『メカ丸』が奴の足元から現れる。『絶技抉剔(ウルトラスピン)』の応用で、奴の死角から地面を掘っての奇襲。

奴の術式の詳細は分からないが、メカ丸には白骨化の概念がない。これならばいけるはずーー

 

 

 

ーーバギッーー

 

 

 

一撃。メカ丸に入ったのはたった一撃の拳骨だったのに、それだけでメカ丸の装甲が砕かれた。

 

 

「っ、三輪!」

 

「う、うんっ」

 

「抱える、すまんっ」

 

 

折れているであろう腕を無理矢理呪力で強化して、腕力を上げる。こうでもしなければ、まともに腕も動かせない状態だ。だが、それでも今はここから離れるのが先だ。

激痛は耐えろ、与幸吉。裏切ってまで守ろうとしたんだ。ここで踏ん張れなかったら何の意味もなくなる。

 

 

ーーーー鶫視点ーーーー

 

 

「真依!」

 

ーーバギッーー

ーーパァァンッーー

 

 

私の攻撃に合わせるように、真依が後方から銃弾を放った。

私の蹴りは『青瘀』の首を、真依の銃弾は右目を捉えていた。手応えはあるし、目からは血も出ている。それでも『奴』は怯まないし、死なない。

 

 

「死ななくても痛みは感じるのよぉ?」

 

「ならば、怯んでくれるとありがたいのだがな」

 

「それは無理な相談ねぇ」

 

 

折れた首に構わず、『奴』は私の右足を掴み、

 

 

「ふぅぅんッ!!」

 

ーーブンッーー

 

 

投げられる。ただこの程度の速度では私を倒すことはできない。近くの墓石に叩きつけられる寸前で身を翻し、墓石を足場に。そのまま蹴り出し、『青瘀』との距離を詰めた。

 

 

「今ので当たらないのね」

 

「ーーふんっ!!」

 

 

狙うは鳩尾。『受肉体』であろうと人型である以上、急所は変わらんだろう?

私は右腕を振り抜く。

 

 

ーードスッーー

 

 

命中。だが、

 

 

「やはり効かんかっ!?」

 

ーーガシッーー

 

 

『奴』の動きは鈍くならない。それどころか距離を詰めたことで、またも腕を掴まれてしまう。

 

 

「貴女もボクのコレクションにしてあげるわぁ」

 

 

そう言うと、『青瘀』は大口を開け、その中から何かが見えた。

なんだ? 周りは暗く、よく見えないが、明らかに人間にあるはずの部位ではない。

 

 

ーーパァンッーー

 

 

真依の銃弾は三度『奴』の頭を命中するが、怯まない。

 

 

 

「おぇぇぇっ」

 

 

 

『奴』の口から吹き出る青黒い液体は宙を舞い、私の体へ降り注ぐ。まずいと本能が叫んでいる。しかし、腕を掴まれていて引き剥がせない。私の膂力でも引き剥がせんのはーー

 

 

「くっ!?」

 

「鶫!?」

 

 

万事休すか。諦めかけたその瞬間、『彼女』の声が響き渡った。

 

 

 

「『焼土永霙(しょうどえいえい)』」

 

ーーボゥッーー

 

 

 

私の顔の横をかすめていったその雫は、私を包み込まんとするその青黒い液体に当たり、燃え広がった。

赤黒い炎は私の目の前で液体を蒸発させていく。

 

 

「これは!?」

 

「っ!」

ーーゴスッーー

 

 

この機は逃せない。私は腕を掴んでいる『奴』の手に膝蹴りをかまし、一瞬緩んだその拘束から脱出した。

距離を取る。そこに、

 

 

「パパっ!!」

 

 

真依より後ろにいたはずの『焼相』は、いつの間にか私の側まで駆け寄ってきていた。そして、抱きつかれる。

 

 

「っ、『焼相』!?」

 

「ごめんね、パパぁっ、痛くなかったっ? 熱くなかったっ?」

 

「い、いや、むしろ助かったが……」

 

 

私を襲う液体を焼き尽くした赤黒い炎。その出所は見ていないから分からなかったが、『彼女』の口振りからすると、あれは『焼相』が出したのか。

 

 

「あたしの『焼土永霙』はね、触れたものを焼く。ただそれだけしかできないの」

 

 

しかも、呪力差が大きい相手には使えない。『焼相』はそれを告げた上で、

 

 

「パパ、行って」

 

 

そう言った。だが、私と真依が攻撃を組み合わせても、隙のできない相手なのだ。そんな相手に真依と『焼相』だけを残していくわけにはいかない。

私の言葉に、『焼相』は首を横に振る。

 

 

「パパはおともだちを追ってるんでしょ? たぶんその人のところに『脹相』お兄ちゃんがいる」

 

「あたしも怖いおねえちゃんも、『脹相』お兄ちゃんには絶対に勝てないの」

 

 

でも、パパなら。

『焼相』は私の目を見つめて、訴えかけてくる。

『脹相』という人物の術式は、『焼相』から聞いていた。だから、その言葉には納得するしかなかった。確かに『あれ』に勝てるとしたら、私しかいないだろう。

 

 

「…………だがっ」

 

「……パパ…………ね?」

 

「っ」

 

 

苦渋の選択だ。だが、『焼相』の言う通り、憲紀のところにいるであろう『脹相』を倒し、憲紀を救うためには今の選択肢はこれしかないのも分かっている。それでも私がここを離れれば……。

 

 

「鶫!」

 

「っ、真依……」

 

 

揺れる私の心を見抜いたのか、真依が私の名を呼んだ。

ビクリと体が跳ねる。

 

 

「話は『それ』から聞いたわ。さっさと行きなさい」

 

「しかし、そんなわけには……っ」

 

「くどい」

 

 

ごねる私を一蹴し、真依は私を見て、続ける。

 

 

 

「憲紀を助けるんでしょ」

 

「っ、すまない……」

 

 

 

後ろ髪を引かれる思いを振り切り、私は走り出した。

 

 

 

ーーーー鶫の知らない会話ーーーー

 

 

「はぁ、最悪……」

 

「ね、怖いおねえちゃん」

 

 

鶫がその場を去ったのを見送って、『それ』は私に話しかけてくる。本当に気味の悪い呪力。視界に入れたくもない。

いつもなら無視し続けるところだけど、緊急事態ということもあって、仕方なく答える。

 

 

「なに?」

 

「おねえちゃんは怖いけどやさしいね」

 

「はあ?」

 

 

この状況で的外れなことを言う『それ』を、私は少しキレながら見下ろす。そんな私に構わず『それ』は続けた。

 

 

「だって、つぐみおねえちゃんが迷わないように怒ったんでしょ? だから、あたし思ったの、このおねえちゃんはやさしい人なんだなって」

 

 

暗くても分かる、見た目相応の屈託のない笑顔に、思わず毒気が抜かれてしまう感覚を覚える。それをどうにか抑えて、棘で包んだ言葉を返した。

 

 

「そもそも、なんで鶫に『呪霊』なんかが懐いてるのよ」

 

 

自分でも強い言葉だとは分かってる。けれど、止めるつもりもない。それは本心だったから。『呪霊』が人に懐くなんてあり得ない。あり得たとしても気持ち悪いことだもの。

そんな心中など知らない『それ』は、首をかしげながら言い放つ。

 

 

 

「おねえちゃんを好きになるのにりゆうなんていらないでしょ?」

 

 

 

「…………」

 

 

少しでも、一瞬でも変な親近感を覚えた自分が嫌になる。

 

 

「? 怖いおねえちゃん、どうしたの?」

 

「…………知らないわよ、そんなの」

 

 

不思議そうにこちらを見上げてくる『彼女』にそれだけを答え、改めてあの気持ちの悪い男へ照準を合わせた。

 

 

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