転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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ホールケーキアイランド

『そうか……ガイモンの奴が』

 

「うん……ヤマトを庇ってそのまま……」

 

『ちくしょう、天竜人め……! おれ様達が留守にしてる間にハデに好き勝手やりやがって!』

 

 結果として、死者はガイモン一人であった。ヤマトが大暴れして海兵を皆殺しにしたのもあるが、ガイモンが非戦闘員や実力の低い者を予め避難させておいたのが大きいだろう。

 ミズキは電伝虫で事の大筋をバギーに説明していた。

 

「それ以外に被害は特にないけど……やっぱりみんなショックみたいだね」

 

『……あいつは誰にでも慕われる奴だったからな』

 

 ガイモンはその人柄も相まって部下や島民から慕われていた。バギーやミズキとは十年近く共に過ごした古株でもある。故にバギーも珍しく真面目な様子でミズキの報告を聞いていた。

 

「本当なら海軍と天竜人にはきっちりお礼したいところだけど、今はまだ……」

 

『ああ、今のおれらじゃあ海軍の相手は出来ねェ』

 

 本来ならば幹部を殺されて黙っている訳にはいかない。海軍本部に攻め込んで報復をしなければならないだろう。だが今の自分達では戦力が足りない。海軍大将三名に中将が十名以上、加えて“仏のセンゴク”“黒腕のゼファー”その他にも名だたる将校達の全てを相手に出来る程バギー海賊団の戦力は多くない。例えばミズキが大将一人と戦ったとすれば互角、条件次第では勝てるかもしれないがそれではダメなのだ。組織としての規模は未だ海軍本部、そして四皇には遠く及ばない。

 

「そっちはどう? 出来ればすぐに戻ってきてもらいたいんだけど」

 

『もう片付いた。今戻ってる最中だ』

 

 2日後、バギーを始めとした主力メンバーが帰還しガイモンの葬儀が行われた。島の一角に墓が建てられ、そこにガイモンの遺体と共に真っ二つになった宝箱が埋められた。彼の愛用していた銃も一緒に埋めることになっていたがヤマトの要望により彼女に預けられることになった。ヤマトに使ってもらった方がガイモンも喜ぶだろう。

 

「惜しい男を亡くしたガネ……」

 

 ギャルディーノはメガネを外し、目を押さえて涙を堪えていた。バギーやミズキを除けば彼が一番ガイモンとの付き合いが長かった。常識人枠として気の合うことも多かっただろう、その分悲しみも大きいはずだ。

 しかし意外にも、幹部で涙を流したのは彼だけだった。当然部下の中には号泣する者も多くいたが、幹部以上のメンバーではギャルディーノだけなのだ。悲しみが無い訳ではない、ただ理解しているだけだ。海賊なのだから仲間が死ぬのは覚悟の上、自分達も多数の命を奪っているのだから仲間の死に泣く資格などないのだ。

 その代わりに各々が抱くのは決意。彼の死が無駄にならないように各自が更に力をつけようと誓うのだった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 ──新世界のとある海上。

 

「本当に私とお兄様の二人だけでよろしかったのですか?」

 

「うん、あんまり引き連れていくとすぐにバレちゃうからね」

 

 海上を飛ぶ二つの影。一つは魔法使いのように箒にまたがって飛ぶミズキ。もう一つは背中の羽で飛行するルナリアだ。

 

「しかし四皇の本拠地に乗り込むには些か戦力不足だと思うのですが……」

 

「まァ今回は潜入して貰う物を貰うだけだから、少数精鋭の方がいいと思うんだよね。幹部くらいならボクとルナリアでなんとかなるし。やっぱり先人の知恵は大切にしないとね」

 

 でもビッグ・マムが出てきたらやばいかも、とミズキは笑って見せた。その言葉にルナリアは一応は納得したようだ。しかし四皇のナワバリに二人だけというのは心もとないという考えは変わりない。

 

「……今日は箒で飛んでいるのですね。戦闘の時はそのまま飛んでいますが」

 

「移動の時はこっちの方が楽なんだよね。戦う時は箒が邪魔だからそのまま飛ぶけど、それ以外の時は箒の方がいいかな」

 

 ミズキの能力は飛ぶ際に箒があろうがなかろうが関係ないが、邪魔になる戦闘時以外は箒にまたがった方が楽なのだ。体力の消耗を抑えることができ、何より座った姿勢の方が楽なのは言うまでもない。

 

「それにしても、ロード歴史の本文(ポーネグリフ)の一つがビッグ・マム海賊団の手にあることをよくご存知でしたね。業界でも情報力のある海賊団と有名ですが」

 

「う〜ん、まァそんな重要な物なら四皇が持ってても不思議じゃないでしょ? なんと言っても海賊王ヘの道標なんだから」

 

 ロード歴史の本文。偉大なる航路(グランドライン)最後の島、ラフテルの場所を示す赤い石のことだ。四つ集めることでラフテルの位置がわかるようになるが、未だそれを集めきったのは海賊王ロジャーただ一人である。

 

「ということは他の石の在り処もご存知なのですか?」

 

「一つはカイドウのところでしょ? それはもう写しを手に入れてあるからいいとして、ビッグ・マムのところにあるのが一つ、ミンク族の住んでる“ゾウ”にあるのが一つ、最後の一つがわからないんだよね」

 

 指を折り曲げながら数えていく。数年前に百獣海賊団の本拠地である鬼ヶ島から奪ってきた写しがバギー海賊団が所有する唯一の赤い石だ。他にはビッグ・マム海賊団が所有する物とミンク族のモコモ公国にある物は在り処がわかっている。

 

「バギーがロジャー海賊団にいた頃は最後の一つは魚人島にあったみたいだけど……ボクらが通る時にはすでに無くなってたんだよね」

 

「誰かが移動させた……あるいは持ち帰ったということですか?」

 

「多分ね。可能性があるとすれば白ひげか……もしくは世界政府かな。まァ魚人島にある時点で政府の可能性は薄いと思うけど」

 

 大海賊時代以来、魚人島は白ひげのナワバリになっている。白ひげが所有していると考えるのが普通だ。しかし彼は海賊王の座に興味が無いらしく、態々石を回収するのか? という疑問も残る。政府が所有しているという線にしても魚人島が白ひげのナワバリである以上考えづらい。

 

「ま、考えても仕方の無いことだし今はビッグ・マムの方の石に集中だよ! ガイモンの為にもね!」

 

「ええ、もちろんです」

 

 そう言ったミズキの視線の先に彼らが飛ぶ空の下の海に浮かぶ米粒程に見える島を見つけ、ルナリアは僅かに顔を強ばらせた。それこそがビッグ・マム海賊団が拠点とする“万国(トットランド)”その一角に位置するカカオ島だからだ。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「美味しい〜〜♡噂通りビッグ・マムのところのお菓子は格別だね!」

 

 カカオ島のショコラタウンのスイーツ店にて、チョコを基調としたパフェを頬張りミズキは舌鼓を打つ。変装の為に購入した眼鏡をかけ、普段はポニーテールにしている髪を下ろしている。

 

「あれ? ルナリア食べないの? さっきからこっちをじっと見てるけど……それに胸を押えて……もしかして体調悪い?」

 

「いえ……お兄様の眼鏡姿があまりに美しくて……心臓が止まるかと」

 

「え〜〜わかってるじゃん! さっすがルナリア! このこの!」

 

 こちらも眼鏡をかけて変装しているルナリアの頬を、ミズキはテーブルに身を乗り出してからかうようにつつく。するとルナリアはどんどん顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「お、お兄様……あんまり目立つことをするとバレてしまうのでは……?」

 

「変装してるから大丈夫でしょ! それにそんなに目立ってないと思うけどな、レストランとかで食事してる人って案外周りのことは見てないものだよ」

 

「いえ……お兄様は十分目立つかと……」

 

 ミズキは目立ってないつもりだが、ルナリアからすれば変装したとはいえその魅力は全く隠せていない。バギー海賊団の副船長“宵魔女”だとすぐにバレることはないにせよ、目立たないに越したことはないのだ。

 

「失礼します。こちらホワイトタウンの生クリームを使用した生チョコタルトでございます」

 

「……注文していませんが?」

 

「いえいえ、こちらサービスでございます。可愛らしいお嬢様方をおもてなしするのは紳士の嗜みですので」

 

「ラッキー♪ ありがと!」

 

 ミズキは高級そうな黒いスーツを身に纏った店員からスイーツを受け取り、それを頬張る。ルナリアもゆっくりとそれを口に運ぶが、ふと視線を感じて周囲を見渡した。

 

「お、おい……あの子達可愛くねェか? お前声かけてみろよ」

 

「行っちまうか? ……でもよく見たらどっかで見たことあるような……?」

 

(……思ったより目立ってしまっているようですね。さすがお兄様……)

 

 周囲のテーブルに座っていた客のほとんどがミズキとルナリアの方に視線を向けていた。直接まじまじと見つめてくる者は少ない、横目にちらちらとこちらに視線を向けてくる者がほとんどだ。

 

「おい、そろそろじゃねェか? クラッカー様の結婚式!」

 

「もうそんな時間か……相手は確か南の海(サウスブルー)で有名なマフィアの令嬢だったか?」

 

「すげェ美人だって評判なんだとよ!」

 

「……店の外が騒がしいですね……なにかお祭りでもやっているのでしょうか?」

 

 店の外に視線をやったルナリアは、住民達が異様に盛り上がっていることに気がついた。そのことを疑問に思いミズキに問いかけるが、彼はスイーツに夢中だ。

 

「今日はビッグ・マム海賊団スイート3将星“千手のクラッカー”様の結婚式なのですよ。ビスケット島のビスケット大臣で我々住民も彼を慕っているのです」

 

「なるほど、だからあんなに盛り上がっているのですね」

 

 先程の店員がルナリアの疑問を聞き、親切に説明してくれた。それを聞いてルナリアは納得したように相槌を打つ。住民に慕われている大臣の結婚式ならばあれだけ盛り上がるのも必然だと。

 

「──チャンスだね」

 

「……!」

 

 いつの間にか頬張っていたスイーツを飲み込んでいたミズキが眼鏡をクイッと上げながらにんまりと笑った。

 

「ビッグ・マムの息子……それも将星となれば大規模な結婚式とお茶会が開かれる…………幹部は大半出席するはずだからその隙に石をいただいちゃおう」

 

「確かに……これほど千載一遇の好機は中々来ないでしょう」

 

「そうと決まったらバレない内に行くよ! ホールケーキアイランドに!」

 

 勘定を済ませてミズキとルナリアは店を出ていく。人目につかない浜辺へと場所を移しホールケーキアイランドに向けて飛び去った。

 変装は完璧だ。手配書を見たことのある者でもわかりえないだろう。だが仮にミズキの大ファンがその場にいたとしたらどうだろうか? 普通ならそんなこと考えなくてもいいだろうが、ミズキの知名度と陰の人気はそのレベルまで到達していたのだ。

 そしてスイーツ店の窓から彼らを覗き見る存在に、気づいていなかった。

 

「おい見ろよモンドールの兄貴! 本物の“宵魔女ミズキ”だ! おれ大ファンなんだよ!」

 

「……確かに変装してるが手配書の顔に似てるな。だが聞いた話だと“宵魔女”なんて呼ばれてるが男なんだろ? スナック、お前そういう趣味があったのか?」

 

「馬鹿野郎! むしろ男だからいいんだろうが! ついてる分得じゃねェか!」

 

「何言ってんだお前! というかあの一緒にいる女……ルナーリア族じゃねェか? “宵魔女”よりそっちの方が重要だろう」

 

「可愛いなァ……頼んだらサインくれねェかな……?」

 

「聞いてんのか!!」

 

 団子のような髪型に櫛が刺さっている巨漢の男と、ピエロのような顔をした細身な男。一見すると正反対な見た目の彼らだがれっきとした兄弟、それもビッグ・マムの息子達であり海賊団の幹部でもある。

 

 

ビッグ・マム海賊団幹部シャーロット家25男“シャーロット・スナック”懸賞金4億ベリー

 

 

ビッグ・マム海賊団幹部シャーロット家19男“シャーロット・モンドール”懸賞金1億ベリー

 

 

「早くママに報告しねェと……万が一クラッカーの兄貴の結婚式を邪魔されたら……ママの怒りは止まらねェぞ」

 

 冷や汗を流してそう呟くモンドール。兄弟達の中でも頭脳派でありまとめ役になることも珍しくない。

 

「眼鏡姿もよく似合ってるなァ……手配書も可愛いがこっちもこっちで……クソ、カメラ持ってくればよかった」

 

「おい、いい加減にしろよお前!!」

 

 ミズキに見惚れてモンドールの話など全く耳に入っていない様子のスナックの頭にキツいツッコミを入れる。十六歳ながらその戦闘力を認められ将星入りも検討されている彼だが、色恋沙汰には弱いようだ。

 

「とにかく、急いでホールケーキアイランドに戻るぞ! 兄貴の結婚式も近い、こんなところで油売ってる時間はねェ!」

 

「ちょ……ちょっと待ってくれ! 写真が撮れねェならせめてもう少し目に焼き付けて……」

 

「うるせェ!! 行くぞ!!」

 

 ごねるスナックを無理やり引っ張りその場を後にする。いくら実力者の彼といえど、兄には逆らえないのだ。だが、そんな兄ですら可愛く見えてしまう程の女王がホールケーキアイランドにはいる。海軍には生まれついてのモンスターと称される怪物中の怪物。五十人を超える数の子供達を従わせ、お菓子の国を作り上げたワンマン女王。

 

「ハ〜〜ハハハマンマママンマ!! よく来たねお前達、今日はクラッカーの晴れ舞台だ! 盛大に祝っておくれ!」

 

 

ビッグ・マム海賊団船長“ビッグ・マム”シャーロット・リンリン懸賞金38億8800万ベリー

 

 

 ビッグ・マムの住まう城、ホールケーキ(シャトー)の屋上では結婚式の準備が刻一刻と進められていた。会場は殆ど完成しており、後は開演を待つのみだ。

 

「リンリン、今日は東の海(イーストブルー)の珍しいお菓子を持ってきたのよ!」

 

「こっちは北の海(ノースブルー)の焼き菓子だ! 受け取ってくれ!」

 

「ハハハ! ありがとね、こんなに貰っておれは幸せ者さ」

 

 裏世界に名を轟かせる大物達も彼女の開く茶会には必ず出席し、珍しい菓子を土産に持ち寄る。欠席すれば報復が待っている、その恐怖から出席せざるを得ない者も多い。彼女と本当の信頼関係を築いている者はかなり限られている。

 

「ママ、大変です! モンドール様から連絡が!」

 

「……なんだい? もうじき式が始まる、あいつらも早く戻らねェと遅刻しちまうよ」

 

「それが……“宵魔女”がショコラタウンに滞在しているようでして!」

 

「“宵魔女”……ああ、“千両道化”のとこの副船長か。ハ〜ハハハ! 面白い、向こうから来てくれるとは手間が省けるねェ!」

 

「それともう一つ、なんでも“宵魔女”と一緒にいる“憎炎”はあのルナーリア族だという情報が……」

 

「……!! マンママンマ!! それは思いがけない収穫だね!」

 

「い、如何しましょうか?」

 

「まァ落ち着きな……態々乗り込んで来るとなりゃあ目的は限られてる。カタクリ!」

 

「ああ、わかっている」

 

 ビッグ・マムがその名を呼んだのはシャーロット家の中でも最高傑作と評される怪物、次男のカタクリ。3将星と呼ばれる最高幹部の中でも最強のビッグ・マム海賊団で二番目の実力者だ。

 

「歴史の本文を守りな。それと、“宵魔女”も“憎炎”も殺すんじゃないよ。生け捕りにしな」

 

「了解だ、ママ」

 

 来客の相手をしていたカタクリは立ち上がり、緩めていた拳に僅かに力を込めた。船長であるビッグ・マムが侵入者の処分に彼を指名した理由が理解出来ない程カタクリは馬鹿ではない。

 それだけ彼らの実力を高く評価している証拠だ。故にカタクリもそれ相応の覚悟を持って宝物庫へと歩みを進めた。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「……随分あっさりと潜入出来ましたね」

 

「それだけお茶会の方に人手が割かれてるってことかな? ……ううん、それにしても」

 

 ミズキとルナリアはホールケーキアイランド、ビッグ・マムの根城であるホールケーキ城に潜入していた。屋上からの賑やかな声が複数階離れているこの場所まで聞こえてくる。恐らくそろそろ式も始める頃だろう。

 だがそれにしても見張りが少なすぎる。本来ならミズキの魔法を駆使して進むつもりだったが、それすら必要ない。各階層で一回見かければいい方だった。

 

「まさか……誘導されているのでしょうか?」

 

「そうだとしても今更引き返せない……進むしかないね」

 

 既に目的の部屋の近くまで来てしまっている。今更引き返すのも危険だろう、ならば進むだけだ。

 

「あれだね……あの中に歴史の本文がある」

 

「部屋の前にも見張りがいませんね。それほど大事な物なら見張りくらいつけそうなものですが……」

 

 目的の宝物庫まで辿り着き、柱の陰に身を隠しながら様子を伺う。部屋の前にも雑兵の一人すらおらず、静まり返っていた、屋上からの騒ぎ声が聞こえてくるのみだ。

 

「……行くよ!」

 

 意を決して扉の前に飛び出し中に入ろうとしたその時だった。

 

「ルナリア!?」

 

「──ッッ!!? これは……!」

 

 白い物体が伸びてきてルナリアを拘束する。それは強力な粘着性があり、ルナリアは抜け出せない。そんなことができるのは能力者ひしめくビッグ・マム海賊団でも一人しかいない、ミズキも戦ったことのある男だ。

 

「……本当に現れたな、以前とは雰囲気が違うようだが……」

 

「そっちは全然変わってないね。シャーロット・カタクリ!」

 

 

ビッグ・マム海賊団スイート3将星“シャーロット・カタクリ”懸賞金10億5700万ベリー

 

 

 能力で餅に変化させた腕を伸ばしながら彼は現れた。背後には部下を数十人引き連れている。十年近く前、ミズキは恐竜島リトルガーデンにて彼と戦っている。その時は赤髪海賊団と共闘してなんとか撃退することが出来た。

 

「ルナリア、カタクリの餅は水気があれば抜け出せるよ」

 

「……!! なるほど」

 

 ルナリアが能力により身体を雪に変化させると、餅は粘着力を失いルナリアは拘束から抜け出すことに成功した。それに対してカタクリは特に驚く様子もなく、ミズキを睨みつけていた。

 

「おれの能力の対策は織り込み済みか……」

 

「まァね……でもちょうど良かった、君が来てくれてさ♪」

 

 眼鏡を外し投げ捨て、ミズキは口元を緩ませた。カタクリが来てくれてちょうど良かった、他の侵入者ならばこんなセリフは吐かないだろう。ビッグ・マム海賊団でもトップクラスの実力を持つ彼が来て良いことなどない。その真意をいち早く()()()で読み取り、カタクリはそれを吐き捨てた。

 

「……お前程度では不可能だ」

 

「ボクもそろそろ見たいと思ってたんだよね……未来」

 

 短剣を構えてミズキはカタクリと向き合う。見聞色の覇気の境地、未来視。そこに至る為に目の前の強敵を踏み越えていこうと。そしてその先、未だ届き得ない“四皇”すら超えてみせると意気込み、彼は戦いに身を投じるのだった。

 

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