【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第65話 憲倫くんは対峙する

ーーーーーーーー

 

 

与は黒い影に呑まれた。

そのはずだった。なのに、

 

 

「あ、あれ? なんで俺、生きて……?」

 

 

私の隣に彼はいた。確実に呑まれたはずだったのに……。

いや、そうか。

こんなことができる術師は、私の知る限り一人しかいない。

 

 

「東堂か!」

 

 

人の気配を感じ、振り返るとそこにいたのは、

 

 

「あ、いえ。私です」

 

「三輪?」

 

「はい、えぇと東堂先輩の術式で飛ばされまして」

 

「そ、そうか」

 

 

なんだろうか、この肩透かしを食らったような感覚は。

まったく、あの男は……。そう思えば、いつの間にかその男はその場にいて。

 

 

「加茂よ、中々いい顔つきになったじゃあないか」

 

「……東堂、お前は……はぁぁ」

 

 

思わずため息を吐いてしまう。大量の呪霊を前にしてまでこの調子だ。緊張感というものをだな、そう言いかけて、

 

 

「ちょっと~~! もういい?」

 

 

頭上から声。上を見上げれば、箒に座って飛ぶ西宮がいた。箒に乗りながら、手に持ったランタンに呪力を流す。すると、そのランタンに火が灯り、

 

 

ーーパァァンッーー

 

『イィィィィッ』

 

 

「っ」

 

 

西宮に向かってきた呪霊が弾け飛ぶ。あれは真依の銃弾か!

そちらへ気を取られていて、呪力が私の体に走るのに遅れて気づく。

 

 

「加茂先輩、ちょっと失礼しますよ」

 

「っ、新田までいるのか」

 

「まぁ、寮を攻撃されたら嫌でも出てきます」

 

 

そう言って、新田は私と与に術式を施した。これで今の傷は悪化しないということだな。

そして、奇しくも京都校勢揃いという訳か。

ここにあとは鶫と『憲倫』がいれば。いや、たらればを考えるのは止めよう。

 

 

「加茂」

 

「っ、あぁ」

 

 

ゆっくりと立ち上がった与に頷く。

そうだな。これだけ膨大な数の呪霊が相手だ。私が指示を出さねばな。

 

 

 

「互いのカバーをしろ。皆で生き残る!」

 

 

 

ーーーー『羂索』視点ーー

 

 

彼らは私の放った呪霊を祓い、5分間生き残っている。それに関しては予想外だが……。ともかくその間、私と戦闘を続けていた『脹相』には限界が訪れていた。

 

 

「はっ……は……」

 

「呪力も底を尽きかけている。まぁ、よくやった方だが、ククッ……反抗期も終わりだな」

 

 

そろそろいいだろう。そう思い、弱った『脹相』を取り込むために、手を伸ばしたその時だ。

 

 

「!」

 

 

高専の学生が呪霊と戦っている場所から少し離れたところ、弱々しいながらも『焼相』の呪力を感じるその場所に、突如としてその呪力は現れた。それは覚えのある呪力。

私が求めていた存在。

 

 

「ククッ、まさか出てくるとはね」

 

 

予想外だ。ただこちらにとっては好都合。

『呪霊操術』は万全。後は近くにいる『焼相』を取り込めば、『彼』を取り込むのは簡単だ。あとは五条悟を封印する術を考えながら、ゆっくりと『無為転変』を育てればいい。

 

 

「さて」

 

「どこへ、行くっ」

 

「急用ができてね、君は後回しだ。どうせもう呪力も尽き、動けないだろう?」

 

 

肩で息をする『脹相』にそう告げ、私は背中を向けた。

これほどの実力差があるのだ。多少放っておいても問題なく取り込めるだろう。

それより今はこの好機を逃す訳にはいかない。

 

 

「……呪力が尽きたことが妹を守らない言い訳になるとでも?」

 

「あぁ、そうか。そういう人格だったね」

 

 

ならば、私が『彼』を取り込むまで、呪霊とでも遊んでいるといいさ。そう言って、私は一体の呪霊を呼び出す。

特級仮想怨霊『』。

今の『脹相』では到底突破することは叶わないであろう相手を放ち、交戦し始めた音を確認してからその場を後にした。

 

 

……………………

 

 

『脹相』との戦闘を離脱した私は、ペリカン型の呪霊を使役し、そこへ降り立つ。『うずまき』で破壊した高専寮や学生が戦っている場所から少し離れた森林地帯に、『焼相』はいた。それに『彼』も。

 

 

「やぁ」

 

 

「っ」

 

 

私を見て、体を震わせる『焼相』と三対の眼で私を見据える『彼』。

名をーー

 

 

 

「会いたかったよ、『天元』」

 

 

 

『天元』。

この国の呪術結界を構築している呪術界の要。私の計画の鍵となる呪術師だ。

異形の姿をしているのは進化の結果、体組織が変化したからだ。事前に調べた通り、『彼』の組織は人間というよりは呪霊に近いそれ……つまり、『呪霊操術』で取り込むことができる。

 

 

「…………」

 

「無視とは、つれないな」

 

 

私と2体の間には、結界が2枚。どちらも『天元』が張ったもので、その強度を見るに、流石はこの国の根幹を為す術師というしかない練度の代物だった。いくら私といえど、簡単には破壊できないだろうね。

時間は多少かかる。だが、結界を解くこと自体は可能だ。勿論、ここで時間を使うのは、五条悟が到着するリスクを伴う。ただ、そのリスクを負ってでも、私の目的が2つ、目の前に揃っているのだ。この期を逃す手はない。

 

 

ーーバチッーー

 

「……なるほど、こういう結界か」

 

 

『彼』の張った結界に弾かれながらも触れ続ける。呪力を解析し、ひとつひとつ紐解いていく。複雑ではあるが、破壊できないものではない。保って1分。これなら間に合う。

 

 

「…………」

 

 

私が結界を解く間も、『天元』は私の方を無言で見据える。

それは抵抗か、それとも諦観か。ここは少しでも『彼』の真意を探るとしよう。

 

 

「この国の根幹である君がこの場面で出てくるとはね。どういう風の吹き回しだい?」

 

「…………」

 

「取り込まれないように警戒しているのか? 安心していい、その必要はないよ。憲倫のせいで『真人』の『無為転変』が成長しないまま、私の中に入ったから、君を取り込むのには少々力が足りないんだ」

 

「……そのために、『呪胎九相図』を取り込んでいるわけか」

 

 

警戒は解かないまま、『天元』はそう訊ねてくる。

 

 

「そう。彼らには私の血が混じっている。それを取り込むことで私自身の呪力を底上げしたいんだが」

 

「…………ならば、尚更ここを通すわけにはいかない」

 

「いいさ。強引に押し通る」

 

 

 

ーーバリンッーー

 

 

 

瞬間、結界が割れる。緩んだ隙を突いて、呪力を流し込んだのだ。訳もない。

 

 

「さぁ、これで守るものはない」

 

「…………」

 

「いやっ、いやっ……」

 

 

『焼相』はまた自らの体を抱き、嫌々と首を振る。その様子だけ見たら、年相応な子供。受肉体とは思えない。

 

 

「ククッ、人の子を受皿にしたのだから、当然といえば当然か」

 

 

そんな独り言に答える者はなく、私は一歩2体へ近づく。私と対峙するように『天元』は『焼相』の前へ。それはまるで『焼相』を守るようで。

 

 

「?」

 

 

ふと感じる違和感。だが、今はどうでもいい。この好機を捉えるだけだ。

 

 

 

「『呪霊操術』」

 

 

ーーゾゾゾゾゾゾゾッーー

 

 

 

解き放つ。まずは100。それらを『天元』に向けて放った。いくら結界術の使い手とはいえ、絶え間なく襲い来る呪霊をすべて防ぎきるのは無謀だ。

残り180秒かけて、じっくりと突破すればいい。

 

 

「さぁ、終わりに……いや、ここから始めよう」

 

「呪術全盛の時代。混沌蠢く平安のーー

 

 

 

 

ーーバシュンッーー

 

 

 

「!」

 

 

私の言葉を遮るように、『それ』は私の放った呪霊の半分を消し飛ばした。

赤い流星にも似たそれは『穿血』。『赤血操術』の奥義。

現代でそれを撃てるのは2人。加茂家の少年と『脹相』。少年は今、私の呪霊と会敵している。ならば、この『穿血』を撃ったのは一人しかいない。

 

 

 

「待たせたな」

 

 

 

私の頭上にその人物はいた。後ろで結っていたその髪はほどけ、長髪になっていたが間違いない。その容姿は確かに私の予想した通りの人物。先ほどまで私と交戦し、破れたはずの『脹相』だった。

……だが、なんだ? この呪力はまるで……。

 

 

 

「まるで、あの時の続きだな」

 

 

 

あの時の続き。それが何を意味するかはもう察していた。

目の前の男は『脹相』ではない。

彼はーー

 

 

 

「加茂、憲倫ッ!」

 

 

 

その名を呼んだ私に、彼は告げる。

 

 

「あの時と同じだ。今からあの時の続きを始めるぞ」

 

「そして、この戦いで私たち、過去の術師の物語は終わりだ。ここからは今を生きる呪術師たちの時代」

 

 

 

「さぁ、ここで我らの幕を下ろすとしようじゃないか」

 

 

 

ーーーーーーーー




あと数話で終了予定。

ゴールも近い。キレイな憲倫くんは……。

  • コメディ回が好きだ。
  • シリアス回好きだ。
  • どっちも好きだ。
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