転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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未来

 カタクリの見聞色の覇気は未来を見る程鍛えられたもの、未来を見ることが出来れば自身に迫る攻撃を回避することも容易い。たとえそれが出来ずとも対処することは出来る。つまり未来視に至った見聞色の覇気を使用出来るということは戦闘において無類のアドバンテージを得ることに等しく、故にカタクリは今まで戦闘でダメージを受けたことは数える程しかないのだ。

 

「……次は炎か、相変わらず多芸な能力だ」

 

「……!!?」

 

 図星を突かれたミズキは一瞬動きを止めたものの、攻撃の体勢は崩さずにすぐさま身体を動かした。

 

業火・神の剣(ブレイジング・エクスカリバー)!!!」

 

 ミズキは短剣“ヴァルプルギス”に強烈な炎を纏わせてカタクリを強襲する。地獄の業火かと見紛う程の炎はたとえカタクリであろうと直撃すれば大ダメージは避けられない一撃だ。しかしそれはカタクリも承知の事、彼は身体を餅に変形させて攻撃を回避する。

 

「……!? すり抜けた!!?」

 

 ミズキの攻撃がカタクリに当たらなかったのを見て、ルナリアは思わずそう驚いた。確かに傍から見ればそう思うだろう。だが彼のモチモチの実は超人(パラミシア)系、自然(ロギア)系のように攻撃を無効化することは出来ない。つまり彼の身体を攻撃がすり抜けたのは、ひとえに強すぎる見聞色の覇気の賜物だ。

 

「確かに強力だが……当たらなければどうということはない」

 

「未来視レベルの見聞色の覇気は健在……それどころか精度は上がってるね」

 

 ミズキも認めざるを得ない。彼に攻撃を当てるには同程度の見聞色の覇気を身につけるか、彼の意表を突き精神を揺さぶるしかないと。

 

「その口……もう一回見せてもらってもいいかな?」

 

「同じ過ちを繰り返すと思ったか? 悪いが二度と隙を作るつもりは無い」

 

 以前にバギーの活躍によってカタクリのコンプレックスが顕になった際には、彼は激高し集中力を欠いた。その結果見聞色の覇気が乱れ未来視が使えなくなったのだが、同じ手が通用しないことはミズキが一番わかっている。そもそもそんな単純なことで攻略出来るような男ならここまで苦戦はしていない。

 

「簡単な話だ、“憎炎”を引き渡して大人しく牢屋に入るんだな。ママは珍しい生き物は殺さずにコレクションする、お前も例外ではないだろう。…………ならばここで始末する」

 

「あのさァ……会話でも未来を見るのやめてくれる? 答えはNoだよ!」

 

 衝撃波をカタクリに浴びせようとするが、当然それも避けられる。このままでは埒が明かないとミズキが思うや否や、カタクリの反撃が飛んでくる。

 

「角……モチ!!!」

 

「……!!?」

 

 咄嗟に武装色の覇気を腕に纏わせてガードする。しかしビッグ・マム海賊団No.2の実力者の放つ一撃を受けてノーダメージとはいかない。吹っ飛ばされたミズキは城の壁を突き破り、外へと弾き飛ばされる。

 

「ここで暴れて城を破壊されては困るからな」

 

「ッッ!!」

 

「お兄様!!」

 

 カタクリの部下を相手していたルナリアがミズキを助けようと動くが、それを制止する者がいた。

 

「お前は行かせんぞ!!」

 

「……!! シャーロット・オーブン……!」

 

ビッグ・マム海賊団幹部シャーロット家4男“シャーロット・オーブン”懸賞金3億ベリー

 

 

 特徴的な髪型をした筋骨隆々な大男がルナリアの前に立ち塞がる。ビッグ・マム海賊団でも最古参に数えられるネツネツの実の能力者であるオーブンは腕を高温の武器に変え、ルナリアに迫る。

 

「そこをどいて!! 火竜爆(カリュウバン)!!! 

 

 ルナリアの腕から放出されたマグマのような性質をした龍、それはオーブンに直撃し大爆発を起こす。一発で周囲を火の海に変えてしまう程の一撃を受けたオーブンはしかし、無傷だった。

 

「炎の能力でおれにダメージを与えられると思うな!」

 

「……!!」

 

 お返しと言わんばかりに熱を帯びたオーブンの拳がルナリアを襲った。その衝撃で吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。普通の人間ならば焼け死んでしまう程の熱気だ。だがルナリアの身体には外傷は出来ない。オーブンと同じように傷一つ負っていなかった。

 しかし彼のように能力の相性ではない、彼女が傷を負わなかったのは背中に燃え盛る炎が原因だった。それこそが、ビッグ・マムの求める種族の特徴だ。

 

「ルナーリア族め……!」

 

「あなた程度の熱で私に傷をつけられるとでも? そこは通してもらいます!」

 

 ルナーリア族の特徴である発火能力に伴う耐火能力、そして炎が点っている間は殆どの攻撃を無効化する耐久力。それはオーブンの攻撃をも防ぎきってしまう程の強さだった。

 

「ふふふ、盛り上がってるわね……楽しい余興♡」

 

「3将星最強の男にどれだけ食い下がれるか見ものだネン」

 

 カタクリの攻撃によってホールケーキ城周辺の平野まで飛ばされたミズキ。それを屋上から眺めて楽しむのは“歓楽街の女王”ステューシー、“闇金王”ル・フェルド、“大手葬儀屋”ドラッグ・ピエクロら闇の世界の帝王達。ビッグ・マムに招かれた彼らは結婚式が始まるまでの時間潰しにちょうどいいと余興代わりにミズキとカタクリの戦闘を見物していた。

 

「この間おれんとこで“箱入り”の葬儀を請け負った。ここで“宵魔女”が死んでくれれば更に金が取れるな」

 

「あら、趣味が悪いわね。あんな可愛い子が死んじゃったら悲しいじゃない」

 

「そうだ! つまらねェことを言うなピエクロ! 行け“宵魔女”!」

 

 ピエクロの言葉を一蹴し、ミズキに声援を送る鳥人間。世界経済新聞社の社長である“ビッグニュース”モルガンズは興奮した様子で戦闘を写真に収めていた。

 

「あら、随分あの子の肩を持つのね?」

 

「前にバギー海賊団の記事でリンリンに大目玉を食らったのを忘れたのネン?」

 

「カタクリの勝利よりも“宵魔女”が勝った方が盛り上がるだろう! 記事も売れる!」

 

 世界経済新聞社の発行する新聞での記事の採用基準は一つ、より読者を沸かせることが出来るか、より多くの購買数を稼ぐことが出来るかだ。四皇のナワバリに侵入した海賊が幹部を撃破、このような記事は飛ぶように売れるのだ。

 

「そう、でもあなたのお気に入りは果たして勝てるのかしらね?」

 

「……!!」

 

 だがステューシーの指差す先の平野。そこで戦闘を繰り広げる二人の戦いは、終始カタクリが優勢だった。

 

「柳モチ!!!」

 

「……ぐッッ!!」

 

 無数に増やしたモチの脚から放たれる連続のかかと落とし。それを見聞色の覇気を駆使してなんとか避けるが、やはり練度は向こうが上手で全てを躱すことなど出来ず押し潰される。

 

「こ……の!!」

 

 短剣で自身を潰すモチを切り裂き、脱出する。どうやら武装色の覇気に関してはほぼ互角のようで、こちらの攻撃も当たりさえすれば通用するだろう。しかし、それが至難の技なのは言うまでもない。

 

元素衝撃(エレメントブレイク)!!!」

 

 炎、氷、雷、風、四つの属性を持つ魔法の衝撃波。それをカタクリ目掛けて放つが、これも当然かのように回避される。彼とてミズキのような戦闘スタイルの敵と戦うのは二度目のはずだ。それでもこれだけ迅速に対応出来るのは彼の戦闘センス故だろう。

 

「埒が明かないね! なら……これでどう!!」

 

「!!!」

 

 カタクリが見たのは変化していくミズキの姿。身長と髪が伸び、背中には漆黒の羽が生えていく。動物(ゾオン)系の人獣型、その変化をカタクリは見たことがなかった。十年前の戦闘ではこのような変形はしなかった。隠していたのか、それとも当時はそこまで能力を扱えていなかったのか。

 

「……少し変わったか? なんにせよ、無駄な足掻きだ」

 

「無駄な足掻きかどうか試してみる?」

 

「……その必要は無い、既に見えている」

 

 ミズキが背中の羽を羽ばたかせ上空へ舞い上がる。そうして空で短剣を構えた。武装色の覇気とミズキの能力、その二つの力を得た短剣は黒い炎を纏い燃え盛る。

 

ブラック()……!!!」

 

 急降下し自身に向かってくるミズキにカタクリは注意を向け、一瞬目を見開いたものの冷静に対処する。

 

「サントノーレ!!!」

 

「……!!?」

 

 ミズキの短剣は今まで通りカタクリの身体をすり抜け──なかった。彼が回避しようとした瞬間、ミズキは身体を捻り攻撃の軌道を変えてカタクリを追撃した。それが僅かにかすり、彼の腹から血が流れ出る。

 

「……どういうことだ」

 

 攻撃速度は確かに上がっている。恐らくミズキの人獣型は人型よりも近接戦闘に特化しているのだろうと、カタクリはミズキの覇気が上昇したことから考察する。しかし自らの見聞色の覇気を掻い潜り攻撃を当てられる程では無いはずだ。その未来は確かに見えていた。

 

「まさか……」

 

 ならば考えられる理由は一つしかない。彼としては信じ難いことだ、だが自身に攻撃を当ててきたことから認めざるを得ない。

 

(こいつ……精度は低いがおれと同じ未来を見ているのか?)

 

「キルシュトルテ!!!」

 

「……!! 角モチ!!!」

 

 武装色の覇気と魔法により極限まで強化された蹴りに反撃しながらカタクリは思考する。十年前には自分の足元にも及ばなかった相手が今、劣勢ながらも自身と戦闘を成立させている。武装色の覇気は自身に肉薄するほど、見聞色の覇気もこの戦闘中に未来視の領域に足を踏み入れようとしている。カタクリが優位に立っているのは未来視の恩恵が大きく、それ以外の要素ではミズキはカタクリに負けていない。このまま成長されればあるいは──。

 こいつはここで殺すべき相手だ。ビッグ・マムには生け捕るように言われているが、それが無理ならば息の根を止めるのもやむを得ないだろう。ともすれば、いつか母であるビッグ・マムをも脅かす存在になるかもしれない。

 故にカタクリは、実力をもう一段引き上げることを決めた。

 

「……!? 地面が餅に!?」

 

「……当然能力は覚醒している」

 

 カタクリの周囲の地面が白く変色していき、その全てが彼の支配下にある餅へと変わっていく。

 

「……感想をいちいち口にするな」

 

「……!!?」

 

 餅に変化した地面から複数の餅の塊が空中に射出され、それらは4m程の中央が空いた円の形──ドーナツ型へと変化し浮遊した。

 

「ドーナツ……!? なんで餅からドーナツになるのさ!?」

 

「いちいち口にするなと言ったはずだ……!」

 

 知識としてカタクリの能力が覚醒しており、尚且つこのような使い方をするのはわかっていた。しかし実際目の当たりにすると地面が餅に変化しそこからドーナツを作り出すというのは中々シュールであり、ミズキは驚きを隠せない。

 

「無双ドーナツ……!!」

 

 次にミズキが見たのはドーナツの穴から伸びてくる腕。当然覚醒した餅の力で作られており、カタクリの強靭な武装色の覇気を纏っていることからかなりの破壊力を有していることが見て取れる。

 

「力餅!!!」

 

「うぐ……ッッ!!」

 

 伸びてくる腕の一つを躱し、だがもう一つを回避することは出来ずに腹に強烈な拳が直撃する。武装色の覇気で防御はしているがダメージは避けられない。ミズキは吹っ飛びつつも空中で体勢を立て直し、すぐさま反撃へと転じる。

 

「……無駄だ」

 

 だがそれよりも早く、地面から餅が伸びてきてミズキを拘束しようとする。その勢いは凄まじいものがあるが、ミズキも全く対応出来ない訳ではない。二度三度餅を避けるが、四度目で捕まり手足を拘束されてしまう。

 

「焼……餅!! ……!?」

 

 動けないミズキ目掛けて腕から切り離した餅を打ち出す。武装色の覇気を纏わせたそれは空気との摩擦で発火し凄まじい威力を誇る。しかし未来を見たカタクリはその攻撃の行く末に目を見開いた。何故なら拘束されているはずのミズキの姿が消え、攻撃が空振る未来が見えたからだ。

 

転送(アポート)!!」

 

 咄嗟に周辺に転がっていた石ころと位置を入れ替え、拘束から逃れた。それを見てカタクリの疑惑は確信に変わった。やはり精度は自分には及ばないがミズキの見聞色の覇気もまた、未来視のレベルに近づきつつあることを。

 

「ハァ……ハァ……もうちょっと……もうちょっとで掴めそうなのに……!」

 

「……悠長にしている時間があるのか? ここは敵地、増援はいくらでもやってくる」

 

 カタクリの言葉の通りここはビッグ・マム海賊団の本拠地、たとえカタクリ相手に互角に立ち回れたとしても敵はいくらでも湧いて出てくる。今は結婚式を控えていることと戦っているのが信頼の厚いカタクリなので増援は来ていないが、それもいつまでかはわからない。

 しかし彼とてそのような決着は望んでいない。自身とここまで戦える相手は随分久しい、出来れば自らの手で決着をつけたいのが本音だ。

 

「……言っておくがお前の成長を待ってやるつもりはないぞ」

 

「いらないよ、一瞬だからね!」

 

 敵はビッグ・マム海賊団No.2の猛者、未来視を操る強敵だ。それでもミズキは全く怯むことなく向かっていく。強敵との戦闘で己の実力を更に伸ばすために。そしてその脳裏には、先に散ってしまった仲間の姿があった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 

「ハハハハハ! 面白い! 面白いぞ! “宵魔女”! これは本当にビッグ・ニュースになるかもしれない!」

 

「確かに……思ったより粘るわね。戦い始めてもう二時間よ」

 

 ミズキとカタクリが戦闘を始めて二時間。ホールケーキ城の屋上では既に結婚式の準備が完了しており、ビッグ・マムの子供達やゲストは揃っていていつでも式を始められる状態だった。だがカタクリとオーブンが侵入者の排除に手こずっている為に式を開始する訳にもいかず、兄弟達──それも下の方の小さな子供から不満気な声が聞こえ始めていた。そしてモルガンズとステューシー、闇世界の住民である彼らは未だミズキとカタクリの戦闘を見物していた。モルガンズの方はスクープ欲しさと興味本位な面が大きい。しかしステューシーはまた違った、別の観点からその戦いを見ていた。

 

「ん? ステューシー、どこに行くんだ?」

 

「……ちょっとお花を摘みにね」

 

「いい歳して何を隠しているネン。素直にトイレと──」

 

「死にたいみたいね」

 

 横から茶々を入れるル・フェルドの横腹を蹴り飛ばし、ステューシーは会場の外へと出ていった。そして誰も来ないであろう物陰に身を潜めると、電伝虫を取り出した。

 

『どうした? “ビッグ・マム”の方に何か動きがあったのか?』

 

「いいえ、そういう訳じゃないけれど。……今、“ビッグ・マム”のところに“宵魔女”が来てるわよ。一応報告しておこうと思って」

 

『……!! わかった……五老星の耳に入れておこう』

 

 会話はそれだけで電伝虫は静かになった。

 サイファーポール“イージス”ゼロ、それがステューシーが所属する組織の名前だ。表では歓楽街の女王として闇世界の住民達に近づき、諜報活動を行う。ビッグ・マム海賊団の調査も彼女の任務の一つだった。

 そして彼女らの上司である世界最高権力者の五老星。彼らは“宵魔女”の動向をいつも気にしていた。何らかの理由があるのだろうが、それは明らかにされておらずステューシーも噂程度でしか聞いたことがない。

 尤も、彼女らにとって任務の意味などは必要の無い情報だ。言われた仕事をこなすこと、それだけで十分で余計な思考などは不要だった。

 

「もう我慢出来ない! おれはカタクリ兄さんの手助けに行くぞ!」

 

「おれもだ! “宵魔女”をぶっ殺してやる!」

 

 ステューシーが会場に戻ると、ビッグ・マムのまだ若い息子達が口々に勇ましい声を上げていた。しかしそれを長男であるペロスペローが止めた。

 

「待て待てお前ら、カタクリなら心配いらねェよ。余計なことするな……ペロリン」

 

「ペロス兄!? ……でも!!」

 

「“無敗の男”があの程度の相手に負けるはずがないだろう? お前達じゃあ却って邪魔だ。なァママ? ……ママ?」

 

 ペロスペローが母親であるビッグ・マムに同意を求めるが、彼女は無言のまま返事もせずにミズキとカタクリを見ている。そして座っていた椅子から立ち上がると言い放った。

 

「ハ〜ハハハ! マンマママンマ! 面白いねェ……“宵魔女”! カタクリ相手にあそこまで食い下がるとは……少し試してやりたくなったよ」

 

「まさかママ直々に!?」

 

 子供である彼らでも驚愕する。ビッグ・マムが態々敵と戦うのは非常に珍しい。大抵の敵は幹部達で十分制圧することが出来るので彼女が戦う必要すらなかったのだ。

 

「ゼウス! プロメテウス! ナポレオン!」

 

『はいママ!!』

 

 ビッグ・マムの(ソウル)を分け与えられた雷雲ゼウス、太陽プロメテウス、二角帽ナポレオン。そのうちゼウスの上に乗り、彼女は屋上から一気に急降下していく。

 

「ハァ……ハァ……右! ……で、上!」

 

「……!!?」

 

 カタクリの“力餅”の連打を予知して見切り、ミズキが短剣で切り裂いた。戦闘開始から二時間と少し、双方に疲労の色が見えてきた。四皇の最高幹部レベルの戦闘であれば数日間に渡ることもざらにあるが見聞色の覇気、特に未来視は消耗が激しい。加えて相手はこの戦いで自身とほぼ互角にまで成長した実力者。今回に限ればそこまで長引くことはなかった。

 

「……そろそろ決着を──」

 

「いいね、終わりにしよう……」

 

「……!! ……面白い、受けて立とう」

 

「これが最後の一発……!」

 

 未来視を使用した者同士の会話。ここでカタクリは確信した、ミズキが完全に未来視を習得していることを。依然として彼の精度には及んでいないが、確かに未来を見ていると。

 そして次の一撃が正真正銘最後の一撃になると予見し、自身の最大の攻撃を繰り出すことを決めた。

 

「ダークワーズ……!!!」

 

「散・切……!!!」

 

 互いに最高の一撃を繰り出し、相手を討たんとする。ミズキが今まで一番の黒い炎を短剣に纏わせ、カタクリはドーナツ状に身体を変形させて回転。そして最大速度まで加速した彼が人型に戻る瞬間に、腕を棘付きの棍棒に変形させてミズキの短剣と激突する。

 

『……!!?』

 

 が、その二つの攻撃がぶつかり合うことはなかった。二人は同じ未来を見ると攻撃を中断してほぼ同時のタイミングで後退した。

 

「……ママ!!?」

 

「ハ〜ハハハ!! どいてなカタクリ!!」

 

 空から飛来するビッグ・マム、彼女の放つ一撃が自分達のいた箇所を削り取る未来を見た彼らはその場を退いたのだ。その判断が正しかったと理解するのにそれほど時間はいらなかった。

 

皇帝剣(コニャク)……破々刃(ははば)ァァ!!!」

 

「……!!!」

 

 刃に移ったナポレオンにプロメテウスを纏わせて放つ斬撃。それは彼らのいた平原に巨大な穴を開け、周囲を燃える地へと変えた。

 

「ビッグ……マム……!」

 

 攻撃を避けることは出来たものの、その破壊力にミズキは冷や汗を流す。あんなものが直撃していたら一溜りもない、いくら動物系の耐久力があっても耐えることなど不可能だと戦慄した。

 

「マンマママンマ!! 遠路遥々よく来たねェ……! お前の魂なら強いホーミーズを作れそうだ!」

 

 四皇“ビッグ・マム”、白ひげに敗北した日から目標として定めていた相手の一人と相対したミズキは若干尻込みしながらも覚悟を決めた。ここで四皇を打ち倒してみせると。

 それがどれだけ無謀なことか、理解しながら。

 

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