【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第6話 憲倫くんのお受験

ーーーー呪術高専京都校ーーーー

 

 

「ここに来るのもいつ以来か」

 

 

京都府内にある呪術高専へ私は来ていた。昔は一呪術師としてここに出入りしていたが、今は受験生として来ているとは、人生何が起こるか分からんな。ちなみに、私の隣には今日の引率役として憲紀がいる。

 

 

「久しぶり? 私の記憶が正しければ、鶫はここに来たことはないだろう?」

 

「…………ただの言い間違いだ、気にするな」

 

 

転生前のことを軽々しく口にするものではない。変な勘繰りをされては……いや、別に無理に隠すことでもないとは思うが。

憲紀に話そうかとも思った。ただ、加茂憲倫が史上最悪の呪術師とされている現状では話せば、嫌われる。最悪秘匿死刑もあり得る。なんせ、

 

 

「いいか、鶫。改めて言っておくが、楽巌寺学長は厳格な方だ。加茂家の人間として、言動には注意しろ」

 

「もう耳にタコができる程には聞いた。分かっている」

 

 

ーーーー学長室ーーーー

 

 

「今、なんと?」

 

「術式はない。呪力もない。だが、ここへの入学を希望する」

 

 

私の言葉を受け、楽巌寺学長はこちらを睨む。

なかなかの眼圧。齢70とは思えない程の圧だった。

 

 

「加茂」

 

「……はい」

 

「これはどういうことじゃ。お主が連れてくるといった者ならばと時間をとったが、呪力も術式もない落伍者を連れてくるとは」

 

 

今度は憲紀を睨む学長殿。

 

 

「申し訳ありません。ですが、彼女は私やメカ丸、三輪の前で確かに呪霊を祓いました」

 

「その報告は聞いた。その呪霊が二級相当であることもな」

 

「ならば、一考していただけませんでしょうか」

 

「…………問題はそこではない」

 

 

学長殿はそう言うと、席を椅子から立ち上がる。そのままゆっくりと窓際へ向かながら語る。

 

 

「呪術高専は呪術師の教育機関であると同時に、呪術界の要。そこに転入生がくること自体は悪い話ではない」

 

「じゃが、呪力がない者は話が別じゃ。術式もないのならば尚更の」

 

「っ、ですが、現に東京校では真希がーー」

 

 

「くどい」

 

 

我慢の限界とばかりに、学長殿は憲紀の言葉を遮った。

 

 

「加茂、お前ともあろう者が随分と感情的になっておるが」

 

「っ」

 

「鶫といったか……何をこの娘に拘っておる」

 

「そういう、訳では……」

 

 

既に憲紀には言い返す気力はない。それほどまでにこの老人は強い権力を持っているとでもいうのだろうか。

ともかくだ。

憲紀の顔を立てて黙っていたが、そろそろいいだろう。

 

 

「学長殿」

 

「……なんじゃ」

 

 

ご老人に敬意を払うのは人として当たり前のこと。

そして、呪術界の重鎮だというならば尚更だ。

だが、こちらは御歳150の老人中の老人。ならば、目の前の若造に教えてやろう。

 

 

「手合わせ願おう。貴方を倒せば、私の入学に文句は言えなくなるだろう」

 

「……最近の若者は本当に……年寄りを敬う心も失くしたようで嘆かわしいの」

 

 

ーーーー呪術高専施設内・運動場ーーーー

 

 

「……さて、ここならよいか」

 

 

そう言って、学長殿は黒い箱から何かを取り出した。

楽器……だろうか。

 

 

「加茂」

 

「……はい」

 

「開始の合図をせい」

 

 

憲紀がこちらをチラリと見てくるが、気づかない振りをする。どうやら憲紀は、学長殿にそれなりに信頼されているようだ。これ以上は憲紀への心象を悪くするのは憚られる。

実力で示せば、問題ない。

私が目を合わせないことを悟ったのか、そのまま彼は開始を告げた。

 

 

ーーギュィィィィンッーー

 

 

瞬間、爆音が響き渡る。音の旋律はそのまま衝撃波となってこちらへ向かってくる。

 

 

「!」

 

 

紙一重で避ける。

……なるほど、明治にはなかった術式だ。面白い。

 

 

「まだ、まだっ!」

 

ーーヴヴヴッーー

 

 

更に学長殿はその楽器を掻き鳴らす。音は刃となって飛んでくる。

予備動作が少なく、中距離からの隙のない攻撃。距離を詰めさせない強力な呪術。いい術式だ。

 

 

「ふっ! ほっ!」

 

「言うだけあって悪くない動きじゃ。じゃがーー」

 

 

ーーギャギャギャギャギャッーー

 

 

更に攻撃の速度を上げていく学長殿。そのうちの1刃が私の左腕をかすめた。

 

 

「鶫!」

 

「時間の問題かの」

 

 

どうやらこの術式、呪力の消費は少ないようだった。鳴らし続けば、いずれは私の体力が先に尽きるだろう。学長殿の思惑はそんなところか。

 

 

「本当は呪力切れを起こすまで避け続けるのが平和的だったんだが、仕方がない」

 

ーーグッーー

 

 

足に力を込める。そこへ音の刃が迫り、

 

 

ーーグンッーー

 

「!」

 

 

最小限の動きで捻り、避ける。そして、また地についてから跳ぶ。それを繰り返す。勿論、ただ避けるだけではない。

 

 

「……避けながら、楽巌寺学長に近づいていく!?」

 

 

解説ありがとう、憲紀。

憲紀の言う通り、私は跳びながらも前へ進む。

前へ前へ前へ。攻撃の間隔を変えようと関係ない。今の私ならば簡単に対応できる。

 

 

「…………加茂、ちいと耳を塞げ」

 

ーースッーー

 

 

私の動きを見て、今の攻撃では意味がないことを悟ったのだろう。学長殿はそう言って、一度攻撃を止める。ただそれは一瞬だけ。

次の瞬間には、その攻撃を繰り出していた。

 

 

 

ーーガァァァァァァンッーー

 

 

 

学長殿が手にしていた楽器を破壊した途端に鳴り響く轟音。

それが全方位への波状攻撃であることに気づいた時には、私はその攻撃をもろに受けてしまっていた。

 

 

「鶫!」

 

 

吹き飛ばされた私とそれに駆け寄る憲紀。

それを見て、学長殿はゆっくりとこちらへと歩を進めてくる。

 

 

「ちとやり過ぎたかの」

 

 

私のすぐ側で私を見下ろす学長殿。

ふむ、なるほど。

 

 

 

「こんなものか」

 

 

 

「なッ!?」

 

 

学長殿は軽く飛び起きる私を見て、今までとは違う、明らかに驚愕した表情をしていた。

そんな彼に私は告げる。

 

 

「さて、続きといこうか。学長殿」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

結果的に、私は呪術高専への入学を認められた。

……まぁ、どちらかといえば『監視』といった方が正しいのだろうな。

自らの呪術を破られたという面子よりも、私という未知の脅威を手元に置き、監視する選択をした学長殿は、上に立つ人間としては正しい判断をした。そういう意味では私は彼には負けている。

 

憲紀のためを思えば。

もしや目をつけられるべきではなかったか?

 

いつでも後悔とは先に立たないものだ。

 

 

 

ーーーー加茂鶫の知り得ない会話ーーーー

 

 

「加茂」

 

「はい」

 

「お主の従姉妹……加茂鶫といったか。あの娘の入学を認める」

 

「! ありがとうございます、楽巌寺学長」

 

「ただし、お主が責任をもって監視することじゃ」

 

「……監視、ですか」

 

 

 

「『禪院(ぜんいん)甚爾(とうじ)』を知っておるな」

 

 

 

「禪院家から出奔し、呪詛師となった『術師殺し』と言われていたという人物とだけは聞いています。ですが、鶫と彼になんの関係が……?」

 

「お主の従姉妹の『天与呪縛』は奴の『それ』に限りなく近い。儂はそう見とる」

 

「それは、呪術界にとって脅威になれば、始末しろということですか」

 

「10年ほど前に五条悟の隙を突き、『天元』様の同化を妨害したのがその『禪院甚爾』じゃ。それだけを言えば、皆まで言わずとも理解できるな?」

 

「っ」

 

「よいな、加茂」

 

「……………………はい」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

鶫…【朗報】受かった

 

鶫…(゚∀゚ 三 ゚∀゚)

 

メカ丸…おめ

 

メカ丸…いつから?

 

鶫…明後日から

 

鶫…よろ

 

鶫…ヽ(*´∀`*)ノ

 

メカ丸…そういえば

 

鶫…?

 

メカ丸…縁談はどうなった?

 

鶫…(´・∀・`)

 

鶫…( ゚ー゚)

 

鶫…((( ;゚Д゚)))

 

メカ丸…乙

 

メカ丸…強く生きろ

 

 

ーーーーーーーー




次回、縁談編!
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