始まりの一頁
京都 四条河原町の一角にひっそりと佇む 一棟のビル その2階に彼女百瀬瑞希 は現在事務所を構えていた。
「えーっと.... 今日は特に予定なし... 不味ったなぁここんとこ収入無いから一回何か仕事入ってこないと食いっぱぐれちゃう....」
怠そうに起き上がり雑に整えられた金髪を撫でながらも椅子から立ち上がり壁に立て掛けられたカレンダーを恨めしそうに眺めては溜息を吐くも現実は変わらない。かれこれ一週間仕事が入ってこないこの現状 彼女にとっては致命傷クラスの問題に匹敵する。
「次の家賃集金は来週..... そっか もう10月なんだ.... この前まであんなに暑かったのにもう秋かぁ.....」
現在は9月も終わり半ば 天気予報は大いに外れ夏日のような暑さから一転 今日は少し肌寒く秋風が空を撫でていた。
「ご飯買いに行かないと.... コンビニで適当に買ってくればいっか...」
財布の残金は僅か2000円 暫くはもやしや豆腐生活が続くかと愚痴を零せばドアへと手をかけたその時だった。
ガシャンという轟音が響き何か重たい物が机近くの床にどさりと投げ捨てられる 咄嗟の判断で近くに置いてあるチェストの陰に引っ込めば割られた窓ガラスへと目をやる 当然の如く其れを投げ捨てた犯人は姿を見せる訳がなく唯投げ捨てられた其れに視線を向ければ思わず瑞希は息を飲んだ。
「嘘でしょ..... 誰この人.... 生きて....る訳ないよね....」
彼女の事務所に投げ捨てられたのは一人の人間の死体 締め跡も切り裂かれた傷もなく眠るようにその人生を終えた名も知らない人間の死体
当然どうすればよいかは熟知していた
「とりあえず警察....呼ばないとか....」
片手間にスマホの電源を入れれば直ぐに110番 事細やかに状況を伝えとりあえずその場に待機 流石にドアノブに付いてしまった指紋は説明しないとダメだろうと判断すれば取り敢えず立ち上がり一人で現場の検証を開始し始める。
「えっと.... 外傷は特に見受けられないし血の流れた痕跡もおかしいレベルでない..... 窓ガラスはうん普通に割られてる 投げ込まれた時にだよね.....」
素人目で分かる事はやはり少ないと納得すれば住所は伝えたものの無事に辿り着けるか心配になり携帯で再度違う相手に連絡しようとSNSを開く。
着信すれば丁度1コール目で通話が繋がり淡々と相手との会話を始めた。
「もしもし悠亜? 私なんだけどごめん 今事務所来れる....? 司法解剖とかで忙しいのは知ってるけど来て欲しいの 多分追追そっちに回るかもだけど..... やけに珍妙な死体が投げ込まれてきて.....」
「ほっほぅ....? 面白いことに巻き込まれたねェ?瑞希ちゃぁん 私もそっちに向かうよ〜 」
「ほんと助かる.... 現場保存はしておくし状況は私で写真撮ったりして確保しておくから別の場所で落ち合お? えっと....何時なら行ける.....?」
ふと、考え込むように電話相手の彼女は押し黙れば思いついたように声を上げた。
「瑞希 今晩11時半 あさひ亭で待ってる 多分だけど線と線が繋がり始めてるかも.... これ、私のミスで瑞希をとんでもない事に巻き込んじゃったかもしれない」
真剣な口調で話す彼女に戸惑いながらも片手間で私物のメモ帳に予定を記録すればパトカーのサイレン音を耳にすればそのまま予定を反芻 通話を終了すればノックされている扉に手をかけ警察の捜査員達に軽く挨拶 状況の説明を始めるのであった。