【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第43話 愛し子ー陸ー

ーーーー幸吉視点ーーーー

 

 

ーーズザザッーー

 

「くっ!」

 

「きゃっ!?」

 

 

不意に左足に力が入らなくなり、バランスを崩してしまう。抱きかかえる三輪を庇うように、体を丸めて、その衝撃をどうにか緩和した。

 

 

「幸吉っ」

 

「すまん、三輪。大丈夫か?」

 

「わたしは大丈夫。だけど……」

 

 

三輪の視線を追うと、そこには俺の左足。三輪の左足よりはマシだが、足首から先が白骨化していた。

 

 

 

「おいおいおいおいっ!! 逃げるなよ、卑怯者!!」

 

 

 

鼓膜を揺さぶる大声をあげる追手。『呪胎九相図』のうちの1体。俺も三輪を抱えているとはいえ、全力で走った。なのに、この大男は追いついてきた。見た目と違ってパワーだけじゃなく、スピードもある。その上、白骨化の術式。

 

 

「……逃げられないってことか」

 

「幸吉?」

 

 

白骨化しており、上手く立てない。それでも、どうにかバランスをとって立ち上がる。

 

 

「おお!! やっとやる気になったかっ!!」

 

 

それを見て、途端に上機嫌になる大男。戦闘狂め。

こっちは上手く立てない上に、たぶん両腕も折れてるんだぞ? やる気も何もあったもんじゃない。

 

 

「おい、大男」

 

「なんだ! チビちょんまげ!」

 

 

「俺とサシで戦え。三輪には手を出すな」

 

 

「幸吉っ!? なにいってるんですかっ」

 

「ん?」

 

 

俺の言葉を聞いて、大男は俺の後ろにいる三輪を見る。

そして、大きく頷いた。

 

 

「なるほど……なるほどなぁぁ!!!」

 

「いいじゃねぇか! お前、漢じゃねぇかっ!!!」

 

「ぼろぼろになりながらも惚れた女を守る。いいぞぉぉ!! 気に入ったぁっ!!」

 

 

「…………」

 

 

なんか、勝手に感動して、俺のことを気に入ってるんだが……。なんだ、こいつ。

 

 

「いいだろうっ!! 俺はお前とサシで戦う! お前が死んでもその女には手を出さないでやろう!!」

 

 

だが、今はその意味不明な言動がプラスに働いている。

奴からそれを言ってもらえるとはな。なら、あとはそれを『縛り』にすれば。

 

 

「……それは『縛り』でいいんだな」

 

 

少なくとも三輪だけは助けられる。これならーー

 

 

「いいや。『縛り』にはしない」

 

 

「は? さっきまで……」

 

「『縛り』になどするものか!」

 

 

そう言って、大男はニヤッと笑う。

くそっ!?

やっぱり呪霊は呪霊ってことか!

なら、俺が戦っている間に、三輪だけでも逃げてもらわないと。

そう思って、三輪に声をかけようとした俺を遮るように、奴は叫ぶ。

 

 

 

「これは約束だっ!!」

 

「漢と漢の約束っ!! 『縛り』などという無粋なもので縛られるようなもんじゃねぇっ!!」

 

 

 

「…………そうかよ」

 

「ああッ!!」

 

 

どうやら心配はなさそうだ。

なら、いい。これで安心して戦える。

 

 

「メカ丸!」

 

ーーガシャンッーー

 

 

メカ丸を呼び出し、それに呪力を込める。

『砲呪強化形態』と原理は同じ。メカ丸は変形によって、その姿形を変える。

 

 

「『纏呪強化形態(モード・イーグリウス)』」

 

 

それは両腕と両足に装備する形の形態。体を取り戻してから等級の高い相手と戦うために生み出したものだった。

これなら、白骨化されずに戦える!

 

 

「いいねいいねッ! そう来なくちゃ、なッ!!!」

 

ーーブンッーー

 

 

 

ーーガシャンッーー

 

 

 

奴の一撃を腕の装甲で止める。

 

 

「さっきの機械よりも硬ぇなぁ!」

 

「俺自身に装備させてるからな。そのリスク分、強度は上がるさ」

 

 

ーーガシャンッーー

 

 

術式の一部を開示し、威力を上げる。

そして、

 

 

 

「『大祓砲(ウルトラキャノン)』!」

 

ーードウッーー

 

 

 

「っ、ふぅっ!!」

 

「効かないのかっ」

 

「あぁっ、サウナ気分だなっ!!」

 

 

至近距離での『大祓砲』。

それを大男はもろに受けたのだが、少々火傷した程度だった。どんな強度してやがる。なら、今度は直接壊してやる!

 

 

「『刀源解放(ソードオプション)』『推力加算(ブーストオン)』」

 

 

「『絶技抉剔(ウルトラスピン)』!!」

 

 

ーーギギギギャーー

 

 

「っ、ぐうっ!?」

 

 

削る削る削る。肉を抉るような感覚が伝わってくる。

いける! 効いている!

 

 

「はぁぁぁっ!!!」

 

 

このまま倒せる!

勝利を確信したその時だった。

 

 

 

ーーガギィッーー

 

 

 

何かが俺の『絶技抉剔』を止めた。本来ならば、大樹にも穴を開けるような回転による破壊が阻まれたのだ。

 

 

「!」

 

 

攻撃を止めたものの正体はすぐ分かった。

そう。

『骨』だ。奴の腕の『骨』、それに止められている。

 

 

「『骨疾嶒(こつしょうぞう)』」

 

「『骨』に作用する術式でなぁ! 俺も詳しいことは知らん!」

 

 

どこまで本気なのか分からないが、生物の『白骨化』。そして、『骨』の強度を上げる術式なんだろう。

近距離でも中距離でも戦える術式か。本当に厄介なーー

 

 

「幸吉っ!」

 

 

不意に三輪の声が耳にはいってきてから気づく。奴の拳が眼前まで来ていたことに。

 

 

「集中が切れてるぞ!」

 

「っ」

 

 

ーーブンッーー

 

 

一瞬の心の隙。それを大男は見逃さない。

全力でその拳を振り抜いてくる。

 

 

「幸吉!!」

 

「ーーっ」

 

 

顔面への、生身の部分への衝撃は……いつまで経っても来ない。

恐る恐る目を開ける。そこには、

 

 

 

 

「よう、見舞いに来たけど。タイミング悪かったか?」

 

 

 

 

見覚えのある白黒模様のやつがいた。そいつは大男の一撃を止めていて。

そいつの背中に俺は話しかける。

 

 

「……あぁ、最悪だよ。こっから逆転するところだったんだ」

 

「ハッ、それは悪かったなぁ」

 

 

俺の言葉にそいつは笑う。

 

 

「あぁっ!? お前、なにもんだぁぁっ!?」

 

 

俺との勝負を邪魔されたのがかなり嫌だったのか、苛立ちながらそう訊ねて、それにそいつは答えた。

 

 

「俺か? 俺はパンダだ、よろしく」

 

「どこがだよっ!!」

 

 

ゴリラモードのパンダに、大男はそう叫ぶ。

まぁ、気持ちは分かるが。

 

 

「おい、与!」

 

「あぁ」

 

 

パンダの呼び掛けに頷き、再び構える。

 

 

 

「悪いな、大男。サシの勝負じゃなくなった」

 

「~~~~っ、この卑怯者がぁぁっ!!」

 

 

 

卑怯? 上等だ。

俺は守りたい者を守れるなら卑怯者でも構わないさ。

 

 

 

ーーーー真依視点ーーーー

 

 

口に侵入してこようとしていた不快な感覚は来ない。

不覚にもつぶってしまった目をゆっくりと開くと、青黒い腕が切断されているのが目に入った。

『本体』への攻撃が効いているのか、奴は私から離れて、のたうち回っていた。

切断……? なら、『焼相』の仕業じゃないわよね……?

 

 

「なにが……?」

 

 

呆然としていた私の後ろから、その人は現れる。

 

 

 

 

「おい、ウチの妹に汚い手で触んじゃねぇよ」

 

 

 

 

かなり険しい表情で、未だにもがいている『青瘀』の本体へ薙刀の刃先を向けていた。

 

 

「っ、なによ、あなたっ!! ボクの邪魔しないでもらえるっ!?」

 

 

ヒステリックに喚く『青瘀』。

それにも構わず、彼女は告げた。

 

 

 

「知らねぇよ」

 

「私はただ、妹に手を出そうとしてる変質者を叩き切るだけだ」

 

 

 

そう言って、彼女は……真希は私の前を守るように前へ出た。

 

 

「なんで……あんたがここに……?」

 

「あ? (バカ)の指示でな。こっちに飛ばされた」

 

 

真希曰く。

東京の渋谷に『帳』が降りて、ゴタゴタしている。メカ丸が言っていた渋谷ハロウィーンよりも1日早く、一般人をほとんど巻き込まない形での『帳』に、何かを察したらしい五条悟が京都へ加勢を送った。

こっちにはパンダと真希、あと数名が飛ばされたらしい。

 

 

「とにかく安心しろ、真依」

 

「っ、安心なんてっ!」

 

 

真希の言葉に強がりを返し、私も立ち上がった。

私達を取り囲む死体たちを警戒するのに、自然と背中合わせになる。

 

 

「こうして一緒に戦うのは初めてだな」

 

「……足は引っ張らないでよ」

 

「お互いになっ!」

 

 

 

ーーーーーーーー




東京・渋谷では既に『帳』が降りています。
1日早いとはいえ、高専側に情報が入ってたこともあり、ほとんど一般人を巻き込まない形で『渋谷事変』開始してます。
特級2体と戦闘に入る前に、真希とパンダを京都へ飛ばしました。

『愛し子』編はもう少し続きます。番外編の日常回いりますか?

  • いる。憲倫くんを見せてくれ!
  • いる。ようじょが足りない!
  • いる。誰とは言わないがいちゃつけ!
  • いらん。本編を書け!
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