【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第55話 終演ー伍ー

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「与!」

「メカ丸! 奴らを囲め!」

 

 

私が放った『穿血』に続いて、与は3体のメカ丸を動かした。『骨相』と『散相』を包囲する形でメカ丸は構える。

 

 

「『羂索』が『呪霊操術』で使役してる、でいいんだよな?」

 

「あぁ、恐らくそうだろう」

 

 

女の方はともかく、与から聞いていた『骨相』とは様子が明らかに違う。自我はなく、ただ傀儡にされているのだろう。

 

 

「それがいい方に転んでくれるといいんだが……」

 

「加茂、今は考えても仕方ないだろ」

 

「……あぁ」

 

 

ーーパンッーー

 

 

与の言葉に頷き、掌を合わせる。

圧縮し、放つ。

 

 

「『穿血』!」

 

ーーバシュンッーー

 

 

「撃て! メカ丸!」

 

ーードゴォォォッーー

 

 

まずは『散相』の術式を突破しないことには始まらない。どこまでの攻撃を同時に分散させられるのかが分からなかったため、時間差をつけ、『穿血』とメカ丸の『大祓砲』を撃ち込んだ。

同時に4撃。これならどうだ?

 

 

ーーグニッーー

ーーパァンッーー

 

 

包囲する形での攻撃だったが、結果は失敗。『穿血』も『大祓砲』もいとも簡単に分散されてしまった。

ならば、次の手だ!

 

 

「2体を分断する!」

 

「分かったーー『纏呪強化形態』」

 

 

与はメカ丸を両手足に纒い、『骨相』に向け翔ぶ。『奴』に組み付いて、

 

 

「『推力加算』!」

 

ーーゴゴゴゴゴッーー

 

 

両腕から吹き出る凄まじい呪力の噴出で、そのまま大男をこの場から離していく。大男もその膂力で耐えてはいるようだが、それでも与の方が出力は上。100m近くその場から離すことに成功していた。

与があちらの大男を抑えてくれる。これでこちらに集中できる。

 

 

「『赤鱗躍動』」

 

 

『穿血』主体の組み立てから『赤鱗躍動』に切り替える。

遠距離からの攻撃は無意味。『散相』によって攻撃を分散させられてしまうからだ。

ただし、分散できる攻撃にも限度はあるだろう。それに今までの戦闘から肉体を分散ーーバラバラにはさせられないことも察しがついていた。だから、近接戦闘に持ち込めば勝機はある。

 

 

ーーバキッーー

ーーガシッーー

 

ーーブンッーー

ーーガシッーー

 

 

初撃。腹への拳は止められる。

間髪入れずに2撃目を顔面へ。それも止めてくる。

『赤鱗躍動』にも対応してくるのだ。反応速度は想定よりも速い。近接戦闘ができない訳ではないようだ。

ならば、ここでーー

 

 

ーーブシュッーー

 

「『赤縛』!」

 

 

血液パックを破裂させ、繰り出す『赤縛』。至近距離ならば!

 

 

ーーパシュゥーー

ーーギュンッーー

 

『………………』

 

ーーグッーー

 

 

拘束成功だ。変わらない表情のまま、どうにか『赤縛』から抜け出そうとするが、見た目どおり『彼女』にそこまでのパワーはない。

にもかかわらず、

 

 

ーーグッーー

ーーブシューー

 

 

『彼女』は力ずくで『赤縛』を引き千切ろうとしていた。その度に、『彼女』の腕に『赤縛』が食い込み、皮膚が裂け、そこから血が吹き出る。

 

 

「っ、やめろ。お前の力では『赤縛』は破れない!」

 

『…………』

 

ーーグッーー

ーーブシューー

 

「っ、止めろと言っているだろうっ!」

 

 

私の声は届かない。

見ていられない。このまま『赤鱗躍動』で強化した拳で気絶させるべきだ。そう判断した私はすぐに行動を起こし、拳を『彼女』の鳩尾へ入れる。

だが、それでも意識は飛ばない。まだ拘束から逃れようとし続けている。その間にも『赤縛』は、暴れる『彼女』の肌を裂いていく。

 

 

「っ」

 

 

自分の体を傷つけていく『散相』を見て、一瞬、『脹相』の顔が頭を過る。弟と妹を想い戦う『兄』の表情が浮かび、次に浮かんだのは鶫の顔。いや、私と同じ名をもつ『彼』の顔だった。

気づけば私はーー

 

 

ーーバシュンーー

 

 

『赤縛』を解いていた。瞬間、呪力を帯びた『彼女』の攻撃が私を襲う。

 

 

ーーバギィィッーー

 

「が……っ!?」

 

 

呪力を帯びた拳が鳩尾に入り、そのまま崩れ落ちるように膝をついてしまう。

 

 

「~~~~っ」

 

『…………』

 

 

私は……何をしているのだろうか。私の母を利用した敵だろう、奴ーー『脹相』は。その家族など助ける義理もないはずだ。

だというのに、私は『散相』を解放し、今まさに窮地に陥っている。

それになんだというのだ。何故この場面で『彼』の顔が出て……いいや、本当は分かっているさ。あの状況だったら、きっと『彼』は私を止めた。加茂家の呪術師としては正しいだろうが、人としては間違っている。解放してやるべきだと。

そんな風に、まるで年長者が説教する時のように、私を叱りつけただろう。

 

 

「馬鹿、だな……私は……」

 

『…………』

 

 

ーーグイッーー

 

 

「か……っ、はっ……っ」

 

 

倒れ込んでいた私の首を両手で絞めながら、私の体を浮かせる『散相』。息ができない。上手く力が入らず、抵抗できない。

 

 

「加茂っ!!」

 

「む…………た……っ」

 

 

遠くで与の声が聞こえる。だが、私の意識は薄れていく。

……これは、死だ。

死が急速に近づいているのを感じる。

 

後悔。

今の私にあるのはそれだけだ。

もっとお節介な『彼』を知りたかった。『彼』が何を考え、何を思って生きたのか聞いてみたかった。

最期に『彼』に会いたかった。

 

 

「……………………」

 

 

やがて、必要な酸素も取り込めなくなり、私はーー

 

 

 

ーー死んだ。

 

 

 

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生存フラグ……生存する可能性がある言動・状況のこと。
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