レッドラインにより区切られた4つの海。その中でも最弱の海と呼ばれている海域である。
海賊のレベルは低く懸賞金の平均値は300万。1000万もあれば大物と呼ばれる大海賊扱いだ。
当然新聞の話題にもほとんど上がらないが、最近起きたとある大事件が新聞の一面を飾った。
それが海賊王ゴールド・ロジャーの処刑だ。
唯一グランドラインを制覇した大海賊の処刑、それだけで十分世間の目は集まった。
しかし事件はそれだけでは終わらない。
彼の死に際に放った一言が男達を海へと駆り立てた。
「俺の財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!!この世の全てをそこに置いてきた」
その一言で大海賊時代が幕を開けた。
そしてその場で彼の最後を目の当たりにした一人、元ロジャー海賊団見習いである彼もまた、独立し海へと出たのだった。
「あ〜〜腹減った。死んじまうぞこりゃあ」
「海賊なのに食糧も持ってないの?」
「うるせえ!!一文無しなんだ俺は!!」
……そんな彼は今、遭難していた。
東の海のとある海上に浮かぶ船が1隻。
否、船と呼べるかも怪しいボートだ。その上で少年が二人、雑魚寝して空を眺めていた。
「そういやおめぇに言っとく事があんだけどよ」
「……なに?」
気の抜けた声でそう語りかけたバギーにこれまた気の抜けた声でミズキが答える。彼は立ち上がり眼下の大海原を見据えた。
「おれァ実は能力者なんだよ」
「悪魔の実の?」
「ああ、バラバラの実っていうんだがよ。だから俺は海に嫌われちまって泳げねぇ。もしもの時は頼んだぜ」
それに対しミズキは納得した。
バギーがあっさりと自分が付いていくことに了承したことを。
一人では万が一海に落ちた際に助かる手段がない、だから早く仲間を見つけておきたかったのだと。
超常現象が数多く起こるこの世界でもとりわけ不思議なのがこの悪魔の実だ。
一口でも食べることで人間の常識を越えた能力を身につけることができる。しかしその代償してカナヅチとなり、半身でも水に浸かると力が抜けてしまう。
海賊にとっては致命的だがその能力の強力さ故に悪魔の実を食べる海賊も多い。
事実、今世間を騒がせている大海賊の大半は能力者である。
しかしミズキは彼の期待には応えられない、何故なら
「ボクも能力者なんだけど」
「お!そうなのかそれはめでたいこって………はァァァァ!?おめぇなんでそれ先に言わねぇんだよ!!それじゃあおめぇを連れてきた意味がねぇじゃねぇか!!」
「……だって聞かれなかったし」
身体をバラバラ分解させながらキレるバギー。これこそが彼の能力、バラバラの実。
身体のあらゆる部分をバラバラに分離させることができる。
特筆すべき点は斬撃を完全に無効化できること。原作では世界最強の剣士、鷹の目のミホークの斬撃ですら無効化していた。
「……で、お前の能力はなんなんだ?」
「さぁ?」
「なんで知らねえんだよ!!自分の能力だろうが!!」
そんな事言われても試す機会なんてなかったんだからしょうがないとミズキは思う。しかしバギーの言う事も尤もだ。これから海賊になる以上、自らの能力は把握しておいた方がいい。
そう思った彼は手のひらをバギーに向けて力を込めた。こうすることで能力が発動する、何となくそう思ったからだ。
「ん?おめぇ何して………うぉぉぉ!?危ねぇ!?」
バギーがそれを認識した瞬間、ミズキの手のひらから火の玉が放たれた。迫り来る火の玉を間一髪でかわしたバギーは目をパチクリさせて飛んでいくそれを眺めた。
「……今の」
「おめぇ何すんだ危ねぇだろうがァァァァァ!!」
バギーがそれを言い終わる前にミズキが右手と左手の手のひらを交互に突き出す。
そこから氷、風、雷、そして炎と毎回違う攻撃が飛んできた。
バギーは叫びながらも持ち前の逃げ足の速さを発揮しそれを回避する。
しばらくして自身の能力をある程度理解したミズキは手を止めた。
不思議そうに手のひらを眺めるミズキに対しバギーは床に手を突き肩で息をしている。
「どう?」
「どうも糞もあるかこの派手バカ野郎が!!」
分離させた手でミズキの胸倉を掴む。しかし眉ひとつ動かさない彼に呆れてすぐに手を離した。
「まぁいい……それよりお前の能力だが、俺も見たこともねぇ能力だな。悪魔の実大図鑑にも載ってなかった」
バギーにもわからないならばミズキにわかるはずもない。だが予想することくらいならできる。原作になぞって言うのならば動物系ヒトヒトの実モデル魔女とでも言うのだろうか?
「元ロジャー海賊団でもわからないんだね」
「まぁ俺も全部の悪魔の実を見てきた訳じゃねぇからな………お前今なんつった?」
「元ロジャー海賊団でもわからないんだね」
「なんで知ってんだよ!?」
ミズキからしたらただ純粋にバギーを褒めただけ、しかし当の本人にとって絶対に知られたくない経歴をこうもあっさりと言い当てられ穏やかではなかった。
元ロジャー海賊団、見習いとはいえこんな経歴を海軍に知られれば最低でも中将クラスの猛者が彼を捕縛しようと動くだろう。それだけは避けなければならなかった。
「おめぇそれ誰にも言うんじゃねぇぞ」
「言わない」
今のうちは、とミズキは心の中で付け加える。どうせいつかバレる日が来るのだからそれまでは黙っていてあげようと。
「おめぇなんか変なこと考えなかったか?」
「……別に」
結構勘が鋭いなとミズキは考えるが原作での彼も運とカリスマ性だけはピカイチだった。ちゃんと鍛えて本人の力量さえ上げれば本当に大海賊、それこそ四皇でさえ狙えるのでは?と前世では考えたものだ。
「おい、おめぇちょっとあっち向いてろよ」
「……?なんで?」
そんな考えに頭を使っているとバギーがボートの反対を指差しそちらを向くように促した。その意図が分からずキョトンとしているミズキに彼は多少恥じらいながら答える。
「馬鹿野郎、小便だ。言わせんな」
「……別に勝手にすればいいのに」
「アホか!いくらなんでも女の前でフルチンになる趣味はねぇよ!」
バギーも海賊とはいえそれぐらいの良識は持ち合わせている。客観的に見たらどうかはさておき、少なくとも自分は紳士的だと彼は思っていた。
「ボク男なんだけど」
「うん?なんでぇ野郎か、気ぃ使って損したぜ…………はァァァァァァ!!??」
今日何度目かわからない叫び声が大海原に響き渡る。さすがに鬱陶しいと感じたミズキは両手で耳を塞いだ。
だがバギーの反応も尤もだった。ミズキの見た目は完全に女性、しかもかなりの美少女であった。自ら申告しなければ初見で見抜ける者はそうそういないだろう。
「よく叫ぶね……喉痛くならないの?」
「誰のせいだと思ってんだ!!どう見ても女じゃねぇか!!変な嘘つくんじゃねえよ!!」
「嘘じゃないよ、ほら」
「馬鹿野郎脱ぐんじゃねぇ!!とんだ変態海賊みてぇになるじゃねぇか!!」
そう言いながらズボンを脱ごうとするミズキをバギーは分離した手で慌てて止めた。じゃあどうやって証明すればいいの?と呟くミズキにバギーは呆れ果てて頭を押さえた。
「別に自分を常識人だなんて思っちゃいねぇがよ、おめぇもだいぶイカレてんな」
「君程じゃ無いと思うけど」
片や元ロジャー海賊団、片や元奴隷の転生者、第三者から見れば双方同等に普通ではないのだがこの二人はお互いを自分より普通ではないと思っていた。
互いに譲らず睨み合いが続いたがそれはある音でかき消された。バギーの腹の音である。
「……まずは食糧問題をどうにかしねぇとな」
「この辺に島とかないの?」
「ちゃんと正しい方向通りに進んでたらもうじき見えてくると思うんだが」
そのバギーの言葉通り、少しすると水平線の先に島が見えてきた。歓喜に沸き立つバギーだったがそれは島の姿がはっきり見えてくると共に消え失せていった。
「……おい、あれなんに見える?」
「……海軍基地?」
その島にそびえ立つのはカモメマークにMARINEと書かれた白色を基調とした建物。海賊ならば絶対に足を踏み入れてはならない海軍の支部であった。
なんか筆が乗ったので2話目、バギーの口調とかわからないので違和感あるかもですが悪しからず。
評価、感想などお待ちしております。
ミズキの悪魔の実
-
超人系マジョマジョの実
-
動物系幻獣種ヒトヒトの実モデル魔女