転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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活動報告にミズキのプロフィール、あらすじ欄にミズキのイメージ画像をそれぞれ公開しました。
見なくても特に問題はありませんが見ていただけるとより楽しんでもらえると思いますのでお時間ある時にでも是非。


王下七武海

 ──王下七武海。

 

 世界政府によって公認された七人の海賊達であり、大海賊時代で溢れかえった海賊達を抑制・鎮圧するために一年前に設立された制度だ。

 四皇、海軍本部と並ぶ程の戦力になると期待されており加盟するためにはそれ相応の実績と実力が政府に認められる必要がある。だがその恩赦は大きく懸賞金の撤廃や他の海賊や世界政府未加盟国への略奪行為まで認められるようになる。

 しかし政府の傘下に入るという性質上“政府の狗”として他の海賊達からは蔑まれている。その一方でその強さ故に恐れられることも多く、その地位を狙う海賊も多いのだ。

 

「って感じで、政府の傘下に入る代わりに海賊やってても許されるよっていう制度だね」

 

「なるほど……政府も思い切った制度を作ったもんだな」

 

 ボク達の船ビッグ・トップ号の船上で、ボクはガイモンやその他の王下七武海制度を知らない部下達に一通りの仕組みなんかを説明する。偉大なる航路(グランドライン)に入ってしばらく経つので、さすがに皆その辺の常識は身についてきたけど東の海(イーストブルー)からの古参の部下の中には田舎者で一般常識がない人達もちょいちょいいるのだ。

 ガイモン達はそれを聞くと顔を顰めたり驚いたりと様々な反応を見せてくれた。その反応をツマミにボクは手に持っていたイチゴミルクを飲む。まぁ別にツマミなんてなくても美味しいんだけどさ。

 

「で、なんでその話を俺達にするんだ?」

 

「ん〜〜?だってもう偉大なる航路では一般常識だよ?海賊団の規模も大きくなってきたし、田舎者だって思われたくないでしょ♪」

 

 口元に指を当ててあざとくそう言うと、皆顔を赤くして照れてしまった。ちなみにガイモンだけはなにやら呆れたようなため息をついている。ツンデレなのかな?

 

「あ!それともう一つ理由があって……というかこっちが本命なんだけどね」

 

 ポケットから封筒に入った手紙を取り出し、皆に見せる。それを見ると皆顔を青くしたりして反応した後に一斉にこっちを見つめてきた。

 

「おい……これって……」

 

「そ!政府からのお手紙!七武海に入って欲しいんだって!」

 

『なに〜〜〜〜!!?』

 

 どこで聞いてたのかバギーとギャルディーノが突っ込んできてボクの目の前で急停止する。そして顔を思いっきり近づけてきた。

 

「七武海の勧誘って言ったガネ!?」

 

「おめェなんでこんな大事なもん来て何も言わなかったんだよ!!」

 

「……てへっ♪」

 

「な〜にがてへ♪っっだ!!これいつ来たんだよ!?」

 

「え〜っと……3日くらい前だっけ」

 

「滅茶苦茶前だガネ!!?」

 

 ものすごい勢いで問い詰めてくる二人。もう、ボクが可愛いからってそんな凄い剣幕で来なくてもいいのにな。

 

「すぐに返事だ返事!!七武海になっちまえば海軍に追われる心配もねェし安全だ!!この話に乗らねェ手はねェ!!」

 

「あ、もう断っといたよ」

 

「おおそうかそうか気が利くな…………はァァァァ〜〜〜!!?断った!!?何してんだてめェ!!!

 

「だって政府の狗なんてかっこ悪いじゃん?それになんかつまんなそうだし」

 

「かっこいいとか悪いとかの話じゃねェんだよ!!!七武海になりゃ馬鹿みたいに上がっちまった俺の懸賞金もなかったことになるってのに……」

 

「え〜〜!!いいじゃん6億もあって!!ボクももっと懸賞金上げたいのに!!……そうだ!!ちょっとマリージョア襲撃してきていい?」

 

「ちょっとですむ話じゃないガネ!!?大事件もいいとこだガネ!!」

 

 まぁマリージョアで暴れるってのは冗談だけど。今はまだ()()()()()()……ね。

 

「そういう訳で……皆!!ボクらは政府の狗になんかならないよ!!何故ならボクらのキャプテンバギーがいれば政府も海軍も怖くない!!未来の海賊王なんだからね!!」

 

「うォォォォォォ!!さすがは俺達のキャプテンバギー!!」

 

「そうだ!!キャプテンバギーがいれば政府も海軍も敵じゃねェ!!!」

 

『バギー!!バギー!!バギー!!バギー!!』

 

 部下達の方を向いてそう宣言すると、彼らは拳を空に向けバギーの名を叫ぶ。よしよし、毎度のことだけどちょっと心配になるくらい上手くいくね。まぁやりやすくていいんだけど。そしてバギーの方を向いてもう一度問う。

 

「で、どうするの?やっぱり入れてくださいって政府にお願いする?」

 

「……いいや…………!!海軍がなんだってんだ!!七武海なんてこっちから願い下げだ!!てめェら気合い入れてけよ!!!

 

『うォォォォォォ!!!キャプテンバギーィィ!!!』

 

 後に引けない空気の中でバギーが叫ぶ。その声にさっきよりもさらに多くの歓声が上がり、船上は文字通りバギーの独壇場となった。そしてその声に呼応するように、ボク達の視線に次の島が入ってきた。

 

「キャプテンバギー!!島が見えてきました!!」

 

「よっしゃてめェら!!気合い入れて略奪しやがれ!!」

 

 バギーの掛け声で部下達はそれぞれ武器を取り雄叫びを上げる。だが島から見えるある光景に、息を飲むこととなった。

 

「おい……あれ見ろよ!!」

 

「ありゃあ……砂嵐か?」

 

 そう、その島には砂嵐が吹き荒れていた。そもそも異常な気象が数多く存在する偉大なる航路ではそういった光景も珍しくはない。しかしボクはその砂嵐の大きさと、その島から発せられる強い覇気を察知して理解した。あれが自然に生み出されたものではないことを。

 

「噂をすればなんとやら……だね♪」

 

 さっきまで話題に上がっていた王下七武海。その一角であり、砂を操る能力者である男がその島にいることを確信し、ボクは一人口元を緩ませるのであった。

 

 

 

 

 

「す、すげェ……あの海賊達を一瞬で……」

 

「でもあいつも海賊だろ……てことはまた……」

 

「馬鹿、知らねェのか?彼はあの王下七武海の一人だ。政府に認められたたった七人の海賊。そして俺達の救世主だ!」

 

「そうだ!!当てにならねェ海軍よりもあんたこそが俺達の救世主だ!!“ミスタークロコダイル”!!」

 

 民衆達が救世主と呼ぶ男は海賊であった。偉大なる航路のとある世界政府未加盟国の島。故に海軍基地もなく海賊にとっては格好の餌であったその島は昔から略奪、誘拐、殺人などの犯罪が絶えず、民衆達は海賊に怯える日々を送っていた。

 そしてその日も海賊が襲来し、店から金目の物や食料を奪い美しい女は誘拐するなど好き放題暴れ回っていた。当然民衆達もそれに対抗しようとしたが海賊達はこの偉大なる航路を旅してきた猛者、か弱い民衆では相手になるはずもなかった。

 だがその男はそんな海賊達をほんの一瞬で全滅させた。それもそのはず、彼こそが政府が認めた七人の海賊達の一人、王下七武海であった。

 

 

“王下七武海”海賊 サー・クロコダイル 元懸賞金8100万ベリー

 

 

『クロコダイル!!クロコダイル!!クロコダイル!!クロコダイル!!』

 

「クハハハハ……まァなんとでも呼ぶがいい」

 

 自分を称える民衆達を前に、クロコダイルは笑みを浮かべる。彼は七武海の中でも珍しい、真面目に七武海の役目を務める海賊であった。

 七武海とて元は海賊。政府の命令を無視したり招集に応じなかったりと、制度が設立されてから一年しか経っていないにも関わらず問題が多くあった。

 だがクロコダイルだけはそのような問題行動を起こさず海賊を狩り、七武海の本分を全うしていた。それは他の海賊からすれば政府の狗として蔑まれることであった。しかし彼はそれでも政府に従っていた。何故なら彼の牙は既に折られていたからだ。

 

「……?なんだ?港の方が騒がしいな」

 

「た、大変だ!!沖にまた海賊船が!!」

 

 慌てた様子で町民が走ってきた。彼は沖の方を指差し、息もたえだえに言った。先程とはまた別の、新たな海賊船が現れたと。

 

「落ち着け!!どこの海賊船だ!?」

 

「それが……バギー海賊団だ!!」

 

「バギーって……あのロジャー海賊団の元クルーの!?」

 

 その名を聞いた民衆達は動揺する。それもそうだ。この町にやってくる海賊達は偉大なる航路を勝ち抜いてきたとはいえ、懸賞金で1億を超えるような海賊達はいなかった。しかしバギー海賊団といえば船長は6億、副船長でも4億を超えてくるような懸賞金をかけられた大物だ。

 そしてそれを聞いていたクロコダイルも考える。自分一人でバギーの一団を相手にするのは面倒であると。無論七武海の立場上見逃すことはできない、そのような大物を見逃したことを政府に知られれば自らの信用に関わる。今まで真面目に役目をこなしてきたクロコダイルなら尚更だ。それにこの島は自分の新たなねぐらにしようと考えていた。他の海賊に荒らされてはたまったものではないしプライドにも傷がつく。

 そのように思考を巡らせ、迎え撃つことを結論づけ、彼は港の方へと向かった。だが──

 

「放て!!特製バギー玉!!!」

 

 着港したバギー海賊団の船からいきなり大砲が放たれた。それは通常の大砲とは比較にならない破壊力で町を半壊させ、巻き添えに民衆達を消し飛ばす。港に向かっていたクロコダイルもそれをモロに浴びるが、彼はその能力故に無傷だった。

 

「……!?噂通り滅茶苦茶な野郎だ……!」

 

 だが町の被害を見てクロコダイルは歯噛みする。別に民衆や町が心配な訳ではない。馬鹿な愚民共など消えればいいとすら思っているが、あまり自分のいる町を滅茶苦茶にされれば評価に傷がつくしプライドにも触る。

 

「ぎゃははははは!!よォし、2発目撃て!!」

 

「待ちやがれ!!道化野郎!!」

 

「……ああ?なんだァてめェは?」

 

 声を荒らげるクロコダイルを船からバギーが見下ろす。そして彼を含む幹部らしき数名が船から飛び降り、クロコダイルと対峙した。

 

「聞いた通りのイカレ具合らしいな。だがここは俺がねぐらにする予定だ。あまり暴れてくれるなよ」

 

「……!!?てめェは……クロコダイルか!?」

 

 クロコダイルを目の当たりにして、バギーもその正体に気づく。そして彼の経歴を知るバギーは身を震わせた。

 

「あはは♪いきなり噂の七武海に会えるなんて運がいいね!」

 

「言ってる場合か!!奴はあのダグラス・バレットと引き分けた男だ!!バケモン中のバケモンなんだよ!!」

 

 副船長の“宵魔女”ミズキがクロコダイルを見て笑う。だがバギーはそれに対しツッコミを入れ、クロコダイルの危険性を説いた。かつてクロコダイルと互角に渡り合ったダグラス・バレットは元ロジャー海賊団として名を馳せ副船長のレイリーとも肩を並べる程の大海賊だ。二人の強さを間近で見てきたバギーはその強さをこの場の誰よりも理解していた。

 

「クハハハハ!!あのガープをやったというからどれだけの実力者かと思えば……とんだ腰抜けのクズ野郎じゃねェか」

 

 その様子を見ていたクロコダイルは嘲笑うかのようにバギーを笑う。しかしバギー達はそれを歯を噛み締めて聞き流す。ここで怒りに任せて戦っても負けるだけだと理解しているからだ。

 だが一人、ミズキだけは持ち前の覇王色の覇気を撒き散らしながらクロコダイルを威圧し睨みつける。

 

「は?……今誰を笑ったの?白ひげにボコられて心折れちゃった負けワニ君がうちの船長馬鹿にしないでくれる?」

 

 先程とは全く違うその威圧感にクロコダイルは一瞬だが萎縮する。が、すぐに睨み返すと鼻で笑いながら反論した。

 

「クハハ……!クズ野郎をクズ野郎と言って何が悪い。てめェらのような口先だけの雑魚なんざこの海にはいくらでもいるんだよ」

 

「あはは♪それもしかして自分のこと言ってる?自分のこと無敵だと勘違いしちゃってたけど上には上がいるってわからされちゃったもんね。だから政府の狗になって尻尾振ってるんでしょ?」

 

「口だけは達者なようだなカマ野郎。新世界を経験したこともねェようなお坊ちゃんがわかったような口を聞くんじゃねぇよ」

 

「こんなに可愛いボクを捕まえてカマ野郎なんて目が腐ってるんじゃないの?それともオカマに何か思うとこでもある?」

 

「……!?……クハハ!可愛い子ぶってるお前みてェなのが一番気色悪い。精々野郎のケツでも追いかけるんだなクソガキ」

 

「あはは♪……あんまり調子に乗ってるとぶっ殺すよ?」

 

「……やれるもんならやってみやがれ……!」

 

 過激になる二人の口論にその場にいた誰もが息を呑む。睨み合う二人、一見冷静に見えるがクロコダイルは青筋を立てて殺意を剥き出しにしている。ミズキも笑ってはいるものの相変わらず覇王色を剥き出しにし怒っているのは明らかだった。

 まさに一触即発。いつ戦いになってもおかしくないその状況で、先に動いたのはクロコダイルだった。

 

「消えろ!!カマ野郎!!」

 

 クロコダイルの手のひらから生み出された砂嵐がミズキに襲いかかる。それを見聞色の覇気で察知してかわすミズキだったが、砂嵐はそのまま進路を変えずに進みビッグ・トップ号に直撃した。それに巻き込まれ船に残っていた部下達は吹き飛ばされた。

 

「……やってくれるじゃん!あんまりうちの部下いじめないでよね!」

 

「守りてェならしっかり守りやがれ。最も俺相手にそれができればの話だがな」

 

 能力でそれぞれ宙に浮きながら、二人は対峙する。ミズキは背中の短剣を抜きその先にエネルギーを集め、クロコダイルは能力で右手を砂の刃に変え互いに覇気を最大限まで高める。

 

「ガト〜〜!!」

 

砂漠の(デザート)……!!」

 

 そしてそれを解き放ち、激突する。

 

死光蘭(ショコラ)!!!」

 

宝刀(スパーダ)!!!」

 

 それは例えば地上であれば地面がえぐれ、周囲が更地になるほどの激突だった。空中であったためそれほどの被害はないが、それを見ていた者達は皆目を見開き息を呑んだという。だが海賊同士の戦いはこれだけでは終わらない。自らの力を示すため、二人の強者のぶつかり合いが始まるのだった。

 

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