【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第7話 男とは死んでも結婚したくない憲倫くん

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加茂家の繁栄を考えるならば。

早い話、私自身が沢山の子を産めばいい。

 

私には呪力も術式もないが、非術師から呪力や術式をもつ子が産まれる例など数えるほどにあるからだ。

倫理的にはともかく、統計的には5、6人も産めば、1人くらいは相伝の術式をもつ子が産まれるだろう。

 

だが、倫理は以前にーー

 

 

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「男と結婚など死んでも御免だ」

 

 

私は部屋に来ていたメカ丸の前で高らかに宣言した。

体は女。それはもう確認済みである。無論、私自身女性経験もあるのだから、今更年端もいかぬ女子の裸でどうこうは思わん。それが自らの肉体ならば尚更だ。

拾った命だ。それを女として生きることに抵抗はない。

だが、異性ーー男との交際の類いやそれ以上のことなど考えたくもない。

私、中身はおじさん。

 

 

「だが、その我儘が通るわけでもないのだろウ?」

 

 

的確にそこを突くメカ丸。

そうなのだ。私の縁談の相手というのが、何やら名の通った呪術師の家系の人間らしく、加茂家はこの縁談をどうしても通したいらしい。ちなみに、向こうも乗り気だという。

私が言うのもなんだが、霞に髪を切ってもらうまでの私は御世辞にも整った風貌ではなかった。勿論、先方へはある程度整えられた写真を送っているのだろうが……。

 

 

「そんな人間に好印象を抱く者がいるとは……」

 

「どうだろうカ。だが、少なくとも今の姿を見るに、鶫は決して悪い容姿ではないと俺は思うガ」

 

「ん? メカ丸は私のような女子が好みなのか?」

 

「そんなことは……なイ」

 

 

何やらメカ丸の視線が私の前髪の方にいっていた気がするが……気のせいだろう。

 

 

「ともかくだ!」

 

「メカ丸! 私はこの縁談を波風立てずに破談にする!」

 

「私は絶対に結婚などするものか!!」

 

 

「それを俺に言われてモ……頑張れとしか言えないナ」

 

 

頑張れ?

何を他人事のように言っている!

 

 

「いヤ……事実、他人事なのだガ……」

 

「メカ丸と私で、破談にする案を考える! そのために来たのだろう!」

 

「………………」

 

 

土曜日、午後。

私の決意を貫くため、私とメカ丸は共に策を練ったのだった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

そして、その日はやってきた。

縁談当日、勝負の日である。

 

 

ーーーー京都府内・某料亭ーーーー

 

 

約束の時間から2時間ほど前に、私は現場に入った。

憲紀には、身支度のためと言ったが、真の目的は違う。メカ丸と練った例の計画を実行するためだ。

……とはいっても、メカ丸は最後まで反対していたが。

 

 

「……本当にいんたーねっとは凄いな。簡単に様々な種類の薬が手に入るとは」

 

 

通販という遠隔から買い物ができるいんたーねっとを使い、私はある薬を手に入れていた。その名は睡眠薬。飲んだ人間を眠りに誘うという、呪術顔負けの効果をもつ代物だ。

 

これを飲み物か何かに混入させ、縁談相手を眠らせる。

縁談途中に相手が眠りだしたとなれば、こちらから断る理由を提示できるという算段である。加茂家を馬鹿にしているのか、と。

……加茂家の権威を悪用しているようで若干気は引けるが、背に腹はかえられない。

 

だが、この計画、実のところ一抹の不安がある。

その理由のひとつとして、実際に私も飲んでみた結果、薬の効果がなかったからだ。効果がなくては、ただただ縁談が何事もなく進んでしまう。それが不安なのだ。

ただ、メカ丸曰く、体質によるものではないかとのこと。事実、憲紀には効いた。

だから、薬が効いてくれればいいのだが……。

 

 

……………………

 

 

「しかし、女物の着物というのはこうも動きにくいものなのか……」

 

「止めろ、鶫。着物が乱れる」

 

 

縁談相手を待つ間、隣に控えていた憲紀に注意される。

あと10分ほどで相手が来るはずだから、憲紀の言うことは尤もだ。ただ本当に女物の着物というものは、動きにくいもので。

 

 

「憲紀、これでは2時間も保たんぞ」

 

「黙れ。我慢しろ」

 

 

睨みを効かせる憲紀に辟易としつつも、やがてその時間はやってきた。

障子の向こうに人影が見える。

恐らくその影が私の縁談相手なのだろう。

…………ん?

 

 

「鶫、手筈通り私が障子を開け、迎える。お前はただにこやかにしていろ」

 

 

そう言って、憲紀は私の方へ目を向けたまま障子を開けた。

 

 

 

 

「開けるなッ! 憲紀ッ!!!」

 

 

 

 

気を抜いていた。

その異様な気配が表に出てきた瞬間に私は飛び出していた。だが、恐らくこの慣れない格好のせいで、私は転けた。

だから、

 

 

 

ーービシャァァッーー

 

 

 

私の『縁談相手だった者』が吐瀉した液体を、憲紀だけがもろに浴びてしまったのだ。

 

 

「っ、がぁあァぁぁァァぁあ!?!?!?」

 

「憲紀っ!!」

 

 

液体を浴びた憲紀は悶え転げる。

溶けていたり、燃え上がったりはしていない。酸や石油の類いではない。だが、この苦しみ様は……。

 

 

「呪術かっ」

 

 

治療しようとして、気づく。

今の私では、反転術式はおろかその類いの呪具すら使えない。

 

 

「っ」

 

 

急いで私はけいたいでんわを取り出し、登録してあった番号に電話した。相手は1こーるで出る。

 

 

「メカ丸、憲紀が呪いに侵された! 治療のできる術師を至急ここに呼んでくれッ!!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

思いがけず私の願いは叶った。

縁談相手は死に、縁談は白紙どころか破棄された。

 

だが、その代償は余りに大きく。

私の大切な友人が呪われてしまったのだ。

 

 

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次回より『伝播呪殺』編スタート!
ひとまず更新頻度は少し落ちます。
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