【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第54話 終演ー肆ー

ーーーー高専京都校・校舎前ーーーー

 

 

「ちと、数が多すぎるの。学生の状況はどうなっておる?」

 

「……与からの連絡では全員、多少の傷は負ってるようですが、生きてはいるということでした。ただ『羂索』が学生たちの近くにいるらしく……」

 

 

辺りの呪霊を一通り祓った楽巌寺は、歌姫の言葉を聞いて、ふと自らの髭を触る。それは彼が思考する時の癖であった。

状況は悪い。

『羂索』が放った無数の呪霊のほとんどは二級以下のもの。だが、中には術式を持ち合わせた一級相当の呪霊もおり、それらの対応で一級術師が駆り出され、学生と『羂索』がいるという寮にまで戦力が回せていない。

勿論、補助監督が連絡を取り合い、手の空いた術師はそちらに向かうようにはしているが……。

 

 

「…………手が足りん」

 

「……まったくこんなときに五条はどこで何をっ!!」

 

 

歌姫の怒りも尤もだった。既に東京校の夜蛾には連絡をとっており、十数人の術師が応援に来ている。だが、移動手段の関係で時間はかかる。『無下限呪術』をもつ五条悟がいれば解決する話だ。

それと連絡が取れない。

いつもの嫌がらせではないことは理解している。五条は楽巌寺をはじめとする保守派には噛みつくが、学生の命を軽んじる人間ではない。

ならば、五条自身に何かがあったと考えるのが自然だろう。

 

 

「いない者をあてにするな。ここは儂らでーー」

 

 

ーーゾワッーー

 

 

「!?」

「……新手か」

 

 

不意に濃い呪力を感じ取った楽巌寺と歌姫。

彼らの視線の先には、

 

 

『………………』

 

 

おおよそ人とは思えない青黒い肌をもつ男『呪胎九相図』のひとり『青瘀相』がいた。

外見からも真依からの報告にあった特徴と一致する。何よりそいつの後ろに、ふらふらとまるで亡者のように列を為す人間たちには見覚えがあった。

 

 

「高専所属の呪術師たちっ!?」

 

「……死人を操る。聞いてはおったが、悪趣味じゃな」

 

 

 

ーーーー寮前ーーーー

 

 

「生きている……? 本当にそう言ったのか」

 

「あ、あぁ」

 

 

あの場から離脱し、京都校の皆と合流する。

そして、与と情報共有している時に、与が私に伝えた事実。それは加茂憲倫ーー『彼』が生きているというものだった。

『脹相』の服に忍ばせていた小型の傀儡から『脹相』と『羂索』の会話が聞こえたらしい。

恐らく嘘ではない。その状況で嘘をつくメリットがない。とすれば、彼が生きているというのは真実。

ならばーー

 

 

「~~~~っ」

 

 

感情が溢れ、私は声にならない声をあげていた。

 

 

「おい、加茂。少し落ち着け」

 

「あ、あぁ、すまない……少々取り乱した」

 

 

彼の言葉で我に返った私は深呼吸をひとつし、落ち着きを取り戻す。柄にもない取り乱し方をしてしまったな。落ち着け。冷静に、冷静にだ。

…………よし。まずは改めて状況確認だ。

 

 

「与、そちらはどうなった?」

 

「こっちは特級とやり合ったが、西宮と東堂が来たお陰でなんとかなった。怪我人もなしだ」

 

「……こちらも『焼相』はあの通り無事だ。それに寮にいた鶫もな」

 

 

私たちとは少し離れたところで三輪と西宮、真依が様子を見ている二人の方へ視線を向ける。『焼相』はまだ意識が戻らず、鶫はただ下を向いて座り込んでいて、とても戦闘に加われる状態ではない。

 

 

「あの2人はすぐに逃がすべきだな。東堂と西宮、三輪、真依にはそっちについてもらった方がいいだろう」

 

「同感だ。『羂索』の狙いが『呪胎九相図』である以上、『焼相』の側に東堂がいた方が守りやすいだろ」

 

 

恐らくだが、『脹相』も取り込まれた。だとすれば、余計に『焼相』を奪われるわけにはいかない。

ありがたいことに東堂たちが高専内や寮前に放たれた呪霊を大幅に削ってくれている。与によると、楽巌寺学長や歌姫先生、他の呪術師も高専敷地内にはいるという。それまで時間を稼いでーー

 

 

ーーゾゾゾゾッーー

 

 

「「!?」」

 

 

悪寒が走る。この呪力はっ!?

視線を寮のあった方へ向けると、そちらからやってきたのは2人の人影。

1人は筋肉質な大男『骨相』。1人は民族衣裳風の服を着た女『散相』。

どちらも『脹相』たちと同じ『呪胎九相図』の受肉体。特級ではないらしいが、それでも与と三輪、東堂でどうにか退けたという相手と未知数の戦力。今、この場にいる全員が呪力を相当消費している。その状態でこれを相手にしろというのは……。

 

 

「少々、酷だ……っ」

 

「三輪! 西宮!」

 

「わかってる!」

「はい!」

 

 

与の声を聞く前に、2人は動き出していた。

意識の戻らない『焼相』は西宮が、呆然としている鶫は三輪が手をとり、走り出す。その後ろを二人を守るように真依と東堂が着いている。

これならば……。そう思った矢先に、

 

 

『…………』

『…………』

 

 

『骨相』と『散相』がこちらへ向け、手をかざしてきた。

そこから呪力が溢れる。

 

 

ーーゾゾゾゾッーー

 

 

見える! 呪力の流れだ。

『骨相』から流れ出た呪力が『散相』へ向かいーー

 

 

「っ、『赤縛』!」

 

「メカ丸っ! 撃て!!」

 

 

ーーグニャッーー

 

ーーパァンッーー

 

 

「くっ!」

 

「攻撃が届かないっ」

 

 

咄嗟に『散相』へ攻撃を放つ私と与。

だが、その攻撃すら『散相』に当たる前に、あらぬ方向へ分散されてしまう。前に見た通りだ。想像でしかないが、『彼女』の術式は呪力の分散。

となれば、与が食らったという『骨相』の術式・『骨疾嶒』も分散して、

 

 

ーーゾワッーー

 

 

「「!!」」

 

 

こちらへ襲いかかってくる。当たれば終わりの全方位からの広範囲攻撃。

この攻撃は躱せない。くっ!? どうすればっ!?

 

 

ーーパァンッーー

 

 

柏手。同時に、私と与は東堂の横に移動していた。

 

 

「呪力を込めた石と入れ換えた」

 

「助かった、東堂」

 

「友を助けただけだ。礼などいらん」

 

 

何故かここ最近、東堂が与を認めつつあるのは謎であるが、ともかく今はこの場を切り抜けることに専念すべきだ。

東堂をこれ以上『焼相』から離すことは避けたい。かといって、このまま皆で逃げればいずれは追いつかれる。追いつかれれば、取り込まれれば、恐らく『羂索』による計画が進んでしまう。その目的は分からないが、事態が悪化するのは確かだろう。

 

 

「仕方ないか」

 

 

加勢はまだ来ない。

となると、ここはやはり私と与で迎撃するしかない。

 

 

「……東堂、先に行け」

 

 

死ぬなよ。

そう言う東堂に、ただ一言だけ返す。

 

 

「覚悟はできている」

 

 

私の使命は理解している。

『焼相』を守り抜く。それが今の私のやるべきこと。

 

東堂に言われなくても死ぬつもりなど毛頭ない。

私は生きて『彼』に会いに行かなくてはいけないのだ。

 

 

 

「『百斂』ーーーー『穿血』ッ!!」

 

 

 

ーーーーーーーー




死亡フラグ……死亡する可能性が高い言動・状況のこと。
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