海軍──―この海を統治する世界政府直属の正義の軍隊。
悪魔の実の能力者や覇気使いなど一騎当千の猛者が数多く所属し日々海賊を討伐、逮捕している。
それはこの
そのため本来この支部がある島に自ら近づく海賊は殆どいない。血の気の多い者は戦争を仕掛けようと自身の意思で乗り込むことがあるがそれもひと握りだ。
それ以外でこの島に近づこうとする海賊がいるとするならばそれは……
「ちくしょう……なんでよりによって海軍支部のある島に行き着くんだよ」
「この島を目指してたんじゃないの?」
「んなわけあるか!!ホントは普通の街があるだけの島に着くはずだったんだよ!!」
「じゃあ遭難してたんだボク達」
眼前にそびえる要塞を見据えてバギーとミズキはそんな言い争いをしていた。殆どバギーが一方的に怒鳴っているだけだが。
海軍支部のある島に着いてしまったことに絶望するバギーとは対照的にミズキは特に顔色を変えることもなくただじっと要塞を見つめている。
「……ボク達まだ指名手配されてる訳でもないんだし普通に街で買い物すればいいだけじゃない?」
「おおそうか!!この島に街でもありゃコソッと買うもん買ってトンズラこけばいいだけだもんな………だから俺らは一文無しだっつってんだろ!!」
バギーのノリツッコミを見てこの男は海賊より芸人の方が向いてるんじゃないかと思うが口にすればまた怒られそうなので黙っておく。
「とりあえず島の反対側に行ってみようぜ。街でもありゃあ食いもんでもなんでも盗めるだろ。あんまり支部のある島ではやりたくないけどよ」
街があれば当然食料品を取り扱う店もある。そこで食料を盗んでさっさとこの島から出ようとバギーは言う。
彼の能力があれば盗みなど簡単だ。
だがそんな考えはすぐに打ち砕かれることになる。
「街なんてどこにもねぇじゃねぇか!!」
「……うるさい」
隣で叫ぶバギーにさすがのミズキも顔を顰めて耳を塞いだ。出会ってから半分以上は叫んでいる気がする。
応援団の方が向いているじゃないだろうか?
彼が海賊をやる理由がわからなくなってくる。
そもそも海軍支部のある島でこんなに叫んで大丈夫なはずがない。
「……だったら海軍に忍び込んで食料盗んでくる?」
「ぐぅぅぅ……ホントはやりたくないんだがもうその手しかないか。今船を出しても餓死するのがオチだ」
見つかれば一巻の終わり、牢屋行きだ。だがやらなければ飢えて死ぬしかない。二つに一つ、しかし彼に選択権などなかった。何故なら彼が目指すのは海賊、それならばいずれ海軍とも一戦交えることになるだろう。ならばこんなところで怖気づいてどうする。
バギーお前はやれば出来る奴だ。今やらずにいつやる!今こそ覚悟を決める時だ!
心の中で一人盛り上がった彼はその気持ちのまま隣のミズキに語りかける。
「行くぞミズキ!派手についてきやがれ!!……うん?」
「何してるの?早く行くよ」
「てめぇ俺を差し置いて先に行ってんじゃねえ!!」
バギーの決意など知らないと言わんばかりに先に進むミズキに、彼は特大のツッコミを入れるのであった。
♦♦♦♦♦
東の海にあるその島は、元は無人島であった。しかしその近くの海域で最近海賊の往来が激しくなったと情報が入ってくるようになった。
それを考慮し新たに作られたのが東の海”第9支部”だ。
元が無人島ということもあり支部以外の街や村などは存在しない。
故にこの島を訪れる者は殆どいない、海賊ならば尚更だ。
この支部に勤める海兵の仕事は主に二つ、海賊船の目撃情報が入った場合にそれを追い討伐する遊撃隊、そしてその間支部を守る警備隊。
しかしこんな街も村もない島に訪れる海賊などおらず警備隊の仕事は殆どなかった。
つまりこの島の治安は至って平和そのものであった。
「ん?お嬢さんどうしたんだい?」
「あ、あの……ボク、海で遭難して……お母さんともはぐれちゃって……気がついたらこの島に流れ着いてて」
そんな平和な海軍支部の入口に少女が現れたのは、日も沈みかけた夕暮れ時だった。恐らく15才くらいであろうその少女は酷く汚れた服を着ており明らかに普通の航行者ではないことがわかった。
「そうか……それは気の毒にね、でももう安心だよ。さぁ中に入ろう、暖かい部屋と食事を用意してあげるからね」
海兵の仕事は何も海賊の逮捕だけではない、このように遭難してしまった民間人の保護も立派な職務の一つであった。見張りの海兵が中に入るように促すと、少女は特に表情を変えることなくついてきた。可哀想に、よっぽど辛い目にあったのだろうと少女に同情する。
「おい、その子は?」
「ああ、どうやら遭難者らしい」
もう一人、見張りの海兵が近づいてきて声をかける。彼は後ろの少女を見ると納得して戻っていった。
そうして少女が案内されたのはこの支部の最上階に位置する部屋。この支部の最高責任者である准将の職務室であった。そこに座っているのは無精髭を生やした中年の男性。他の者とは違い将校の証であるコートを羽織っている。
「准将殿!遭難者を連れてまいりました!どうやら家族と離れ離れになってしまったようでして……この島に流れ着いたと」
「そうか、ご苦労だったな。その子のことは私に任せて仕事に戻りなさい」
敬礼する見張りの兵に労いの言葉をかけ仕事に戻らせると、准将は少女に微笑み優しく語りかけた。
「その年で一人で遭難してしまうとは大変だったね。名前を聞いてもいいかな?」
「……ミズキ」
「ミズキちゃんか、一つ聞いてもいいかな?
「……!?」
先程とはうってかわり真剣な、厳しい目線で少女を睨む。一方少女の方は睨まれているというのに顔色一つ変えずに准将を見つめている。
「さっきから全く表情が変わっていない。遭難したとあればもっと不安がったりするものだと思うのだがね。君くらいの年齢の子なら尚更だ」
「…………」
「……最近海賊にも色々な奴らが出てきてね。民間人になりすまして海軍に入り込もうとする輩もいるんだよ。ああ、別に君がそうだと言いたい訳ではないんだよ。ただ何か目的があるならば話してくれないか?」
目の前にいる少女は遭難者などではない。何か目的があり遭難者のふりをしてこの基地に入り込んだ。ただそれが本人の意思なのか、はたまた海賊などの悪党に脅されているのかまでは准将には判断できなかった。
故にすぐに捕えることはしない。脅されているのならば彼女を保護した後に黒幕を聞き出す必要がある。
本人の意思であるならば確保し、取り調べをしなければならない。だがこれは彼からしたら出来れば避けたいことだった。
いくら彼女が犯罪を犯していようがこのような少女に取り調べを行うのはさすがに罪悪感がある。
そのように思考を巡らせ少女からの返答を待つ。
数秒の沈黙の後、口を開いたミズキからの返答は彼の求めているものからは程遠いものだった。
「ボク、男なんだけど」
「ん?ああ、そうなのか……それはすまなかった。あまりに可愛らしかったものだからね」
「それと……ボクは海賊だからここの食料を貰っていくね」
「っっっ………!!」
自らを海賊だと宣言した瞬間、ミズキが手のひらを准将に向け火の玉を出現させた。
それは彼に着弾したと同時に爆発を起こし部屋の中に煙が巻き起こる。突然のことに反応できなかった准将はモロにくらい思わず声を漏らす。
その隙をついてミズキは部屋から脱出、出口めがけて走り出した。
「くそ、あいつを捕らえろ!!」
騒ぎを聞きつけやってきた海兵に指示を出し終えた准将もミズキを確保すべく追いかける。
その間にミズキは複雑な基地の廊下を走り抜け、バギーとの合流地点に辿り着いていた。そこには風呂敷いっぱいに入った食料を担いだバギーが既に待っていた。
「おお、見ろよこれ!こんだけあれば当分は困らないぜ!そっちはどう…………ぎゃぁぁぁぁ!!なんで引き連れてきてんだおめぇ!!」
走ってくるミズキを見つけて成果を報告するバギーだが、彼の後ろを追随する海兵の集団を見て叫び声を上げ一目散に走り出した。
「おめぇが遭難者のフリして時間稼いでる間に俺が食料盗む作戦だったろ!!なんでこんなに沢山の海兵に追われてんだよ!!」
「……ごめん、許して」
「おお……素直に謝るのか。なら許してやっても………てなるかボケェ!!」
バギーの腹の底からの叫び声はなんどもこだまして基地内に響き渡った。
ミズキの悪魔の実
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超人系マジョマジョの実
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動物系幻獣種ヒトヒトの実モデル魔女