転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

5 / 90
“道化”と“狩魔女”

 突然だが海賊にとって必要なスキルはなんだろうか?戦闘能力、医術、操舵技術など様々だろうがやはり一番大切なのは航海技術だろう。

 そもそも海賊とは陸から海へ出て略奪、もしくは冒険をする者達のことを指す。当然航海をするためにはそれ相応の航行術が必要であり一部の例外を除けばそれを持たない者が海へ出たところで次の島に辿り着くこともなく死に至る。

 気象がデタラメで通常のコンパスが意味を成さない偉大なる航路(グランドライン)。特に後半の海『新世界』はもちろんのこと、ここ東の海(イーストブルー)でもそれは同じだ。

 そのため普通ならば海賊として旗揚げするならばまずは航海士を探す、もしくは自らが航行術を身につけるのが鉄板である。それを怠って海に出る者はまずいない、いたとしてもすぐに海の藻屑だ。

 ただし極一部──―ほんのひと握りの強運の持ち主は航行術を持たなくてもある程度は海を渡れるという。

 そしてそういったものは必ず海賊として大成する。まるで天に愛されてるが如く。

 

 

 

 

 東の海、名も無き無人島。

 そこに1隻の船が到着した。

 黒と淡い緑を基調とした船体に何門も取り付けられた大砲。帆にはMARINEと大きく書かれており、カモメをイメージしたマークもあしらわれている。

 それは海軍の、この海の秩序を守る正義の軍隊の軍艦であった。

 だがそこから降りてくるのは海兵ではなかった。降りてきたのは真っ赤な丸い鼻が特徴的な少年と、ピンク色の髪を後ろでポニーテールにし、透き通るような水色の瞳をした少女のような見た目の少年だ。

 

「……ねぇ、ここ無人島じゃない?」

 

「おっかしいな……予定通り進んでりゃあそこそこでかい街に着くはずなんだが……」

 

「もしかして君、大して航行術持ってないの?」

 

「うっせぇな!俺も二人で航海すんのなんか初めてなんだよ!つーかお前は何もしてねぇじゃねぇか!」

 

 島の内部に広がる大自然を背景にそんな会話をするのは元ロジャー海賊団船員のバギーとその仲間ミズキ。

 彼らは海軍支部にて食料や金を奪い海軍の軍艦でこの無人島に辿り着いた。

 しかし彼らの本来の目的地はここではない。街で海賊船を作ってもらう、そのために大きな街を有する島に向かっていたはずだが……

 

「……ねぇ、この地図逆さまじゃない?」

 

「なに!?うぉぉぉぉ!?マジか!?」

 

 バギーが手に持つ地図をミズキが覗き見てそう呟いた。それを聞いて再度地図を見るとバギーは頭を抱えた。

 なんとずっと地図を逆さまに見ていたのだ。これでは目的地に辿り着かないのも納得。逆によく島を見つけることができたものだっとミズキは呆れた。

 

「だが待てよ……この島、財宝の匂いがするぞ。よし、ハデに宝探しだ!付いてこい!」

 

 そう言ってズカズカと島の内部に入っていくバギー。一体どこからその自信が出てくるというのか。本当に財宝を嗅ぎ分ける嗅覚でもあるのか、はたまたただの現実逃避か。

 どちらにせよ従うしかないと考えたミズキは彼の背中を追いかけて深い森林の中へと足を踏み入れようとした。すると

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!なんだこいつ!?」

 

 森林の中からバギーの悲鳴が聞こえてきた。

 ミズキがその場所へ行くと、蛇のような細長い体に兎のような白い毛皮と長い耳の見慣れない生物がバギーの尻に齧り付いていた。

 

「……何してるの?」

 

「なんでもいいからこいつ取ってくれ!」

 

 騒ぎながら齧り付いているその生物を振り払おうとしているバギー。

 ミズキはしょうがないなと能力で雷を発生させるとそれをバギーの尻に向けて発射した。雷を受けた生物は断末魔を上げながら口を離し地面に落ちた。

 しかしその雷はバギーにも感電し、黒焦げになった彼はその場に倒れた。

 

「何すんだこの素っ頓狂が!!」

 

「しょうがないでしょ、取ってって言ったのはそっち」

 

「やり方ってもんがあるだろうが!!」

 

 胸倉を掴んで怒るバギーにミズキは真顔のまま当然かのように答える。その様子にこれ以上キレても無駄だと思ったバギーは掴んでいた手を離して地面に落ちたあの珍獣を見る。

 

「にしてもなんだぁ?この生物は……蛇か?兎か?」

 

 その生物を手に取り頭に疑問符を浮かべる。こんな生物は新世界でも見たことがなかった。最もこれよりさらにでかく強い生物ならいくらでもいたのだが。

 

「……この子だけじゃないみたいだよ」

 

「なに!?」

 

 バギーが辺りを見回すと森の闇の中からいくつもの赤い目が鋭く彼らを睨んでいた。その数は少なくとも50は超えている。

 

「うぉぉぉぉ!?いつの間に!?」

 

「……思ったよりやばい島みたいだね」

 

 そうこう言っている間に赤い目はその全貌を明らかにした。ライオンのようなたてがみを持つ豚、サイの角を持つカンガルー、その他にもヒョウ、犬、キツネ、トナカイ。2種の動物の特徴を併せ持つ正しく珍獣が彼らを四方から囲んでいた。

 

「くそぉ……こんな数の珍獣共相手にしてたら先にこっちがくたばっちまうぞ……」

 

「……じゃあ二人で一方向の動物だけ倒して進むのは?」

 

「……!!そりゃあ名案だ!よし、ハデに俺様に続け!!」

 

 そう言い放ち彼は目の前の珍獣をなぎ倒し進んでいく。ミズキはそれを見てあることを言いかけるが既に自分の世界に入ってしまったバギーには聞こえないだろうと思いやめる。

 バギーが向かったのは来た方角とは逆──―島のより奥深くだということを。

 

 

 

 

 

 

「ちくしょう……ここは一体どこなんだ」

 

「多分島の内部だよ。君、来た方とは逆の方角に進んでたから」

 

「はぁ!?てめぇなんでそれ先に言わねえんだよ!!」

 

「言おうとしたけど君が先に行っちゃったんでしょ……」

 

 迫り来る珍獣達をそれぞれバラバラと魔女の力で倒しながら進んだ彼らは森の奥深くへと足を踏み入れていた。

 殆ど光が射さないほど生い茂った枝と葉が視界を遮って空も見えない。

 

「だぁ!!海でも迷ってその上ここでも迷うなんてツイてないぜ……」

 

 誰のせいだ、とミズキは思うが言ったところで怒られるだけだ。さすがに彼の扱いにも慣れてきた。

 

「ん?ありゃなんだ?」

 

 突然前方の何かを指さしてバギーがそう言った。そちらの方向を見ると薄暗い洞窟があった。しかも明らかに人の手が入ったような跡がある。

 

「ここは……」

 

 ミズキが中を覗き込むと暗闇の中に僅かに奥まで続く道が見えた。どうやら結構奥まで繋がっているようだ。

 

「……!!もしかして……お宝が眠ってる洞窟か!?」

 

 さっきも思ったがその直感じみた自信はどこから来るのだろうか?いや、ロジャー海賊団出身という経歴も考えると本当にそのような感覚があってもおかしくはないのだが。

 

「よし、行ってみよう。ミズキ、明かり頼むぜ」

 

「うん」

 

 ミズキが手のひらをかざして火の玉を出す。それを照明代わりとして洞窟の奥へ奥へと進んでいく。

 途中までは普通の洞窟だった。薄暗くコウモリなどの夜行性の動物がいて鍾乳洞があって。

 しかしさらに奥深くへと進むと異変が起こった。

 

「うお!?危ねぇ!?」

 

 ミズキの前を歩くバギーの胴体がいきなり真っ二つに割れた。常人なら即死だが彼はバラバラの実の能力者、身体が切れたところでダメージはない。

 

「なんなんだ……これは…………罠か」

 

 そこには斧を紐で吊るしただけのシンプルな罠があった。どうやら人が来ると作動するように仕掛けられていたようだ。

 

「罠があるってことは……やっぱりお宝があるんじゃねぇか!」

 

 罠があるということはその先に進まれたくない何かがあるということ。それをわかっているバギーはますます期待に胸を膨らませる。

 そしてそこから数々の罠を乗り越えていき(主にバギーを盾にして)二人は明らかに人工的に作られた部屋の前に辿り着いた。

 バギーが恐る恐るその部屋の中に入る。

 ミズキがそれに続いて中に入ると、目に入ってきたのは質素な作りの小部屋。家具などはなく部屋の中央の祭壇のような場所に短剣が一本刺さっているだけだった。

 

「……これが宝?」

 

「らしいな、しかし剣が一本だけとは湿気てやがるな」

 

 バギーがガッカリしたように溜息をこぼす。どうやら彼は財宝に興味はあっても剣にはないようだ。

 そんな彼を横目にミズキはその剣を手に取ってみる。

 緑を基調とした持ち手に中心で夕焼けの空のような色と金色の二つに分かれた剣身、素人のミズキから見ても素晴らしい剣だった。

 ふと横を見ると祭壇に何か字が書いてあった。目を凝らしてみるとそこには“大業物ヴァルプルギス”と記されていた。

 

「……ヴァルプルギス」

 

「あん?なんか言ったか?」

 

「ねぇ、これ貰ってもいい?」

 

「好きにしろ、財宝以外に興味ねぇよ」

 

 そう言って元来た道を戻っていくバギー。しかしすぐに足を止めてミズキの方に振り返った。

 

「おい……出口どっちか覚えてるか?」

 

 二人が再び海岸に姿を現したのは約一ヶ月後、その間洞窟で10日間、森で20日程さまよったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

「や……やっと……出られたぜ」

 

 力無く砂浜に倒れ込むバギー。

 一ヶ月振りの砂浜に懐かしささえ覚えた。

 この一ヶ月間飲み物こそ洞窟の水たまりや川の水で凌げたものの、食料は苦労した。後半こそ狩りにも慣れて動物が食べられるようになったもののそれまでは雑草とよくわからない果物で食いつなぐ日々、もうこんな仕打ちはごめんだとバギーは心から思うのだった。

 

「うん?お前何してんだ?」

 

 彼の目線の先ではミズキが白い水兵帽を被ったカモメから新聞を受け取っていた。

『ニュース・クー』世界政府が新聞配達を行わせているカモメであり海賊などの無法者でも金さえ払えば購入することができる。

 その配達範囲は偉大なる航路まで及び海上にいる海賊達の唯一の新聞の入手手段になっている。

 

「……お前、よく新聞なんて読めるよな」

 

 肩で息をしながらバギーはそう言う。命からがら助かったばかりなのによくそんな余裕があるよなと。

 それを無視してミズキは新聞をパラパラと読み漁る。一番大きな見出しはゴールドロジャーに関連する記事。処刑から二ヶ月は経っているはずだが未だに世間では注目されているらしい。

 終盤まで読み進めた辺りで何枚か紙がパラパラと落ちた。どうやら新聞に挟まっていた手配書のようだ。

 それを拾って何となく内容を見てみる。主に東の海で活動する海賊達の手配書、金額は大体が300万前後、それ故たまにいる1000万代の海賊は目に止まった。

 

「……これ」

 

「その手配書がどうしたよ…………!?」

 

 途中、手を止めミズキが手配書を二枚バギーの方に見せた。彼はそれをチラッと興味無さそうに見るとすぐに目を逸らし、なにかに気づいて視線を戻した。そして数十秒後、島に彼の声が響き渡る。

 

 

道化(どうけ)のバギー” 懸賞金1500万ベリー

 

 

狩魔女(かりまじょ) ミズキ” 懸賞金1300万ベリー

 

 

 

「は?…………はぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

ミズキの悪魔の実

  • 超人系マジョマジョの実
  • 動物系幻獣種ヒトヒトの実モデル魔女
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。