【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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最終章『加茂憲倫』編、開幕。


加茂憲倫
第63話 憲倫くんは思い出す。そして、動き出す。


ーーーーーーーー

 

 

ここにきて、やっと思い出した。

私が殺されるまでの経緯も。私の大切な家族のことも。

そして、私が転生した原因も、全てを思い出した。

 

私は『縛り』を課して戦い、結界、『羂索』に殺された。

だが、今際の際に机から落ちた呪物のひとつ、特級呪物『勿忘草』の術式効果によって、その『名』を刻み込まれたのだ。『名』が刻まれた者は、その呪物によって存在を保証され、いつか命を続けられるという。

 

私が静乃を救えないからと捨て置いた呪物だったのだが、こんなことになるとは。

そして、皮肉にも『羂索』の所業によって、轟いた悪名のおかげで私は150年を経て、この平成の世に命を繋いだというわけだ。

…………まったく、笑えん喜劇だな。

 

だが、なんとなく。

私のすべきことが見えたよ。

私はーー

 

 

ーーーー憲紀視点ーーーー

 

 

「……東堂、先に行け」

 

 

死ぬなよ。

そう言う東堂に、ただ一言だけ返す。

 

 

「覚悟はできている」

 

 

私の使命は理解している。

『焼相』を守り抜く。それが今の私のやるべきこと。

 

東堂に言われなくても死ぬつもりなど毛頭ない。

私は生きて『彼』に会いに行かなくてはいけないのだ。

 

 

「『百斂』ーーーー『穿血』ッ!!」

 

 

ーーバシュンッーー

 

 

『穿血』を放つと同時に、東堂たちが走り出したのが傍目に見えた。

これでいい。

私と与の目の前の2体は、恐らく一級レベル。それぞれが厄介な術式をもっている。一体ずつ撃破していくのが理想だが……。

 

 

「与!」

「あぁ!」

 

一瞬の目配せで理解してくれたようで、与が『傀儡操術』で複数のメカ丸を『骨相』へ向かわせる。

 

 

「拘束できて十数秒だ」

 

「それでもいい……『刈祓』ッ」

ーーギュンッーー

 

 

血液の円刃を『散相』へ向けて放つ。同時に、二人で駆け出した。

 

 

「『赤鱗躍動』」

 

「『纏呪強化形態』!」

 

 

私たちが選択したのは、近接戦闘。初撃で遠距離攻撃が分散されるのは理解していた。ならば、力で押し切るのみ!

 

 

「「はぁぁぁっ!!」」

 

『………………』

 

ーーゴリゴリゴリゴリッーー

 

 

狙い通りだ。攻撃によるダメージ自体は分散されているようだが、それでも許容上限はあるはずだ。このまま至近距離で呪力で強化した打撃を当て続ければーー

 

 

 

ーーゾワッーー

 

 

 

「なっ!?」

「退けッ!!」

 

 

悪寒。飛び退く。

直後に『散相』から放たれた衝撃波で、私も与も後ろに吹き飛ばされてしまう。

 

 

「か……っ!?」

 

 

息が!?

あまりの衝撃に、息ができなくなる。酸欠で瞬間、視界がブラックアウトしてーー

 

 

「加茂っ!!!」

 

 

与の声で我に返った私の目の前には、振り上げられた『骨相』の右腕があって。

 

 

ーーバギィィィッーー

 

 

かなりの膂力に、軽く10メートルは後ろに押し込まれた。

咄嗟に両腕に全呪力を纏わせて、防御はした。どうにか間に合ったはずなんだが、少なくとも奴の攻撃を直接受けた右腕の感覚はない。

しくじった。これでは『百斂』が使えない。そうなれば、『赤血操術』で最も貫通力と威力の高い『穿血』も使えない。

 

 

「万事休す、か……」

 

 

唇を噛みしめたせいか、血の味がする。いや、これはさっきの攻撃で内臓が損傷しているのか。どちらにしろ、今まさに私に襲いかかろうとしている大男をどうにかしなくては私の命はない。

 

 

「『三重大祓砲』ッ!!」

 

ーードォォォォォーー

 

 

折れかけた私の心を支えたのは、『骨相』に直撃した与の『三重大祓砲』。そのおかげで、『骨相』の注意がそちらへ向いた。

 

 

「与……っ」

 

「加茂! 俺が時間を稼ぐ。退け!」

 

「……っ、すまない」

 

 

どうにか足に呪力を廻し、駆け出す。それと同時に、

 

 

 

ーーーーバギィィィッーーーー

 

「!?」

 

 

 

そこから退こうとした私の背後からその音は響いた。振り返ると、私の視界に飛び込んできたのは、

 

 

「与っ!?!?」

 

 

両腕両足の装甲を破壊された与の姿だった。

どうする!? どうすればいい!?

この状況……私では勝てない。私が助けに入ったところでどうにもできーー

 

 

 

ーーのーりーとーしーッ!!!ーー

 

「っ」

 

 

 

不意に頭の中に反芻する叫び声。

あぁ、そうだな。分かってるさ、鶫…………いや、『憲倫』。

 

 

ーーギリギリギリギリッーー

 

 

痛みは忘れろ。振り絞れ。

ここで決めねば、生き延びたとしても私は笑えない。

圧縮、圧縮、圧縮、圧縮。

掌に全てを込めろ。ただそれだけを考え、放て!

 

 

 

「…………『穿血』ッ!!」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

恵まれた血筋。確かな土壌。相伝の術式。

条件は揃っていた。

彼が開花しなかったのは、きっかけがなかったから。

 

ただ、その術式を使いこなすイメージは十全にできている。

そして、今の彼の頭にあるのは、掌を満たす血液を圧縮することだけ。

 

きっかけは既に彼の手の内に。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

解放する直前、私の掌の中でーー

 

 

 

ーーーーバチバチバチバチッーーーー

 

 

 

ーー黒い火花が散った。

 

 

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