「成程.... つまり外出しようとしたところにいきなりこの窓からこの死体が投げ込まれたと..... この指紋は貴女がドアノブに手を触れていたからという事ですね?」
顔見知りではない後藤と名乗る刑事の質問に答えながら思案を回す。
「あ、はい.... そうですね 合ってます 近くのコンビニに買い物に行こうとしたらいきなり投げ込まれてきて.... ほら、うちの隣のあのビルからなら多分....距離的には行けるんじゃないですかね...」
確かに今まで話したことに事実と異なることや嘘は口にしていない 警察関係者に友人がいるとはいえ彼女は警察の中でもかなりの嫌われ者だと本人が言っていたことを思い出し名を出すのは辞めておくことに決定 薄らぼんやりとした思考で事実のみを答えればふと疑問点が生じる流石に彼らに言う程の大事でも無いが脳裏に引っかかってしまった事を素直に口に出してみることにした。
「でも死体を窓ガラスが割れるくらいの勢いで投げ込むって.... どのくらいの力で投げ込んだんだろ.... 後で細かい所って教えて貰えたりしますかね?」
「はい、一応追加で事情聴取をしてもらうことになったりは可能性としては捜査の進展具合に依存しますけどゼロではありませんね 必要なら上から百瀬さんには操作資料の内容を話せる程度で話せとも言われているので.... 」
明らかに友人の口添えがあったことに感謝しながらも目前の刑事と情報の共有を約束すれば自分の携帯の電話番号を教え今後の流れについて確認を取り始める。
「成程 百瀬さんは狩谷解剖医の同期.... 出身は此方なんですか?」
「いやいや、私 生まれは東京なんですけどちょっと訳ありで今はこっちに..... 」
余計な事はなるべく話さない様に適当にぼかしつつ話を終わらせ事情聴取はもういいと言われれば時計を確認 時刻は12時10分を指しており約束の時間にだいぶ遅れたと少し焦れば事務所を後に目的地となっている小料理屋あさひ亭へと歩みを進め始めた。
その道程がまさか運命を大きく狂わせる出来事の序章に過ぎなかったことにこの時は思いもしていなかったであろう。
彼女との出会い 魔術とは疎遠な彼女が再び這いずり上がることを許されない沼に足を踏み入れた瞬間であった。
「......マス....ター....?」
京の町の名もない路地裏 1人の少女は目を覚ます。
「マスター....がいないっ.....!! 抜かったということなのですか...!?」
軋む自身の体を奮い起こし損傷の具合を確認すれば先ずは自らの主の安否を第一に気にかける 彼女の性分に一致した行動 自身が主を庇い何かに被弾したのが分からないというのが今の現状だった。
「アレからどのくらいの時が経ったというのですか....?」
主が見えなくなった彼女は改めて薄汚れた雨空を見上げる。
彼女の真名は加藤段蔵 アサシンクラスの枢忍
たった1人の主を守る為に自らの命を顧みることも厭わない健気なサーヴァント。
なんでも屋の気まぐれな一人のマスターを探す為に彼女は路地裏を飛び出し京の空を駆けるのであった。