【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)   作:藍沢カナリヤ

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第8話 伝播呪殺ー壱ー

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憲紀は一命をとりとめた。

メカ丸がすぐに反転術式が使える術師と人間の状態を留める術式をもつ1年生を派遣してくれたからだ。

もし、それが少しでも遅れていたらと思うと、寒気が止まらなくなる。

 

 

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「……………………本当に助かった、メカ丸」

 

 

私は呪術高専の医務室の外に置いてあるベンチに座り、その私を見下ろすように立つメカ丸に礼を言った。

心からの感謝。この恩は一生忘れない。

 

 

「大袈裟だナ。加茂は俺にとっても友人ダ」

 

「憲紀はいい友人をもったな」

 

「…………あまり自分を責めるナ」

 

「っ」

 

 

メカ丸の私の心中を察したような一言。

それは先ほど霞にも言われた言葉だった。だが、それを鵜呑みにはできない。

 

 

「あの時、私は異変を感じ取っていた。だが、動けなかった」

 

「慣れない格好のせいなのだろウ。仕方のないことだと割り切レ」

 

「いや……違うのだ。あの時動けなかったのは」

 

 

弛んでいた。

明治時代、加茂家当主としてのヒリついた空気を常に感じていたあの頃とは違う、友人と笑いあえるこの環境に。

甘えていたのだ。弛んでいたのだ。

 

 

「…………私は……私はっ」

 

「……鶫」

 

 

私の脳裏によぎるのは、あの『光景』。

平成の世では忘れていた。いや、忘れようとしていたあの『光景』だ。

憲紀が私の目の前で呪われたことで、どうしても思い出してしまう。『彼女』を喪ったあの喪失感と絶望。

 

 

「また……なのか」

 

 

私は、また間違えるのか? また大切な人間を自分のせいで失うのか?

私はーー

 

 

 

「これが新入生? ふぅん、陰気臭い顔してるわね」

 

 

負の感情の渦に呑まれかけたその時だった。

女の声が聞こえた。ゆっくりと顔を上げる。そこにいたのは、今の私より短い黒髪の女性。肩を露にした服を着た女子……恐らく彼女も呪術高専の学生なのだろうが……。

 

 

「おイ、真依」

 

「なによ、もうお通夜みたいな雰囲気を醸してる方が悪いでしょ? 憲紀は生きてるんだから」

 

 

彼女の言う通りではある。現状憲紀は無事だ。

だが、

 

 

「…………私のせいで憲紀は呪われた。その責任を感じてなにが悪い」

 

 

私のそんな言葉を聞いて、真依と呼ばれた彼女は見下したような視線をこちらへ向け、蔑むような口調で続ける。

 

 

「はぁぁ、嫌ね、ぐちぐちと。こんなのが憲紀の従姉妹なんて、憲紀が浮かばれないわぁ。草葉の陰から泣いてるわよ?」

 

「あぁ、まだ死んでなかったわね」

 

 

クスクスと笑う真依と呼ばれた彼女。

気づけば、私は彼女の胸ぐらに掴みかかっていた。

 

 

「痛っ、離しなさいよ」

 

「……あまり、憲紀を馬鹿にするな」

 

「勘違いしないで欲しいのだけれど、私が馬鹿にしてるのはあなた」

 

 

また見下した目。胸ぐらを掴まれたまま、彼女は言う。

 

 

「こんなところで管を巻いてる暇があったら、呪いの正体を探るくらいすればいいでしょう?」

 

「ここで嘆いていて憲紀は喜ぶわけ?」

 

 

「っ」

 

 

その言葉にふと力が抜けた。その瞬間に、彼女の体が地面へ落ちる。

 

 

「痛っ、ホントになんなのよっ」

 

「…………すまなかった」

 

「ふん」

 

 

尻餅をついた彼女へ手を差しのべるも、払われてしまう。それ相応の振る舞いをしてしまったのだからこれも当然か。

だが、彼女は恩人だ。

 

 

「おかげで目が覚めた」

 

 

そうだ。彼女の言う通りじゃないか。

こんなところで塞ぎ込んでいる暇があれば、憲紀の呪いを祓え。それが呪術師の本質だ。

 

 

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憲紀にかけられた呪いを調べる。そのために状況を整理しよう。

件の縁談相手。

彼はそれなりに名の知れた呪術師だと聞いた。確実に人間、その彼から憲紀へ呪いが伝播したという訳なのならば、その類いの性質をもった呪霊に呪われていた。

 

 

「伝播、感染。それに類する術式をもっているということだろう」

 

 

ならば、近づくのは得策ではない。あの液体をかけられれば、術式が発動すると考えられるからだ。

だが、今の私では近づいて祓うしか手段はない。とすれば、自分の呪いへの耐性に賭けるしかないが……。

昔、所持していた自らに呪いをかける呪具。あれを使えば、現状を知ることもできるが、それは無い物ねだりというもの。

ただ今の私には昔にはないものもあるわけでーー

 

 

「真依が酷いことを言ったと聞きました。鶫ちゃん、大丈夫……?」

 

「ありがとう、霞。だが、彼女は的を射たことしか言っていなかった。愚かだったのは私の方だ」

 

「真依も悪い人間ではなイ。叱咤激励だろウ」

 

「その通りだ」

 

 

メカ丸と霞。

昔の私にはいなかった友人という強い味方がいる。これほど心強いものもない。

 

 

「今回の呪霊は、恐らく近接で戦うには厳しい相手だろう。私と霞には相性が悪い。メカ丸、お前が頼りだ」

 

「分かっていル」

 

 

幸いなことに、呪霊の潜伏しているであろう場所は簡単に分かった。憲紀へ呪いが伝播した時に呪霊が活性化したのだろう。術式の行使の瞬間に濃い呪力が観測された場所があるという。

その場所へ向かう途中だったのだが、

 

 

「メカ丸、真依は?」

 

「東堂と共に別の任務に行っているそうダ」

 

「そっか。真依がいたらよかったんだけど……」

 

 

京都校の学生については、聞ける範囲でメカ丸から聞いていたから、霞のその言葉にも納得した。彼女は銃に呪力を込めて攻撃する遠距離型の術師だという。ならば、確かに彼女がいたらもう少し安心できるだろうが。

 

 

「とかく、話はそこまでだな」

 

 

話をしているうちに、その場所の目の前に3人で立つ。

そこはとある廃病院。確かにそこは伝播、感染の術式をもつ呪霊にはお誂え向きの場所だった。

呪力のない私にはその場所から呪力は感じられない。だが、異様な雰囲気は感じ取れる。五感が鋭くなっているからだろう。

 

 

「注意しロ。三輪、鶫」

 

「分かってる」

 

「メカ丸、よろしくね」

 

「……あア」

 

 

横目に2人を見る。先ほどまでの雰囲気はない。

頼りにしているぞ、友人たちよ。

 

 

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