転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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赤髪と赤っ鼻

 ──偉大なる航路(グランドライン)、リトルガーデン。

 

 巨大なシダ植物や恐竜、はるか昔に絶滅したはずの難病をもたらすダニなどが生息する太古の昔の生態系を維持し続けている島である。偉大なる航路に入った海賊は最初の航路にウイスキーピークを選ぶとこの島を必ず訪れることになる。だがこの島から生きて出られる者達はごくわずかしかいない。凶暴な恐竜に食い殺されたり未知のウイルスに感染して病死したりと理由は様々だ。そしてこの島の特徴の一つに、ログが貯まるのに一年近くかかるという性質がある。本来危険な島に上陸してしまった海賊の多くはログが貯まるまで身を隠しこっそり出航していくことが多いのだが、この島ではそれも不可能に近い。

 

 そして何よりこの島には彼らがいる。今から80年以上も前に世界を震撼させた伝説の巨人族の海賊団、“巨兵海賊団”。その船長である二人、“青鬼のドリー”と“赤鬼のブロギー”。その首にかけられた懸賞金は共に1億ベリー、伝説級の海賊にしては安いと思われがちだがこれは当時の金額。もちろん1ベリーあたりの価値も今とは大きく変わってくるしそもそもこの当時は海賊の数もそこまで多くなく懸賞金も上がりにくい。それでも1億なのだ。仮に今の基準で考えるのならば10億ベリーを越えてきてもおかしくない。この島を訪れた海賊は自身の名を上げるために彼らを討伐しようとするか、もしくは彼らを恐れて攻撃を仕掛け命を落とす。

 

「おい……一体どうなっているんだ?」

 

『きょ、恐竜だァァァァァ!!?』

 

 そして今、リトルガーデンに足を踏み入れたとある海賊団。バギー海賊団は一部例外を除き目の前に広がる太古の世界に驚愕し叫び声を上げた。

 

「おいおいてめぇら、そう怯えんな。この島はあんな恐竜がうじゃうじゃいるんだ、いちいちビビってたら身が持たねぇぞ」

 

「まったくだガネ。貴様らはまず度胸を鍛え直した方がいい」

 

「おお、さすがキャプテンバギーに3兄さんだ!!あんな馬鹿でけぇ恐竜相手に一歩も引かねぇなんて!!」

 

「キャプテンバギー!!その後ろの恐竜も軽く捻ってくれ!!」

 

「は?……後ろ?」

 

 怯える部下に啖呵を切ったのはこの島に訪れたことのあるバギーと知識だけは持っていたギャルディーノ。彼らは事前に恐竜の存在を認識していた為実際目の当たりにしても特別驚くようなことはしなかった。そして震える部下の言葉で後ろを振り向いた。

 

「ぎゃあああああ!?トリケラトプスじゃねえか!!」

 

「落ち着くガネ。トリケラトプスは草食恐竜、こちらから手を出さない限り攻撃してくることはないガネ」

 

 バギーの僅か数m後ろ、そこには鼻息を荒くしたトリケラトプスがいた。それに驚き飛び上がるバギーだがギャルディーノはそれを冷静に諌める。しかしトリケラトプスの首周りのフリルにある現象が起こり、その冷静さも失われることになる。

 

「は!?トリケラトプスってそこ回るのか!?」

 

『え〜〜〜〜!?トリケラトプスが飛んだァァ!?』

 

 なんとトリケラトプスのフリルが回転を始めたのだ、それだけで充分に驚く要素にはなる。が、それだけではなく回転力が増したフリルをまるでプロペラのように扱い、なんとトリケラトプスが空を飛んだのだ。

 

「馬鹿野郎、トリケラトプスはああいう生物だ。初めて見た時は驚いたがな」

 

「んなわけがあるか!?明らかにおかしいガネ!?」

 

 トリケラトプスのフリルは盾のように外敵から身を守る為の物、そう認識していたギャルディーノやガイモンはその認識を破壊され身じろぐ。しかしバギーだけは事前知識で知っていたので空に浮かぶトリケラトプスを平然と眺めていた。

 

「つってもおめぇよ、生きたトリケラトプス見るのなんか初めてだろ?なんでトリケラトプスは飛ばないって言いきれんだよ」

 

「それは……確かに見たことはないが……いやいや、それでもおかしいものはおかしいガネ!?」

 

「だがこんなので驚いてたら話にならねぇぜ?例えばあそこ見てみろよ」

 

 そう言うとバギーは真上、大空を指さした。見上げると数匹のプテラノドンが大空を自在に飛んでいる。彼らの視線の先には一匹の虎がいる、どうやら狩りをしているようだ。するとプテラノドンの中の一匹が自身のトサカを限界まで引っ張り嘴が完全に埋まるところまでもっていき、離した時の戻る力で衝撃波を生み出しそれをレーザーのように発射した。それを真正面から受けた虎は血を流し、倒れる。

 

『え〜〜〜〜!!?プテラノドンってそうなのか!!?』

 

 そのありえない光景に再び驚く一同だがこんなものではまだ終わらない。プテラノドンの群れが飛行していた近くを巨大な首の長い何かが横切った。それはブラキオサウルス、どうやら他の恐竜の群れと喧嘩をしているようだ。その時、ブラキオサウルスは首と尻尾をまっすぐ伸ばして構えた。そして尻尾を思い切り地面に叩きつけるとなんと首と尻尾が胴体から分離し蛇のような形状になった。その状態で相手に突撃、殲滅した。

 

『はァァァァァァァ!!?どうなってんだこの島!!?』

 

「太古の恐竜達はああやって生き延びてたって訳だ」

 

「いやいやいや!!?明らかに生物としておかしいガネ!?」

 

 恐竜という種族に一種の憧れ、夢を抱いていた男達は現実の恐竜の姿に驚かざるを得ない。だがこれが真実の、実在した最強生物達の真の姿なのだ。

 

「ん?そういやミズキの奴どこいった?」

 

「確かに姿が見えねえな、どこに……は?」

 

 ミズキの姿が見えないことに気づいたバギーの言葉にガイモンが辺りを見渡す。するとジャングルの木の間からミズキがゆっくり近づいてくるのが見えた。しかし明らかな異変が一つ、それはティラノサウルスらしい恐竜を従えその頭の上に乗っていること。ティラノサウルスはその迫力ある見た目とは裏腹に涙目でたんこぶを何個も作っていた。

 

「……おめぇそいつどうしたんだ?」

 

「……仲良くなって、友達になった」

 

「嘘つけ!!どう見ても武力行使してるガネ!?」

 

 友達になったとミズキは言うがティラノサウルスの頭にあるいくつものたんこぶを見れば力で無理やり従わせたのは明白。それにギャルディーノがツッコミを入れるがミズキは無視して島の反対側をじっと眺めている。

 

「どうしたガネ?ボーッとどこかを見つめて」

 

「……誰かこの島に上陸したみたいだよ」

 

 見聞色の覇気、まだ完璧に使いこなせる訳では無いがある程度は慣れてきたその力で自分達以外の何者かの上陸を察知したミズキがそう告げる。

 

「そりゃおめぇ、ここは島なんだから俺ら以外にも上陸する奴らがいたっておかしくねぇだろうよ」

 

「……でも結構強い気配を感じるよ、行ってみよう」

 

 ティラノサウルスに指示を出し、気配がしたらしい方角に移動するミズキ。それにバギー達も渋々ながらついて行く。この危険な島で一番の戦力であるミズキと離れてしまってはそれこそ危険だとバギーは正しく認識していた。そうして気配がした場所、島の端まで歩いたところでその正体である一団と遭遇した。

 

「ん?」

 

「おお」

 

 その一団のトップらしき赤髪の男とバギーの視線が合う。そして赤髪の男は笑顔、バギーは驚愕したような顔をしてそれぞれ声を上げる。

 

「バギー!!」

 

「シャンクス!?」

 

 ロジャー海賊団時代の兄弟分、互いにその名を呼び喜びと驚きをそれぞれ視線に乗せる。

 

「久しぶりだなバギー!!あの船はやっぱりお前のだったか!!」

 

「おめぇ……なんでこの島にいるんだよ!?」

 

 シャンクスは兄弟分との久しぶりの再会を素直に喜び、バギーはこのリトルガーデンにシャンクスがいることへの驚きの方が勝っているのか目を丸くして驚いている。

 

「まぁ色々あってな。それより後ろにいるのはお前の仲間か?」

 

「おうよ、俺様の可愛い部下達だ」

 

「……随分個性的な奴らを集めたんだな」

 

「へ、逆にそっちは地味すぎんだよ。俺らみてぇにハデじゃねぇとな」

 

「相変わらずだな。……ところでバギー、俺らはもう海賊団を率いる船長だ。海賊同士が会ったらやることは決まってるよな?」

 

「……!?ああ、海賊同士の用事と言っちゃあアレしかねぇか」

 

 懐かしげに会話を続ける二人。その最中、シャンクスが含みがある質問を投げかけると、バギーもその意図を理解し一瞬驚いたものの覚悟を決めた。やる気なら受けてたってやろうと。

 

「宴だァァァ!!」

 

「戦じゃァァァ!!……ん?」

 

「よしバギー、俺の船に美味い酒があるんだ!持ってきてるから一緒に飲もう!」

 

「待て待て!宴だぁ!?おめぇ俺らと一戦おっぱじめに来たんじゃねぇのか!?」

 

「誰がそんなこと言ったんだよ?それより飲もう、今日はいい日だ!」

 

「ふざけんな!おれぁお前に恨みさえあることを忘れんなシャンクス!」

 

「……恨み?なんのことだ?」

 

「忘れてんじゃねぇよ!あの時てめぇが声をかけてこなけりゃ俺は宝の地図を失わず悪魔の実の能力者にならずにすんだんだ……!」

 

「……そうだっけ?」

 

「出ちゃいましたねそのリアクション……!てめぇのそういうところが昔から気に食わなかったんだよ!」

 

「まぁそう怒るなって、楽しくやろうぜ?な?」

 

「楽しくもクソもあるか!宴なんてぜってぇやらねぇからな!」

 

「……そうは言ってもお前の仲間達はもう始めてるぞ」

 

「は?」

 

 漫才のようなやり取りを繰り返していた二人、シャンクスの言葉でバギーが後方を確認すると既にシャンクスとバギーを除く面々は酒を飲み交わし仲良さげに交流していた。その光景にバギーは絶句しツッコミを入れる。

 

「おめぇら何仲良く飲んでやがんだ!!」

 

「そうは言うがバギー、こいつら結構いける口だぜ?」

 

 赤髪海賊団の中に混じり楽しげに酒を飲むガイモンがそう言った。他の面々も海賊団の垣根関係なく酒を飲んだりゲームをしたりしている。それを見て馬鹿らしくなったのかバギーはため息をついてシャンクスに告げた。

 

「……わかった、今回はこいつらに免じて見逃してやる。だが次はハデに容赦しねぇぞ?」

 

「ああ、肝に銘じておくよ」

 

 それを聞いたシャンクスは満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに酒をバギーに勧める。その時一人だけ酒を飲まずに修行でもしているのか端の方で短剣を振るっているミズキを見つけ、バギーに質問する。

 

「おい、バギー。あの子は飲まねぇのか?」

 

「あいつは酒癖悪くて酔うとすぐ暴れるから飲むなって言ってあんだよ」

 

「暴れるってことは強いのか?普通の女の子に見えるが」

 

「ああ見えてあいつは男だ。それに強ぇぞ、なんせうちの副船長だからな」

 

「男!?へぇ……とてもそうは見えねえな」

 

「……あいつは狩魔女だなお頭。懸賞金もかかってる、確か6100万ベリーだったはず」

 

 その会話に入ってきたのは赤髪海賊団の副船長、ベン・ベックマン。二番手でありながら1億を超える懸賞金をかけられた実力者で頭も切れる為海賊団の頭脳としても活躍している。故にある程度以上の海賊は頭に入っており今回のようにシャンクスに教えるのも珍しくない光景だった。

 

「……確かに気配を探ってみれば結構強そうな感じだな。お前とどっちが強いと思う?」

 

「そりゃあ十中八九俺だが、楽な相手じゃなさそうだ」

 

「おいおいシャンクス冗談はよせ!うちのミズキがこんな地味な野郎に負けるはずねぇだろうが!」

 

 ニヤリと笑うとシャンクスはベックマンに問うた。無論シャンクスもベックマンが負けるはずないと思っておりベックマン自身もそのつもりだ。だが楽に勝てる相手ではないとミズキの実力を読み取り認めてもいた。少なくとも片手間で倒せるほど甘くはないと。だがミズキを一番長く間近で見続けてきたバギーからしたら彼が負ける姿は想像できない。故にベックマンに負ける訳が無いとはっきり言ってみせた。

 

「そういえばバギー、お前あの人達にあったか?」

 

「あの人達?ああ、ドリーさんとブロギーさんか。そういや見てねぇな」

 

「キャプテンバギー、大変だ!バケモンが……バケモンがいやがった!!」

 

 その時、島の奥側に探検に行っていたはずの部下数名がバギーの元に駆けつけ、そう報告する。だがその報告は一足遅く、彼らが化け物と呼ぶそれらが木の上から顔を覗かせてきた。

 

「おお、チビ人間達が沢山いやがる。ガババババ!!おいお前ら、酒持ってねぇか?」

 

「ゲギャギャギャギャ!!久しぶりだなチビ人間がここに来るのは、もてなそう客人達」

 

 その正体は二人の巨人族、彼らは豪快に笑い声を上げるとそう話しかけてくる。フレンドリーで敵意などはないのだが、その大きさと迫力に怯えたバギーの部下達は彼らの言葉に耳を傾けずに叫んだ。

 

「お、お前ら!!怪我しないうちに逃げた方がいいぞ、こっちにはキャプテンバギーがいるんだ!!」

 

「そ、そうだ!!キャプテンバギーにかかれば巨人族だろうとひとひねりだ!!」

 

「どんだけ期待してるのガネ!?いいから早く逃げるガネ!?」

 

「ガババババ!!なんだやる気か?ならば相手になるぞ」

 

「ゲギャギャギャギャ!!エルバフの戦士の力を見せてやろう」

 

 バギーの部下達が手を出せば黙ってないぞと脅しをかけるが巨人達には逆効果、来るなら相手になると焚き付ける結果となってしまいギャルディーノにツッコまれる。さすがのベックマンやミズキもまずいと感じたのかそれぞれ銃と短剣を構え戦闘体勢に入る。が、それに待ったをかける者達がいた。バギーとシャンクスだ。

 

「ま、待ってくれドリーさん、ブロギーさん!!俺達だよ俺達!!」

 

「久しぶりだな!元気そうで安心したよ!!」

 

「ん?お前達は……おお!シャンクスと……ああ……赤っ鼻じゃねえか!!」

 

「バギーだよ!!誰が赤っ鼻じゃクラァ!!」

 

 バギーとシャンクスに気づくと彼らは二人の名を呼ぼうとする、だがバギーはその赤鼻が印象的すぎて名前を覚えられていなかったらしい。それに怒ったバギーがすかさずツッコミを入れた。

 そして楽しげに談笑を始めた四人、その光景を見てバギーの部下達は涙を流し驚愕と尊敬の眼差しをバギーに向けた。

 

「巨人族と仲良しだなんて……あんた一体何者なんだ」

 

「俺達はとんでもねぇ人の部下になれたのかもしれねぇな」

 

「さすがは俺達のキャプテンだ!!」

 

『バギー!!バギー!!バギー!!バギー!!』

 

「……いや名前忘れられてたガネ」

 

 コールを送り続ける部下達を見て、ギャルディーノはそうツッコミとも言えないような呟きをこぼすのだった。

 

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