【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完) 作:藍沢カナリヤ
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目が覚めると、そこはどこかの河の淵だった。足元には靄が立ち込め、どこか幻想的な風景だ。
辺りがよく見えないせいで、気づくのが遅れたが、目を凝らせば、向こう岸には綺麗な花畑が広がっている。
そこで、誰かがこちらに……というより、私に手を振っていた。あれはまさか……。
「静乃、か?」
きっとそうだ。私に向かって手を振っているのだ。早く向こう岸に渡らなくてはな。
一歩踏み出して、足が止まる。いや、止められたのだ。
「…………パパ」
「涼乃」
彼女は静かに私の腕を掴む。
とても弱い力だ。少し力を入れれば簡単に振りほどける程の力。
「…………」
「涼乃、私は……」
「…………」
涼乃は言葉を発しない。ただ、私の目をじっと見つめてくる。
気づけば、辺りの靄は濃くなっていく。
「っ、静乃!」
向こう岸に目をやると、彼女の輪郭がだんだんとぼやけていってしまう。このままでは彼女の元へ行くことがーー
「……そうか。まだ私は」
よく見ると、向こう岸の彼女も首を横に振っていた。
そうだな。
きっとまだ私はーー
……………………
「パパッ!!」
意識が覚醒すると、目の前には青空と『焼相』の姿があった。彼女は涙をぼろぼろと流しながら泣いていた。そのまま抱きついてくる。泣きじゃくる彼女の頭を、上がらない腕でどうにか撫でて。
私の意識が戻ったことに気づいたように集まってくる声を聞く。京都校の彼らの声を聞きながら、私は小さく呟いた。
「終わったのだな」
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私は生き残った。
『羂索』を倒し、こうして今、ここにいる。
そして……。
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過疎化の進むとある村。
村の半分以上が高齢者であるこの村に、ひとりの少女が訪れていた。
「こんにちは。ここの村の人ですか?」
少女は、家の軒先で項垂れ、座り込んでいた少年に話しかけた。頷く少年の服はぼろぼろで。体からは酷い悪臭が漂っている。
およそ人の生活を送っていないだろうことが想像できた。
彼曰く、2ヶ月ほど前から、この村で疫病が流行っているという。彼の体にこびりついた悪臭も死体のものなのだろう。きっと彼も汚染されている。
それでも躊躇うことなく、少女は手を差し伸べた。
「わたしは『焼相』。この村を疫病の呪いから救いに来ました」
そう告げる少女は、まるで聖女のように微笑んだ。
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『焼相』。またの名を加茂涼乃。
死の間際に『羂索』から解き放たれた幾万もの呪霊。各地に飛散したその呪いを祓いに回る彼女の傍らには、常に1人の男がいたという。
人と違う気配を纏うその男を、彼女は時に兄と呼び、時にパパと呼んだ。
彼の名はーー。
ーーーーー終ーーーーー
以上で
『【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す』完結になります。
「加茂憲倫がいい奴だったら面白いよな」というアホみたいな構想から始まった本作でしたが、なんとか彼の物語を完結させることができました。
これもひとえに皆様のお陰です。ありがとうございました。
一応、後日談(あほな日常編)の構想もありますので、投稿する可能性もございますので、もしよろしければアンケートにご協力いただけたらと思います。
では、また!
本編完結。番外編(あほな日常編)は
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読みたい。
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満足したからここで終了。