「チャンプファイト“おらが畑”!!」
「……!?バラバラ緊急脱出!!」
ギャルディーノが身に纏った蝋で作られた鎧。その豪腕を振り回しその名の通り畑でも耕すかのようにバギー向けて拳を振り下ろす。それをバギーは身体をバラバラにすることですんでのところで回避した。地面に落とされた拳は地をえぐり亀裂を走らせる。
「地面がえぐれた!?なんてパワーだ!?」
直撃すれば並の海賊ではひとたまりもないだろう。少なくとも自分達では一撃でKOされてしまうだろう。それを感じ取りバギーの部下達は戦慄する。
「この……バラバラ砲!!」
腕を切り離し大砲のように勢いをつけて発射する。こちらの攻撃も相当な威力、だが鉄の硬度を誇るギャルディーノの蝋には通用しない。苦悶の声を上げることも無く、1mmも仰け反らせることすらできなかった。
「ハッハッハ!!その程度ではこのキャンドルチャンピオンに傷一つつけることはできないガネ!!貴様の能力では私には勝てない!!」
「ち、なんつー硬ぇ鎧だよ!」
バラバラの実それ自体は優秀な能力だ。拡張性もあり戦闘にも応用できるだろう、だが能力者自身の身体能力が上がる訳ではない。ギャルディーノのキャンドルチャンピオンを破壊するには、些かバギーでは力不足だった。
「さぁ!大人しく投了するガネ!!」
「おわ!?」
ギャルディーノの拳が振り下ろされる、それを地面を転がり回避したバギー。だがこのままでは防戦一方、戦いながらもバギーはそれを理解する。しかしだからといって攻撃力を高める手段もない。
「キャンドル〜〜〜!ハンマー!!」
「……!?ぶはァ!?」
遠心力により威力を増した拳がバギーに直撃する。その威力は高くバギーは血反吐を吐き背後に向かって派手に吹き飛ばされる。
「キャプテンバギー!?」
「あの野郎……キャプテンバギーを吹っ飛ばしやがった!?」
バギーを崇拝する部下達もそれに驚く。
「ハッハッハ!!1500万の賞金首でも私には敵わないガネ!!」
高笑いするギャルディーノ、相手の攻撃が自分に一切通用しないという事実がわかり余裕の表情を浮かべる。だが彼はそれ故に見落としていた、自身を狙う攻撃がバギーのものだけではないことを。
「ん?……!?ぶへェ!?」
突如ギャルディーノの唯一蝋の鎧に覆われていない部分、顔面が爆発する。思わぬ出来事にギャルディーノは盛大に悲鳴を上げると膝をつき苦しむ。
「バギー!!そいつ見た目はふざけてるが中々強え!!油断すんな!!」
爆発の正体はガイモンが放った弾丸。それもただの弾丸ではない、ミズキの魔法が込められたガイモン愛用の銃から放たれる弾丸は炎、氷、雷と様々な属性の力を切り替え放つことが出来る。ガイモンの射撃スキルと組み合わされば強力な武器となるのだ。
「……ぐぬぬ……貴様には言われたくはないガネ。そっちの方が相当ふざけた見た目だガネ!!なんだ貴様は!?箱入り息子なのガネ!?」
「ああ、俺は小せえ頃からそれはもう大切に大切に育てられ……違うわ!!俺も好き好んでこんな見た目してんじゃねえよ!!」
「まずは貴様から消す必要があるようだ……チャンプファイト“おらが畑”!!」
バギーよりも自身に通る攻撃を持つガイモンを先に潰すべきだと判断し、ギャルディーノはガイモンに向けて拳を落とす。だがガイモンは空に飛び上がり回避する。そして次の瞬間、ギャルディーノは目が飛び出るほど驚愕することになる。何故なら飛び上がったガイモンがそのまま宙に浮いているから。
「はァ!?貴様なんで飛んでるのガネ!?」
「どうだ!!ミズキに改造されまくった結果、俺の箱はとんでもねぇ兵器に進化したんだ!!」
「……改造じゃなくて実験なんだけど」
もはや謎兵器となったガイモンの箱、その力で宙に浮いてギャルディーノの攻撃を回避する。
「見たか!!ガイモンさんは一見箱入り息子の変人だが見た目に似合わずめちゃくちゃ強えんだ!!」
「終わったなロウソク野郎!!変態度でも強さでもてめぇはガイモンさんには適わねぇ!!」
「お前ら好き勝手言ってんじゃねぇぞ!!」
褒めてるのか貶してるのかわからない部下達の言葉にガイモンが空中からツッコミを入れる。ギャルディーノはなんとか拳を当てようとするが空中を自由に移動できるガイモンに当てるのは至難の業だった。その間にも得意の銃で的確にギャルディーノを撃ち抜いていく、誰が見てもガイモンの有利は明らかだった。
「待てガイモン、そいつは俺の獲物だ。手ェ出すんじゃねえよ」
「あ、生きてたんだ」
「生きらいでか!!あのくらいじゃくたばりゃしねぇよ」
バギーはあくまで自分一人で戦うと宣言する。不利な戦いに自ら挑もうとしていることがミズキには意外だった。だがミズキの軽口にツッコミを入れるくらいにはまだ体力は残っている、戦いを継続することはできるだろう。
「……珍しいね、君がここまで積極的なの」
「へ、俺様にもプライドってもんがあんだよ…………だけど危なくなったら助けろよ?」
「……考えとく」
素直じゃねえなと吐き捨てるとバギーはギャルディーノの元へと歩いていく。迎え撃つギャルディーノは自身に視線を向けてくるバギーを嘲笑い、喉を鳴らした。
「ふん、貴様が私に勝てないのはさっき証明していたはず……部下に任せておけばいいものを、愚かな船長だガネ」
「言ってろ言ってろ、おめぇこそあんまりでけぇこと言ってると後で恥をかくぜ?」
「口だけは達者な男だ……いいだろう、一思いに潰してやるガネ!!チャンプファイト
瞬間、ギャルディーノの3を模した髪に灯っていた炎が鎧の腕に移り燃え盛る拳が完成した。そしてそれを振り下ろす、バギーは回避に徹するが地面に激突した拳が地を焼きえぐりその熱でバギーにダメージを与える。
「この技は蝋が溶けてしまうため長時間使えないのが弱点だが……貴様を倒すには十分だガネ!!」
「くそ、あちぃ!!調子に乗りやがって!!」
服に燃え移った火を地面を転がることで消火するバギーだが防戦一方なのは目に見えている。バギーもそれを理解して打開策を考えるが鉄の硬度の蝋を打ち破る手段が思いつかない。
「バラバラ
「チャンプファイト
切り離した腕を連続で打ちつけガトリング銃のように連打する。それに対抗するようにギャルディーノも蝋の腕をバギーの拳にぶつける。手数はバギーの方が上、だがそれ以外のパワーや攻撃面積はギャルディーノの方が上だった。徐々に押され始めついに蝋の拳がバギーの身体に直撃する。
「!!?どわぁ!?」
やはり直接戦闘ではギャルディーノの方に分があるのか後方に激しく飛ばされるバギー。だがタダではやられない、飛ばされる瞬間腕だけは切り離しギャルディーノの腋を持ち空中へ放り投げる。
「空中錐揉み大サーカス!!」
「ぶへェ〜〜!?」
そのまま空中でギャルディーノを捕まえ、回転をつけて地面に投げ落とす。蝋に覆われていない顔面を強打したギャルディーノは悲鳴を上げ顔を押さえ苦しむ。だがそれだけでKOとはならない、体勢を整えたギャルディーノは決着をつけるべく渾身の技を放とうとする。
「ぶは!?もうお遊びは終わりだガネ!!キャンドル
「な!?さらにでかくなりやがった!?」
「キャプテンバギー逃げてくれ!!いくらアンタでもあんなのくらったらお終いだ!!」
鎧の拳の上からさらに追加で蝋を纏わせることで巨大化した必殺の拳。それを見た部下達はその大きさに戦慄しバギーでもくらったらひとたまりもないと想像する。確かに真正面から受けたらバギーはお陀仏だろう。だがそれでも彼は引くことをしなかった。
「ふざけんな!!今更引けるかよ……俺様にも引けねぇ戦いがある、今がそうだ!!」
「!?キャプテンバギー……なんて覚悟だ!!」
「そうだ!!俺達のキャプテンが負けるはずねぇ!!」
「いい覚悟だ!!だがそれだけではどうしようもないガネ!!」
一歩も引くことはしないと啖呵を切ったバギーは切り離した両手を助走を取るかのように後ろに下げる。そしてパチンコの要領で拳を勢いよく前に放った。ギャルディーノの巨大な蝋の拳とバギーの拳、ぶつかり合いを制したものがこのタイマンバトルに勝利するであろうと誰もが悟った。だがただ一人だけバギーの真意を理解し、行動に移したものがいる、それが────
「
突如聞こえてきたその声、それと同時にバギーの拳に業火とも言うべき激しく燃え盛る炎が宿る。それはギャルディーノの蝋にとっての最大の弱点、ぶつかり合う拳と拳。だがギャルディーノの蝋は段々と溶けだし、ついにバギーの拳がギャルディーノの鎧ごと貫通し本体の土手っ腹を直撃した。
「……!?ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
燃え盛る炎はギャルディーノにも燃え移り、彼は火だるま状態となって激しく吹き飛ばされた。バギーの部下達はガイモン含め皆何が起こったのかわからず困惑する。しかし自分達の船長が勝利したことを理解すると彼の元へ駆け寄った。
「うぉぉぉぉぉぉ!!キャプテンバギーが勝った!!」
「さすがは俺達のキャプテンバギーだ!!」
『バギー!!バギー!!バギー!!バギー!!』
「ぎゃははははは!!これくらい朝飯前よ!!」
高笑いし自分を囲む部下達に言ってのけるバギー。だが一人、ガイモンだけは違和感を覚えた。あの時確かにバギーの拳が燃えたと。そしてそんな現象を起こせるのは一人しかいないとその人物を探す。ガイモンが辺りを見渡すと、その彼は吹き飛ばされ倒れるギャルディーノの前にいた。
「き、貴様……あいつと私の1対1ではなかったのガネ!?……卑怯だガネ!!」
「……海賊の世界に卑怯だなんて言葉はないよ。それに……姑息な大犯罪が信条なんでしょ?……姑息な手で負けた気分はどう?」
倒れるギャルディーノを文字通り見下し、ミズキは冷たい言葉で煽る。卑怯な手段だとしてもそれを読み切れず、敗北したそちらが悪いと。
「やっぱりお前の仕業だったか……バギーは1対1で戦いたかったんじゃなかったのか?」
「……バギーがそんなこと思うわけないでしょ、だってバギーだもん」
「ああ、それはまあ……そうだな。にしてもよくあの一瞬で炎の魔法を使えたな」
「炎だけじゃないよ、耐火魔法と強化魔法も一緒にかけておいた」
「は、……反則だ……ガネ」
そう言い残しギャルディーノは意識を失った。それを確認したミズキとガイモンはギャルディーノの処分をどうするか考えるが、そこでバギーが割って入る。
「おおこの野郎、随分とハデに舐めたことしてくれやがって。たっぷりお返ししてやるぜ!」
「……待って、それよりこの人には利用価値が──」
「キャプテンバギー、大変です!沖に海軍の軍艦が!!」
ミズキが言い終わる前に、その言葉は部下によってかき消される。自分の言葉を遮られたことにミズキが若干険しい顔をし、それを見た部下は気まずそうにする。が、そんなことお構いなしにバギーが口を開いた。
「なにぃ!?俺達のことがもうバレたってのか!?」
「それが……賞金稼ぎ共が通報してたようで」
「あのハイエナ共が……海軍にチクるなんて卑怯な真似しやがって」
さっきまでの自分を棚に上げて卑怯だと罵るバギーにミズキとガイモンは呆れて言葉を失う。が、まずい事態であることは違いない。船は港に止めたままなので出航するにも時間がかかる、このままでは包囲されてしまうだろう。
「ふっふっふ……お困りのようだな。どうガネ?ここは一時休戦して共に海軍と戦うというのは」
「うお!?……てめぇもう復活しやがったのか」
「海軍は我々にとって共通の敵、いがみ合っていてはこちらが不利になるだけだガネ」
「……まあそうだな、よし!乗ってやるぜ!」
ギャルディーノの復活の早さに驚愕したバギーだが、彼の言うことも一理あると納得しその提案を受けるのだった。
「野郎共!!すぐに出航だ!!海軍の奴らを蹴散らしてやれ!!」
『うぉぉぉぉぉぉ!!』
一時休戦。バギー海賊団とギャルディーノは島を脱出するために協定を結び、急いで港へと向かうのだった。