【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

47 / 77
第47話 愛し子ー拾ー

ーーーーーーーー

 

 

「やっと思い出してくれたか」

 

「お前……なぜ生きているッ!!」

 

 

こいつと生きていたのは明治の時代だ。あれからもう150年経っている。生きているはずがない。

 

 

「それはこちらの台詞だよ、憲倫。君は私が殺しただろう? 殺してその姿を奪い取ったはずだ」

 

「なにを言っている……?」

 

 

私の疑問に答えるように、『羂索』は自らの頭の縫い目をほどいていく。そこには脳。

……なるほどな。

 

 

「肉体を渡り歩く術式かっ!?」

 

「御名答、流石は憲倫だ。話が早くて助かるよ」

 

 

それならば『こいつ』が生きていることにも納得がいく。そして、私が『焼相』たち、『呪胎九相図』を産み出したという話も……。

 

 

「『焼相』たちを作り出したのもお前か」

 

「あぁ。君の姿を奪った後に作り出した。偽善者の君が最悪の呪術師と呼ばれるのには……ククッ、中々に愉快だったよ」

 

 

人を嘲るような邪悪な笑い方も変わっていない。あの頃のままだ。

 

 

「パパ……」

 

「っ、すまん、『焼相』。やはり私はお前のパパではなかったようだ」

 

「え? え……? どういうこと……?」

 

 

私の後ろに隠れる『焼相』にそんなことを告げる。私たちの会話に入り込むように『羂索』が『焼相』に話しかける。

 

 

「『焼相』だったかな。私が本当の父親だよ」

 

「……え?」

 

「そこにいる加茂憲倫は、君たちの父親じゃない。私が彼の姿を奪ってから『呪胎九相図』を作り出したんだ。その証拠に、彼は君たちを知らなかったろう?」

 

「それは……」

 

 

にこりと人当たりのよさそうな笑みを浮かべる『羂索』。

 

 

「聞くな、『焼相』。奴は『焼相』を利用しようとしてるだけだ」

 

「で、でも……パパなんだよね……?」

 

「っ」

 

 

思わず言葉に詰まってしまう。『焼相』が求めているのは父親だ。作り出したのも、それ自体を認識しているのも、私よりずっと『羂索』の方が父親と言うには近いだろう。

 

 

 

「『焼相』、(パパ)の言うことを聞いてくれるかい?」

 

 

 

そう言って、『羂索』は私の背中越しに『焼相』へ話しかける。

邪悪だ。目的のためならば手段を選ばない奴らしい邪悪さ。そんなところが本当に嫌いだ。

 

 

 

「加茂憲倫っ!!」

 

「っ」

 

 

 

どうすべきか迷っていた私の思考を遮ったのは、『脹相』の怒号だった。その視線は私に向けられている。だが、それはさっきまでの殺意に満ちたものではなくーー

 

 

「!」

 

 

それに思い至る。私は『焼相』を抱きかかえ、『脹相』の元へ走った。そして、

 

 

ーーブシュッーー

 

 

『彼』の腹を貫いていたその刀を引き抜いた。

 

 

「よく、分かったな」

 

「……自分でも驚くほどに冴えていてな。まるで夢から覚めたかのような覚醒具合なのだ」

 

「確認させろ、あの額の縫い跡……あっちが俺の知ってる『加茂憲倫』で合ってるな?」

 

 

どうやら『脹相』も、奴が自分たちを作り出した『加茂憲倫』だと気づいたようで、私にそう聞いてくる。それに頷くと、私の横で『羂索』と対峙するように構えた。

 

 

「聞きたいことは山程あるが……」

 

「あぁ、『奴』の狙いは恐らく『呪胎九相図』。お前たちだ」

 

「分かっている……奴は…………敵だ」

 

 

そこで『脹相』の呪力が跳ね上がるのを感じた。恐ろしいほどの重圧だ。

 

 

 

「『散相』、『青瘀』、『骨相』。見ていてくれ」

 

「俺たちの妹ーー『焼相』は(お兄ちゃん)が守り抜く!!」

 

 

 

「ふむ」

 

 

見れば『羂索』は顎へ手をやり、何かを思案していた。次の手を考えているのか? いや、もしや……?

 

 

「『脹相』! 奴は逃げるつもりだっ!!」

 

「!」

 

 

私がそれに気づいたのは、気配が近づいてくるのが分かったから。大きな気配。恐らくこれは五条悟だ。

今の『羂索』では五条悟は殺せないだろう。だからといって無謀な賭けに乗るような奴ではないのは、私がよく知っている。

 

 

「流石は憲倫、よく分かっているね」

 

ーーゾゾゾゾゾッーー

 

 

「「!?」」

 

 

案の定、奴の足元から無数の呪霊が沸き上がってくる。夏油傑の『呪霊操術』で呼び出した呪霊。大まかな気配だけでも、千はいる。それをーー

 

 

 

「それでは、また会おう、愛しき息子たち。必ず迎えに来るよ」

 

 

 

ーー奴は解き放った。

 

 

「この数は……っ、『脹相』! 祓うのを手伝ってくれっ!!」

 

「っ、仕方がないか」

 

「……お兄ちゃん……パパ……」

 

「『焼相』、お兄ちゃんから離れるなよ」

 

 

私と『脹相』は互いに背を預ける形になった。その中央には『焼相』。

この娘を守らなくては。

そして、この呪霊の群れを一匹たりともここから出してはいけない。

大丈夫だ。五条悟も来るだろうし、皆もきっと駆けつけてくれる。それまで耐え抜け。体を止めるな。

 

気を引き締め直す前の、一瞬の気の緩みだった。

 

 

 

ーーヌウッーー

 

「「!?」」

 

 

呪霊に紛れて近づいてきた『羂索』に、私も『脹相』も気づくのが遅れた。

そのせいで、私はその掌に触れてしまったのだ。

 

 

 

 

「『無為転変』」

 

 

 

 

 

ーーーー報告ーーーー

 

 

2018年10月30日。

渋谷に『帳』が降り、呪霊の群れが放たれた。渋谷にいた一般人50名と応戦した呪術師8名が死亡。特級呪霊2体の存在も確認されたため、五条悟がそれに応戦し、特級呪霊2体を祓除した。

 

同時刻に、京都市内3ヶ所にて、『呪胎九相図』3体が確認され、呪術高専京都校の学生が交戦した。死亡者はなし。

また、その場に特級呪詛師・夏油傑が現れたことを確認した。『呪胎九相図』のうち3体を取り込み、逃走を図った。

その際、加茂鶫が意識不明となるが、数日後回復し、意識を取り戻した。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「………………」

 

 

ーーーー京都校内・医務室ーーーー

 

 

「鶫!」

 

「…………あ、れ?」

 

「よかった! 意識が戻ったのだなっ!!」

 

「憲紀、くん……?」

 

「…………鶫? その呼び方……」

 

「わたし……は……」

 

「覚えているか、鶫。お前がなぜ意識を失っているのか」

 

「……え、なぜって……」

 

 

 

「わたし、睡眠薬をいっぱい飲んで……」

 

「自殺、したはずだよね……?」

 

 

 

ーーーーーーーー




年内の更新はここまで。
年明けから、番外編2話と本編新章開幕予定です。

今年もたくさん読んでくださり感謝です。
前作や前々作もぜひ読んでいただけると嬉しいです。

来年もマイペースに、自分で楽しくなるように書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。