【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完) 作:藍沢カナリヤ
苦手な人・そういうのを求めてない人は飛ばしても大丈夫です。
そのうち順番は並び替えて番外編の方に入れます。
本編も鋭意作成中です。
ーーーー寮内・鶫の部屋ーーーー
「進展してない?」
私の部屋にお菓子を食べに来た真依曰く。
霞と幸吉の仲があまり発展していないらしく、じれったいやり取りをまだ続けているそうだ。そこでまた私に力を借りに来た……いや、違うな。暇潰しにきたと言った方がいいだろう。
「いや、真依よ。確かに私は幸吉の恋路は応援したいが……」
「なら、いいじゃない」
「うむ……」
当人同士の進み方というものもある。だから、きっかけを作り終わった今は見守るのも大切だと思うのだが……。
「私は真依ちゃんにさんせー!」
「ほら、桃もそう言ってるでしょ?」
いや、君達はそういう性格だからいいだろうが、当人、特に霞はとやかく言われるのをどう思っているだろうか。霞がそういう冷やかしを得意としないならば、下手なことをして嫌われることは避けたい。
「大丈夫よ」
「いや、何を根拠に……」
「あの娘も私達がそういう性格だって知ってるし」
「……ふむ」
なるほど。説得力がある。
まぁ、それで1年間付き合ってきたのだから、今更か。
ならばーー
「よし! やるか!」
ーーーー京都校・食堂ーーーー
「まだ幸吉のことをメカ丸と呼んでるのか」
「…………うっ」
食堂にて。
私と真依に向かい合うように座る霞にそう聞いた。それに対して、霞もじと目をこちらへ向けながら反論する。
「ま、真依だってメカ丸って呼んでるじゃないですかっ」
「私は別に変える気ないし」
「じゃあ、わたしもーー」
それなら自分も問題ないだろうと、真依に追従するように手を挙げる霞を、
「へぇ、手まで繋いでおいて?」
「なぁっ!?!?」
真依がそんな言葉で止める。机に肘をのせ、頬杖をつきながらそう言ってのけた真依の表情はとてもにこやか……いや、あの表情は霞で遊ぼうとしてるな。
「な、なんのことですかっ!? はぁぁぁ、真依は嫌になっちゃいますねぇぇ! そんな訳の分からないことを言ってぇぇ!!」
顔も赤く、明らかに動揺して早口になる霞。
これは……うむ、明らかに脈アリではないか。よかったなぁ、幸吉。
ひとり頷く私を他所に、真依は確実に霞を追い詰めていく。
「ショッピングモールのフードコート」
「!!」
「メカ丸に奢ってもらったステーキはさぞ美味しかったんでしょうねぇ」
「!!!」
「メカ丸の口の端についてたソースを拭いてあげてるのなんて感涙ものだったわ」
「!!!!!」
既に霞は限界。もう言葉が出ないようである。
「その辺で止めてやれ、真依」
とりあえず真依は満足したようで、大人しく引き下がってくれた。霞、可哀想に。しかし、まぁ真依に隙を見せたのが運の尽きだったな。
「あ、あ……あぁぁ」
茹でダコのように赤面し、悶えているところ悪いが、話が進まんな。仕方がない、私が話を進めようか。
「霞」
「つ、ぐみ……ちゃん……?」
「大丈夫だ」
ギギギと音が鳴りそうなほどぎこちない動きで、顔をこちらへ向ける霞。何を聞きたいかは分かっている。
大丈夫だ。
そう伝えるように、私は静かに頷き、口を開く。
「無論、私も見ていた。2回目は霞から手を握りにいくとは中々やるな」
「あぁぁぁぁっっっ!!!!」
「なにトドメ刺してんのよ」
「……すまん、つい」
楽しくなっちゃった。
結局、霞が落ち着くまでに15分ほどかかったので、その場はそのまま解散となった。その夜、私の部屋で改めて女子会を開き、『例の計画』を進めることが決定した。
ーーーー京都校内・訓練場ーーーー
『例の計画』。
それは私と真依、西宮先輩が立てた幸吉と霞の仲をぐんっと近づけるための策。
「さて、真依よ。『例の計画』は順調か?」
「なにを大袈裟な……ただメカ丸のことを名前で呼ばせて反応を楽しむだけでしょ」
まぁ、そうだけども。
「いや、しかしだな、真依。こういうのはなんというか……ほら、あれだ、あれ! たしか……」
「やぁねぇ……もうボケたの?」
止めろ、150歳に対してそういうことを言うな。
妙に現実的な話をするんじゃない。
……ではなく。
「そう。てんしょんだ、てんしょんが大事だろう?」
「私、そういうタイプじゃないし」
「……つれないことを言う」
「それより、ほら」
真依が指をさした先を見ると、霞と幸吉がちょうど立ち合いを終えたところだった。2人とも自分の水筒が置いてあるこちらへ向かってくる。
「さて! 真依! 私たちも訓練をしようか」
「……えぇ」
幸吉に、私達が2人の会話を注意深く聞いているのがバレないようその場を離れる。
ん? その場を離れたら、会話が聞けない?
いやいや、その辺は抜かりはない。私にはこの盗聴器がある。何を隠そう、この計画のために今日の昼に高専を抜け出して買ってきたのだ。私の足があれば朝飯前もとい昼飯前であった。
2人からは見えない位置、なおかつ少し離れたところで、盗聴器の電波を受信機をイヤホンに繋ぐ。片方を右耳につけ、もう片方を真依に渡した。
「あんたが一番乗り気じゃない」
「…………」
真依の言葉には沈黙を返し、イヤホンの音に集中する。結局、真依もすぐにそれを手に取り、耳につけた。
[疲れたね……]
[あぁ、本当にな]
おぉ! しっかりと聞こえる!
もちろん急ごしらえで用意したものだから、そこまで音の質は高くないが、ちゃんと聞き取れる。凄いではないか、盗聴器。
[そうだよねぇ……こ、こ……]
[?]
[こ、こ……んなに激しい訓練は中々ないですよねっ]
……うむ?
まあまあ、まだ始まったばかり。待とうじゃないか。
[でも、確かに疲れはするが、それは生きてるってこと。こんなに嬉しいことはない]
[あっ、そう、だよね]
[こうして与幸吉の姿で、皆と一緒に鍛練できるなんて……夢みたいだ]
[……っ]
[ありがとう、三輪]
[え? あ、えぇと、なんで……?]
[……内通者だった俺を受け入れてくれたこと。きっと三輪に拒絶されてたら俺はダメだったから]
[っ、そ、それって……]
……ふむ。姿は見えないが、親友である私の勘は言っている。
きっと今、幸吉は爽やかで、かつどこか儚げな笑顔を霞に向けている。幸吉はなんだかんだ顔も性格もいい。あいつの笑顔はきっと憎からず思っている相手からすると……。
「いい雰囲気じゃない」
「あぁ、この流れならば名前を呼べるだろう」
「むしろ告白までいけるんじゃない?」
確かにそうかもしれない。
思っていたよりも幸吉が霞に対して、攻めているように感じる。正直、それは告白も同然ではないかということを言っているような……。
きっと前に霞と出掛けたあの時に、なにかが吹っ切れたのだろう。
あとはきっかけがあれば……。
[あ、あの……]
[? どうかしたか?]
[あのねっ、こ、こう……]
よし! いけるぞ、霞!
そこで呼べ! 幸吉の名前を呼ぶのだ!
[こ……こう……]
[?]
「「…………」」
[こう……いうのもなんだけどっ、皆もメカ丸を拒絶したりなんかしないですよ]
「!?」
「はぁ……」
なんだそれは? 何が、こういうのもなんなのだ?
文脈がおかしいだろう!
……あ、いやいや。
まぁ待て、加茂憲倫。
もう少し長い目で見ようではないか。
[……でも、俺はそれ相応のことをした。罰は受けるべきだとは思ってるよ]
[っ、そんなことっ!]
[まぁ、一度は死刑になった、死んだ身だ。もし皆に何か危険が及んだ時には真っ先に俺が犠牲になるさ。皆が幸せになってくれるなら俺はどうなってもいい]
[…………っ]
……………………
「…………はぁ、思ったよりも重い話になってきたわね。これじゃあーー」
真依の憂鬱そうな声は、既に私には聞こえてなかった。
私はーー
「こうきちぃぃぃ!!!」
ぶちギレてた。
あんな馬鹿げたことを未だに考えている幸吉にぶちギレ、イヤホンも投げ出して、説教のために私は既に走り出していた。
「ちょっ!? 鶫!?」
「幸吉ぃぃぃっ!!」
ーーーー彼女の回想ーーーー
「な、なんだ!?」
鶫ちゃんの怒号を聞いて、驚いた彼。
たぶん盗聴していたわたしたちの会話を聞いて、計画なんて忘れて怒ってしまったんでしょう。彼のことを大事に思ってる鶫ちゃんらしい。そう思った。
でも、わたしもその気持ち分かります。
「ねぇ」
キョロキョロと鶫ちゃんの姿を探し、警戒する彼の服のすそを少しだけつまむ。
「……三輪?」
わたしの名前を呼びながら、彼の視線がこちらを向いて。
「犠牲になるなんてイヤです。どうなってもいいなんて言わないでください」
「え、えぇと……」
「せっかく仲良くなれたんだから……っ」
「ーー幸吉も! 幸せにならなきゃダメだよっ!」
「っ」
彼は、幸吉はわたしの言葉にハッとしたような顔をして。
「ごめん」
謝ってくれた。考えなしだったって。
…………そう。
そこまででよかったのに。
思わず感情が高まってしまったのでしょう。わたしはその勢いで言ってしまった。
「幸吉も一緒に幸せになってくださいっ」
「!?」
「隣で笑ってないとダメなんですからっ」
「……………………あぁ」
……………………
あぁぁぁぁぁぁっ!?
今、思い出しても顔から火が出るくらい恥ずかしい!!
その時の幸吉もなんかすごくっ! んーっ、あーっ、もうっ!!
はいっ、この話はおしまい! おしまいですっ!
忘れてください!
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むたみわは永遠にいちゃついてればいいと作者は思います。
頼むから幸せになってくれ。