転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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カライ・バリ島

 ──四皇。

 

 偉大なる航路(グランドライン)後半の海“新世界”にて皇帝のように君臨する四人の大海賊の通称である。幾つもの船団や大規模なナワバリ、傘下の海賊団を抱えており彼らの戦闘はもはや戦争の域に達している。

 海賊王ロジャーの処刑後まもなく出来上がった勢力名であり、ロジャー存命時にも四皇という呼称こそなかったものの、似たような立場に“ロジャー”“白ひげ”“金獅子”“ビッグ・マム”が君臨していた。

 ロジャー処刑後に元ロックス海賊団である“百獣のカイドウ”が台頭。その勢いのまま四皇と呼ばれるようになり、今の勢力図が出来上がった。

 しかし金獅子海賊団に関しては海賊団の大親分であった“金獅子のシキ”が海軍本部にてガープ・センゴクとの戦闘に破れインペルダウンに投獄されたことによりその地位を危ぶめている。シキ本人は投獄から2年後に脱獄したものの消息を絶っており、今は残党の部下達がなんとかナワバリを維持している状態である。

 だがやはりトップを失った影響は大きく他の四皇にナワバリを奪われることも多くなっており、金獅子を四皇の一人に位置づけていることを疑問視する声が各所から出始めている。故に新世界の海賊達は金獅子海賊団の後釜として四皇入りしようと目論み金獅子のナワバリは未だかつて無いほど荒れ果てていた。

 そしてそれはここ、カライ・バリ島も同じだった。

 

 

 

 

 

 ──偉大なる航路、カライ・バリ島。

 

 魚人島を出航したボク達バギー海賊団は新世界の島をいくつか経由し、このカライ・バリ島に辿り着いていた。ここは元々金獅子海賊団のナワバリであり、それ故か中々に発展していて大きな街が複数点在していた。劇場や遊戯場、酒場が立ち並ぶネオン街や様々なジャンルの店舗が点在する商店街など島の至る所に発展した商業街があり、夜になっても街の灯りで島は明るく照らされる。つまりボクらの拠点にするにはピッタリってことだ。

 

「ぎゃははははは!中々いい島だ!おれ様の拠点にピッタリだな!」

 

「あはは♪美味しいスイーツもいっぱいありそうだし楽しそうなところだね!」

 

「この新世界でここまで発展しているとは……余程技術力や経済力が高いようだガネ」

 

 確かにこの島はすごい。外から見た時も凄かったけど実際に上陸してみると圧巻だ。部下達もさすがにこの島には驚き、今にも遊びに行きたいと言わんばかりにこちらに視線を向けている。勿論遊びには行く、というか行きたい。でもその前に邪魔者を始末しないとね。

 

「ゼェ……ゼェ……てめェら……調子に乗るなよ……!!ここはあの金獅子のシキ親分のお気に入りの島だ!!……てめェらなんてすぐに叩き潰される……!!」

 

「金獅子だァ……?確かにあのおっさんはバケモンみてェだったが……消えちまっちゃ意味ねェよな!!」

 

「今頃空の上で動物と戯れてるんじゃない?コントでもしながらさ♪」

 

 金獅子の名を出して脅してくるのはこの島にいた金獅子海賊団傘下の海賊達。自分達に手を出したらどうなるかと脅しをかけてきてるんだけど……正直どうでもいい。金獅子本人が出てくるのなら確かにやばいけど、あの鶏おじいちゃんは空の上の動物園で楽しんでるからね。それに金獅子海賊団の幹部達も他の四皇や海軍にやられて壊滅状態だって記事に書いてあったし。幹部くらいになら負ける気はないけど。

 その結果残ったのはこの雑魚達。たかが傘下の一つとはいえまさかバギー一人に負けるなんてね。別にバギーが弱いって訳じゃないけど。新しく開発したあの兵器もあるし身体能力とかも原作と比べたら遥かに強い。勿論七武海とか四皇幹部には及ばないけど海軍の少将位はあるんじゃないかな?

 

「よォしてめェら……その雑魚共は牢屋にぶち込んどけ!後でおれ様の新兵器の実験台にしてやるぜ」

 

「了解だ!キャプテン・バギー!」

 

 まあ雑魚の相手はこのくらいにしておいて、今はこの島を楽しまないとね。部下達ももう我慢できないって感じだし。

 

「キャプテン・バギー!!飲みに行きやしょう!!ここはうめぇ店が揃ってそうだ!!」

 

「それより賭博だ賭博!!億万長者になってやるぜ!!」

 

「あっちにはキャバクラがあるぜガイモンさん!!ほら行きましょう!!」

 

「馬鹿野郎、おれが行ったら混乱するだろうが。それに先にやることがあるだろ」

 

「あっちにあるあれは……闘技場ね!!早速参加しに行くわよ!!」

 

「ちょっ……待ってくれアップルちゃん!!」

 

 みんな酒場やら賭博、キャバクラに闘技場と思い思いの場所に行こうとする。だけど確かにガイモンの言う通りまず最初にやることがある。海賊が島を拠点にする時は、まず島の住民達に知らしめなければいけない、この島を支配するのは誰かということを。舐められたら終わりだからね。

 

「ハデによく聞きやがれこの島の住民共!!おれ達は泣く子も黙るバギー海賊団!!そしておれ様はあのロジャー海賊団の元クルー、千両道化のバギー様だ!!今日この時からこの島は金獅子海賊団のものじゃねェ!!おれ様達バギー海賊団が取り仕切る!!」

 

「あはは♪心配しなくてもちゃ〜んと毎月お金を納めてくれたら殺したりはしないよ。払えなかったらどうなるか知らないけどね♪」

 

「ば、バギーって……あのガープを引退に追い込んだっていう海賊……!」

 

「この間天竜人を殺したって記事が出回ったよな……そんな男がなぜこの島に……?」

 

「だが……落ち目の金獅子海賊団よりもバギー海賊団に守ってもらった方が安全なんじゃ?」

 

「だが……金獅子の時もキツかったのに今度は一体いくら払えば……」

 

 住民達は口々にそれぞれの思うことを口にする。海軍の影響力が低いこの新世界において、海賊の支配下に入るのは珍しいことじゃない。現にこの島も今までは金獅子海賊団の島だったみたいだしね。勿論海賊が無償で守るはずもない、大体は毎月お金を納めさせてその対価として島を守るといった感じだ。お金じゃなくてお菓子を納めせるようなところもあるけどそれは特例だね。

 だけどそれさえ納めて島に海賊団の旗を掲げることができれば他の海賊に襲われることもない。一部例外を除いて自分の島で暴れようって海賊もいないし安全が約束されるって訳だ。

 

「あんた達……バギー海賊団って言ったね?」

 

「ん?なんだてめェは?」

 

 この島を治めると宣言を行った直後、女性が一人ボク達に話しかけてきた。着物風のドレスを身にまとったその美女は微笑みながらボクらに語りかけてくる。

 

「あたしはギオン、このカライ・バリ島のクラブをまとめている者さ。この島を守ってくれるなら……歓迎の印にあんた達をあたしの店に招待したいと思ってね」

 

「ぎゃははははは!!そうかそうか、それはいい心がけだ!よっしゃてめェら!今日はおれ様の奢りだ!パァっと遊ぼうぜ!」

 

「マジっすか!?さすがキャプテン・バギーだ!!」

 

「ウサフフフ……決まりだね」

 

 ギオンと名乗った美女はその美しい顔を余さず向けてきて、うちの新入りの男共やバギーは見惚れて目をハートマークにしている。だがそれも頷ける位綺麗な人だ。可愛さではボクの方が圧勝だけどね。それをわかってるのか古株の部下達は特に反応していないようだ。うんうん、物わかりがいいね。

 それにしても一体何が目的なんだろうか?歓迎したいってのはどう考えても嘘だ。だってこの女の人、ギオンは──海兵なんだから。

 

「いや待て……怪しいガネ。島を守ると言うが我々は海賊。それ相応の金額は徴収するつもりだガネ。それはそちらもわかっているはず……何故そこまでもてなすのだ?」

 

 お、ギャルディーノ鋭いじゃん。さすがうちの頭脳担当、平均IQがめっぽう低いうちでは貴重なインテリ系だ。そう心の中で思っているとギオンは頬に手を当て軽やかに微笑んだ。

 

「ウサフフフ……新世界の島はどこもそんなもんさ。海軍の影響力が低いこの海では強い海賊に守ってもらうのが一番。あんた達のような強い海賊となら親しくして損はないし、お金だって多少キツくても払うさ。命には替えられないからね」

 

「……そうか、まァそれなら納得だガネ……」

 

「それはいいけどボクら結構危ない実験したりするよ?徴収する額だって高額だし」

 

「海賊だからね、ある程度は理解してるさ。それに荒っぽい男は嫌いじゃないんだ」

 

「おお、おめェ話がわかる女じゃねェか!!ギオン!!早くてめェの店に案内しやがれ!!このおれ様達がハデに盛り上げてやるぜ!!」

 

「頼もしいね♡あたしの店は街の中心にあるんだ、こっちだよ」

 

 あ〜あ、みんなすっかり乗り気になっちゃってるよ。こうやって接近してくるってことはここで事を構える気はないんだろうけど、それでも全員でついて行くのはリスキーだよね。

 

「ボクは遠慮しとくよ、適当に街を見て回るからそっちはそっちで楽しんどいて」

 

 そう言い残してボクは背を向けて街に歩き出した。ギオンの目的はある程度見当はつくけどロクなもんじゃないだろうし、探りを入れる必要がありそうだからね。

 

 

 

 

 

『どうだい?接触には成功したのかい?』

 

「ええ、うちの店で酔い潰れてぐっすり寝てるよ。思ったよりちょろかったね」

 

『そうかい……何度も言ったが絶対に手を出すんじゃないよ。奴らはお前では手に余るだろうからね』

 

「ああ……わかってるよ、()()()()()

 

 クラブの裏側、薄暗い部屋で電伝虫を切りギオンはため息をついた。CP(サイファーポール)からの情報でバギー海賊団が近々この島に上陸すると聞きつけた海軍はスパイを派遣することにした。それに抜擢されたのが本部少佐のギオンだ。一部の海兵からは桃兎と呼ばれている彼女はその美貌と色気で数々の海賊を釣り出し、捕らえた実績のある有能な海兵だ。実力も少将もしくは中将クラスはあると言われているが、彼女のやり方では階級が上がり有名になるのは逆にデメリットとなるので今は少佐の立場でとどまっている。

 彼女の任務はバギー海賊団と接触しその情報を政府に流すこと。元ロジャー海賊団という経歴やこれまで起こしてきた事件から難しい任務になると思っていたのだが、今のところは順調に進んでいる。寧ろ上手く行きすぎて怖いくらいだ。少しは警戒されると思っていたのだが、店に誘い女の子達に接待させればコロッと酔い潰れ聞いていないことまで話す始末だった。実力がある故の余裕だろうか?何にせよ彼女にとっては悪いことではなかった。

 だが大した情報を聞けなかった上に“宵魔女”には逃げられてしまった。何かに勘づいたのか、はたまた女の子に興味が無いのか。

 一目見ただけだが、ギオンがあの中で一番得体が知れないと思うのは彼だ。故に彼の情報が一番欲しかったのだが……今回は無理だろうと諦める。

 幸運なことにバギー海賊団はこの島を拠点にするようだ、ならば接触する機会は幾らでもあるだろう。ゆっくりと信頼関係を築いていけばいい。元よりこちらはそのつもりなのだから。

 そう考えギオンはバギー達のいるクラブの表へと戻っていくのだった。天井裏で全てを聞いていた人物がいるのも知らずに。

 

「なるほどね♪スパイだなんて姑息なことしてくれるじゃん……」

 

 その影は不敵に笑うと、一瞬のうちに消えてしまった。

 

 

 

 

 

 次の日、ボクは二日酔いで頭を押さえてるバカ達を叩き起して街の外れにある草原に集めていた。この島でやることはいっぱいあるけど、細かいことはギャルディーノやガイモンに任せておけばいい。てことでボクがするのはまずは部下の強化だ。

 

「さァ!!ミズキ君による楽しい楽しい地獄の大特訓を始めるよ!!これを乗り越えればみんな今までの10倍は強くなれる!!ちなみに途中でリタイアしたら罰ゲームだからね!!」

 

「いてて……大特訓会?」

 

「楽しいのか地獄なのかはっきりしてくれ……」

 

「ん?なんか盛り上がってなくない?」

 

ハデ馬鹿共!めんどくせェからてめェらも適当に盛り上げろ!

 

「う、うォォォォ!お嬢の特訓が受けられるなんて夢みてェだ!」

 

「おれもぜったいにつよくなってみせるぞぉぉぉ!!」

 

「イエ〜〜イ!!私ももっと強くなりたいわ!!」

 

 うんうん、みんな盛り上がってるね。最初は照れてたのかな?特にアップルはすごいやる気だ。だけどアップルはもう充分強い。それより今はその他の部下やバギーを強くしないとね。

 現状だと幹部以外は微妙だと言わざるを得ない。バギーの名声で数は集まったけど質もそこそこじゃないとこの先の海では生き残れないからね。特に覇王色持ちには一瞬で無力化させられるし。

 

「ということでみんなには強くなれるように特訓してもらうよ!」

 

「はァ……強くなるって言っても一体どうやって……」

 

「う〜〜ん……とりあえず腹筋一万回!!」

 

『絶対ノープランだ……』

 

 強さといえば筋肉だからね。とりあえずみんなには筋力をつけてもらおう。本当は覇気とか教えたいところだけど基礎ができてないとどうしようもないからね。まずは肉体を作ってからだ。

 

「ちなみにバギーは十万回ね!」

 

「はァァ!?なんでおれ様だけそんなに多いんだよ!!」

 

「船長でしょ!これくらいやってくれないと!」

 

「さすがだぜキャプテン・バギー!!一万回でもキツイのにその十倍だなんて!!」

 

「あんたそれ以上強くなったらどうなっちまうんだ!!」

 

「それなら私は二十万回よ!!」

 

 実際バギーにはそのくらいやってもらわないとね。例の新兵器があるとはいえフィジカルも鍛えておいて損はないし、船長ならそれくらいやらないと部下に示しがつかない。というかバギーって性格上強くなるための訓練とかしなさそうだからあの強さに収まってただけで、真面目に鍛えれば結構強くなる要素揃ってると思うんだよね。覇王色あるし斬撃無効って特性もこの世界の強者って剣を使ってる人が多いから有利に働きそうだし。てことで今日から無理やり特訓させよう、強制しないとすぐにサボりそうだし。

 

「お、お嬢……持ってきました」

 

「ありがとう、そこ置いといて」

 

 お、来たね。それじゃあみんなが腹筋してる間にこっちも始めますか。こっちはこっちでかなりの重労働になりそうだけど。

 ちなみに部下達数人に持ってきてもらったのは大量の武器が入った箱。剣や銃、ざっと二千はあるだろう。これら一つ一つにボクの魔法を込めていく。要はガイモンが使ってる銃みたいな感じだ。さすがに複数の魔法を一個の武器に込めると途方もないから一つにつき一種類の魔法だけどね。それでも攻撃性能は格段に上がるしやらない手はないだろう。

 

「魔法の武器を使う兵士の軍団か……かっこいいね♪」

 

 男達のゼェゼェという息遣いをBGMにボクは作業に取り掛かっていく。腹筋の後はどうしようかな?腕立て?それか一対一で殺し合いでもしてもらう?実戦に勝る修行はないって言うからね。

 などと考えつつ、ボクはテキパキと作業を続けるのだった。

 

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