転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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繋がり

 

 

 ―新世界、ワノ国鬼ヶ島。

 

 五皇の一角、百獣海賊団の本拠地である鬼ヶ島。その中央に佇む城の内部で、海賊団の総督であるカイドウは──酔っ払っていた。

 

「何が五皇だ……ふざけやがってクソガキが!!」

 

「か、カイドウさん……お酒はその辺にしておいた方が……」

 

「ああ!!? おれに指図しやがんのか!!?」

 

「ひぃ!! いえ……そんなことは……」

 

 随分酔っ払っている様子のカイドウは、瓢箪に入った酒を飲み干し地面に叩きつける。部下の制止も聞かずに別の瓢箪を持ってこさせ再び酒を飲み始めた。

 

「イライラするぜ……おれの息子を連れ去りやがって……いずれぶち殺してやる!!」

 

「ヤマト坊ちゃんも最早バギー海賊団の幹部。懸賞金も8億を超えてますぜ、カイドウさん」

 

「ふん、戻ってくりゃ少なくとも能無しのデブよりは有能そうだな」

 

「ああ!? キング、そりゃ一体誰のことだ!?」

 

「この場にデブがお前以外いるか? 醜く太りやがって、豚野郎」

 

「これは筋肉だ!! 拷問好きの変態野郎が!!」

 

 最高幹部、大看板であるキングとクイーンが罵りあいを始めた。仲が悪い彼らが些細な悪口から口論に発展するのはいつものことであり、カイドウもとやかくは言わない。しかし今日のカイドウはその限りではないようだ。彼らの口論を黙って聞いていたカイドウは段々と額に青筋を浮かばせ、しまいにはまだ酒の入っている瓢箪を握り潰した。

 

「もう我慢ならねェ!! 野郎共!! ヤマトを連れ戻しに行くぞ!!」

 

「……!!? 今からですか!?」

 

「当然だ!! 早く準備を済ませろ!! 戦争だ!! ウォロロロロ!!」

 

 カイドウの突然の宣言に驚く部下達を置き去りにし、彼はその能力で巨大な龍へと変化し天井を突き破り飛び去ってしまった。後に残されたのは呆気に取られた様子のクイーンとその他の部下達。キングは多少の冷や汗を流したものの、特に表情は変わらない。

 

「……おいおい、まじでやるのかよ。相手は新参とはいえおれらと同格の海賊団だぞ」

 

「怖ェなら留守番でもしてろ。役立たずがいなくなりゃやりやすいだろう。てめェが来たところでもう一度負けるのがオチだ」

 

「ああ!? ふざけんじゃねェ!! 前は不覚をとったが今度こそおれが“宵魔女”をぶち殺してやる!!」

 

 カイドウの突発的な行動に乗り気ではなかったクイーンだが、キングに煽られてその態度を急変させた。元々ミズキに敗北した経験があり、最近もインペルダウンの脱獄囚であるバギー海賊団の傘下に一杯食わされたばかりだ。彼にはバギー海賊団を恨む理由が十分すぎるほどあった。

 

「……だが舐めてかかれば返り討ちにあうことも事実だ。船団を編成してカイドウさんを追うぞ」

 

 キングは冷静だった。バギー海賊団は今や五番目の皇帝とまで言われるほどに成長した。こちらも本気で戦わなければ敗北も十分にありえる。無論宵魔女や千両道化が一対一でカイドウに勝るはずはないが、多対一ならばその限りではない。宵魔女と千両道化の二人がかり、あるいはもっと多くの戦力がカイドウに向けられれば万が一もありうる。

 つまり重要なのは敵の戦力をいかに分散させるかであり、その役目はNo.2である自分の仕事だと彼は理解していた。その役目を完遂するべく、キングは未だ騒ぐクイーンを無視して部下に指示を出すのだった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 百獣海賊団が船団を率いてカライ・バリ島に向かった。この出来事は瞬く間に海に君臨する各組織に伝わり、特に海軍はその対処に追われることとなった。まず最初に情報を得たのはビッグ・マム海賊団。業界一とも噂されるその情報力でいち早く百獣海賊団の進軍を察知し、それは船長であるビッグ・マムに報告された。

 

「ハ~ハハハ! そりゃあいい、またとねェ機会だねェ……上手くやりゃあカイドウと赤っ鼻、面倒な奴らを同時に葬れる」

 

「そ、それではママ自ら向かわれるのですか!?」

 

「ああ、ここにはカタクリを残しておけば十分だろうさ。船の用意をしな! 奪うべきものを奪いに行くよ!」

 

 その実力に狡猾さを併せ持つビッグ・マムは即座にこの事態はチャンスだと認識し、自分を含めた多大な戦力を百獣海賊団とバギー海賊団に向かわせる判断を下した。

 

 そして次に動いたのは海軍だ。

 

「センゴク元帥……」

 

「わかっている……五皇同士の接触など本来あってはならない重大事件。大将を向かわせる他あるまい」

 

 元帥であるセンゴクは新世界の動きに頭を抱える。カイドウの滅茶苦茶っぷりはいつものことではあるが、ここまで大胆に動くのは珍しい。それゆえ十分な人員を整える時間もなく、今本部にいる者のみで対処する必要があった。

 

 最後に情報を得たのは白ひげ海賊団。彼らは今回の事件に直接関わりはないが、カイドウが動くことで自身のナワバリが危険に晒されることを危惧していた。

 

「オヤジ……カイドウが……!!」

 

「ああ……まったく、昔っから何も変わっちゃいねェ……」

 

 報告を聞いた白ひげはカイドウの破天荒さにため息を漏らす。昔から何も変わっていないと。

 

「カイドウ……!!」

 

「イゾウ……気持ちはわかるがおれ達が動く訳には……」

 

「ッッ……!! わかっている……!!」

 

 カイドウの名を聞き、かつての主君を殺された怒りを思い出しイゾウは拳を震わせた。しかし彼が白ひげ海賊団という組織に属している以上、勝手な行動をする訳にはいかない。ビスタに諭され、イゾウはそれでも納得いかない様子で無理やり怒りを飲み込もうとする。

 

 そしてバギー海賊団の本拠地、カライ・バリ島では。

 

「フリーダ様〜〜!? お戻りください〜〜!?」

 

 街中を無邪気に駆け回る子供を追いかけるバギー海賊団の船員達。その子供はせいぜい三、四歳かそこらだが、大人顔負けの速度で追っ手から逃げていた。腰まで伸ばした左側がピンク、右側が水色という独特な髪を靡かせ、彼は海へ向かって走っていたのだ。

 

「いやです!! ぼくはぼうけんがしたいのです!!」

 

「なりません!! キャプテン・バギーにフリーダ様をお守りするようにきつく言われているのです!!」

 

「パパうえはいつもそうです!! ぼくはもうよっつなのですから、ひとりだちをするとしごろになったのです!!」

 

「四歳で独り立ちは早すぎます!! いいからお戻りください!!」

 

 バギーとミズキの血液を元に魔法で生み出された息子、フリーダ。その才覚はやはり並ではなく、四歳にしてそこらの大人よりも遥か上の実力を身につけていた。ちょっとヤンチャなところはご愛嬌だが可愛らしい息子をバギーは溺愛し、その過保護っぷりは少し度が過ぎるほどだ。故にフリーダは普段の鬱憤を晴らすべく、バギー不在の今久しぶりの冒険を満喫していた。

 

「よ〜し、このままらふてるまでとんでいきますよ!!」

 

「大冒険!!? って飛んだァァ!!?」

 

 フリーダはミズキから受け継いだ能力を使用し、大空に飛び上がる。さすがにラフテルまで行くというのは無茶苦茶だが、彼の志はその域に到達している。

 

「いつかぼくも……ろじゃーのようなかいぞくおうになる!!」

 

 少年が大空にそして大海に自らの夢を宣言したほぼ同時刻、カライ・バリ島の近海にある無人島にて決戦が始まろうとしていた。

 

「……“宵魔女”……うちのヤマトを連れ去ってくれたのはお前だったな……」

 

「人聞き悪いね、ボクは娘の独り立ちを応援してあげただけなのにさ」

 

 龍の形態のままカライ・バリ島を目指していたカイドウはこの無人島にてミズキに足止めされていた。本拠地で暴れられるわけにはいかない、故にミズキはカイドウを食い止めるべく待ち構えていたのだ。少なくとも防衛線を敷き終わるまでは、カイドウを自由にするわけにはいかない。

 

「ウォロロロロ……お前一人でおれを止めるつもりか? 大人しくヤマトを渡した方が身のためだぞ」

 

「そっちこそボクのこと舐めてない? 昔ならともかく、今は一応同格なんだけど」

 

 約十年前、彼らはワノ国にて顔を合わせている。当時はカイドウの実力が圧倒的であったが、今やミズキもあのビッグ・マムと互角に渡り合うほどの力を身につけた。そんな彼を倒すのはいくら最強生物との呼び声高いカイドウでも容易ではなく、多少の時間と手間がかかるだろう。

 

「御託はいい!! 要はお前を叩きのめしてヤマトを連れ戻す!! それだけだ!!」

 

「やってみなよ!! 返り討ちにしてあげる!!」

 

熱息(ボロブレス)!!!」

 

 ミズキがカイドウに向けて啖呵を切った直後、カイドウの口から強力な熱の息吹が放たれた。直撃すれば大ダメージは必至の攻撃を見聞色の覇気の極地、未来視で回避したミズキはカイドウの頭上に飛び上がる。

 

「悠長にしてる暇はないからね。最初から全力で行くよ!!」

 

 悪魔の実の覚醒、ヒトヒトの実モデル悪魔の真価を発揮しミズキはその姿を変化させていく。堕天状態(ロストモード)と名付けた形態に変化したミズキは自らの翼と重力を利用し急降下、そのままカイドウの顔面めがけて短剣を振るった。

 

「グウァァァァ!!?」

 

 覇王色の覇気を纏わせた一撃がカイドウを直撃し、その巨体は地面に叩きつけられた。派手な悲鳴を上げ土埃の中に消えたカイドウはその反応とは裏腹に、特にダメージを負った様子もなく人型に変化しミズキを睨みつける。

 

「……覇王色の覇気を纏うか……確かに侮っていた。認めてやろう……お前はおれの敵に値する!! ウォロロロロ!!」

 

 金棒を振りかぶり、カイドウは笑う。自分に攻撃を通すことが出来る相手など何年ぶりだろうか。最近ではその強さのあまり戦える相手がめっきりいなくなってしまった自分に痛みを与えたミズキを賞賛し、敵に値すると認める。

 

「上から目線でムカつくね……まァいいや、時間稼ぎのつもりだったけどここで皇帝の椅子から引きずり下ろしてあげる!!」

 

「やれるもんならやってみやがれ!!」

 

 カイドウの金棒にミズキの短剣。互いに覇王色の覇気を纏わせた武器の激突は天を割り、周囲の地形を変えてしまうほど凄まじい。そんな彼らの戦いを邪魔する者はその場にはいなかった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 

 カイドウとミズキが戦闘を始めたのと同時刻、彼らの戦いの舞台となっている無人島の近海にて百獣海賊団の船団はバギー海賊団と真正面から衝突していた。

 

「フン、大層な出迎えだな」

 

「そりゃあそうさ。なんたってあの百獣海賊団の御一行様だからね」

 

 多大な戦力をぶつけてくるバギー海賊団を、カイドウ不在の中船団を率いていたキングが鼻で笑う。彼の背後には大看板に次ぐ戦力、飛び六胞であるフーズ・フーとササキが控えていた。そして別の船には大看板のクイーンと飛び六胞のブラックマリアとジャックが乗っており、上位幹部はあらかた揃っているようだった。その力の入れ具合を見て、ギオンは冷や汗を流した。

 

「おい、ヤマトはいるか?」

 

「いえ……確認出来る賞金首はヤマト様以外の幹部のみです。“千両道化”や“宵魔女”の姿も見えません」

 

「……ということはヤマトや千両道化はカイドウさんの方か……」

 

 バギー海賊団の戦力を部下に確認させ、その中に目的であるヤマトや敵の船長と副船長がいないことをキングは認識した。幹部がこちらに勢揃いしている以上カイドウに向けられる戦力は千両道化や宵魔女だろう。ヤマトも性格から考えてカイドウと戦っている可能性が高い。

 

「カイドウさんが負けることはないだろうがあまりあの人の手を煩わせるわけにはいかないな……」

 

 とっととこの戦闘を終わらせてカイドウの加勢に向かうためにキングは始めから全力の技を放つ。彼が属するルナーリア族の特徴である発火能力を使用し、出現させた業火がバギー海賊団の船団に向かって進撃する。

 

炎皇(アンドン)!!!」

 

 炎を纏った一撃がバギー海賊団を襲う。百獣海賊団No.2の肩書きに恥じない威力を秘めたその攻撃を止めるのは容易ではないだろう。しかしそんな攻撃の間に割って入り、無効化してみせる者がいた。

 

「!!!」

 

「キング様の攻撃を止めた!!?」

 

 キングの攻撃を真正面から受け止め、相殺したのは同じく炎による技。それを放ったのはキングと同様に黒い翼と背中に燃え盛る炎を持ったバギー海賊団の幹部、ルナリアだった。

 

「……“憎炎のルナリア”か……」

 

「“火災のキング”……噂は聞いていましたがどうやら本当みたいですね……同族と出会うのは久しぶりです」

 

 ルナリアはキングと同じルナーリア族、だがそれは手加減する理由にはならない。別に同族意識など感じないし、ましてや相手はあの百獣海賊団大看板。手加減などしていては一瞬で殺されてしまうだろう。

 

「キングの野郎……女一人に止められやがって……仕方ねェ、こっちも行くぞ野郎共!!」

 

 キングがルナリアとの戦闘を開始したことにより指示が出せなくなり、代わってクイーンが部下達に指示を出す。

 

「ムハハハハ!! てめェらバギー海賊団には色々と借りがあるからな!! まずは挨拶がわりだ!!」

 

「!!?」

 

「ぎゃあ!?」

 

 クイーンがどこからかガトリング銃を取り出し、それをバギー海賊団目掛けて発射する。それは数人に命中し、銃弾を受けた者は悲鳴を上げて銃弾が当たった手足を押さえた。だがそれ自体は戦闘中である以上仕方の無いことだ。だがクイーンは科学者、そんな彼が使う武器がそれだけで終わるはずもなかった。

 

「なんだこれ……寒い……!?」

 

「お、おい!? どうしたんだ!?」

 

 銃弾を受けた者達が寒そうに身体を震わせ始めた。見れば傷痕から徐々に皮膚が凍りついており、それはみるみるうちに全身に広がっていった。

 

「グオオオ〜〜!!」

 

「……!! や、やめ……!!?」

 

 全身が凍りつき鬼のような角が生えた者達が無差別に周囲の人間を襲い始めた。仲間であろうとそれは変わらず、鬼のいる周囲はまさに阿鼻叫喚。仲間達の突然の変化に、バギー海賊団は戸惑い動くことが出来ない。

 

「どうなってんだ!?」

 

「ムハハハハ!! それがおれ様の最高傑作、“疫災(エキサイト)弾”氷鬼だ!! 感染すれば最後、命は持って一時間!! 船上じゃ逃げ場もねェな!!」

 

「気をつけろ!! 触れただけで感染するぞ!!」

 

「……ッッ……!! なんて趣味の悪い……!!」

 

 見境なく仲間を襲う氷鬼を見て、その卑劣さにギオンは思わず歯噛みする。海賊の戦いである以上卑怯なことなど日常茶飯事だが、それにしてもこれは趣味が悪い。

 

悪魔の(デビル)……!!」

 

「……あ?」

 

戦鎚(ウォハンマー)!!!」

 

「……ぶべェェ〜〜〜!!?」

 

「クイーン様!!?」

 

 突然頭上からの一撃をくらい、クイーンは目玉を飛び出させ地面に叩きつけられた。周囲の部下達は突然の出来事に驚き、クイーンを攻撃した者に視線を向ける。

 

「誰だ……!?」

 

「あいつがクイーン様を!!?」

 

「か……可愛い……」

 

「言ってる場合か!?」

 

 クイーンを倒したのはハンマーを片手に持ち、茶髪をポニーテールにした少女だった。その可愛らしい見た目からは考えられないパワーでクイーンを倒した少女は怒りのこもった眼差しで彼を睨みつける。

 

「ちょっとアミー!! 何抜け駆けしてんの!!」

 

「サラちゃん……でも早くクイーンを倒さないと」

 

 頭上から話しかけてきた蝶のような羽で飛ぶ金髪ロングの女性、サラの言葉にアミーは不満そうに口を尖らせた。仲間達を苦しめる氷鬼、それを何とか出来る者がいたとしたらクイーンだけだ。

 

「このクズ豚野郎……醜い顔面ぐちゃぐちゃに潰してやる!!」

 

「わ〜お、相変わらず怒ると怖いねアミーは」

 

 ハンマーに武装色の覇気を纏わせ、倒れるクイーンに向けてトドメの一撃を加えようとする。しかしアミーがハンマーを振り下ろそうとした直後、クイーンは呻き声を上げながら立ち上がった。

 

「痛ェじゃねェか……一体誰が……うおっっ!? 可愛い!?」

 

「……効いてないの!?」

 

 平然と立ち上がり、アミーとサラを見て目をハートに変えたクイーン。ダメージなど微塵も感じさせない彼の様子に二人は目を丸くする。そんな二人の反応に、クイーンは愉快そうに口元を歪ませた。

 

「ムハハハハ!! おれ様にあの程度の攻撃が効くと思うか!? 今ならまだ遅くねェぞ。どうだ? おれ様の女になるなら見逃してやってもいいが?」

 

「いやウチら男だし。それにあんたみたいな豚男とか死んでもお断りだし」

 

「え〜〜!!? 男!? まじか!?」

 

 アミーとサラ、彼らが男であるという事実を知りクイーンはややオーバーなほどのリアクションで驚く。しかしそれも無理はないと思えるくらい、彼らが可愛らしいのも事実だ。

 

「……万が一味方が感染した時のための策、用意してないわけないよね?」

 

「確かに……その男なら氷鬼の抗体を持っているはずだ。科学者が自身の発明したウイルスへの対抗策を持っていないはずがない。そうだろう……“疫災のクイーン”……!!」

 

「ああ? なんだてめェらは? ……うお!? こっちも可愛いじゃねェか!?」

 

 その場に現れた二人。青髪長髪のネオンと紫色の髪をポニーテールで纏めたフルーレ。彼らもまたバギー海賊団の幹部であり、クイーンを倒し氷鬼を止めるべく彼に武器を向けた。

 

「ムハハハハ!! 確かにおれ様は氷鬼の抗体を持ってる!! 奪ってみるか?」

 

「ああ、そうさせてもらおう!!」

 

 天使の小悪魔と呼ばれるバギー海賊団の精鋭部隊。そのメンバー全員がいわゆる男の娘であり、実力は折り紙付きだ。それが4人がかりとなれば、大抵の相手は瞬く間に殲滅してしまうだろう。

 だがしかし相対するクイーンも同等、もしくはそれ以上の怪物だ。

 

「あまり調子に乗るなよカマ野郎共!! 大看板の力を侮るんじゃねェ!!」

 

 クイーンが能力を解放し、その姿を徐々に変化させていく。確かに相手は自分達百獣海賊団と同じ五皇の一角に君臨する海賊団。しかし百獣海賊団は大海賊時代始まって以来十年以上この新世界に君臨してきた。若造共とは年季が違うのだ。その事実を告げながら、彼はその姿を古代の恐竜へと変化させていった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 

降三世引奈落(こうさんぜラグならく)!!!」

 

「!!!」

 

 伝説の元ロックス海賊団であり五皇の一角、百獣のカイドウ。その巨体からは考えられない速度で放たれた金棒による一撃をミズキはすんでのところで回避した。しかし全てをかわすことは出来ず、僅かにかすり血を流した。

 

「ッッ……!!?」

 

「いいぞ!! まともにはくらわねェか!!」

 

 自身の攻撃を回避して見せたミズキを賞賛し、カイドウは嬉しそうに口元を緩ませた。彼は久しぶりに現れた自身とやり合う者の実力を認め、戦いを楽しんでいた。

 

「かすっただけで骨が折れた……!! どんなパワーしてるんだか!!」

 

 ビッグ・マムもそうだが皇帝と呼ばれる海賊達は揃いも揃って肉体が規格外に硬く身体能力も常軌を逸している。ミズキも魔法と覇気で身体能力を強化してはいるが、それでも肉体の強さはカイドウが上だ。

 

「やっぱりバカ正直に真正面からやるべきじゃないね……!!」

 

 しかしミズキの戦い方はそうでは無い。悪魔の実の能力をフルに活用したトリッキーな戦いこそがミズキが得意にする戦法であり、それならばカイドウとも十分に渡り合える。

 

「……!!? 消えやがった!?」

 

 ミズキは能力で時を止めてカイドウに接近する。カイドウからすればミズキは気配もなく突然消えたように見えるだろう。そうして気づかれることなくカイドウの目の前に現れたミズキは短剣を突きつけ衝撃波を放った。

 

紋舞乱(モンブラン)波動(ヴィレ)!!!」

 

「グオオオォォ!!?」

 

 カイドウの強靭な皮膚には並大抵の攻撃は通用しない。故にミズキは体内に衝撃を送り内側からカイドウにダメージを与えた。血を吐きながら仰け反ったカイドウは苦しそうに呻き声を上げる。しかし砂埃が舞う中、カイドウは血を流しながらも笑いながらミズキを見据えた。

 

「ウォロロロロ!! やるじゃねェか!! それにさっきの動き、見覚えがあるぜ」

 

 まるで瞬間移動のようにカイドウの目の前に現れたミズキ。その一連の動きはカイドウの知るある男の戦い方に似ていた。かつて彼が唯一自分より上だと認め、従っていた男だ。

 

「別にボクを誰に重ねるのも勝手だけどさ、よそ見してたらあっという間に終わっちゃうよ」

 

「……!! ウォロロロロ!! 確かにそうだ!! 安心しろ、お前が誰の子だろうが関係ねェ!!」

 

 カイドウの高笑いにミズキもつられるように笑みを浮かべた。足止めなどもはや関係なく、ミズキもこの戦いを存外楽しんでいた。しかし周囲にとある者達の気配を察知し、彼は短剣を背負っていた鞘にしまった。

 

「……だけどボクの役目はここまでみたいだね」

 

「……何を言ってやがる?」

 

「君を倒すのはボクじゃない。もっと相応しい相手がいるってことだよ」

 

「!!!」

 

 ミズキがそう告げた瞬間、どこからか()()()()()拳がカイドウの頬を殴った。触れることなくカイドウをぶっ飛ばした拳は再び飛んでいき、持ち主の元へと戻っていった。

 

「てめェ……!!? 赤っ鼻ァァ……!!」

 

「だァれが赤っ鼻じゃこらァァ!! カイドウてめェ……よくもおでんさんを殺してくれたな!!」

 

 カイドウが元ロックス海賊団ならばその男はそれを打ち破ったロジャー海賊団の元船員。カイドウと同じ五皇の一角、千両道化のバギー。覇王色の覇気を纏わせた彼の拳がカイドウに少ないながらもダメージを与えた。

 そしてもう一人、その場にカイドウを打ち倒そうとする者がいた。

 

「カイドウ!!」

 

「……父上だろうが……ヤマト」

 

「その鎖を断ちに来たんだ……お前との血の繋がりという鎖に繋がれたままでは……私は自由になれない!!」

 

 いくら繋がりを否定しようとも、自らに流れる血を変えることは出来ない。しかし抗うことは出来る。世界最強生物とも称される父親にヤマトは挑む。

 

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