set 2 白王子
ホテルの受付に比企谷くんの部屋はどこですか?と聞いた。そして、受付さんの第一声はこれ
「すいません。個人情報なのでお伝えできません」
……………
ホテルに着いた………着いたけど……
「比企谷くんの部屋、知らないんだった……ってか、E組の私が知るわけないじゃん!!」
彼はA組生徒。私はE組生徒。それだけでも全く接点がないのに、どうしてホテルに行けば会えるなんて考えたんだろ……
熱も冷めたし、浴衣姿だし、うろうろしてたら変に思われそうだから帰ろう。
私は、すっかり意気消沈して、帰路に着いた。歩き始めてすぐ見覚えのある姿が目に入った。
柔らかい色の金髪、見るからに優しそうな好青年。
たしか、白王子だっけ?
彼は比企谷君の友達だって言ってたし、彼に頼めばもしかしたら会えるかも
「あ、あの、えっと……」
口籠った。初対面だからか、ちょっと緊張する。
「ん?君は………確か……」
彼の様子から私のこと彼から何か聞いてたのかな、なんて期待する。
「………ごめん。誰だっけ?」
「い、E組の速水凛花です。比企谷君に会いに来たんだけど……」
「あ、駅の子だ。八幡が珍しく楽しそうだと思ったら………へぇ」
「そ、そうです。それで……」
楽しそう?比企谷君が?楽しそうにする比企谷君か……見てみたいなぁ。それにしても、比企谷の名前って八幡なんだ。
「それで、八幡の部屋だよな。案内するよ。」
「いいの?」
「俺達A組生徒は個室だからな。八幡は今頃寂しくスマホゲームでもしてるだろうさ」
寂しく……寂しく。私はE組だから安宿だし、個室なんかじゃないけど、今は、E組でよかったって思えた。
寂しいのは、やっぱり悲しいから。
「俺は、八幡との勝負に負けて買い出しに行ってたんだ。速水さんも何か勝負してみるといいよ。彼、超強いから」
白王子は、戯けるように笑って、人の良さそうだ笑顔を見せた。こういうのが白王子って呼ばれる所以なんだろうな。
「ん………わかった。で、彼の部屋は何処?」
個室なら、誰かが先に彼の部屋にいるかもしれない。人望の厚い彼なら……
「焦らなくてもいいと思うよ?」
「っ………焦ってなんか」
「はは、かわいいなぁ。あ、まだ自己紹介してなかったね。」
「白王子さんじゃないの?」
「それは、八幡だろ。俺はそんな柄じゃない。俺の名前は、葉山隼人。クラス3年A組だ。」
へーと、曖昧に相槌をうってると先程出たホテルに着いた。
ロビーに入って、白王子はついてくるよう勧めた。白王子はエレベーターに入ると、23階まであるホテルの、22階を押した。豪華なエントランスに、装飾のついたエレベーター。
本当に格差感じるなぁ。比企谷くんがいなかったら、絶対こんなとこ来ない。
「八幡の部屋に行って、知らない女がいたらどうする?」
白王子が真剣な表情で聞いた。比企谷くんが誰と仲良くしようが関係ない。寧ろ、比企谷くんのあの辛そうな表情を見たら誰かと仲良くなってほしいとすら思える。
「…………知らない」
「八幡って、経験豊富だから男子からも人気があるんだよ?だから、何かをしようとしても簡単にアリバイを作れる」
「………さっきから何が言いたいの?」
なにかの嫌がらせ?何かって何よ。彼は悪いことをするような人じゃない。この人は本当に親友なんだろうか
「A組の何人かは、すでに食われてるかもね」
「っ……このっ!!」
耳元で囁かれて、激しい熱とムカつきが襲ってきて、彼を引っぱたこうとした。白王子なんて、嘘。この人が黒王子なんじゃないの?
引っぱたこうとして、手を掴もうとした。
「じょーだんだよ。彼は誰よりも人のことを考えているから、軽々しくそういうことはしない。煽って悪かったな。」
なんだ。冗談か………本気で言ってるんだったら一度は叩いてやろうと思ったのに。
22階について、エレベーターを出た。
「冗談は嫌いなの。もう二度と言わないで」
「冗談………か。おっと、彼の部屋はこっちだよ」
交差路に差し掛かって彼の部屋に着いた。
着いたはいいけど、心臓がばくばくいってる。いざ部屋の目の前に立ってみるとやっぱりドキドキするなぁ
「緊張する?」
「…………してないし」
いつまでも部屋の前に立ってるわけにもいかず、部屋のドアを開けた。
「えっと、何してんだ八幡」
部屋は、箱と、猫が溢れかえって、1メートルくらいそれで埋まっていた。比企谷君がそこにいるのかはわかんないけど、私はある一点に釘付けになった。
ね、猫…………