【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完) 作:藍沢カナリヤ
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「やっと思い出してくれたか」
「お前……なぜ生きているッ!!」
こいつと生きていたのは明治の時代だ。あれからもう150年経っている。生きているはずがない。
「それはこちらの台詞だよ、憲倫。君は私が殺しただろう? 殺してその姿を奪い取ったはずだ」
「なにを言っている……?」
私の疑問に答えるように、『羂索』は自らの頭の縫い目をほどいていく。そこには脳。
……なるほどな。
「肉体を渡り歩く術式かっ!?」
「御名答、流石は憲倫だ。話が早くて助かるよ」
それならば『こいつ』が生きていることにも納得がいく。そして、私が『焼相』たち、『呪胎九相図』を産み出したという話も……。
「『焼相』たちを作り出したのもお前か」
「あぁ。君の姿を奪った後に作り出した。偽善者の君が最悪の呪術師と呼ばれるのには……ククッ、中々に愉快だったよ」
人を嘲るような邪悪な笑い方も変わっていない。あの頃のままだ。
「パパ……」
「っ、すまん、『焼相』。やはり私はお前のパパではなかったようだ」
「え? え……? どういうこと……?」
私の後ろに隠れる『焼相』にそんなことを告げる。私たちの会話に入り込むように『羂索』が『焼相』に話しかける。
「『焼相』だったかな。私が本当の父親だよ」
「……え?」
「そこにいる加茂憲倫は、君たちの父親じゃない。私が彼の姿を奪ってから『呪胎九相図』を作り出したんだ。その証拠に、彼は君たちを知らなかったろう?」
「それは……」
にこりと人当たりのよさそうな笑みを浮かべる『羂索』。
「聞くな、『焼相』。奴は『焼相』を利用しようとしてるだけだ」
「で、でも……パパなんだよね……?」
「っ」
思わず言葉に詰まってしまう。『焼相』が求めているのは父親だ。作り出したのも、それ自体を認識しているのも、私よりずっと『羂索』の方が父親と言うには近いだろう。
「『焼相』、
そう言って、『羂索』は私の背中越しに『焼相』へ話しかける。
邪悪だ。目的のためならば手段を選ばない奴らしい邪悪さ。そんなところが本当に嫌いだ。
「加茂憲倫っ!!」
「っ」
どうすべきか迷っていた私の思考を遮ったのは、『脹相』の怒号だった。その視線は私に向けられている。だが、それはさっきまでの殺意に満ちたものではなくーー
「!」
それに思い至る。私は『焼相』を抱きかかえ、『脹相』の元へ走った。そして、
ーーブシュッーー
『彼』の腹を貫いていたその刀を引き抜いた。
「よく、分かったな」
「……自分でも驚くほどに冴えていてな。まるで夢から覚めたかのような覚醒具合なのだ」
「確認させろ、あの額の縫い跡……あっちが俺の知ってる『加茂憲倫』で合ってるな?」
どうやら『脹相』も、奴が自分たちを作り出した『加茂憲倫』だと気づいたようで、私にそう聞いてくる。それに頷くと、私の横で『羂索』と対峙するように構えた。
「聞きたいことは山程あるが……」
「あぁ、『奴』の狙いは恐らく『呪胎九相図』。お前たちだ」
「分かっている……奴は…………敵だ」
そこで『脹相』の呪力が跳ね上がるのを感じた。恐ろしいほどの重圧だ。
「『散相』、『青瘀』、『骨相』。見ていてくれ」
「俺たちの妹ーー『焼相』は
「ふむ」
見れば『羂索』は顎へ手をやり、何かを思案していた。次の手を考えているのか? いや、もしや……?
「『脹相』! 奴は逃げるつもりだっ!!」
「!」
私がそれに気づいたのは、気配が近づいてくるのが分かったから。大きな気配。恐らくこれは五条悟だ。
今の『羂索』では五条悟は殺せないだろう。だからといって無謀な賭けに乗るような奴ではないのは、私がよく知っている。
「流石は憲倫、よく分かっているね」
ーーゾゾゾゾゾッーー
「「!?」」
案の定、奴の足元から無数の呪霊が沸き上がってくる。夏油傑の『呪霊操術』で呼び出した呪霊。大まかな気配だけでも、千はいる。それをーー
「それでは、また会おう、愛しき息子たち。必ず迎えに来るよ」
ーー奴は解き放った。
「この数は……っ、『脹相』! 祓うのを手伝ってくれっ!!」
「っ、仕方がないか」
「……お兄ちゃん……パパ……」
「『焼相』、お兄ちゃんから離れるなよ」
私と『脹相』は互いに背を預ける形になった。その中央には『焼相』。
この娘を守らなくては。
そして、この呪霊の群れを一匹たりともここから出してはいけない。
大丈夫だ。五条悟も来るだろうし、皆もきっと駆けつけてくれる。それまで耐え抜け。体を止めるな。
気を引き締め直す前の、一瞬の気の緩みだった。
ーーヌウッーー
「「!?」」
呪霊に紛れて近づいてきた『羂索』に、私も『脹相』も気づくのが遅れた。
そのせいで、私はその掌に触れてしまったのだ。
「『無為転変』」
ーーーー報告ーーーー
2018年10月30日。
渋谷に『帳』が降り、呪霊の群れが放たれた。渋谷にいた一般人50名と応戦した呪術師8名が死亡。特級呪霊2体の存在も確認されたため、五条悟がそれに応戦し、特級呪霊2体を祓除した。
同時刻に、京都市内3ヶ所にて、『呪胎九相図』3体が確認され、呪術高専京都校の学生が交戦した。死亡者はなし。
また、その場に特級呪詛師・夏油傑が現れたことを確認した。『呪胎九相図』のうち3体を取り込み、逃走を図った。
その際、加茂鶫が意識不明となるが、数日後回復し、意識を取り戻した。
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「………………」
ーーーー京都校内・医務室ーーーー
「鶫!」
「…………あ、れ?」
「よかった! 意識が戻ったのだなっ!!」
「憲紀、くん……?」
「…………鶫? その呼び方……」
「わたし……は……」
「覚えているか、鶫。お前がなぜ意識を失っているのか」
「……え、なぜって……」
「わたし、睡眠薬をいっぱい飲んで……」
「自殺、したはずだよね……?」
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年内の更新はここまで。
年明けから、番外編2話と本編新章開幕予定です。
今年もたくさん読んでくださり感謝です。
前作や前々作もぜひ読んでいただけると嬉しいです。
来年もマイペースに、自分で楽しくなるように書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。