転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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赤髪VS鷹の目VS千両道化

 

 ──新世界、海賊島ハチノス。

 

 島の中心にドクロの形をした巨大な岩があるのが特徴の島。デービーバックファイト発祥の地として知られ、今では海賊達の楽園とまで呼ばれている。少し前までは白ひげ海賊団の旗が掲げられたナワバリだったが、バギー海賊団によって島を荒らされハチノスは彼らの手に渡った。

 そんな島で今、決闘を行う二人の海賊がいた。それ自体は別段珍しいことではない、海賊が集えば揉め事が起こるのは当然だ。争いごとは絶えないし決闘に発展するのも日常茶飯事だった。しかし今日の決闘は文字通りレベルが違った。

 

「お、おい早く逃げろ!巻き込まれるぞ!」

 

「ちくしょォ……なんだってこの島で暴れやがるんだ!」

 

「どっちもバケモンだ……!」

 

 島に集まった屈強な海賊達も一目散に逃げ出すほどの大激闘。それを演じているのは新世界で幾度となく死闘を繰り広げたライバルとして有名な二人だった。

 

 

“王下七武海”海賊“鷹の目”ジュラキュール・ミホーク

 

 

赤髪海賊団船長“赤髪のシャンクス”懸賞金16億4890万ベリー

 

 

「……貴様とこうして剣を交えるのは何度目か……そろそろ決着をつけたいものだな」

 

「そうか?おれはまだ終わらせたくないけどな……この楽しい時間をよ!」

 

 鷹のような鋭い目つきをした男と麦わら帽子を被った赤髪の男がそれぞれの所有する名刀、黒刀“夜”とグリフォンをぶつけ合う。

 彼らは新世界においても“四皇”に次ぐレベルの実力者と称されており、その戦いの凄まじさは常識の範疇をはるかに凌駕している。剣が激突する度に周囲の建物が崩壊し、瓦礫が散乱する荒地へと変えてしまう程だ。

 

「おいおい……お頭の奴張り切りすぎじゃねェか?あれじゃあ島が持たねェだろ」

 

「今のうちに止めるか?これ以上続けばカタギにも被害が出るかもしれねェ」

 

「やめておけ、おれ達がいくら言ってもあの人は止まらねェよ」

 

 それを遠目で観戦するのは赤髪海賊団の船員達。そのなかでも幹部であるラッキー・ルウ、ヤソップ、そして副船長のベン・ベックマンは島の状態やカタギの人間に危険が及ぶことを考慮し話し合っていた。

 

 

赤髪海賊団副船長ベン・ベックマン懸賞金13億2000万ベリー

 

 

赤髪海賊団幹部ラッキー・ルウ懸賞金6億7700万ベリー

 

 

赤髪海賊団幹部ヤソップ懸賞金7億5300万ベリー

 

 それぞれ意見を述べ船長を止めようとする彼らの発言を、シャンクスと最も付き合いの長いベックマンが制した。彼は普段こそ気のいい男だが、戦闘が盛り上がるとその限りでない。そうなれば例え副船長であるベックマンの声でも聞く耳を持たない、それをわかりきっているからこそ彼は静観を保っているのだ。

 

「ふ、副船長!大変だ!沖に海賊船が……!」

 

「……?……ここは海賊島なんだ、海賊船くらい…………!?」

 

 来るだろう、と続けようとするがそこでベックマンは口を噤む。島の外から感じる気配を覇気で感じ取ったからだ。幹部達も同様の気配を感じたのか冷や汗を流す。

 

「……どこの船だ?」

 

「お、恐らく……“千両道化のバギー”かと……!」

 

「……!!?……確か……お頭と同じ船に乗っていた男か……」

 

 その名前を聞いてヤソップら殆どのバギーと面識のない面々は驚きの声を漏らした。そしてこの場で唯一バギー海賊団を知っているベックマンは昔の彼らと今島に上陸したであろう海賊達の気配の違いを感じ取り、ニヤリと口元を緩ませた。どうやら成長しているのはこちらだけではないようだと思い、銃を手に取る。

 

「ぎゃあああ〜〜〜!!?」

 

「……!!……もう始めやがったか……野郎共、戦闘準備だ!お頭達の元へ行かせるな!」

 

『ウォォォォォ!!!』

 

 港の方から聞こえる部下達の悲鳴と上陸した者達の気配を感じベックマンが指示を出す。

 

「……ちっ、好き勝手やってくれるじゃねェか……!」

 

「これはおれ達が出なきゃやばいかもな」

 

「……ん?……ありゃあ……?」

 

「……!!あいつか……!」

 

 ライムジュースやボンク・パンチ、ホンゴウらその他の幹部達も襲撃者を迎え撃つ為に武器を取る。だが宙から飛来する影を発見しそちらを凝視した。

 

「やっほ〜〜!!ベックマン久しぶり!!」

 

「やはりお前か……!狩魔女……いや、今は“宵魔女”か!」

 

「副船長!!」

 

「なんだァ!?空から女の子が!!」

 

 幹部達の間に割り込み、ベックマンに短剣で攻撃した少年。武装硬化した銃で受け止めた彼を不敵な笑みで見つめ、続け様に技を繰り出した。

 

紋舞乱(モンブラン)!!!」

 

「!!!」

 

 ミズキが繰り出した衝撃波がベックマンを吹き飛ばし、少なくないダメージを与える。だが彼はすぐに立ち上がり、鋭くミズキを睨みつけた。

 

「……随分と腕を上げたようだな……しかし十年近く経ってるっていうのに全然変わってねェな。……いや、雰囲気は少し変わったか?」

 

「可愛くなったって言ってよ!でも強くなったのはそっちも同じみたいだね!」

 

 武装色の覇気が込められた弾丸を弾きながらベックマンに接近する。しかし彼の放った物とは別の銃弾がミズキの頬を掠め、傷口から薄く血が流れ出た。

 

「ボクの顔に傷をつけるなんて!?ヤソップだったよね?可愛い子には優しくしろって教わらなかった?」

 

「へ、勿論女の子にゃあ優しくするが……男を愛でる趣味はないんでな」

 

 ミズキに銃口を向け不敵に笑うのは赤髪海賊団の狙撃手であるヤソップ。追撃者の異名を持ち、狙撃には絶対の自信を誇る男だ。

 

「そっちこそこんなところで海賊やってないで故郷に帰ったら?鼻の長い奥さんと子供が待ってるよ」

 

「……!?てめェ……なんで知ってやがる!!」

 

「あはははは♪」

 

 ヤソップの銃弾を自在に飛びながら回避するミズキ。彼程の狙撃手であっても、自身と同等以上の見聞色の覇気を用いて空中を動き回る相手に当てるのは難しい。だがそれでも、彼の銃口は狙った獲物は外さなかった。

 

「痛!!……やってくれるじゃん!」

 

「生憎と狙った獲物は外さねェんでな」

 

 一撃当たった程度ではミズキに大したダメージを与えることはできない。しかしそれが隙となり二撃、三撃と畳み掛けることができれば致命傷になるだろう。だがそれは、この場の敵がミズキ一人ならばだろう。

 

「エレクトロ!!!」

 

「……!!?」

 

 見聞色の覇気でその攻撃を察知し咄嗟に後退し回避する。そして自分を攻撃した相手と相対し、鋭く睨みつけた。手配書で見た事のある顔と名前を呟き、その相手を見据える。

 

「……“森の中のアップル”……可愛らしいネーミングだが、やってることはえげつねェな」

 

「ミズキ!このおじさんは私がやるわ!中々強そうだしね!」

 

「おっけ〜。それじゃあ任せたよ!」

 

 ヤソップの記憶にも残るほどの海賊。バギー海賊団の幹部であり、億超えの賞金首のアップルが彼に立ち塞がる。そして別の場所でも、戦いの火蓋が切られようとしていた。

 

「……堕ちた海軍将校“桃兎”か、お頭のとこには行かせねェぞ」

 

「あんたはライムジュースだね……堕ちた、か……腐ってるのは政府の方だと思うけどね」

 

「はっ、違いねェ……」

 

 サングラスに帽子を被っている男、赤髪海賊団幹部のライムジュースと向き合うのはバギー海賊団幹部であるギオン。互いに軽口を叩きつつも相手を強者と認め、油断することなく睨み合っている。

 そして──

 

「ここは通してもらう!……肉!」

 

「人を食べ物の名前で呼ぶんじゃねェ!」

 

 戦闘中でもお構い無しに骨付き肉を頬張る巨漢、ラッキー・ルウと対面するのはヤマト。ルウは肉を、ヤマトは金棒をそれぞれ相手に突きつけて威圧する。体格差は歴然だが、覇王色の素質を持つヤマトの気迫はルウにも決して劣らない。

 

「そこをどいてくれ!!僕は“赤髪のシャンクス”におでんの武勇伝を聞いて……おでんに近づくんだ!!」

 

「何言ってやがんだ!!おでんより肉の方が美味いだろ!!」

 

「……あの二人、話が噛み合ってないぞ」

 

 ヤマトの金棒とルウの拳が激突する。お互いに高レベルな武装色の覇気を纏わせた攻撃で空気が揺れ、周囲にいた実力のない者は吹き飛ばされた。

 

「ッッ……!!雷鳴八卦(らいめいはっけ)!!!

 

「……!!?」

 

 ヤマト渾身のスイングがルウを吹き飛ばす。それは確かなダメージとなり彼に相当な苦痛を与えるが、それでも戦闘不能に追い込むには些か足りなかった。頭を押さえながらも立ち上がるルウを見据え、ヤマトは金棒を握り直した。

 ──また別の場所では

 

「曲技……火事場の馬鹿力!!!」

 

「……てめェ……炎を……!!」

 

「ふふ、野生にはこれが一番効くだろう?」

 

 一輪車に跨りながら炎を纏わせた剣を振るうカバジ。それを回避し怒りを顕にしているのは赤髪海賊団幹部のボンク・パンチと肩に乗せた相棒である猿のモンスターだ。

 

「戦いにペットを連れてくるんじゃねェよ……ふざけた野郎だ」

 

「一輪車野郎に言われたかねェ!モンスターを舐めてると痛い目見るぜ?」

 

 互いに戦場にはおよそ似合わない珍妙な身なりだが、その戦意は本物。睨みをきかせ、相手に殺意を向ける。そしてカバジの刀とボンク・パンチの拳が激突した。

 一方その頃──

 

「もう!いい加減にしてよね!」

 

「ふ、お頭の邪魔をさせる訳にはいかないからな」

 

 シャンクスと鷹の目の元へ向かおうとするミズキだが、ベックマンの足止めをくらい動けないでいた。いくらミズキだろうと赤髪海賊団の中でもシャンクスと同等に近い実力を持つベックマンを振り切るのは容易ではない。そろそろバギーがシャンクスと鷹の目のところにたどり着く頃だろう。それまでに彼を振り切らなければならない。

 

「ならこれで……どう!!」

 

「!!姿が変わった……!?」

 

 人獣型に変身し、急加速。そのままの勢いでベックマンの腹を武装色の覇気を纏わせた拳で強打する。鈍い音を立て彼は激しく吹き飛ばされた。だが意識を失う程ではない、すぐさま体勢を立て直しミズキに向かって銃弾を連射する。

 それを武装硬化させた拳や足で弾くが、やはり中々先に進ませてはくれない。

 だが次の瞬間、ベックマンの視界に何かが映りこんだ。

 

死幻爆(グリムバン)!!!」

 

「!!!」

 

 爆発をモロにくらい、吐血し吹き飛ばされる。攻撃が来た方向に目をやると、黒い翼を持ち、背中に燃え盛る炎を宿す少女がこちらを睨みつけていた。

 

「ミズキお兄様、ここは私に任せて先にお進みください」

 

「ありがとうルナリア、じゃあ任せるね!」

 

「!?……待ちやがれ!!」

 

 背中を向け飛び去ろうとするミズキに銃口を向け弾丸を撃ち込むが、射線上に素早くルナリアが割り込みそれを阻止する。

 

「……!?」

 

「あなたの相手は私です」

 

「……どうやら無視できる相手じゃなさそうだな」

 

 ルナリアの強さを感じ取り、それを認めてベックマンはため息を漏らす。少なくとも目の前の少女を相手取りつつミズキを追うのは不可能だと考え、ルナリアを倒すことに集中する。

 

「……悪いが加減はできない、後悔するなよ?」

 

「それはこちらのセリフです」

 

 ルナリアに銃口を向けて威圧する。それに対しルナリアは身体を雪に変化させ、そして炎を拳に纏わせた。そして互いに相手を見据え、鋭い眼光をぶつけるのだった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 シャンクスと鷹の目の実力は互いに拮抗し、ほぼ互角と言ったところだ。何年も前から決闘を繰り返してきた間柄、相手の癖や弱点も知り尽くしている。故に勝負は中々つかず、これまでは引き分けで終わったのだ。

 

「貴様の仲間達も随分と楽しんでいるようだな赤髪……貴様は祭りに参加しなくていいのか?」

 

「あっちも楽しそうだけどな……まずはお前との決着をつけるのが先だろう?」

 

「ふ、ならば終わりにしよう」

 

 剣をぶつけ合い、その衝撃で両者共に後退した。そして剣を握る手により一層の力を込めた。次の一撃で終わらせる、言葉にせずとも認識し渾身の技を放とうとした瞬間だった。

 

「……!?……来るか」

 

「……!!……ハハ」

 

 接近してくる二つの気配に気づき鷹の目は僅かに目を細め、シャンクスは薄く笑みを浮かべた。そして剣をかまえ、迫り来る敵の攻撃を受け止める。

 

「ぎゃはははは!久しぶりだなシャンクス!!」

 

「……お前は相変わらずみたいだな……バギー!!」

 

 現れたバギーが投げたナイフを防ぎ、シャンクスはナイフが飛んできた方向へと視線を向ける。同じ元ロジャー海賊団の見習いであり、幼い頃から兄弟のように育ってきた赤鼻の男が高笑いをしながら空を浮遊している。

 

「悪いが今取り込み中なんだ、後にしてくれるか?」

 

「取り込み中だァ?おれ様の島で大暴れしておいて勝手なこと言ってんじゃねェぞ!」

 

「おいおい、ここだって白ひげから奪った島なんだろ?人のこと言えないんじゃないか?」

 

「うぐっ……確かにそりゃそうだ……いやいや!それとこれとは別だろ!」

 

「……騒がしいところも変わってないな」

 

 かつてロジャー海賊団に所属していた時と同じノリで軽口を言い合う二人。そんな彼らを鋭い視線で鷹の目が見つめていた。興味の対象は長年のライバルと兄弟分だという男、“千両道化のバギー”だ。確かにある程度の強さは感じるが、それ以上に得体の知れない何かを感じさせる男に思える。

 

(……確かめてみるか)

 

 世界一と名高い実力を遺憾無く発揮し、黒刀から放たれる斬撃をバギーに目掛けて飛ばす。並の実力者では防ぐことすら敵わない一撃。それでも加減はした方だが、それでも一撃必殺の威力は持ち合わせている。

 

「あはは♪ボクもいるって忘れないでよね!嫉妬しちゃうじゃん!」

 

「!!!」

 

 しかしその斬撃がバギーに届くことはなかった。鷹の目とバギーの間に割って入ってきた影によって斬撃は弾かれ、塵となって消え去った。

 

「……バギー海賊団副船長……“宵魔女”か」

 

「初めまして、“鷹の目のミホーク”!!うちの船長は今忙しいからね!ボクと遊んでよ!」

 

 自身の攻撃を察知する見聞色、そして世界一の斬撃を防いでみせたことを鑑みて鷹の目は薄く笑みを浮かべた。赤髪との戦闘を妨害されたのは癪ではあるが、強者との戦いは彼も望むものだ。目の前の相手を認め鷹の目は強き者との戦いに身を投じることを選んだ。

 

 そして鷹の目の邪魔が入らなくなったバギーとシャンクスもまた、戦闘を始めようとしていた。

 

「覚えてるか?リトルガーデンで別れた時の約束を……」

 

「約束?んなもんとっくに忘れちまったよ!」

 

「そうか……じゃあ勝負はおれの勝ちだな。次会った時にどっちが名を上げてるかって話だったが……」

 

「うん?……ああそうね、そういやそんなこと言ったなァ……だがそれならおれの勝ちだろ!」

 

「いやいやどう考えてもおれの方が上だろ、懸賞金だっておれの方が高いし」

 

「懸賞金の額だけで決まるもんじゃねェだろ!マリージョア襲撃事件を知らねェのか!?起こした事件の大きさならおれ様の勝ちだ!」

 

「……そうか……どうやら互いに譲る気はないらしい……なら、ここで決着をつけるか!」

 

「いいだろう!だがおれ様に剣が効かねェのはてめェも知ってるはずだ!つまり……勝つのはおれ様だ!」

 

 シャンクスがグリフォンを構え、バギーを威圧する。それに一瞬怯んだもののバギーもナイフを掴み迎撃体勢をとる。そしてシャンクスが鋭く剣を振り下ろし、バギーがナイフで受け止める。

 

 その瞬間、そこを中心に黒い稲妻のような衝撃が大地を駆け抜けた。覇王色の衝突、王の素質を持つ者のみが扱える覇気を撒き散らしながら、両船長が激突した。

 




赤髪海賊団はそろそろ原作でも戦ってくれ……まじでどんな戦闘をするのかわからないから書きようがないんじゃ!
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