【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第53話 終演ー参ー

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『天与呪縛』

自らに課す『縛り』とは違い、生まれもった肉体や術式・呪力によるハンディキャップから生じる特異な『縛り』。

その大小は様々ではあるが、総じて『それ』を抱えるものの歩む道は平坦なものではない。

 

 

ーーーー16年前ーーーー

 

 

「奥様! 元気な女の子ですよ!」

 

 

今から16年前のその日。

加茂鶫は加茂家当主と正室との第一子として誕生した。出産はかなりの難産で、正室である彼女はその際に子宮を取り除くほどの傷を体に刻まれていた。

だが、彼女は娘の誕生を喜んだ。

勿論、女というだけで、加茂家での地位は低い。だが、術式さえ引き継いでいれば、きっと呪術師として成功してくれる。そんな楽観にも似た感情が彼女の中にはあった。

 

 

ーーーー12年前ーーーー

 

 

「呪力が、ない……?」

 

「はい」

 

 

鶫が4歳になり、術式がうっすらと芽生え始める頃、加茂家で呪術師の育成に携わる術師からの指摘でそれは判明した。

呪力が一切ない。

その事実は彼女を絶望に突き落とすには十分であった。

それ以来、加茂家内では彼女の陰口が横行する。血筋の人間はともかく、女中からも蔑視され続けた。

 

 

ーーーー11年前ーーーー

 

 

「奥様! 奥様、お止めくださいっ!!」

 

「……嫌、もう嫌ッ!!」

 

 

加茂家の女中に羽交い締めにされ、取り押さえられる半狂乱の彼女。血走った瞳が捉えているのは自分が腹を痛めて産んだ娘・鶫であった。

 

 

「はぁっ……はっ……ゲホッ……はっ」

 

 

今まで締め付けられていたせいで、軽く咳き込む鶫。

そう。軽く、である。決して母親は加減した訳ではない。その上、女中が鶫の首を絞めている彼女を発見したのは、それが始まってから5分後……つまり、5歳児が大人の力で5分間首を絞められても生きていたのだ。

それだけで鶫の異常さが分かるだろう。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

加茂鶫。

並大抵の死では、彼女の『天与呪縛』は突破できない。

ただし、それは肉体の話。精神は普通の子どもと変わらない。

だから、実の親に首を絞められたという体験は、鶫の精神を破壊した。人を信用できなくなり、自らの死を望むようになった。

 

悩んで悩んで悩んで悩んで。

そして、あの日、加茂鶫は死を選んだ。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「それが加茂鶫という人間だ。間違ってはいないだろう?」

 

 

まるで鶫の半生を見てきたかのように、『羂索』は語った。指摘すると、1週間も時間はあったからねと答える『羂索』。

 

 

「御三家の人間とはいえ、彼女はただの術師。経歴を調べるなど造作もないことだよ」

 

 

そう言って『羂索』は鶫へ視線を向け、鶫はビクッと体を震わせた。

 

 

「宝の持ち腐れだな。まぁ、誰しも禪院甚爾のようにいくわけではないだろうが、それにしても勿体ないね……今度はその肉体を頂こうか」

 

「ひっ!?」

 

「何をっ!?」

 

「ククッ、冗談だよ。彼女には興味がない。私では彼女を使いようがないからね」

 

 

『羂索』は邪悪に笑う。

 

 

「呪術への耐性のあるその肉体では体を奪ったとしても、その後、私の術式が上手く機能しなくなる可能性もある。リスクの高いことはしないさ」

 

「…………」

 

 

『彼』の言い種はまるで、鶫が道具か何かとでも言いたげで。そのことが少しひっかかったが、

 

 

「さて、憲倫の話だったね」

 

「っ」

 

 

その名を聞いてしまったら、私は憤りを飲み込むしかなかった。私が知りたい『彼』の名を『羂索』が口にしたからだ。

 

 

「何が聞きたい? 彼の過去、思想、そして、私との確執や彼自身の死。ある程度のことならば話せる。彼とは旧知の仲だからね」

 

「……っ」

 

 

疑問が頭の中を次々に過っていく。だが、何を聞きたいのか、『彼』のことをどうしたいのか、まだ纏まっておらず。だから、何を口にすればいいのか分からなかった。

 

 

「……っ、~~~~っ」

 

 

言葉が出ない。

何を聞けばいいというのだ?

私はーー

 

 

 

「……っ、『超新星』」

 

ーーパァァァァンッーー

 

 

 

会話を中断したのは、血の散弾。不意を突くように放たれたそれは『羂索』に当たり、膝をつかせるに至っていた。

 

 

「『脹相』!」

 

「随分と早いお目覚めだ」

 

「……っ、加茂憲紀」

 

 

 

「逃げろ」

 

 

 

「あ、あぁ!」

 

 

その一言で理解した。

そうだ。『奴』の目的を忘れていた。『奴』から『焼相』を守らなくてはならない。

私は未だに横たわったまま目覚めない『焼相』の元へ駆け出した。

 

 

「逃がすと思ったかい?」

 

ーーゾゾゾゾゾゾッーー

 

 

「くっ!?」

 

 

こちらが動くと同時に放たれる呪霊の群れ。ざっと20はいる。対して、こちらは満身創痍。『焼相』や鶫は勿論、私も戦う力は残されていない。

 

 

ーーバシュンッーー

 

 

私を阻む呪霊の群れを貫くは『穿血』。

私はそのまま横たわる『焼相』を抱きかかえて、怯えきった鶫の手を掴み、走り出す。振り返らない。心の中でも礼など言うものか。

ただがむしゃらに、私は走った。

 

 

 

ーーーー『脹相』視点ーーーー

 

 

「頑張るじゃあないか、『脹相』。『うずまき』を正面から食らったそんな状態でよく動けるものだ」

 

「…………」

 

「それも兄としての意地というやつかい?」

 

「妹を守ることに、(お兄ちゃん)が命を張らない理由はない」

 

「ククッ、まったくもって理解できないな」

 

 

『奴』は邪悪に笑う。俺をもってしても思惑は読めず、そこから読み取れるのは、ただただ不快感のみ。

本当に反吐が出る。今すぐ殺してしまいたい。

だが、今の俺では敵わない。俺は恐らく殺されるだろう。

だからーー

 

 

 

「加茂憲倫はどこにいる?」

 

 

 

「………………」

 

 

俺はそれを訊ね、『羂索』は答えない。

 

俺が受肉し、呪霊側についていた時の目的は特級呪物『獄門疆』による五条悟の封印だった。今はそれが叶わないとはいえ、二の策、三の策がないとは考えにくい。恐らくだが、五条悟を封印する算段はついているのだろう。

……その果ての真の狙いが何かは知らないが、この男は俺を取り込んだ後も『焼相』を狙うだろう。俺では妹を守れない。

ならば、奴にーー加茂憲倫に託すしかない。俺と渡り合ったあの男に託すしかない。

 

だから、俺はそれを訊ねたのだ。俺の服に潜んでいる与幸吉の傀儡を通して、彼らに情報を与えるために。

 

 

「……『天与呪縛』による肉体の前では魂の形を弄る『無為転変』ですら通じなかった。結果、耐性のない憲倫の魂にのみ術式が作用し、加茂鶫の肉体だけが残ったというわけだ」

 

「……もう加茂憲倫は死んでいるということか」

 

 

『真人』の術式『無為転変』は人間の魂に作用すると聞いた。肉体は魂の形に引っ張られるとも。

『羂索』の言を信じるのならば、もう加茂憲倫は死んでいるということになる。だが、それは『奴』自身によって否定された。

 

 

 

「いや、彼は生きているよ」

 

「きっと今も『古い知り合い』とでも再会している頃だろうね」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

白。

それ以外何もない空間で、私は覚醒した。

頭が重く、思考が上手くまとまらない私に話しかけてくる声があった。

 

 

「目が覚めたようだな」

 

 

目の前の彼へ、私は改めて話しかける。

 

 

「…………会うのは150年ぶりか」

 

 

 

「久しぶりだな、『天元』」

 

 

 

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多忙に加えて、スランプ気味です。
助けて。
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