【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完) 作:藍沢カナリヤ
見たくない人は見ない方がいいです。
番外編1 聖女様の教育方針
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聖女・『焼相』。
特級呪物を身に宿しながらも、同族であるはずの呪いから人々を救う彼女を、一部の人間はそう呼称した。
それではそんな彼女の日常をお見せしよう。
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「憲紀! お小遣い!」
「…………年上なのだからさんをつけろ、涼乃」
私に向かって、小遣いをせびる少女をたしなめる。膨れっ面を返す少女。
名を加茂涼乃……別名『焼相』。
私にとっては先祖に当たる人物ではある。人間の体構造とは別物なため、人間の成長速度とは比べものにならず、精神・肉体ともに1年前よりもずっと成長している。見た目ならば12歳くらいだろうか。
「年齢は下だけど、生まれた時代は憲紀より昔だから実質あたしの方が年上だし!」
「なら、年下に小遣いをせびるな」
「うっ……憲紀の癖にっ」
とはいえ、子供は子供。言い負かすのも容易い。
問題はーー
「憲紀のケチ! 糸目! お兄ちゃんに言いつけてやるもん!」
……………………
「おい、『焼相』に金を渡せ」
面倒な奴が来た。
『脹相』。『焼相』と同じ『呪胎九相図』の受肉体で、彼女の兄。
涼乃はともかく何故かこの男も加茂家に居着いており、妄信的に涼乃を味方するというモンスターペアレンツならぬモンスター兄。
その後ろに隠れ、あっかんべーをする涼乃が憎たらしい。
「おい、『脹相』」
「なんだ」
「お前、毎回言っているが……涼乃を甘やかすな」
わがままに育ち、今後本人が苦労する。
そう言っているのだが、人間社会を知らない『脹相』にとって、私の言うことは、ただの涼乃への小言に聞こえるようで。
「知らん。『焼相』が欲しいと言っているのだから、金を渡せ」
「…………はぁ」
まったく話が通じない。その上、
「……ならば、仕方がない。『百斂』ッ!」
すぐに実力行使に出ようとするのだから手に負えない。
「っ、『百斂』」
私もそれに対抗するために、『百斂』で血を圧縮させる。
「「『穿血』!!」」
ーーバシュンーー
同時に放たれた『穿血』。
相手は特級だ。私の方が押し負けるのは当然だが、それでもこの1年、伊達にこの男相手に稽古してきた訳ではない。『脹相』の癖を突き、『穿血』を反らすのも上手くなってきた。
「……弾くのは上手くなってきたか」
「あぁ、お陰様でな」
「ならば、近接戦闘でーー」
「す、すとっぷ!」
『脹相』の顔の模様が変化したと同時に、私達の間に介入してきた人物がいた。
そう。我が従妹、加茂鶫だ。
「憲紀くんも、『脹相』さんも……だめ、ですっ」
「……鶫」
「…………」
相変わらずおどおどした態度は変わらないが、それでも高専に転入し、呪術を学び始めたことで、彼女の等級もそれなりに上がってきている。『脹相』も彼女の実力を分かっているからだろう。少々落ち着きを取り戻したようで一歩下がった。
ともかく彼女は今まさにぶつかろうとしていた私達に告げる。
「お家の中、だから……暴れたら危ないよ……」
正論である。
その後、鶫がやんわりと涼乃を説得してくれたので、『脹相』は渋々ながら退いていったのだった。
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「だめだ」
別日のことである。
夜もとっぷりと更けて、日付も変わろうという時間に、私は加茂家の門前で仁王立ちしていた。その理由は、
「憲紀のわからず屋!!」
涼乃を止めるためである。
わからず屋だと? いくらでも言うがいい。それでもここを退くわけにはいかない。何故ならば、
「こんな時間に子供がコンビニに行くなど許せるわけがないだろう」
「イヤ! アイス食べたくなったんだもんっ!」
「そんなもの明日にしろ!」
「今たべたいのっ!」
「…………はぁぁぁぁ」
「ため息つくなぁっ!」
3日に1回はこの膨れっ面を見ているのだ。ため息だって出るさ。
まったくわがまま放題で困ったものだ。
親の顔が見てみたい。
「まぁ、そう言うな。憲紀」
現れたのは『脹相』……いや、この時間帯なら違うか。
「憲倫さん」
『脹相』の中に存在するもうひとつの人格・加茂憲倫。
彼はあの戦いの後、『脹相』の中に入り込んだことで、表の人格として出てくることができるようになっていた。確か、夕暮れ以降ならば出てこれるという話だったか。
ともかく、彼はフッと笑い、私の肩を軽く叩く。
「憲倫さんは止めてくれ。お前と私の仲だろう」
「……あ、あぁ」
「では、いってくる」
そう言って、彼は涼乃と手を繋ぎ、門を出ていこうとしーー
「待て」
「ん? なんだ?」
「誤魔化すな。涼乃をこの時間に外に出すわけにはいかないと言っているんだ」
「なんだと……?」
再び私と憲倫は対峙する。
「そんなもの誰が決めたのだっ!!」
「京都府だっ!!」
「知らん! 私は涼乃にアイスを食べさせてやるのだッ!!」
「だから、明日にしろと言っている!!」
「「『赤鱗躍動』ッ!!」」
ーーガシッーー
組み合う私と憲倫。実力は互角。そもそも憲倫が出てきているということは『脹相』の呪力が弱っているということ。それに体術ならば、『黒閃』を経験している私に歩があるはずだ。
「行け! 涼乃!」
「っ、パパ!」
「大丈夫だ、私もすぐに追うからな」
「っ、うんっ!」
憲倫の言葉に頷き、涼乃が走り出す。だが、そうはさせるか!
こういうこともあろうかと、圧縮させ置いておいた『百斂』に呪力を込める。
だが、一歩遅く、術式が発動する前に、涼乃は門を出ていってしまった。
「ふっ、隙を見せたな、憲紀!」
「なに!?」
「私の勝ちだーー『赤縛』っ!!」
「な!?」
彼の放った『赤縛』は私の体を締め上げた。
くっ、しまった!?
「はーっはっはっ! これでお前は動けまい! 私はこのまま愛娘とコンビニでアイスをーー」
ーーバシュッーー
「お?」
余裕をかまして、私の方を見ながら後ろ歩きしていたせいだろう。憲倫は先程私が門に張り巡らせた『赤縛』に捕まった。
「…………」
「…………」
深夜の加茂邸。
そこには『赤縛』に捕まる哀れな呪術師が二人いたという。
……………………
その後、涼乃は補導された。
夜通し、親子共々本気の鶫に怒られる姿を見て、内心同情してしまったが……まぁ、自業自得だな。
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親バカに兄バカ。
涼乃ちゃんもワガママに育つわけだ。
ちなみに、憲倫くんがちゃんとした親になるのはもう少し先の話です。
次回、憲倫くんが食事にいく話を書くかもしれないし書かないかもしれません。