転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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赤髪のシャンクス

 四つに分かれた海のうちの一つ、最弱の海と名高い東の海(イーストブルー)

 その上にひっそりと浮かぶ無人島に叫び声が響いたのは、()()が上陸してから一ヶ月ほど経った頃だった。

 

「な……なんで俺らの手配書が……!?」

 

「……あれだけ暴れたらまぁそうなるよね」

 

「クソォ……こんなに早く賞金首になっちまうなんて……俺様の計画がめちゃくちゃだ」

 

 地面に手をついて落胆するのは元ロジャー海賊団見習い、赤鼻の“道化のバギー”。その隣で溜息をつくのは“狩魔女ミズキ”。

 共に先程賞金首になった事実を手配書で知ったばかり、しかしどちらも東の海では珍しい1000万越えの額をつけられた高額賞金首である。

 

 というか計画なんてあったんだとミズキはバギーの言葉を聞いて思う。今まで行き当たりばったりで特に計画性は感じられなかったが……。

 

「だけどこの額だったらまだロジャー海賊団にいた事はバレてないみたいだね」

 

「ああ? ……まぁそりゃそうだな」

 

 いつまでも落ち込まれてはさすがに鬱陶しいとフォローするようにミズキが言う。確かに東の海では1000万越えは破格であるが所詮最弱の海、他の海──特に偉大なる航路(グランドライン)に入ればもっと高い賞金をかけられた海賊はごまんといる。世界的に見れば大した額ではないのだ。

 元ロジャー海賊団という経歴がバレていたとしたらこの程度の額では済まない。ヘタをすれば億を越える賞金をかけられる可能性もあるのだ。

 それだけは避けたかったバギーは安堵した。賞金首になってしまったのは計算外だがまだ大丈夫だと。

 

「…………」

 

 ほっと肩を撫で下ろすバギーとは正反対にミズキは今後のことを考えていた。賞金首になったのはまだいい、この程度の額なら本部の海兵は動かないだろうし支部ならなんとかなる。

 だがこれから先偉大なる航路、そしてその後半の海である“新世界”まで行くことを考えると今の実力ではどう足掻いても無理だ。

 彼は知っている、この先の海は海賊も海軍も強者しかいない過酷な海だと。彼の記憶にある海賊は超新星として偉大なる航路を駆け上がり、海に出てたった半年足らずで王下七武海を二人撃破した。しかしそんな彼でも新世界の強者には手も足も出なかったのだ。

 故に彼は提案をした。

 

「ねぇバギー」

 

「あん? なんだよ?」

 

「……修行しよう」

 

「…はあ?」

 

 あまりに唐突な発言に間抜けな声であんぐりするバギー。しかしミズキが冗談を言っているわけではないとわかると黙って話を聞くことにした。

 

「今のボクらじゃ偉大なる航路は無理だよ……だから修行しよう」

 

「おい待て待て待て……偉大なる航路!? おめぇ偉大なる航路に入る気なのか!?」

 

「……? 入らないの?」

 

「いや……そりゃいつかは入る気だったが今はまだ早すぎるぜ……」

 

 ミズキからすれば海賊が偉大なる航路に入るのは当然だった。それは彼が持つ()()から来るものだがそれはバギーの考えとは違ったようだ。尤も彼の知識の大部分を占めているある海賊の物語がそもそも異例中の異例なのだが。

 ともかく偉大なる航路に入るには早すぎる、だから修行なんて必要ないとバギーは冷静に諭そうとする。修行がめんどくさいからしたくたいという考えも結構な割合で含まれてはいるがそれはそれだった。

 渋るバギーに譲らないミズキ、言い争いが続くと思われたがバギーが一枚の手配書を見た事でそれは丸く収まることになる。

 

「……うん? ……これは………まさか!?」

 

 そこに写っていたのは赤い髪に麦わら帽子を被った少年。バギーもよく知る人物だった。

 

 

赤髪(あかがみ)のシャンクス” 懸賞金4890万ベリー

 

 

 

「しゃ、シャンクス〜〜〜!? あの野郎いつの間にこんな!?」

 

 バギーと同じロジャー海賊団の海賊見習いだった少年、シャンクス。記事によるとビッグマム海賊団傘下の船を沈めたらしい。その危険度が考慮され、初頭の手配では破格の5000万近くの賞金がついたのだ。

 その記事と手配書を見てバギーはワナワナと震えたかと思うと、それらを地面に叩きつけた。

 

「あの野郎だけには負けられるか!! やってやろうじゃねえか、ハデに修行だ!! 絶対にシャンクスよりも強くなってやるぜ!!」

 

 散々渋っていたさっきまでとはうってかわりやる気をみなぎらせるバギー。単純すぎるその言動にさすがにドン引きしたミズキ。顔には出さないが内心ちょっと距離を置いた方がいいんじゃないかなどと思っている。

 

「で、修行って何すんだよ? まぁ今の俺様なら軽くやり遂げてやるがな!! ギャハハハハ!!」

 

「……さぁ?」

 

「いやそこは考えとけよ!! 言い出しっぺはてめぇだろうが!!」

 

 思わずズッコケそしてすぐにツッコミを入れるバギー。確かに修行しようと言い出したのはミズキの方だが彼にはどうすれば強くなれるのか具体的な案は何も無かった。ロジャー海賊団出身であるバギーなら何かいい案があると思っていたのだがどうやら当てが外れたようだ。

 ということで何も具体案が無いまま始まった修行。その内容は

 

「さ、3500……3501……3502……3503………もうダメだ……」

 

 シンプルに腕立て伏せや腹筋などの筋トレであった。強くなるためにはまずは肉体を強くしなければならないという考えの元だ。

 この世界においての強者は主に2パターンに分類される。それは体術で戦うタイプと悪魔の実などの特殊能力で戦うタイプだ。前者は“六式”や“覇気”を鍛えることで超人的な力を身につけている。代表的なのは“海賊王ゴールド・ロジャー“や海軍本部中将”拳骨のガープ“である。彼らは悪魔の実の能力を持たないにも関わらずこの世界で最上位の強さを持つ者であった。

 そして後者は悪魔の実や自身の種族の持つ特殊能力をフルに活用して戦う。白ひげ“エドワード・ニューゲート”や海賊艦隊大親分“金獅子のシキ”などがあげられる。彼らは自らの能力を極限まで鍛え、研ぎ澄ませてある。もっとも彼らは身体能力も極めて高く能力無しでも相当強い。故に結局は肉体の強さが重要なのだ。だからこそこのように肉体を鍛える修行をしている。やり方があっているかはともかくだ。

 

「で、今度は悪魔の実の能力を鍛えるってか? どうすんだよ」

 

「……さぁ?」

 

「そっちもノープランかよ!! おめぇに期待した俺が馬鹿だったぜ!!」

 

 そして次は悪魔の実の能力の強化。

 悪魔の実の能力とは能力者の練度と発想力によっていくらでも強化される。例えば超人系(パラミシア)で言えばビスケットを出す能力を応用して屈強な鎧を作ったり、糸を出す能力で雲を掴み空を飛んだりだ。動物系(ゾオン)ならトリケラトプスが首周りのフリルを回転させ空中移動したりブラキオサウルスの首と胴体が分離したりとなんでもありだ。

 発想力があればいくらでも強くなる。その仕様はミズキと非常に相性が良かった。発想力とは少し違うが彼はいくつもの優秀な作家の作った物語を知っている。そこから発想を引き出し、己の能力に引用できれば格段に強くなれる。

 

 そしてバギーのバラバラの能力もとても優秀な能力だとミズキは考えていた。斬撃を無効化できるだけで剣士に対してのアドバンテージを得ることができるし、応用すれば空を飛ぶことだって可能だ。バギーがその気になって自分の身体と能力を鍛えればかなり強くなれる。その確信が彼にはあった。

 何せ彼は知っているのだ、このバギーという男が後に自身のカリスマ性だけで数多の猛者を従え大海賊に上り詰めることを。

 

 

 

 

 

 

 ──東の海のとある島

 

「おい、ここで間違いないのか?」

 

「ええ、CP(サイファーポール)が掴んだ情報ではこの屋敷で間違いないのですが」

 

 その島に建つ大きな屋敷のエントランス、そこにいるのはスーツの上に白いコートを羽織った荒々しい見た目とどこか気の抜けるような雰囲気の男とその部下らしき男性。

 

「もぬけの殻じゃねぇか……一足遅かったか」

 

「如何しましょう? ガープ中将」

 

 ガープと呼ばれたその将校は腕を組み神妙な顔で考え込んでいる。彼がここにやってきたのはとある任務のため。元々休暇中であった彼は数人の部下を連れて故郷である東の海に帰省していた。しかしその途中本部から緊急の任務があるということでたまたま近くにいたガープが駆り出されたのだ。

 別にそのこと自体に彼は特に不満はなかった。むしろ自分の休暇を犠牲にする程度で悪を滅することができるならば安いくらいだとすら思っている。

 彼が憤りを感じているのはその任務の内容について。政府が前々から追っていた裏世界のブローカー、武器やドラッグ、奴隷など裏世界の取引に度々関わってくる男の居場所を掴んだという情報がCPから入ってきた。主に偉大なる航路が取引場所として使われていたためそちらを中心に探っていたのだがどうやら予想に反して東の海にいるのだという。

 そしてその情報を元にこの場所にやってきたのだが、既に誰もおらず逃走された後だった。

 

「何か痕跡でもあればいいが……とにかく証拠になりそうなものを隅々まで探せ」

 

「了解です」

 

 そう部下に指示を出し自らも屋敷内を調べる。本来彼ほどの地位を持つならばそのような仕事は部下に任せ報告を待てばいいのだが、ガープは自身も一緒になって屋敷内を捜索する。そのことが彼が多くの部下から慕われている所以であった。もちろん過去の功績──特に海賊王ロジャーを何度も追い詰めたという実績も尊敬を集める理由であるがそれもほんの一部に過ぎない。

 

「ガープ中将! ここになにか」

 

「地下室か……」

 

 部下から言われた場所を見ると確かに地下に続く階段があった。薄暗い階段の奥に廊下が伸びているのが見える。

 

「俺が見てくる。お前達は別の場所を調べろ」

 

 そう言い残し地下室への階段に足を踏み入れる。階段を降り廊下を少し進むと鉄格子で遮られた牢屋が現れた。扉は開いており中に生き物の気配はない。

 それを見てガープはポケットから一枚の写真を取り出した。そこに写っていたのはピンク色の髪に水色の瞳の可愛らしい少女だった。政府からの情報によるとこの屋敷に囚われている()()だという。ガープの任務にはこの少年の救出、及び保護も含まれていた。

 しかし少年の姿はどこにも見当たらない、彼の研ぎ澄まされた見聞色の覇気にも引っかからないことを考えるに既に逃げたか連れていかれたか。

 前者ならまだいい、少年が一人逃げだして生きていけるかなど懸念はあるものの少なくともここにいるよりは安全だろう。

 しかし後者なら早急に助け出さなければならない。彼がどのような仕打ちを受けてきたか、それは政府からの情報、そしてこの部屋の惨状を見れば痛いほどわかる。床や壁の至る所に飛び散った血痕、牢屋の前に置いてある数々の拷問器具。

 奴隷という制度を人一倍嫌うガープは拳を震わせる。世界政府は表向きでは奴隷制を取り締まってはいるが、世界貴族──天竜人が関わる案件においては黙認していた。何故なら天竜人はこの世界の創造主、逆らうことなど許されないと子供でも知っている。

 ガープはそれが許せなかった。海軍中将という立場上声を大きくして言うことはできないが彼の天竜人嫌いは海兵達の間でも共通の認識だった。

 だからこそ、せめて天竜人が関わらない今回のような事件では絶対に犠牲を出さないとガープは決意していた。しかし彼は遅かった。もう少し早く駆けつけていれば保護することもできただろうに。

 

「……すまない」

 

 自身の不甲斐なさを嘆きながら、彼は誰もいない廊下にただ謝罪の言葉を呟く。そして必ずこの少年を助け出してみせると改めて決意するのだった。

 




感想でご指摘頂いたんですけど、ミズキの悪魔の実の名称について今は超人系マジョマジョの実にしているんですが、動物系幻獣種ヒトヒトの実モデル魔女でもいいかなと迷っています。そこでアンケートを取りたいのでよろしければ御協力お願いします。もし何か意見などありましたら感想欄でお気軽にどうぞ。

ミズキの悪魔の実

  • 超人系マジョマジョの実
  • 動物系幻獣種ヒトヒトの実モデル魔女
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