【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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またまた番外編。
次回で完全に終わるかも。


番外編2 はじめての居酒屋さん

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私は加茂憲倫。

明治時代に殺されて、この平成の世に転生してきた、ただのしがない呪術師だ。子孫に当たる女子の体に入っていたが、1年前に何の因果か『脹相』という受肉体の中に住み始めた。同じく受肉体として蘇った愛娘と共に、三度目の人生を謳歌している最中というわけだ。

 

そんな私だが、夕暮れ以降にしか表に出ることができない。

まぁ、そのお陰で……。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「生ひとつ!」

 

「いや、未成年がいる横で酒飲まないでください」

 

 

向かいに座る新田にそうたしなめられてしまった。

ふむ。それもそうか。

 

 

「すまない、のんあるびーるをくれ」

 

 

かしこまりましたと返してくれる店員の声を聞きながら、私は再び新田と向かい合う。

 

 

「いやぁ、こうして新田と飯を食うのも久しぶりだな」

 

「……俺としては違和感ものすごいんやけど」

 

 

お冷やをちびちびと飲む新田にそう言われてしまう。

それも仕方ないか。端から見たら歳の離れた兄弟くらいにしか思われんだろうが、新田にしてみれば、一緒に飯を食いに行っていた時の私は女子だったのだから……まぁ、違和感もあるだろう。

 

 

「そう言うな。こうしてお前と飯に来れるだけで私としては感慨深いのだ」

 

 

それでも私としては嬉しい。

結果的に『脹相』の体に定着してしまったとはいえ、一度は消滅を覚悟したのだ。友人と共に飯を食えるのは奇跡に近い。だから、思わず目頭が熱くなる。

 

 

「ふっ、いかんな……歳だ」

 

「……んー、そうやね」

 

「………………おい、新田」

 

「ん?」

 

「何を先に食っているのだ」

 

「お通し」

 

 

いつの間にか到着していたお通しを食している新田。ぽてとさらだと茎ワカメを一心不乱に食べている。

 

 

「……食わんなら俺、食うけど」

 

「冗談を言うな。これは私のだ」

 

 

私の皿に手を伸ばす新田の手を叩き止める。まったく油断も隙もない奴だ。

 

 

「さて」

 

ーービーッーー

 

 

自分の皿が空になった瞬間に新田は呼び鈴を押していた。少しして店員が来る。

いや、待て。私はまだ注文決まっていないのだが!

 

 

「たこわさとエイヒレで」

 

 

この男、アルコールこそ頼んでいないが、完全に注文した品が酒飲みのつまみではないか。

……もしや、新田よ。

 

 

「お前、未成年だが酒をーー」

 

「ーー飲んどらんよ」

 

「だが、その注文は日本酒を飲む人間のーー」

 

「………………」

 

「………………」

 

 

「あの、ご注文は他にございますか……?」

 

 

私達の沈黙に耐えかねた店員に、焼き鳥とだけ返す。

店員がいなくなった後、彼はポツリと呟いた。

 

 

「飲んどらんから」

 

 

……………………

 

 

「うまいっ!!」

 

 

新田の頼んだたこわさを一口、口に運んで私は声をあげた。

 

 

「うるさい」

 

「ん、すまない」

 

 

いくら個室居酒屋とはいえ、流石に声が大きすぎたな。素直に謝り、少々落ち着きを取り戻す。

いかの塩辛は食べたことはあったが、たこわさは初めてだ。塩辛と似たような食感だが、こちらの方がさっぱりしている。口内にほのかに広がるワサビの爽快感が心地よい。

さて、次は……。

エイヒレにも手を伸ばし、口に運ぶ。

 

 

「……ふむ。こちらも中々」

 

 

たこわさほどのはっきりとした味はないが、噛めば噛むほど味が出る。歌姫女史から話は聞いていたが、これは確かに日本酒と合いそうだ。

って、ん?

 

 

「おい、新田。それはなんだ?」

 

「ん? あぁ、一味とマヨネーズ。これが合うんよ」

 

 

それを咥える姿はまさに酒飲みのそれではあるが、もうなにも言うまい。

……さて、そんな新田の舌を信じて、私もまよねーずをつけて、それからそこに一味を少々振りかける。そして、

 

 

「!!」

 

 

おぉ、これはいい!

エイヒレ特有の甘さを、まよねーずの酸味と塩味、一味の辛味が引き立ててくれている。

 

 

「なぁ、新田! これもいいではないか!」

 

「そうやねぇ……」

 

 

感動を共有すべく彼に話を振って気づく。彼の手には一本の串。それは、まさか……!?

 

 

「食った、のか……?」

 

「フッ」

 

 

新田はただ、ニヒルに笑った。

 

 

「私の焼き鳥を返せッ!!!」

 

 

……………………

 

 

追加で注文した焼き鳥、それから〆さばを平らげた後、私と新田は茶を啜っていた。さて、そろそろ会計かと思っていた頃、

 

 

ーーコトンーー

 

 

店員が追加で品物を持ってきた。それは

 

 

「あいすくりーむ?」

 

「注文した?」

 

「いいや、何かの間違いだろう。店員を呼んで……」

 

 

 

「やっと来た!」

 

 

 

「「!?」」

 

 

その声は机の下から。覗き込むとそこからひょこっと出てきたのは涼乃ーー我が愛娘だった。

 

 

「えぇ……」

 

「おや、来ていたのか」

 

「パパずるい! あたしを置いていくなんて!」

 

「すまないな、涼乃。今日は同級生と水入らずで飯を食う約束だったのだ」

 

 

そう言って撫でてやると、涼乃は目を細めて嬉しそうに笑う。そのまま私の隣の席に座り、あいすくりーむを食べ始める。

ふむ? そういえば……?

 

 

「涼乃、憲紀はどうした?」

 

「んー? さあ?」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

その晩のこと。

憲紀に呼び出され、親子共々こってり絞られたのは言うまでもないだろう。

 

 

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居酒屋楽しいよね。
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