転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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海賊の世界

「どぅわぁぁぁぁ!!どうすんだよこの状況!!」

 

「…………」

 

 叫び声を上げ一目散に走るバギー、対して隣のミズキは特に表情を変えることなくただ淡々と走っている。それを追うのはこの支部に駐屯していた海兵約100人余り、追いつかれれば戦闘は必然だ。

 しかしバギーも見習いとはいえ元ロジャー海賊団、海軍の雑兵……それも最弱の海の兵士であれば十分戦えるはずだ。ミズキも身体能力は一般人と変わらないとはいえ東の海(イーストブルー)では殆ど見かけることの無い悪魔の実の能力者。つまり二人とも戦えば勝ちの目はあるのだ。

 だが二人は逃走を選んだ。ここは敵の本拠地、倒したところでまた次の敵が現れるだけ、彼らはそれを理解していた。

 故に最もリスクが低いであろう手段を用いたのだ。

 しかし現実はそう簡単にはいかない、彼らの進路の先に別の海兵の集団が現れ、彼らを包囲する。

 逃げ場のない廊下のど真ん中で挟み撃ちにされた二人は足を止めた。

 

「ちくしょう……!囲まれちまった!これじゃあ逃げ場がねぇじゃねぇか!」

 

「戦うしかないんじゃない?」

 

「もうそれしかねぇのか……しょうがねぇ、やったろうじゃねぇか!!ド派手作戦に変更だ!!行くぜぇぇ!!」

 

 そう宣言したバギーが懐に隠し持っていたナイフを取り出す。そして上半身を分離させると海兵に向かって突撃した。

 

「なんだ!?身体が真っ二つに!?」

 

「どうなってる!?手品か!?」

 

 その現象を理解できない海兵達は戸惑い驚く。もちろんそれはバラバラの実の能力によるものだがこの東の海では悪魔の実自体が噂で囁かれている程度の認知度。故に誰もバギーが悪魔の実の能力者であるという発想に辿り着かないのだ。

 

 動けない海兵達にバギーがナイフを突き立て切り裂いていく。

 基地内に海兵達の悲鳴が響き渡る。

 同時に海兵達は騒然とした。

 ただの少年としか思っていなかった相手が高い戦闘能力を持っているとわかったからだ。

 

「くらいやがれ!!バラバラ砲!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 さらに分離された腕を大砲のように飛ばし海兵を薙ぎ倒す。能力者になった当初は自由に身体をバラすことができなかったバギーだが、訓練によってある程度自分の意思で分裂することができるようになっていた。悪魔の実の能力は鍛えようによっていくらでも強くなっていく。特に超人系(パラミシア)は応用が効きやすく能力者本人の練度と発想力が大きく反映される。

 

炎弾・乱射(フレイム・バレット)!!」

 

「な、なんだ!?炎!?ぎゃぁぁぁぁ!?」

 

「こいつもか!?どうなってる!?」

 

 バギーと背中合わせで立ち反対側の海兵を蹴散らす。ミズキは既に自らの能力を昇華させ火の玉を連射させていた。いつの間にか技名なんてつけてやがるとバギーは心の中で呆れるがミズキはそんなの気にしないと言わんばかりに黙々と海兵達を倒していく。

 

雷撃・襲撃(サンダー・アサルト)!!」

 

「今度は雷!?魔法使いか!?」

 

 今度は電撃が海兵達を襲い、次々と感電させていく。攻撃の範囲外にいた事で難を逃れた者達もその異様な光景に固唾を飲む。この二人は自分達の手に余る化け物、それを理解した者はその場から動くことができなかった。

 既に半分程の海兵は戦闘不能に追い込まれていた。このままでは敗北は目に見えている。そんな時、海兵達にとって救世主とも言える男が現れた。

 

「ほぅ……やはり仲間がいたか。しかも二人とも悪魔の実の能力者だったとは」

 

 先程までミズキを問い詰めていた准将の男、彼が現れると同時に海兵達は歓喜した。この基地内最強の男が戦線に加わったからだ。

 

「随分部下を倒してくれたな……子供だからといってもう容赦はできないぞ」

 

 そう言って腰の鞘から剣を取り出す。その雰囲気から只者ではないとバギーとミズキは感じ取った。

 海軍支部に所属する者の階級は本部所属より3ランクほど下がると言われている。つまりこの男の階級は本部少佐相当、今の自分達では2人がかりでも勝てる相手ではない。

 故にバギーはすぐに逃走を選択した。

 幸い海兵の数は減っている、潜り抜けて逃げるのはわけないはずだ。だが

 

「逃がすか!!剃!!」

 

 その一瞬で男の姿が消えた。そして次の瞬間には10mは離れていたであろうバギーに鋭い斬撃を与えていた。

 その痛みに悶えバギーは倒れ込む。

 

「野郎……六式を使うのか」

 

「…!六式を知っているとは……やはりただの子供ではないようだな」

 

 主に世界政府直属の諜報機関、CP(サイファーポール)が使う体術『六式』

 海軍の大佐クラス以上の猛者の中にも習得している者はいるがこの東の海では殆どお目にはかかれないものだ。

 バギーがロジャー海賊団に所属していた時に交戦した海兵にも使用者はいた。そして彼らは例外なく実力者であった。

 

「……海賊とはいえこれ以上君達のような子供を傷つけるのは私の本意ではない。大人しく捕まってくれると有難いのだがね」

 

 攻撃を受け倒れるバギー、そして目の前で戦闘体勢をとるミズキを見つめ彼は訴えかける。

 先程容赦できないとは言ったものの彼も正義感の強さ故に海軍に入った善人である、子供を傷つけるのに何も感じない訳では無い。

 できればこのまま降参してくれ、そんな願いを込めた言葉であったがミズキが出した答えは彼の望むものとは正反対だった。

 

「……嫌だね」

 

 そう答えた瞬間、彼の手のひらから雷が飛び出し准将を襲った。

 完全な不意打ち。並の相手なら当たっていたであろうその雷は地面に着弾し黒く焦がした。

 ──消えた?

 考えた次の瞬間には腹部に強烈な痛みが襲ってきた。たまらず吹き飛び壁に激突し地面に崩れる。

 

「残念だ、……仕方あるまい。少しばかり手荒になるが許してくれよ?」

 

 その一瞬で刀を抜き攻撃した彼はもう容赦はしていられないと苦言を呈す。

 痛みが残る腹部を押さえたミズキだがそこで違和感を感じた。一滴たりとも血が出ていないのだ。

 それもそのはず、ミズキを振り飛ばしたのは斬撃ではなく峰打ちによる打撃だったからだ。

 どこまでも甘い男だ。ミズキはそう吐き捨てるが一般的に見ればこれが正常なのだろう。いくら海賊でもまだ成人もしていないか弱い少女──―実際は少年だが、をなんの躊躇もなく切り捨てる方がイカれている。

 それならば自分はもう正常な思考をしていないのだろう。目の前の相手を甘いなどと思っているのが何よりの証拠だ。

 ならば後戻りはできない、そう覚悟したミズキは口元を緩ませ不気味な微笑を浮かべる。

 

「……?なにがおかしい?」

 

「ホント、ロクな人間じゃないよね………ボクも……()()()

 

「……!?…ガハッッッ!?」

 

 瞬間、胸に強烈な痛みを覚え吐血する。振り向くとそこには自分が斬り捨てたはずの少年が強烈な笑みを浮かべていた。

 

「ぎゃははは!!残念だったな、俺は斬っても斬れないバラバラ人間!!刀なんざァ俺には効かねえのさ!!」

 

 バギーが胸に刺したナイフを抜くと准将は力無く地面に倒れ込んだ。心臓を一突き、普通の人間なら即死だがまだ息があるだけさすが将校と言ったところか。

 

「ちょっと卑怯なんじゃない?」

 

「バカが!海賊の世界に卑怯なんて言葉は存在しねぇ!どんな手を使っても勝ちゃいいんだよ!」

 

「……逆の立場だったら絶対騒ぎ立てる癖に」

 

 今しがた人一人を刺したというのに談笑を始める二人に准将は寒気を感じた。この子供は普通ではないと今更気づく。

 本来なら部下を倒された時点で本気でやるべきだっただろうに、自分の甘さと油断でこの状況を招いてしまった。

 このままでは残った部下も殺されてしまうだろう。ならばこの事態の責任は自分で取らなければ。例え道連れになったとしてもこの悪童達を仕留める。

 

「……な!?まだ立つのかよ!?」

 

「…………」

 

 決意した准将は最期の力を振り絞りフラフラと立ち上がる。そして刀を持つとそれを振り上げ宣言してみせた。

 

「お前達が悪党なのはよくわかった!ならばここで!例えこの命尽き果てようとも必ずお前達を──―」

 

 だがその言葉を最後まで聞けた者はいない。何故なら言い終わる前に火の玉が彼の心臓を貫いたから。身体に大きな風穴が空いた彼は白目を剥きその場に崩れ落ちた。

 

「……うるさい、そろそろ黙って」

 

「おお……お前も案外容赦ねぇな。さすがに今のはビビったぜ」

 

 その行動に少し引いたバギーだがミズキから言わせれば目の前の赤鼻も大差ない。不意打ちしたのには変わらないのだから。

 

「じゅ、准将殿が……」

 

「クソ!化け物共め!」

 

 残った海兵達は准将の死を嘆いた。が、一部のものは武器を取りかたきを討とうと二人に立ち向かっていく。それを見た他の海兵も同様に奮い立った。

 それを見たミズキはやれやれと鬱陶しそうに溜息をつくと雷でそれを殲滅した。回避した海兵もバギーのバラバラの能力とナイフの合わせ技で倒されていき、ついに基地内に戦えるものはいなくなった。

 

「ぎゃはははは!海兵ってのも案外大したことねぇな!それとも俺達が強すぎるのか?……お!これも価値がありそうだ!」

 

「調子に乗ってると足元をすくわれるよ?」

 

 食料や生活必需品、後はちゃっかり金目の物も奪おうとするバギーに呆れるミズキ。二人は港に停泊してあった軍艦を1隻いただきそこに荷物を詰め込んでいた。

 

「いや〜しかし食料問題が解決した上に船も金も手に入るとは俺達はツイてるぜ!なあ?俺ら結構ナイスコンビなんじゃねえか?」

 

「はいはい、そうだね」

 

「なんだ、ノリの悪い女……いや野郎か、ややこしいぜまったく」

 

 未だにミズキの容姿に慣れないバギーが苦言を漏らす。自分が可愛いのはわかっているが男なのは事実なのだからいい加減慣れて欲しいとミズキは思うがその時はまだ遠そうである。

 

「それで次の目的は決まってるの?」

 

「んん?そうだな……やっぱり海賊やるからには海賊船が欲しいな。この軍艦もいいが箔が付かねぇ」

 

「じゃあどこかの街で買うか作ってもらう?」

 

「そうだな、金はたんまりあるからでっけぇのが作れるぞ!ぎゃははは!」

 

 一人大はしゃぎしてあれやこれやと船の構想を練っているバギー。それを眺めてミズキは呆れ果てる。海軍の支部を落とした、この意味がわからないほど彼は馬鹿ではない。

 いくらここが最弱の海の東の海(イーストブルー)とはいえ海軍は海軍、そこの支部が落とされたとなれば黙ってはいないだろう。

 面倒なことになりそうだなぁ、と目の前でバカ騒ぎする赤鼻の船長を見据えて思うのだった。

 

ミズキの悪魔の実

  • 超人系マジョマジョの実
  • 動物系幻獣種ヒトヒトの実モデル魔女
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