【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第50話 序幕

ーーーーーーーー

 

『脹相』と話をした後、すぐに京都校の皆を集めて、鶫の話を伝えた。それを受けて、当面の目標は決まった。

 

加茂憲倫。

鶫の中にいたその人物のことを知るために、もうひとりの加茂憲倫『羂索』を探すこと。

勿論、『羂索』に出会えば戦闘にはなるだろう。となれば、図らずも目的が一致した東京校とも連携は取れた方がいいということで、真依が真希に連絡を取ってくれている。幸いなことに、2人の仲は交流会の時と比べてマシになっているようだから、そちらとの連絡や調整は任せるとしよう。

本当なら、歌姫先生伝いで五条悟と直接連絡がとれれば話が早いのだが……。

 

 

ーーーー京都校・2年教室ーーーー

 

 

皆に鶫のことを伝えた翌日。

私達は現段階での情報を共有するために、再び集まっていた。

 

 

「五条悟が電話に出ない?」

 

「えぇ、真希の言うことが嘘じゃなければね」

 

「そこで嘘をつく理由もないだろう」

 

「また後で聞いてみるわ」

 

「あぁ、頼む」

 

 

真希と電話した真依からの報告。

五条悟は『羂索』の捜索をしているはずだ。彼が簡単にやられるとは思わない。ただタイミングが悪いだけ、ならいいのだが……。

 

 

「三輪、『焼相』の様子はどうだ?」

 

「……変わりません。部屋に閉じこもったままで」

 

「そうか。与、『脹相』の方は?」

 

「奴にも変わった様子はない。高専の敷地外で『焼相』に『羂索』の手が及ばないように見張ってるな」

 

 

西宮も『羂索』の捜索に加わって、与の傀儡と並行して今も探してくれているが、そちらからも連絡なし。

膠着状態だ。

仕方がないか。こちらには『羂索』の居場所など見当もつかないのだから。向こうが『呪胎九相図』を狙って動き出すのを待つしかない。だが、

 

 

「……本当にそれでいいのか?」

 

 

一抹の不安を感じて、私はポツリと呟いた。

 

 

 

ーーーー同時刻・八王子某所ーーーー

 

 

「まったく……芸がないな」

 

 

五条悟は『それ』を見上げてため息を吐いた。

彼がそこに赴いたのは、夏油傑の目撃情報があったからだった。だが、彼がそこに着いたときに『帳』が周囲を包んだ。それは五条が降ろしたものでも彼についてきた補助監督が降ろしたものでもない。

 

 

「交流会の時と同じ……」

 

ーーバチンッーー

 

「……いや、流石に多少種を変えてきてるか」

 

 

その『帳』は半径20mというかなり狭い範囲に降ろされており、付与されている効果は『五条悟の出入りを一切禁ずる』もの。

 

 

「これも傑……いや、偽者の夏油傑が降ろしたものと見て間違いないな」

 

 

五条は確かに『彼』の呪力を感じ取っていた。呪力だけでいえば、かつての親友と同じもの。酷く気分がざわついた。怒りに似た感情だと自覚する。

 

 

「これだけじゃない。この外にも六重の『帳』ね。僕相手にこんなものでどうしようというんだか……こんなもの、1時間もあれば破壊できるとーー」

 

 

そこで五条は可能性に思い至る。この『帳』は五条悟を封じるためのものではない。

昨年末に起こった百鬼夜行。それに近い思惑を感じていた。

つまり、

 

 

「ーーその1時間が目的か?」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

ーーザワッーー

 

 

 

「「「!!」」」

 

 

その気配は唐突に現れた。他の3人もそれを感じ取ったようで、全員が臨戦態勢に入る。

 

 

「三輪!」

 

「はいっ!」

 

 

三輪と共に、教室の窓から飛び降りる。続けて、与と真依も降りた。走りながら確認する。

 

 

「与、やはり寮の方……『焼相』か」

 

「あぁ、そうみたいだ。『脹相』も会敵してる」

 

「敵は?」

 

「『羂索』とその側に呪霊が一体」

 

 

1体か。思ったよりも敵は少ない。だが、『羂索』が『呪霊操術』を有している以上、戦力差は歴然だ。

もちろん、京都校へ侵入してきたのだ。楽巌寺学長や歌姫先生、他にも京都校を拠点としている呪術師も動く。それでもこちらが不利なことに変わりはない。

 

 

「……急ぐぞ」

 

 

『羂索』の狙いは『呪胎九相図』を取り込むこと。

それが何に繋がるのかは分からないが、『焼相』と『脹相』が取り込まれてしまえば、事態が悪化するのは目に見えている。

不安が的中した。最悪だ。

 

 

……………………

 

 

寮前に駆け付けた時、そこには『脹相』がいた。その周りには多くの呪霊。一目で『羂索』と会敵しているのが分かったのだが……。

 

 

「加茂! 『羂索』の姿が見えない!」

 

「!」

 

 

周りを見渡しても、人の姿をしているのは『脹相』だけ。

どうする?

寮に来るまでにそこらじゅうに呪霊が放たれ、私達以外の呪術師はそちらへの対応に追われていて加勢は期待できない。

つまり、私達だけで『羂索』と戦わなければいけないということだ。

考えろ、加茂憲紀。状況を読め。ここには『脹相』がいる。目的は私達と同じ『焼相』を取り込ませないこと。ならば、ここは『彼』一人でも……いや、だが、奥にいる丸っこい呪霊の呪力はどこか異質だ。『脹相』だけでは手に余るかもしれない。それに加えて、私達で『羂索』を止められるのか? ここを引き受けて、『脹相』に向かわせるべきではないか?

 

 

「くっ……」

 

 

どうすればいい?

判断がつかない。相手の情報も、こちらの戦力も足りない。

 

 

「加茂! ここは俺達が!」

「ここは私達でやるわ!」

 

 

与と真依の声。見れば、三輪もそちらに加わり、頷いていた。

 

 

「っ、任せたぞ」

 

 

それだけを伝え、寮の入り口へ向かう。

 

 

「『脹相』っ!!」

 

「!」

 

 

名前を呼んだだけで状況を理解したようで、『脹相』もこちらへ向かってきた。

頼むぞ、皆。

 

 

ーーーー幸吉視点ーーーー

 

 

「三輪は俺と前線を! 真依は祓いもらした呪霊を狩ってくれ!」

 

「わかりました!」

「了解」

 

 

素早く指示を出す。

大丈夫だ。確かに数は多いが、ほとんどが二級以下。少し時間を稼げば、西宮も合流してくれるだろう。

ただし、問題は、

 

 

『ぶふぅー』

 

 

あの呪霊。『羂索』や他の特級と一緒にいたのは見たことがあるものの、奴自体の呪力は大したことはない。だが、なんだこの妙な呪力は……?

 

 

ーーバシュンーー

 

ーーブシャッーー

 

ーーバシュッーー

 

 

祓う。祓う。祓う。警戒はしながらも周りの呪霊を祓い続ける。幸いなことに、ほとんどの呪霊は術式を持っていないか持っていても強力なものではない。

いける。これなら俺達3人でも祓い切れる。

そう確信した時だった。

 

 

『ぶふぅ……』

 

 

あの呪霊が動いた。

いや、動き出したが、呪力量は少ない。叩くなら今だ。

 

 

「っ、あいつを叩く!」

 

「はい!」

 

 

三輪と共に突っ込む。その間も奴はブツブツと何かを呟きながら、回る。

間合に入った三輪は『抜刀』し、俺も『絶技抉剔』で奴の体を削りにいった。その距離で、初めて奴の言葉を聞いた。

 

 

『花御ぃ……』

 

「……!?」

 

 

 

『……花御を……花御~~~~ッ!!』

 

ーープシュゥゥゥゥゥーー

 

 

 

「「!?」」

 

 

奴が口にしていたのは『花御』という名前。それは『羂索』と行動を共にし、五条悟が祓った特級呪霊の名前。

その名を呼んだ瞬間に、奴の呪力が跳ね上がる。同時に、辺りを水蒸気が包む。

 

 

「三輪っ!」

 

「大丈夫……!」

 

「なによ、これ……霧?」

 

 

お互いの声は聞こえる。この蒸気は攻撃ではない。ならば、これは一体?

その答えはすぐに分かった。蒸気が晴れた時、目の前にはさっきの呪霊がいたからだ。成長した姿で。

 

 

「……『呪胎』だったのかっ!?」

 

 

さっきまで大したことのなかったはずの呪力量は比ではなくなっている。

そうか、そうだよな。『羂索』が側に置いていたんだ。そして、あの特級達とも一緒にいた。

ならば、こいつも恐らく……。

 

 

 

「特級ってことか」

 

 

 

ーーーーーーーー




『陀艮』戦&『羂索』戦スタート。
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